【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「力が足りなかったか!」
どちらかというと、搦手への耐性だ。
しかし鳴神は、全ては自身の力量不足と考えているらしい。
もっと言えば、鍛錬が足りていないという結論に至ったようだ。
そのためか、こうしてジムに頻繁に出入りしている。
あれだけ重い岩を軽々と持ち上げているあたり、見るからにフィジカルは十分なんだがなあ……。
むしろ俺に分けてほしいくらいだ。そのステータス。
「鳴神くん、まだ鍛えるの? マッチョだね~」
「うむ。筋肉は裏切らないぞ、時任よ」
「私は、お肉落とすくらいでいいかなぁ」
ウサギ肉のドロップアイテムか。
ゲームによってはありそうだな。
「筋肉は良いぞ。時任よ」
「あれ!? これ、鍛えるまで逃げられないパターンだ!」
まあ、そう簡単に筋肉にはならないだろうし、いつものダイエット感覚で付き合ってやってくれ。
こちらに助けを求めてきた時任を、俺はそうやって見捨てることにした。
「レ、レイさんも宰相として鍛えるべきでは!?」
あ、こいつ俺を巻き込もうとしている。
鳴神も、その言葉に納得したらしく、俺に筋肉をアピールしてきやがった。
「筋肉は良いぞ! 宰相様、時任」
俺、鍛えても筋肉つかない気がするんだよなあ……。
というのも、レベルアップで上がるステータスは、もっぱら魔力ばかりだ。
俺はきっと魔力特化な体質なんだろう。
同じように、鍛えたところで筋肉がつくとも思えない。
「俺たちよりも、風間たちみたいな戦えるやつを鍛えたほうが良いんじゃないか?」
「そ、そうだよ! 私たち、ダンジョンの中でぬくぬく働くタイプだから!」
なんか、俺たちがサボっているようにも聞こえる。
だが、時任はなんとか筋トレから逃れようとしているだけであり、別に自分を卑下しているつもりは無いんだろうな。
「なるほど……たしかに、風間やロペスも鍛える必要はあるな。非戦闘員だけで、俺みたいなのと戦うこととなった場合、筋肉があれば多少は抵抗できる」
「お前が言うのか……」
転生者だけで昆虫人の巣に拉致された時のことを言っているのだろうが、あれは多少の筋トレ程度で打開できる問題でもないと思う。
「宰相様。筋肉は良いですよ?」
そんな俺たちの話が聞こえていたらしく、近くで鍛えていたオーガたちまで集まってきた。
時任。そのポーズ誰も威嚇できていないから、むしろなんか微笑ましいものを見るような目になっているから。
「まあ、オーガも男女問わず筋肉ついてるけど」
「ナルカミの言うことは、もっともです」
こいつら、筋肉組で手を組みやがった。
非力な俺や時任は、このままでは抵抗できない。
「そうだ。俺たち筋肉としては、体を鍛えることで心身豊かになる素晴らしさを伝えたい」
「落ち着け。ついに、種族が筋肉になったぞ」
「筋肉の中の人間だ」
「筋肉の中のオーガです」
駄目だこいつら。大分類が筋肉で、その中の人間やオーガという認識になっている。
これだからマッチョは……。
「で、でも、私女の子だから、そこまで筋肉なくても良いかなぁ……」
「だが、オーガの女性たちも、美しい筋肉だろう」
「た、たしかにスタイル良いけど……」
「それに、リピアネム様もしなやかな筋肉を有しているぞ」
「も、もしかして、筋肉ってすごい……?」
ああ、時任が洗脳されてきている。
たしかに、うちの強者たちは筋肉が鍛えられている者たちも多いが、それだけじゃないだろう。
「フィオナ様は、筋肉ないぞ。触ってもいつもぷにぷにしているし」
「とんだ流れ弾が!? 太っていると言いたいのですか!?」
「いえ、俺はあの触り心地好きです」
「なら、今のままで良いですね」
黙々と岩を持ち上げて遊んでいたフィオナ様だが、慌てたりホッとしたりと、今日も忙しそうだ。
