【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第399話 レイくんクエスト

『タケミ聞こえるか?』

 

「ロペス。ああ、聞こえる。今回は下手に動かないようにしておいたよ。レイさんたちに、助けてもらえるってことで良いんだよね?」

 

 来た。やっぱり、レイさんが今回も助けてくれるみたいだ。

 聞きなれたロペスの声に、このわけのわからない場所から抜け出せるとほっとする。

 

『あ~……。そのことなんだが、これは救助のための通信じゃない』

 

「え……?」

 

『俺たちも、お前たちと同じ状況なんだ。気付いたら知らない場所、おそらく昆虫人の巣にいた』

 

「ロペスたちも……たちってことは、他にも同じ状況の人が?」

 

 クララさんかな?

 それに、最近はクララさんと一緒にいるナツラさんも、もしかしたらここにいるかもしれない。

 だとしたら、とても頼りになるし、案外悪い話でもないのかな。

 しかし、次の言葉で僕たちが置かれた状況は、想定以上に悪いと知ることになった。

 

『ボスとトキトウが一緒だ』

 

「……レイさんまで?」

 

 単なる事故で転移したと思っていたけれど、転移先が昆虫人の巣。

 しかも、地底魔界で指示を出してくれていたレイさんが、今はこっちに来てしまっている。

 まずいんじゃないかな……。

 

『とりあえず、合流するために動くから待っててくれ』

 

「わ、わかった……」

 

 どうしよう。僕たちは揃って敵地で分断されているってことになる。

 ここまでくると、これが昆虫人のしわざだということは察することができた。

 敵意をもって自分たちの巣に転移させた、ということだ。

 まずは、みんなと合流を……。そして、新と友香は僕がなんとしても守らないと。

 

 大丈夫。レイさんが一緒ということは、むしろ地底魔界から指示をしてもらうよりも、力になってもらえるってことだ。

 そうだよ。あの力で助けてもらえるのなら、とても頼りになるじゃないか。

 

    ◇

 

「というわけで、俺は自爆しかできない」

 

「や、やめてくださいね……」

 

 風間たちとは、つつがなく合流できた。

 俺たちと違って、すでに何人もの昆虫人の兵隊に襲われていたらしいが、そこは風間たち。

 俺たちと違って、自分たちで戦って切り抜けるだけの実力を有していた。

 

 そんな風間に、当然ながらダンジョンマスターとしての力を期待されたので、誤解を招かないように早めに伝えておいた。

 すると、なんだかアナンタがよくする顔をしてしまった。

 自爆。けっこう強いと思うんだけどなあ……。

 

「ああ、そうだ。世良がいるのなら、俺が自爆しても治せたり」

 

「ば、ばらばらに爆発しちゃった人までは無理です!」

 

 無理かあ。さすがにそこまでの精度には到達していないらしい。

 となると、やはり残機分だけの自爆と考えておこう。

 

「そういうことなら、私たちに任せてください。貴重な戦力として、がんばって虫退治しますから」

 

 原の顔もややひきつっている。この戦法はお前らの先生の真似だぞ。

 この三人、ロマーナの自爆戦法を見ていたら、きっとドン引きしていただろうな。

 

「ああ、ありがとう。期待している。……そうだ、三人に不死鳥の羽を」

 

「いりません。僕たちが死んだら見捨てて逃げてください」

 

「あ、でも後で蘇生してくれると助かるかなあ。なんて思っています」

 

「命を懸けて守った恩賞として、蘇生ってありですかね?」

 

 お前らもか……。

 なんか、覚悟決まりすぎじゃないか?

 元人間の俺だからわかるが、もっと死を恐れるべきだと思うぞ。

 しかしそうなると、ここで全滅しても最悪問題ない気もしてきたな。

 

 全滅する。

 俺たちの魂はプネヴマに地底魔界に回収される。

 予備の蘇生薬で生き返る。

 そこから、蘇生薬ガシャで全員生き返る。

 ……もういっそ、ここで自爆して全員死んでおくべきなのか?

 いや、それは自暴自棄な行為っぽいし、やめておくか。

 

「そうだ。原がいるのなら魔法で火を起こせるだろうし、ピルカヤと連絡がつきそうだな」

 

「な、なるほど。その発想はありませんでした」

 

 俺の言葉を聞いて、原はすぐに炎の魔法を使用した。

 これを辿ってもらえれば、ピルカヤの分体が……。

 

「来ないな。ピルカヤ? 聞こえているか?」

 

 当然ながら返事はない。見るからにただの炎だもんな。

 もしかして、この場所がわかっていないからたどり着けない?

 それとも、ピルカヤの力を阻害する結界でも張られているのか?

