【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第413話 特技は爆発処理(これも自覚なし)

「さて、無事にレイたちも戻ってきたことですし、あとは事後処理のお話ですね」

 

「フィオナ様が魔王っぽいこと言ってる……」

 

「なんですか、不満ですか? 魔王なんですけど?」

 

「いえ、むしろ感動ですかね?」

 

 たまに魔王らしくなるからなあ、この魔族。

 そんなときは、わりとしっかりと頼りになるし、文句なんてあるはずもない。

 

「なるほど……つまり、私に会えて感動したということですか!」

 

「いえ……まあ、また会えてうれしかったのはそうですけど」

 

 満面の笑みかつ無言で頭なでないでくれます? 子供じゃないんですから。

 しかし、そんな顔をしていたのもつかの間、フィオナ様はまた真面目な表情へと変わった。

 かわいいと綺麗の変化が激しいなあ。

 

「リピアネム、リグマ、連れてきなさい」

 

「はい」

 

 連れてくる……。ああ、昆虫人の元女王と、無事そうな転生者か。

 ということは、女王の座を乗っ取った転生者は、すでにやられてしまったということかもしれないな。

 まあ……もしも戦闘になっていたとしたら、フィオナ様と四天王相手なんて勝つのは無理だろうし、仕方がないことだ。

 というか、フィオナ様だけでやばい。

 

 プリミラを追い詰め、リピアネムに善戦していた、ヨハンだってフィオナ様の前では瞬殺だもんなあ……。

 今回の転生者と、どちらが厄介だったか考えるが、俺自身は今回のほうがピンチだったろうな。

 なんてことを考えていると、二人が昆虫人の女王と、ヒーローを連れてくる。

 

「……ふむ、敗北したわけか。いいだろう、だが殺すのは待ってほしい」

 

「どうしますか? レイ」

 

「え、そこで俺に委ねるんですか」

 

「あなたは魔王軍の宰相ですので」

 

 それにしたって、宰相よりも魔王の意見のほうが優先だろうに。

 俺に伺い立てしてくるとは、律義と言うべきか、あるいは独裁しないように気を付けているのか。

 

「でもさぁ。負けたからって命乞いするなんて、それこそヒーローっぽくないよねぇ」

 

 ピルカヤはピルカヤで煽らないであげてくれ。

 というか、なんか怒ってないか? こいつ。

 

「ああ、俺はヒーローとして失格だった。殺すのはかまわんが、その前に確認だけしておきたい」

 

 意外なことに、死ぬこと自体は受け入れているようにすら見える。

 こいつ、本当に俺たちと同じ世界の人間だったのか? よくもまあ、こんなにも死を受け入れられるな。

 俺なんて、それが嫌だから誰かを殺してまでいる大悪党なのに。

 

「悪……とは言えないか。むしろ今回は俺が悪だ。だが、名前を知らんので呼び方がわからないな。そこの魔族」

 

「ああ、そういえば自己紹介なんてする必要もなかったしな」

 

「俺の名は、鳴神(なるかみ)奏一(そういち)。正義を貫くヒーローだったものだ」

 

「魔王軍宰相のレイだ。ヒーローだったって、なんで過去形?」

 

「昆虫人たちを洗脳した悪党の部下だったからな。そして何よりも、約束を違えたろう」

 

「約束というと……」

 

 あの場では俺たちと敵対しないという約束のことか?

 ただ、こいつ自身の意思で敵対していたわけではなさそうなんだよなあ。

 転生者の男の力で、なんか明らかに様子がおかしくなっていた。

 かと思えば、今度は転生者の女の力で、支配されて命令をただ実行していた。

 ……こいつ、厄介な敵だと思っていたけれど、その手の力に弱すぎでは?

 

「それだけが心残りだ。俺が嘘を言ったら、貴様らを全面的に支持し、貴様らのヒーローになる。そう約束したはずだ」

 

「ああ、あれって勢いだけの言葉だろ?」

 

「いや、俺は嘘を言わない。言ってしまったが、だからこそもう一つまで嘘にしてはいけないだろう」

 

「つまり、魔王軍の仲間になるってことか?」

 

「不要なら、仲間入りしたあと処刑でもしてくれ。だが、約束は守ろう」

 

 ここまで覚悟が決まっているとは、ロペスやヨハンとはまた違うタイプのおかしな転生者だなあ。

 というか、悪の大本なんだけど、そこに仲間入りするのは良いんだろうか。

 

「俺たち魔王軍だし、お前ら人類の敵で悪党なんだけど」

 

「つまり、ダークヒーローとしての活動となるな!」

 

 いや、ダークヒーローってそんなのだったか?

