【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「広間作成」
とりあえず、大きめな部屋を作成しておく。
「商店作成」
あとは、ビブリオンが働くためのカウンターを商店から運び出す。
商品棚をテクニティスやカールが改造すれば、本棚も揃えやすそうだ。
そうして商店を有効活用したら、空っぽになったのでリセットして消しておく。
「こういうのは、自分よりカールのほうが得意っすね」
「まあ、ドワーフだからな」
「なかなか筋が良いな、タケミ。カールの弟子なだけはある」
「ありがとうございます」
「なんなら、俺たちも師匠になってやろうか」
「おい、うちの弟子だぞ」
なんか風間や他のドワーフまで作業してくれているので、本棚はわりとすぐに揃うだろうな。
となると、問題は本を揃えることか。
「ロペスとタイラーとクララあたりで、地上から本を仕入れてもらうか?」
「い、いえ……。別に私の趣味に経費を使う必要はありませんが……」
なにをいまさら。
ガシャのときなんて、経費で魔力回復薬を大量発注しようとしていたじゃないですか。
それに比べて、蔵書については魔王軍のみんなの役に立ちそうだし、わりと緩めに経費で落として良いと思う。
遠慮すべき場面が逆だよなあ。
「じゃあ、それぞれ適当にいろんなジャンルの本を仕入れてきてくれ」
「おう、それはいいがカジノはどうする? 俺と女王様がいなくなったら、責任者が不在ってことになるが」
「ゼラシアがなんとかしてくれるみたいだ」
「が、がんばります」
カジノの代理責任者として店に立つことで、ロペスとのつながりを常連に知らせることになる。
だが、ダークエルフと同じように、この世界で不遇な扱いを受けている種族を、何も知らない転生者が救ったと思ってくれるだろう。
であれば、ゼラシアはロペスと同盟を組んでいると知ってもらうべきだ。
「ロペスもクララもいないとなると、久々に調子に乗った馬鹿どもが難癖をつけてきそうだな」
「期待してんじゃねえよぉ……。お前の仕事は、暇なほうがいいんだからなぁ?」
「いいよな、お前はいつも忙しそうで。こっちは暇で暇でしょうがないんだ」
「代わるか!? なら代わってみるか!? ウルラガァッ!」
「うるせえなあ……。レイを止められるのは、お前だけなんだからがんばれよ」
なんでそこでアナンタを同情するんだ。お前らしくもない。
ただ、ウルラガが望んでいるようなことになれば、周囲の客がなんとかしてくれると思う。
リズワンとか、テイランの女性とか。
最近では用心棒としての仕事がなく暇なのも事実だし、そのうちゼラシアに任せる店ができたら、そちらに配置換えするのも一興か。
「暇なら私たちと戦うか?」
「おう。また全員ぶっ飛ばしてやる」
まあ、ナツラやオーガたちと暇つぶし兼鍛錬ができているらしいし、今のままでも問題なさそうか。
まったく、物騒な連中が増えてきたなあ。
◇
「なんか、二人の邪魔をしているようで悪いな」
「そんなことねえけど?」
「むしろ人手が多いほうが助かると思うね。特に、今回は個々人のセンスも大切になる買い出しのようだから」
「えぇ……。公私を完全に分けられているということかしら?」
いや、俺も女王様もそのへんの線引きはわりと曖昧なほうだと思うんだが。
今回は単純に女王様の言うとおりというだけだ。
どんな本を買うかなんて、俺と女王様だけだと偏りそうだからな。
だからタイラーだけでなく、仲間であるルースやメルビンたちもついてきてくれているのは助かる。
「魔王様って、どんな本が好きなんだろうね?」
「物語系だけでなく、各地の情報が載った本や、技術系の本や、とにかくなんでも読むらしいからなあ」
どん欲に知識を求めているということかと思ったが、きっと違う。
あれは、それ以外にやることがなかったということだろうなあ。
ボスが来る前の地底魔界は、さすがに今みたいになんでも作れるわけではなかったようだし、暇つぶしに興味があろうとなかろうと、なんでも本を読んでいたのだろう。
