【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「まあ、二人と合流できたのなら、残機を使って自爆しなくとも……」
そう言いながら気づいてしまった。
仲間と合流できたことで、安心できたのもつかの間。
このメンバー……戦闘能力がまったくないな。
「やっぱり、俺の残機で自爆するのが良いか」
「良くねえと思うぜボス……」
とは言ってもなあ。
昆虫人たちが俺たちよりも強いのは、確実だろう。
攻撃手段がないこのメンバーで、もしものときの手段は考えておいた方が良い。
罠が使えたら、俺もなんとか渡り合える可能性があるんだけどなあ……。
……ああ、そうか。死ぬ危険があるのは俺だけじゃないか。
「とりあえず、二人に羽を渡しておく。だからといって油断せずに、一度死んだら終わりくらいに考えておいてくれ」
「さらっと渡そうとしないでくれ。それ、ビッグボスがボスに持たせた蘇生アイテムだろ?」
「ああ。持っていたら死んだときに復活するらしい」
「えっと~……レイさんって、それがあるから自爆しようとしていたんですか?」
「そうだな。使えるものは、これと魔力くらいだから」
……昆虫人たちに聞かれたかな?
面倒だ。こうやって話し合って策を練ることすらやりづらい。
ピルカヤが、普段どれだけ敵にとって恐ろしい存在かよくわかる。
「つまり、その数だけボスは自爆しようとしていた。と」
「だから慎重に自爆したいと思う」
「自爆から発想を離してくれねえかなあ……。ロマーナの姐御が変なことするから、ボスがとんでもないことになってる……」
いや、ロマーナの自爆を見ていなかったら、ここでの戦闘手段が皆無だった。
だから、彼女には感謝すべきだろう。
「とりあえず、私はそれを受け取らないでおきますね」
「ああ、ありがたい提案だが、俺も遠慮しておく」
「つまり、俺の自爆可能回数を増やしたほうが、ここで生き延びる可能性が上がるってことか」
「自爆は、本当に慎重にしてくれってば……」
まあ、攻撃手段がそれしかないからな。
時任もロペスも、自分の保険よりも攻撃手段を優先してくれたようだ。
ここは、なんとしても期待に応えて使いどころを見極めないとな。
「私たちが死んじゃったら、そのうち蘇生してくれたら嬉しいな~、なんて思っている次第です」
「蘇生が俺たちにも割けるようになってからでいいから、頼めるかい?」
「ああ。というか、魔力をケチらずに全力でガシャっとく。あと、なるべく死なずに生き残ろうな」
蘇生薬が比較的手に入りやすいと知っているため、二人はこの場を脱することができれば死んでも何とかなると思っているようだ。
だが、俺が蘇生薬を使わないと考えないんだろうか。
死んだ後に復活させてもらえると信じてもらえているみたいだな。
「それにしても、俺たち三人が死ぬってそういうことだったか……」
「選択肢、間違ってはいないけど、もうちょっと融通利かせてほしいよねぇ……」
ああ、そういうことか。
時任が選択肢を使って、あのまま進んだら俺が自爆することを察知していたのか。
なんだか、時任がうちのダンジョンに侵入したときを思い出した。
この力があれば、危険を未然に回避できそうだし、やはり合流できたのはありがたい話だ。
「時任、今後の方針を選択肢で確認できるか?」
「はい! ええと……」
ぎゅっと目をつむって何かを考えこんでいる。
虚空を見つめるわけではないので、俺のダンジョンマスターみたいに俺にだけ見える能力ってわけではないんだよな。
急かさずにしばらく時任を待つとしよう。
「ロペスの能力は開錠だったな。単に鍵を開けるというよりは、結合しているものを分離させる、みたいな能力ってことでいいのか?」
「ああ、その認識で間違いないぜ。強度や複雑さによるみたいだけど、こういう洞窟とかなら鍵を指してひねれば多少崩せる」
「……最悪それで俺たちごと生き埋めにして、昆虫人たちを倒せば」
「自爆系の攻撃手段しかねえのかな。俺たち……」
仕方がないことだ。そもそも、能力を使えない俺と、能力が戦闘に不向きな二人だからな。