最終的には今のままで良いとわかったので、また黙々と岩を持ち上げている。
ほら、あれだけのことができるのに、別に筋肉がない魔族だっているんだ。
筋肉の良し悪しは、種族によっても変わるだろう。
「たしかに……四天王もピルカヤさんとプリミラさんは、筋肉無いですよねえ」
リグマもどうだろう。
本来はスライムだから、あの姿はあくまでも鍛えている肉体風ってだけだし。
「むむ……筋肉の強さが直結しないとは」
鳴神も、どうやら納得してくれたようだな。
「だが、せっかくジムがあるのなら、ピルカヤ様とプリミラ様も鍛えるべきではないか?」
「ピルカヤは精霊だからなあ。その気になれば、マッチョな姿にいつでもなれそうだし」
「奥深いな……この世界の種族というものは」
プリミラはプリミラでどうなんだろう。
あの華奢な見た目なのに、魔王軍ではフィオナ様の次に頑丈だし、あれはあれで完成形な気がする。
「プリミラ様は、体が出来上がっていないな。あの状態では成長に悪影響か……。そうだろ? 軍医様」
成長の阻害か。
その観点では考えていなかった。
鳴神の問いかけに、テラペイアは少し考えてから口を開く。
「一般的にはそうだ。だがピルカヤはあれで完成形だ。それに、プリミラは鍛えた程度で成長が阻害されるほどやわではない」
だよなあ。やはり二人とも無理に鍛える必要性は薄い。
鳴神の質問に答えると、テラペイアは他のジム利用者たちに、鍛え方や痩せ方などを聞かれ、一つ一つ丁寧に教えていた。
「くっ……軍医様もそう言うのであれば、無理強いはできん。マッチョな魔王軍計画が……」
なんてものを計画しているんだ。こいつ。
鳴神は諦めたように、自身の鍛錬へと戻ってしまう。
それにしても、筋肉ねえ……。
「フィオナ様は、俺に筋肉がついていたほうがいいですか?」
「私は、レイならどんなレイでも好きですけど?」
だよなあ。俺だって同じだ。
「俺も、フィオナ様ならどんなフィオナ様でも好きですからね」
「ですよねぇ」
「ところで、なんで岩でトレーニングしていたんですか?」
「ふ、愚問ですね……」
なんだ愚問って。
自分だって、そんな抜けてそうな顔をしているのに。
「私は犬にはなれませんが、鍛えて筋肉をつけることならできます。レイが筋肉好きだというのなら、鍛えようと思ったまでです」
「軽々と重りを持ち上げていたので、筋肉つかなそうでしたけどね」
「そうなんですよねえ……。まあ、レイは今の私が好きみたいですしぃ? それなら、鍛えてしまったらかわいそうですからねぇ?」
なんというドヤ顔だ。
油断して、少し本音が漏れるとこれだ。
やはり、今までどおり適当にあしらっておかないとな……。
「む、馬鹿にしている雰囲気が伝わってきました」
「腹を突かないでください」
「レイも、そこまでカチカチじゃありませんねえ」
「俺も鍛えているわけではありませんから、でもフィオナ様だって」
「きゃっ!」
ほら、ぷにぷにしているじゃないですか。
だがやはり、このくらいの手触りのほうが良いと思う。
痩せすぎや鍛えすぎよりではなく、今がちょうどいいのは間違いないな。
「むう……。魔王のお腹で遊んで……」
「お互い様じゃないですか」
「なら、私も思う存分レイのお腹で遊んでやります!」
騒いでいたら、テラペイアに私室でやるようにと追い出されてしまった。
……うん。なんか思い返すと申し訳ないな。
テラペイアには、後でもう一度謝罪しておこう。
俺はそんなことを考えながら、フィオナ様のお腹を触り続けた。
◇
「……」
「……」
「な、なんで僕にお腹を差し出すのかな? 新、友香」
「ビッグボスとボスみたいなやり取りを望んでいるんじゃねえの?」
「さ、さすがにあの二人みたいに、人前では……」
そう言った瞬間、タケミは女子二人に部屋に連れて行かれた。
……がんばれよ。
ところで女王様。なんで自分の腹触ってんだ?
女王様、別に太ってないと思うぜ。