「ということで、適当にばらけて買い出しするか。アルマセグシアなら、本屋も古本屋もかなり多いからな」
「大丈夫か? 俺たちは、二人の護衛も兼ねているのかと思っていたが」
「まあ、やばそうなら事前に逃げるさ。そういうの得意なんだ、俺」
「でも、クララさんは一人で行動していると、また変な難癖つけられそうね。ロペスくんが護ってあげたら?」
「べ、別に君に守ってもらう必要はないけどね! 私のほうが強いし!」
「たしかに……。女王様、意外と戦えるみたいだからなあ。じゃあ、俺が護ってもらうか」
「し、仕方ないね」
ということで、結局俺は女王様と一緒に行動することになった。
まあ、タイラーたちは別々に買い出ししてくれているようだし、きっと様々なジャンルの本を集められるだろう。
「さて、まずはあのあたりの店から……」
ん? なんか、見覚えあるやつがいるな。
俺と同じく身長が低いその男は、たしか俺がトルベリオで生活していたときに見たことがある。
商売敵というか同業他社というか、まあ向こうは俺を良くは思っていないだろうな。
俺が金儲けに成功したときに、妬ましそうにしていたハーフリングの一人だ。
関わる必要は特にない。
そう思いながら通り過ぎようとすると、向こうは俺の顔を見て親し気に話しかけてきた。
「ようロペス。久しぶりじゃないか」
「ああ……久しぶりだな」
「ハーフリングということは、同郷の者かい?」
「まあそんなところだ」
同郷と言っていいかわからないが、同じ国に住んでいたからまあ訂正することもない。
女王様、俺が転生者ってこと忘れたりしてないか?
「噂通り、ダークエルフとも仲良くやっているんだな」
「噂か……。まあ、トルベリオの住人には色々と知られているからな」
「ああ、なんでもずいぶんと成功したみたいじゃないか」
「まあ、俺だけの力じゃないけどな」
というか、大体はボスの力だ。
俺はその勝ち馬に乗らせてもらっているだけとも言える。
そんなことは知る由もないらしく、男は俺の言葉を謙遜と受け取っているようだ。
「な、なあ。そこで物は相談なんだが」
「なんだい?」
なんか、嫌な予感だよなあ……。
時が経ったことで、わだかまりが無くなったというよりは、白々しさを感じる友好的な態度だ。
「俺も、お前の仲間に口利きしてもらえないか? ちょっと、最近失敗の連続で資金が尽きそうでな」
「……そうしたことで、俺たちへのメリットは何かあるか?」
薄情と思われるかもしれないが、それは重要なことだ。
俺だって、誰にでも手を差し伸べられるわけじゃない。
ならばこちらに、自身と組む利点を説明してもらわねえとな。
単に従業員になるというだけでもいいが、この話し方だとそれで納得するとも思えない。
「品はあるんだ。あとは売れる場所さえ確保できれば、お前らに報酬をわけることだってできる」
「へえ。ちなみにどんな商品を扱う気だい? ちなみに、俺たちは本を集めているところなんだが」
「本……。ああ、あるぞ! 数は少ないが、珍しい本がいくらかある。それに、それ以外もアイテムや食料。珍しい品を各地からかき集めてきたんだ」
「なるほど、その手のコレクターを狙った商売ってわけか」
悪くないかもな。
そして、上手くいっていないというのも、うちで商売したら成功するかもしれないというのも、あながち間違いではない。
この手の品は取引してくれる相手が見つかってしまえば、あとはあれよあれよと簡単にはけるもんだ。
カジノに来る連中は、道楽を楽しむ者も多く、楽しみのために金を使う者も多い。
なんなら、あのリズワン王が買い取ってくれる可能性すらある。
「まあ、いいか。仲間に話して許可がもらえたら、俺の店で売ってくれ」
「あ、ありがとな」
「許可がもらえたらな」
とりあえず、こいつとは買い物後に合流して、臨時商店についてはボスに相談するとしよう。
俺と女王様は、その後二人で本屋を巡ることにした。