 その言葉は飲み込んでおくことにした。

 本人が納得しているなら、俺がとやかく言うべきことではないだろうからな。

 

「魔王様。どうしましょう……」

 

「宰相であるあなたに、全て任せます」

 

 丸投げしやがったこの魔王――というわけでもなさそうだな。

 俺が鳴神を仲間にしたくないのであれば、すぐにでも敵として扱うような気がしてきた。

 いつものフィオナ様ではない。なんというか、冷たい目をしている。まるで本物の魔王みたいだ。

 

 そして、それは昆虫人の元女王も同じことなのだろう。

 それを誰よりも理解しているのは、きっと彼女自身だ。

 ……俺としては、フィオナ様をこんなふうに怒らせたくはない。

 

「じゃあ、保留します。鳴神と女王、それに他の昆虫人もかな? 全員、うちで働くということで様子見しようかと」

 

「ということみたいです。あなたたちは、これから魔王軍の配下となります」

 

「温情感謝する! ダークヒーロー鳴神奏一。これからは、魔王軍のために働こう!」

 

「このたびは、私が種族の手綱を握れず、大変ご迷惑をおかけいたしました。ご温情感謝いたします」

 

 鳴神、お前本当にそれでいいのか?

 いや、一度言ったことを曲げたくないから、これも彼なりに考えた結果なのかもしれないな。

 これまで正義だと思っていた昆虫人たちは、転生者をさらったり敵を倒したりと、この世界ではごく普通にありふれた存在だった。

 そして、それは魔王軍でも同じこと。ついでに言えば、他の国でもきっと同じことだろう。

 

 残念ながら、鳴神よ。

 お前が口癖のように言っている正義なんてものは、この世界のどこにも存在しないんだ。

 

「それじゃあ、何をしてもらうかは改めて伝えるから、今は地底魔界での暮らしに慣れてくれ」

 

「承知した」

 

 本当は俺が説明しても良いんだけど、悪いが今は後回しだ。

 他の全ては後回しになる。最優先事項ができたからな。

 

    ◇

 

「フィオナ様。もしかして、怒っています?」

 

「え!? 怒られるようなことしたんですか? なんですか、私に内緒でガシャでも回しました?」

 

 ……いつものフィオナ様だ。

 さっき見た、冷たい視線が見間違いだったんじゃないかとすら思えてくる。

 だけど、さすがにあれが俺の勘違いってことはないよなあ。

 

「鳴神と昆虫人の女王のこと、怒っていませんでした?」

 

「そりゃあそうですよ! 私の大事な大事なレイをさらったんですよ? つまり、これって私への宣戦布告ですよね? どうします? やっぱり、今からでも戦うべきですか?」

 

「いや、それの主犯は別の転生者二人なので、やめてあげたほうが良いと思います」

 

「わかっているんですけどねえ……。レイ、こっちにきなさい」

 

 言われるがままに、俺はフィオナ様の元へと近づく。

 すると、いつもよりも強く抱きしめられた。

 苦しいとまではいかないが、身動きが取れない。

 相変わらず、見た目からは想像できないほどの力だよなあ。

 

「どこにも行かないように。あなたが私を見捨てたら、私はちょっと本気を出して魔王をしますよ?」

 

「俺自身は、ずっとここで一緒に暮らしたいと思っていますが、今回みたいな不可抗力はなんとも……」

 

「ふむ……。まあいいでしょう。レイ自身が私とずっと一緒にいたいというのであれば、今回は許します」

 

 何を?

 俺か? それとも、鳴神や昆虫人の女王か?

 顔が見えないため、今のフィオナ様がどんな気持ちなのか、いまいち把握しきれなかった。

 まあ、ずっと一緒にいることを許してもらえているし、俺への怒りとかはないと思いたいところだな。

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