【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第433話 血税の徴収法は善意の献血

「げ、税が増えるのかよ……」

 

 嫌になりそうだが、その反面で仕方がないと思う自分もいる。

 一見すると今は平和な時代に見える。勇者様たちは、魔王軍のほぼ全てを壊滅させてくれたが、それと引き換えに命を落とした。

 そのため、魔王はいまだに討伐されることもなく、互いに動けなくなっているというだけだ。

 

「ほんと嫌になるわね。魔王なんて、さっさと死んでくれたらいいのに」

 

「勇者様たちも、さすがに魔王軍の全てを相手にした後では、魔王に勝てなかったんだろうな……」

 

「部下を使い捨てのようにぶつけて、消耗した勇者様たちを倒したってとこだろうな。卑怯なやつだ」

 

 だが、そんな卑怯な手が成功してしまったのだからたちが悪い。

 勇者様たちは、死んでも再び蘇る。

 だが、そのお力を取り戻すためには、再び鍛え直さなくてはならない。

 それに、今回は強力な装備も失ったらしく、それらを調達するだけでも金がかかるだろう。

 

「まあ、仕方ないか……。エーニルキアは、勇者様たちのおかげで安全だからな」

 

 安全を買うために、国に金をおさめるのは仕方が無いと割り切るしかない。

 魔族だけでなくモンスターや迫害種族。さらには、獣人や竜人やエルフといった他の種族だって、いつ敵となり襲ってくるかわかったものじゃないからな。

 幸い、俺たちが生きていけないほどの金を奪われるわけではない。

 勇者様たちが、魔王を倒すその日まで、せいぜい倹約するとしよう……。

 

    ◇

 

「税を上げるわ」

 

 その言葉に反対する者はいなかった。反対できる者はいなかった。

 聖光の刃、翠光の弓といった戦闘部隊が壊滅し、それでもなおヤニシアが平穏なのは、最高評議会であるエルフたちの力のおかげであることは、誰しも理解していたからだ。

 それに、最高評議会が税を無駄にしていないことも知っている。

 ゆえに、国民たちはむしろ安堵していた。これで、ヤニシアは失った戦力を補充できるかもしれないと。

 

「日々、星冠樹に注ぐ魔力量を一割引き上げる。代わりに、あなたたちの安全を確保してあげる」

 

 ヤニシアの国民たちは、毎日星冠樹に魔力を注ぐことを義務付けられている。

 それらの魔力は、かつての戦闘部隊の魔力補給や、魔法研究に使用されていた。

 そうして、ヤニシアは他国と渡り合うための力をつけていった。

 だから、今回の税の引き上げは、国を強くするためだと皆が理解していた。

 

「さて、今度は役立たずではない戦闘部隊を編成しないとね。使い勝手は良かったけれど、肝心な時に失敗する役立たずなんていらないもの」

 

 きっと最高評議会の方たちが、これからもヤニシアを守ってくれる。

 日々使用できる魔力量は減っていくけれど、それで安全が買えるのであれば安いものだ。

 エルフたちは、そんな思いと共に喜んで自らの魔力を注ぎ続けた。

 

    ◇

 

「……税を導入するか」

 

「つ、ついに地底魔界にも消費税が!」

 

 消費税だけが税ではないぞ。時任。

 学生だった俺たちにとっては、一番身近な税ではあったけれど。

 

「消費税なんて、うちじゃ導入されねえだろ。トキトウ」

 

 ロペスの言葉に、時任はよくわからなさそうな顔をしている。

 なんか、頭の上にはてなマークがいっぱいついていそうだな。

 

「うち、どの施設も従業員は無料じゃねえか。いや、カジノは自腹だが、食事や服は無料で支給される」

 

「そうだね。そんな住み良い地底魔界に、ついに消費税の魔の手が!」

 

「だから、そんな全てを無料にしているボスが、わざわざ消費税で金を回収すると思うか?」

 

「……悪に目覚めたレイさんが、私たち民を締め付けるとか?」

 

「何! 悪だと! ……いや、宰相様はふだんと変わらんぞ。時任」

 

 目覚めるも何も、もともと悪だが?