 

「ど、どうしましょうか。このまま、炎を放出し続けますか?」

 

「いや、原も貴重な戦力だ。無意味かもしれないことに魔力を割く余裕はない」

 

「わかりました。私たちだけで、なんとかここから出ないといけないんですね……」

 

 そのための戦力は、風間と原と世良だけ。

 そんな三人の負荷も消耗も、可能な限り減らしたほうが良いだろう。

 

「とはいえ、戦闘はなるべく避けたいから、時任には今後も定期的に選択肢を使ってもらうが、大丈夫か?」

 

「お任せください!」

 

「無理はしないようにな。負担が大きすぎる場合は、休んでもらったほうが効率が良い」

 

「それ、自爆前提に話していたレイさんが言いますか……」

 

 俺は無理してないから。

 できることを無理の無い範囲で、そうしたほうが生存率は上がるはずだ。

 

「大目標はここからの脱出だけど、小目標として、まずは奥居を探したいかな」

 

「オクイもここにいるのかい? ボス」

 

「確証は無いけど、転移したのが戦闘に不向きな者って考えると、可能性は高いと思う」

 

 というよりも、転生者だけが転移させられた可能性が高そうだ。

 このメンバーになら言っても良かったけど、どうやら俺を転生者だと思っていないようなので、なんとなくごまかした理由になってしまった。

 

「なるほど……タケミにハラにセラは、まだ実戦経験が足りていない。それ以外はボス含めて戦闘職じゃないもんな」

 

「ああ、俺は今回特に役に立てない状況だし」

 

 ダンジョンマスターがない俺なんて、お荷物にならないように必死についていくしかない。

 ……そんな俺が、こうして偉そうに指示を出して良いのか?

 いや、俺は宰相だ。ここで弱気なことを言ったら、みんなが不安になるか。

 

「うぬぬ……選択肢~。江梨子ちゃんがピンチだよ~。助けて~。選択肢~」

 

「まだ、ピンチと決まったわけじゃねえけどな」

 

「そもそも、奥居の能力ならそうそうやられないと思う」

 

 というか、その気になれば発見すら困難だぞ。

 物質透過を使えば、壁や地面に隠れられるからな。

 とはいっても、大切な友人のピンチのためか、時任は必死に能力に話しかけていた。

 ……こいつの能力、なんか相棒みたいな扱いされてるよなあ。

 

「わかりました!」

 

「オクイと合流できそうかい?」

 

「うん! あっちに進んで、地面を掘れば会えるって!」

 

「オクイって、モグラの獣人だっけ……?」

 

 猫のはずだ。猫らしさは特に発揮していないけどな。

 まあ、時任は時任でウサギらしさを発揮していないし、そういうものなんだろう。

 

「それじゃあ、がんばって江梨子ちゃんを掘り起こしましょう!」

 

「なんか一気に、発掘隊みたいになってきた」

 

「江梨子ちゃん発掘チームですね!」

 

 友人の扱いそれで良いのか。時任よ……。

 彼女に悪気は当然ないし、必死なのはわかるけど扱いが人間や獣人ではなく、石器とかと同じだ。

 

    ◇

 

「それにしても時任さんの能力すごいね……。僕たちがあれだけ昆虫人と戦ったのが嘘みたいに、まるで出くわさずに進んでいる」

 

「この子もやるときはやるんだよ!」

 

 時任は、自分の事というよりは、他人事のようにそう返した。

 きっと、手柄の全ては選択肢自身だと考えているんだろう。

 俺もその気持ちはよくわかる。

 

「それで、この部屋にオクイがいるんだよな?」

 

「うん! 埋まった江梨子ちゃんが、部屋の中央にいるって! みんなで掘り起こしてあげないと!」

 

「いらないわよ!」

 

 あ、奥居が出てきた。

 そりゃあいらないだろうな。自分の能力で潜っていただけなんだから。

 

「あれ? 江梨子ちゃん、自力で出てこれたの? よかった~」

 

 だが、時任はなんか途中から勘違いしていたのか、素直に奥居の地中からの脱出に喜んでいる。

 本気でそう思っているため、奥居もそれ以上時任に何か言うことはできないようだ。

 

「ええと……。あ、レイさんもいるんですね。よかった。迎えに来てくれたんですか?」

 

 ……そして、風間たちもそうだったが、俺を見て安心されるのはとても心苦しい。

 また、俺がこの中で一番役立たずだと申告しないといけないのか。

 

「悪いが、今の俺は自爆しかできない」

 

「あ、あの……。事情はわかりませんが、それはやめたほうが良いと思います」

 

 そして誰一人として、俺の唯一のできることを許してはくれなかった。

 羽を配ることも許されない。自爆も許されない。まいったな、なにか役立てることはないものか。

 

「リピアネムでも呼べないかな」

 

「たしかに、リピアネムの姐御はボスが呼んだら駆けつけるが、さすがにここでは無理だと思うぜ……」

 

「だよなあ」

 

 ピルカヤすら返事ができないような場所だし、敵地に一人で突貫はしてこないだろう。

 やっぱり、俺たちだけでなんとか脱出する必要があるな。

 

 あとは……これで全員かどうか、そこも問題か。

 今まで合流できたのは、俺を含めて全員転生者だ。

 だけど、無差別に転生者だけを転移させる、なんて能力はあるのか?

 なにか条件をつけて転移させるにしても、他に共通点でもあるんじゃないだろうか?

 

 やっぱり、非戦闘職ということだろうけど、それはそれで風間たちが少し引っかかるな。

 一定以下のステータスの者を転移させたのか?

 自分たちより弱い相手だけを転移させる、という能力だった場合、今の状況はかなりの窮地だと考えておくべきだろうな……。

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