【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「というわけで、転生者アンデッド化計画は無理でした」
「へえ、一回死んだら能力が消えちゃうのかな」
あの女神ケチそうだもんな。
回収して、次の転生者に渡すとかやりそう……。
いや、死んだだけでは回収されないはずだ。
「俺が自爆して一回死んでも、ダンジョンマスタースキルはそのままだし、アンデッド化だから問題なのかもしれないな」
「なるほど……あの、レイ様。自爆のことを軽々と言うのは」
駄目だったか?
たしかに、自爆に巻き込んだ鳴神が近くにいるし、ゼラシアもいるけれど、一応隠すことでもないだろう。
被害者である鳴神なんて、まったく気にしている様子もないぞ。
「……なんでしょうか?」
顔にやわらかい感触を感じる。
どうやら、フィオナ様が俺を抱きしめているようだ。
「そうやって冷静に分析されると、また自爆されそうで怖いのですが」
「大丈夫です。必要がなければ、俺もわざわざ自爆なんてしたくありませんし」
「必要があったとしても、自爆されたくないんですけど~」
「となると、いよいよ俺にも戦闘手段が必要ということに……」
「ふむ、ヒーローとして、助けを求める声あらばはせ参じる所存だぞ」
なんか、こいつの場合本当に物理法則を無視して駆けつけてくれそう。
そんな鳴神の言葉に、リピアネムが割って入ってきた。
「私のほうが、早く駆けつけられるが」
なんの対抗心だ。これは。
まあ、こっちはこっちで、呼んだら走ってきそうなイメージはあるけれど。
つまり、ピンチになったらどちらかが来てくれるわけだ。それは頼もしい。
「そういえば、鳴神ってどんな能力なんだ?」
こいつ、ヒーローっぽい動きで、敵をねじ伏せられるということはわかるけど、どんな加護なのかはよくわかっていないんだよな。
純粋な身体能力強化かと言われたら、さすがになんか様子が違う気がするし。
「うむ。俺の与えられた加護は、ヒーローだ!」
「ぜんぜんわからん……」
「要するに、俺はヒーローとして力を発揮できるということだ。今は魔王軍のためのダークヒーローだがな!」
ダンジョンマスターの俺が言うのもなんだが、本当にそんな変な加護を与えられたのか?
他のみんなはわかりやすい能力だというのに、なんだか俺たちだけ変な能力だよなあ。
「転生者ってことは、女神から能力を聞いたってことだよな? 女神が、鳴神の能力はヒーローだと言ったってことか?」
「たしか……。自己暗示とか言っていたような」
それだよ。たぶん、そっちがお前の能力だ。
というか、どうしてそこからヒーローだなんて勘違いしたんだ。
「つまり、自分をヒーローと信じているから、自己暗示で本当にヒーローのようになったってことか」
「難しいことはよくわからんが、要は女神の力でヒーローになったということだな!」
そんなに難しいことを言っていただろうか……。
まあ、これくらい単純に自分を信じているからこそ、自己暗示で大幅に強化できているのかもしれない。
……前に襲撃してきた病の能力者。
あいつも、自分の正しさを最後まで疑っていなかったし、あいつがこの力をもらっていたら、わりと厄介な存在になっていただろうな。
「お前はそれでいいんだろうな。ただ、敵対だけはやめてくれよ。めんどくさいから」
こいつが敵対した場合、超位モンスターすら倒すやつを相手にすることになる。
そうなると、十魔将や四天王で……。
いや、逆に考えよう。そのくらいの強さのやつを相手にした場合、どうやればダンジョンで撃退できるかわかるんじゃないか?
