【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第432話 変身シーンではじけ飛ぶ運命

「なんですか、その恰好」

 

「レイのせいです」

 

 なぜ俺の責任に……。

 なぜか、今日のフィオナ様はドレスではなくズボンをはいている。

 どちらかというと、俺みたいな一般的な魔王軍の軍服を着ている姿だ。

 というか、なんか男装しているっぽい。

 

「レイが、ラプティキの欲を満たせなかったせいで、私に流れ弾が飛んできました」

 

「ラプティキさんの欲というと……俺が女性になってたときに、服を作り損ねたあれですか?」

 

「そうです。普段とは異なる服を作りたいという欲求が爆発し、魔王に襲いかかった結果がこれです」

 

 律義に着てあげるフィオナ様って、やっぱり優しいよな。

 というか、そこまできたらいっそのこと、あの魔本で男性化してもいいのでは?

 俺がやめたほうが良いと言ったから、魔本を使わなかったんだろうか。

 

「まあ、フィオナ様見た目はいいから、似合ってますけどね」

 

「見た目は……という言葉選びに、若干の不敬さを感じますが、私の見た目が大好きというところは正直なので、許してあげましょう」

 

 なら、なぜ頬をつねるのですか。

 まあ、見た目がいいのは本当だ。何を着ても大体似合うだろう。

 まさか男装まで似合うとは……。

 男装の麗人と言うべき姿は、歌劇団のトップスターのようであり、女性に人気がありそうだ。

 

「魔王様かっこいい!」

 

「そうでしょう!」

 

「あ、中身はいつもの魔王様ですね」

 

「私は私ですからね」

 

 時任のそれも、若干不敬にあたるんじゃないだろうか。

 俺だけ頬をつねられることに対して、そこはかとなく不公平さを感じる。

 

「あ……単体なのに……無理……」

 

 プネヴマが、フィオナ様を見た瞬間倒れた。

 なんか、いつもと違う倒れ方だったような気がする。

 まあ、テラペイアに任せたらどうにでもなるか。

 

「ふむ、なんだかみんなの反応がいつもと違いますね」

 

「今のフィオナ様、かっこいいですからね」

 

「え、普段の私は?」

 

「かわいいです」

 

 無言ではにかんでいる。先ほどまでのかっこよさが消えてしまった。

 さっきまでは、服装や髪型や化粧によって、キリッとしたかっこいい姿だったのにな。

 

「ちなみに、レイはかっこいい私とかわいい私なら、どっちが好きですか?」

 

「フィオナ様なら、全部好きです」

 

「ですよね! レイが私のことを大好きなのは、当然ですからね!」

 

 まあ、お世話になっていますから。

 いろいろとよくしてもらっているという自覚もあるし、好かれる上司の理想みたいな方だ。

 

「ちなみに、新しいドレスも作っていましたので、特別にレイにだけ見せてあげましょう!」

 

 なんか、えらい意気込んでいるな。

 これ、褒めすぎるとまた調子に乗ってうざ絡みが続くやつだ。

 ちょっと、言葉を選んで感想を言ったほうがよさそうだな。

 

 そうして、フィオナ様の部屋に案内され、相変わらず魔力でなんか姿を隠して着替えられる。

 ……俺、やっぱり男として見られてないよなあ。

 いくら姿が見えないとはいえ、よくもまあ同じ部屋で着替えるものだ。

 

「どうですか!」

 

 そうして見せられた新たなドレスは、たしかに今までと違ってこちらも非常に美しい。

 素直に感想を言うのであればそうなのだが……。

 

「ふふん!」

 

 すでにうざそうな顔で、俺の言葉を待っているのを見ると……。

 

「馬子にも衣装ですね」

 

 すげえかわいい。

 

「なにをぅ!」

 

 とてもきれいでかわいいです。

 ですが、それを言うと、あなたはまたしばらくうっとうしくなりますので。

 

    ◇

 

「ヒーローとしての衣装を作ってもらえるということか!」

 

「ええ、あまり挑戦したことがないから、なんか面白そうね」

 

 ラプティキさんの仕事欲が爆発しているらしく、鳴神がその標的にされている。

 まあ、彼の姿は僕たち魔王軍の転生者の中でも、特に変わっているからね。

 ヒーローの衣装となると、ラプティキさんでさえ作ったことがなさそうだ。

 

「となると……やはり、ダークヒーローとして黒系か。いや、暗色系だな」

 