贅沢言わずに、自爆でも攻撃手段があるだけましと考えよう。
「わかりました!」
攻撃手段について話していると、時任のほうも選択肢で今後の方針がわかったようだ。
「ここにいると昆虫人と、レイさんが死にます!」
「自爆するってことだな」
「ボスが死ぬって聞くと、さっきまでならかなりやべえ状況に思えていたが、やべえのは状況よりもボス自身な気がしてきた……」
状況もやばいぞ。まだまだ安心するわけにはいかない。
それにその結果が出たってことは、ここでぐずぐずしていると昆虫人と遭遇するってことだろうからな。
「あっちに進むと、風間くんたちと合流できます!」
「なら、まずはそこからだな。昆虫人たちに追いつかれないよう、急ぐか」
「オーケー。というか、タケミたちまでいるのか……。マジで魔王軍から何人さらわれたか、わかんねえな」
だけど、風間たちがいるというのは朗報だ。
戦闘力皆無な俺たち三人と違って、風間たちなら戦う手段もある。
現状の俺たちにとって、貴重な戦力となりうる存在だからな。
「そういえば、ロペスって風間と連絡できるアイテム持ってなかったっけ?」
「……そうだった。悪いボス、俺もどうやら冷静ではないみたいだ」
「まあ、こんな状況だから仕方ない。とりあえず、向こうと連絡とってみてくれるか?」
俺たちはこの場から退避しながら、風間たちへの連絡を試みるのだった。
◇
「虫!? 人!? これがレイさんたちが言っていた昆虫人!?」
見た目はほとんど人間だけど、手足に節があったり、それぞれ昆虫的な特徴を兼ね備えている。
それになんだか感情なく襲いかかってくるから、とても不気味な存在に見えてしまう。
剣で斬りつけるけれど、感触がやけに硬い。
よかった……。ソウルイーターと戦ったりしていなかったら、手が痺れて武器を落としていたかもしれない。
それに、ソウルイーターほど硬くないから、なんとか倒すことができている。
「数が多いわね……。武巳、新。ちょっと大きめの魔法ぶっぱなすわ!」
こういうとき、友香の賢者の力は特にありがたい。
いや、今も僕たちも守っている新の聖女の力もありがたい。
みんなで訓練しておいてよかった。
とりあえず、この場の窮地は切り抜けられそうだ。
「爆発させるわよ! 新、結界強めて!」
「りょうかい!」
その言葉を聞いて、僕は昆虫人から離れた。
結界に守られているとはいえ、あまり近くにいて巻き添えを食うのはよくないだろう。
「ぶっ飛べ!」
ぶっ飛んだ。
すごいなあ。昆虫人たちが、軽々とぶっ飛ばされているよ。
「友香ちゃんの魔法が、一番衝撃が大きかったよ……」
「さ、さすがに昆虫人複数の攻撃のほうが、負担は大きかったでしょ!?」
「ううん。友香ちゃんの爆破一発でお釣りがきそう」
「な、なんかごめんね?」
強くなったなあ。エーニルキアにいたころは考えられなかった。
まさか、こんなふうに戦うことができるようになるなんて。
つくづく、国松には悪いことをしたと思う。
もう少し、彼の言うとおりにしてモンスター相手に戦っておけば、こうして戦力になれたんだろうね。
……あれ。でもその場合って、人類側として魔王軍に挑むことになるのか。
たしかに、僕も新も友香も、三人ともそれなりに戦えるようになったけど……。
ロマーナさん一人にも勝てていない僕らが、魔王軍相手に戦う?
――死んじゃうね。
ロマーナさんですら、魔王軍の十魔将に及ばない。
その十魔将ですら、四天王に及ばない。
そしてその四天王さえも、魔王様なら軽々と勝利するという。
……国松、やっぱり無理だよ。どう考えても遠すぎる。
彼はどうやって、魔王様に勝とうとしているんだろう。
しかも、そんな相手と戦う場所が、レイさんが本気で侵入者を殲滅する仕様にしたダンジョンだろ?
僕だったら、絶対に挑みたくない。
なんならダンジョンだけでも嫌だ。
だけど、住む分にはあれほど頼もしい存在もない。
だというのに、まさか二度もあそこから離れることになるなんて……。
前回みたいに、レイさんからの連絡を待ったほうがいいのかなあ……。