そういえば、ゼラシアはゼラシアで、昆虫人の兵隊を自由に生み出せるわけだし、やはりダンジョンのテストに最適だ。
「やっぱり敵対してもいいぞ。ちょっと、ダンジョンを攻略してみるか?」
「む、なんか……嫌な予感が。馬鹿な俺でも、この誘いに乗ったらまずいとわかるほどには、嫌な予感がしているぞ。宰相様」
「駄目か……」
「敵対しないことを残念がられるのは、なんとも不思議な気分だ……」
そんな本気で敵対じゃなくてもいいんだよ。
なんというか、ちょっと敵対してダンジョンに侵入するくらいの感じで。
「ナルカミ。お前の勘は正しいぜ」
「やはりそうか! 宰相様もなかなかに人が悪い。つまり、ヒーローである俺が、誘いに乗るか試していたということだな」
「え、いや」
「安心するがいい。鳴神奏一、約束を違えるつもりはない!」
「そうか……」
なんか、敵対してくれる雰囲気じゃなくなってしまったな……。
じゃあ、もう一人の候補を。
「ゼラシアの兵隊とかどう? 前みたいに、集団でダンジョンに入ってみるっていうのは」
「わ、私にも敵対の意思はありません!」
「みんな欲がないなあ……」
「ボスのそういうところ、たまにすげえ怖いと思うんだ」
むしろ敵対することを許しているから、怖いどころか優しいと思わないか?
ロペスのやつ、顔色を悪くしているふりまでして、まるで俺が悪いことをしているみたいじゃないか。
「まあ、レイくんの奇行は今に始まったことじゃないから」
「心外な言い方だぞ」
「ちゃんと断ることができているなら、君たちも魔王軍に慣れるのはすぐかもね」
「魔王軍に慣れるための一番の障害が、俺みたいな言い方だな」
「まあまあ。私がなぐさめてあげましょう」
リグマとピルカヤの言葉に抗議するも、二人には聞き入れてもらえなかった。
その代わりというべきか、フィオナ様が俺の頭をなでている。
すっかりと、いつものフィオナ様だな。
ちょっと前までは、鳴神やゼラシアがいたときは、なんか魔王様モードになっていたというのに。
「まあ、二人が魔王軍に馴染めたのなら、あとはどんなことをしてもらうかだな」
「魔王軍のヒーローとしての活動か。いいだろう、俺はそういうのは得意だぞ」
「いや、それよりはもっと地に足を付けた活動というか、鳴神の場合店員になってもらうことになりそう」
「ヒーローとは違うが、頼まれたとあらばこなしてみせよう!」
よし、店員確保。
オーガたちが、店員としての働きが不得手だったし、魔族以外の店員はいくらいてもいい。
……待てよ。オーガたちが苦手だったとはいえ、俺が生成したモンスターのオーガならいけるんじゃないか?
オーガの男女を何人か生成したけれど、みんなうちの配下になったオーガよりも穏やかだ。
つまり、モンスターでないオーガよりも、戦闘好きでないということになる。
店員。いけるんじゃないか?
それにゼラシアのところの昆虫人たちも……。いや、無理か。
「ゼラシアの兵隊は、さすがに店員とかは難しそうだな」
あいつらの融通の利かなさは、俺もよく理解している。
なんせ、敵である俺を前に、何もしないなんてこともあったからな。
さすがに、そんなバグみたいな動きをする者たちに、店を任せるのは無理だろう。
「ええと、あの子たちは単純な仕事はできますので、将や私が指示してなんとかがんばります」
やる気はあるみたいだ。
となると、いずれはクララみたいに施設や店の管理者に……。
まあ、先の話だが期待はしておこう。
昆虫人たちの巣に連れ去られてから、わりと時間は経過したが、改めて良い拾い物ができたということだな。
「フィオナ様も鳴神や昆虫人に慣れてきたことだし、そろそろ本格的にうちで働いてもらうとするか」
「そうだな。すでに候補は見繕っている」
「教育はクララたちに任せればいいか」
「ああ、彼女たちなら間違いないだろう」
ダスカロスとしても、すでに彼らを従業員として認めているらしく、ようやく役割ができそうだ。
新しく店の管理ができそうな従業員かあ……。つまり、新しい店を作っても良いということに。
「フィオナ様は、どんなお店や施設ができたら嬉しいですか?」
「図書館と本屋さんですね」
なんとも、欲望のままの発言だが、ガシャとか宝箱関係でなくてよかった。
できることならば、そのまま健全な魔王様であってほしいものだが、どうせ明日くらいにはガシャの話をしているんだろうなあ……。