「色はともかくとして、デザインはどうなのかしら」

 

「俺は馬鹿だから絵心はないぞ。デザイナーはいないのか?」

 

「それならオクイちゃんが」

 

「私、そんな大層なものじゃないんですけど……」

 

 奥居さんはそうは言いつつも、なんとか絵に描こうとしているみたいだ。

 謙遜はしているけれど、わりとバリエーション豊富なデザインを提案できているあたり、けっこうその手の才能もある気がする。

 新や友香も、いつも服装の相談でお世話になっているみたいだからね。

 

「よし! これでいこう! ダークヒーローとしての活動には、やはり魔王軍の衣装にあわせるのがいいだろう!」

 

「え~……軍服なら、魔王軍のみんなが着ているし、真新しさはないんだけどねえ」

 

「なので、こちらのヒーロー衣装との融合を所望する」

 

「なるほど……たしかに、これなら」

 

 そうして鳴神は、レイさんや他の魔王軍の方たちが着ているような、軍服ベースの衣装を作ってもらうことになったようだ。

 ……正直なところ、ちょっとうらやましいかもしれない。

 僕たち転生者や、現地の捕虜である従業員たちは、服装までは魔王軍のそれになっていないからね。

 頼んだら、僕たちも魔王軍の制服みたいなの、作ってもらえるのかな。

 

「じゃあ、ついてきなさい。あなたの場合、普段の衣装も見ておきたいから、一緒にいてもらったほうが早く作れそうだわ」

 

「いいだろう。ヒーローとして、すばらしい衣装を頼んだぞ」

 

 そう言い残すと、二人はラプティキさんの作業部屋へと移動してしまった。

 

「わりと馴染めてるな。あいつも」

 

 そう言いながら、同じく様子を見ていたロペスが隣にやってくる。

 彼も、なかなか心配していたようだからね。

 魔王軍として、僕たちみたいに馴染めるか不安だったらしいから。

 まあ、あの性格だから、下手したら敵対とかもありえたというのは、よくわかる。

 

「そうだね。なんというか、実直だよね。鳴神って」

 

「あれでなかなか融通か利くみたいで助かった。そうでなかったら、内部から暴れられて……」

 

 それは、嫌だな。

 鳴神は、僕たちと同じ転生者と思えないほどに、戦闘能力が頭一つ抜けている。

 そんなのが暴れたとしたら……。

 

「……いや、わりと問題ないか」

 

「……そうだね」

 

 僕もロペスも、きっと同じ結論に至ったんだと思う。

 あのときの昆虫人の巣でならともかく、ここで暴れたところで彼より強い相手はわりとたくさんいる。

 十魔将に四天王に魔王様。ナツラさんやロマーナさんも、彼には勝てるんじゃないかな?

 そんな僕たちの考えは、奇しくも彼自身が証明することとなった。

 

「いや、これに関しては本当に申し訳ないと思っている……」

 

「まあ、私もついやりすぎたわ」

 

 鳴神は、ラプティキさんの糸にぐるぐると体を巻かれて、無造作に床に転がされていた。

 ラプティキさんに叱られた後、彼はやはり律義に反省しているので、それ以上はラプティキさんも文句は言えなかったらしい。

 

「まあ、変身するヒーローだもんな。あいつ」

 

「だよねえ」

 

 ラプティキさんは、鳴神の要望どおりに素晴らしい衣装を作った。

 誰が相手でも、どんな衣装でも、いつもどおりに最高に仕事をしてくれた。

 鳴神自身も、それを大いに気に入ったらしく、さっそく新たな衣装に身を包んでいた。

 そこまではいい。だけど、問題はそこから。

 

 鳴神が、リゲルフォルムとか言って叫んだ瞬間、衣装がはじけ飛んだ。

 衣装というか、上に羽織っていた軍服だけが破損して、中に着ていたヒーロースーツが変化していた。

 まあ、変身ヒーローだからね。服も形態に応じて変わるのは仕方ないんだろう。

 

「あんたは、軍服なし」

 

「なにっ!? むむ……仕方がないか」

 

 こうして、鳴神は僕たち転生者と同じく、魔王軍の共通衣装を与えられることはなくなってしまった。

 ……僕たちが頼んだら、ラプティキさんなら用意してくれそうだけど、今度は鳴神が仲間外れになるし、今のままがいいんだろうね。

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