【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第442話 近日リリース予定のダンジョン

「いけます! よしっ! いけます!」

 

 気合は十分。だからこそ、空回りしているのでは、とも思える。

 開けてみると、なんだかすごそうな装備ではあるけれど、当然ながらフィオナ様の目的はそれではない。

 

「ああ~……!」

 

 その場で崩れ落ちてしまった。

 仕方がないので支えてあげると、そのまま抱きしめられた。

 まあ、いつものことなので、何も気にする必要は無いな。

 

「あんなにすごい装備なのにハズレ扱いを……」

 

 タイラーたちが、そんなことを呟いているし、カールも複雑そうな表情をしている。

 きっと装備自体は大したものなのだろう。

 だが、フィオナ様にとっては、アタリ以外は全てハズレなのだ。

 

 アタリを引きたいだけであれば、俺にダンジョン魔力を一万消費させたほうが飛躍的に確率は上がる。

 だけど、それを無理強いしてこないのは、俺に配慮してくれている。

 ……というだけではなさそうだな。

 

 フィオナ様は、宝箱ガシャ自体を娯楽として楽しんでいる節がある。

 何が出るかわからない。開けるたびに中身が変わる宝箱。

 その中で、自身が望む物を引き当てることができれば、きっと達成感も満足度も非常に高いのだろう。

 

「レイ、心がこもっていません」

 

「こめてませんからね」

 

「私がこうなったときは、優しく甘やかすのが宰相の役目なんですけど!」

 

 ダスカロスやプリミラの方を見ると、頷かれてしまった。

 いや、絶対違うよね? 前の魔王軍に宰相がいたかは知らないけれど、絶対そんな仕事じゃないよね?

 おのれ魔王軍め。普段は厳しく接していても、最終的には魔王様の味方か。

 

「まあ、そう言うなら甘やかすんですけどね」

 

「ふふん。それでこそ私の宰相です」

 

 ちょろい。ほんと、機嫌が下がったり上がったり、忙しい魔王様だ。

 情けない顔だったのが、すでに上機嫌な笑顔へと変わっている。

 情けない顔もかわいいですが、そっちの顔のほうが俺は好きです。

 

「なんですか?」

 

「いえ、顔が良いと思いまして」

 

「なら、存分に見ることを許可しましょう!」

 

 すみません。うざい顔に変わっています。

 まあ、この顔も嫌いではないけれど。

 とりあえず、慰める意味も含めて頭をなでておくと、フィオナ様は目を細めて喜んでくれた。

 

 ただ、周囲はなんとも言えない表情をしている。

 まあそうだろう。こんなやり取りを見せられても、みんなただただ困るだけだろうからな。

 プネヴマに至っては、暇なのか魂を口から出して遊んでいる。それとも、魂操作の訓練か?

 

「ところでレイ様。先ほど何やら考えていたようですが」

 

 さすがはプリミラだ。

 俺たちのやり取りを邪魔せず、それでいてちょうどいいタイミングで、仕事の話を振ってくれた。

 

「フィオナ様やリズワンを見るに、宝箱ガシャってやっぱり色んな種族を堕落させるものだと思う」

 

「ええ、魔王様はもう堕落しきっていますからね」

 

「魔王なんですけど!」

 

 雑な扱いに異議を唱えるも、プリミラはその声を無視して話を続けた。

 はい。慰めますから、プリミラの邪魔はしないようにしましょうね。

 

「ロペスのカジノでも、一定数以上の顧客が常連となり、宝箱に挑んでおりますので」

 

「おう、収支で考えるとマイナスの方が大きいはずなのに、当たったときの喜びに病みつきになっているように見えるぜ。前の世界にもあの手のやつらはいたからな」

 

 単純に得をするからというわけではない。

 当たって嬉しいというのが、彼ら彼女らをそこまで宝箱に駆り立てているのだろう。

 なんなら店で買ったほうが安い値段でも、それでも一部の者たちは宝箱を選んでいる。

 つまり、そのランダム性が、ちょっとした達成感を後押ししているんだと思う。

 

「ダンジョンに使えないかな?」

 

「……」

 

 アナンタ、なんで俺の近く来るの?