 時任の中での俺がどうなっているか一度聞いてみたいが、それはまたの機会だ。

 

「ロペスの言うとおり、金を徴収しようっていうわけじゃない」

 

「よかった~! 魔王軍は、社員に優しい組織だからね!」

 

 そう。フィオナ様の魔王軍は、ホワイトな職場であるべきなんだ。

 なので、今回の税の導入は、それに反することにならないよう、慎重に進める必要がある。

 

「じゃあ、何を税にするんだい? ボス」

 

「魔力をみんなから徴収したい」

 

 その言葉にいち早く反応したのは、クララとロマーナだった。

 さすがに、彼女たちは俺の言わんとしていることをすぐ理解したか。

 

「つまり、ヤニシアのように。ということでしょうか?」

 

「良いと思いますよ。私もヤニシアにいたころは、魔力税の恩恵を授かっていた身ですので、その効果は実感しています」

 

「ああ。これからは、影冠樹に定期的に魔力をおさめてもらおうと思う」

 

 影冠樹もすっかりと安定した。

 つまり、それだけ魔力が溜まっているという段階にある。

 ならば、あとは引き出して使用するだけなのだが、ここで魔力を使いすぎるとまたダンジョン魔力が奪われるからな。

 フィオナ様の魔力を吸う分には、ガシャが引けなくなるだけだから良いけれど、ダンジョン魔力が勝手に減るのは困る。

 

「なるほどな。影冠樹の安定利用のためにも、魔量供給というのは悪くない」

 

 ダスカロスの言葉に、わりとみんな納得してくれているのは助かる。

 なんせ、いきなり税の導入なんて言ったからな。

 反感を買うことも考えられたし、最悪の場合は諦めようとすら考えていた。

 

「なるほど! そういうことでしたら、私の魔力をめいっぱい吸収してもらいましょう。影冠樹~! 魔力だよ~!」

 

「吸われた?」

 

「ううん。なんにも変わんない」

 

 さっそく時任が、奥居とそんなやり取りをしている。

 まあ、天に手を掲げても影冠樹だって、困るだろう。

 リグマみたいに直接触れるか、ダンジョン魔力みたいにその辺を漂っている魔力が対象だろうから。

 

「税ってことは、決められた量を支払わないといけないんだよな。破ったら、魔王軍を追い出されるとか……?」

 

「いや、気が向いたときに余った魔力を注いでくれたら助かるなあという程度」

 

「税じゃねえなあ……。随分とゆるい」

 

 ロペスの言うこともわからんでもないが、あまりぎちぎちにしめつけても、反感を買いそうだからな。

 幸いなことにうちの従業員は、協力的な者が多い。

 この程度の呼びかけでも、ある程度の魔力は集まることだろう。

 

「税を納めてくれた場合、施設の無料券でも配ろうと思ったけど、最初から無料だから無理だった」

 

「いっそ、今後の施設利用に魔力を徴収したほうがいいんじゃねえか?」

 

「いや、それだとみんな楽しい地底魔界じゃなくなるから」

 

「ゆるいねえ……」

 

「……優先的に使用できる権利でも与えるか?」

 

 マギレマさんの食堂とか、時間帯によっては混んでいるからな。

 それなら、優先権を持つ者に先に料理を提供するとかがあれば、税をおさめた人が得するかもしれない。

 まあ、試験的に色々とやっていこう。

 

    ◇

 

 そいうわけで、後日、さっそく税を取り入れた。

 その結果、影冠樹にはたくさんの人たちが魔力を注いでくれたようだ。

 食堂やジムやカジノ。それぞれが、税をおさめた人は待ち時間を短縮できるように対応した。

 

「……一応、優先権を持つ人用の列を作ったは良いけれど、みんなそこに並んでいる」

 

 だが、意味が無かったようだ。

 全員が待ち時間を短縮されるということは、今までと何も変わらないということだ。

 それだけ、みんなが協力的だったということでもあるのだが……。

 さて、どうしたものか。

 

「選択肢~。待ち時間暇だから、なにか面白いことして~。……あれ? 選択肢? 選択肢~!?」

 

「トキトウ。影冠樹に魔力を注ぎすぎて、選択肢使えなくなったんじゃねえの?」

 

「そんな!? あれ、私の力だったの!?」

 

「それはそうだろ……。むしろ、今までなんだと思っていたんだよ」

 

「なんか、私に協力してくれる、別次元の存在かと!」

 

 時任みたいに、力を使えなくなるほど魔力を注がれても困るし、まだまだ整備すべきことはありそうだな。

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