 隙あらば怒ろうとしているのだから、頼もしいものだ。

 

「だが、宝箱はすでに設置しているだろう? 宝箱部屋でも作るのか?」

 

 ダスカロスの言うとおり、ダンジョンは初期から宝箱の設置を欠かしていない。

 それだけで侵入者が増えるというプリミラとピルカヤの発言通り、やはり利があるとないとでは大違いなのだろう。

 だが、彼らも完全に利益のみを追及しているのだろうか?

 中にはそんな侵入者もいる。だけど、もしかしたらカジノの利用客のような者もいるのでは、と俺は考えた。

 

「宝箱を引くことをメインとしたダンジョンはどうかな、と思って」

 

「人類に利益を与えるダンジョンか。だが、あまりやりすぎると、そこで得たアイテムや装備で、他のダンジョンを攻略しかねないな」

 

 その懸念はもっともだ。

 というか、俺の場合その懸念が大きすぎて、いつもダンジョンの戦力を過剰にしているからな。

 アナンタだけでなく、プリミラと一緒にそれらのバランスを取っているダスカロスだからこそ、まずはそのことが気になったのだろう。

 

「そのダンジョン内でだけ使えるアイテムや装備品で、モンスターや罠を攻略してもらうっていうのは?」

 

「持ち出しを禁止するということでしょうか? ですが、人類がそれを守るとは思えません」

 

「ダンジョンの中でのルールなど、人類同士でさえ守る義理はないだろうな」

 

 単純に禁ずるだけではそうだろう。

 なので、ここは無理やりにでも守ってもらうルールにしてしまえばいい。

 そうすれば、外への持ち出しを心配することもなく、宝箱を普段よりも多めに設置できる。

 

 宝箱が多いということは、それだけで侵入者へのアピールポイントになる。

 たとえ外に持ち出しできなくとも、ダンジョン内を攻略するのにも役立つアイテムや装備は多いからな。

 であれば、侵入者たちの質というか強さもワンランク上昇するということだ。

 

「だから、いつもより難しいダンジョンを作っても良いと思うんだ」

 

「だからの部分を聞かせろよぉ!? 自分だけで納得しても、俺は許可しないからなぁ!?」

 

 わかってるから、そんなに怒ると疲れるぞ?

 アナンタは今日も大変そうだなあ。

 プリミラとダスカロスは、俺の説明をちゃんと待っているのに、律義に反応するのは彼の性分なのだろう。

 

 あまり疲れさせてもかわいそうなので、ちゃちゃっと俺の構想を説明するとしよう。

 もちろん、他の者たちの意見も聞きたいので、全員に向けてだ。

 特に、元冒険者であるタイラーたちの目線は、非常に参考になるので是非とも聞きたい。

 

    ◇

 

「いけるのか……?」

 

 アナンタも、抜け道がないか考えている。

 疑り深い性格で何よりだ。もしも抜け道があったら面倒なので、別の視点で考えてくれ。

 そんなアナンタも、タイラーたちのほうに視線を送る。

 すると、タイラーたちもしばし考えた後に口を開いた。

 

「たしかに、そういうダンジョンがあると噂が広まれば、挑戦してみたくはありますね」

 

「ええ。ダンジョン内だけとはいえ、普段扱えない強力な装備やアイテムが使えるのなら、楽しめそうだし」

 

「ただ、踏破しても完全に何も得られないのは、さすがに良くないと思います」

 

 だよな。

 となると、ボスを倒して得た宝箱の中身だけは、ちゃんと持ち帰れるようにしておくか。

 

「あとは、モンスターは強力なものを置くべきではないな。ダンジョン内でのみ、強力なアイテムを行使できる。つまり、ダンジョン内であれば、従来よりも強力なモンスターを倒せるということになる。アイテムを持ち帰れずとも、侵入者自身が強くなる危険がある」

 

 ダスカロスの懸念点はそちらのほうだったらしい。

 たしかに、強力な装備を一時的に得ることで、普段よりも強いモンスターを倒せるだろう。

 そうなると、侵入者たちのレベルが上がってしまう危険性があるか。

 

 そういった部分を少しずつ詰めていき、俺は新たなコンセプトのダンジョン作りの計画を進めることにした。

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