【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第450話 温泉の中の暑苦しさ

「レイ様」

 

「どうした? ルトラ」

 

 ルトラがこうして自ら話しかけてくるということは、おそらく仕事の話だろう。

 テクニティスもそうだけど、精霊って仕事好きだからなあ。

 きっと、精霊のトップがワーカーホリックのせいだ。

 上が休まないと、下も休めないということだな。

 

「よし、ピルカヤを叱るか」

 

『なんで!?』

 

「精霊の生態について、ちょっと思うところがあったから」

 

『ボクのせいじゃないんだけど~』

 

「いや、ピルカヤが休まないと、ルトラもテクニティスも休めないと思ってな」

 

『ボクたち優秀だから、このくらい大丈夫だよ』

 

 う~む。実に精霊だ。

 ルトラはというと、ピルカヤの味方だな。まあ当然か。

 

「ええと、私はお休みもいただいています」

 

『かわいがっていた後輩が裏切った!』

 

「い、いえ、裏切りというわけでは……」

 

 なら、叱るのはピルカヤだけだな。

 さて、ルトラの用件を聞かなくては。

 

「ごめんごめん。ピルカヤは後で叱るから、まずはルトラの用件だな」

 

「はい。ええと、温泉についてです」

 

 まあ、ルトラが仕事について話すとしたら、そこだろうな。

 今は安定しているし、最近では増強の湯で即死を回避したり、快復の湯で新たな客を集めたりと大活躍だ。

 特に問題は起きていないという認識だったが、管理者目線からすると気になることでもあったのだろうか?

 

「オーガや昆虫人やナルカミが配下に加わったので、新たな温泉が作れないか気になりまして」

 

「なるほど……」

 

 残念ながらクララからは、出汁は取れなかった。

 時任やロペスも無理だったが、風間たちから出汁は取れた。

 そうなると、ナツラやゼラシアは微妙なところだが、鳴神は可能性がありそうだな。

 

「とりあえず、代表二人と鳴神から出汁を取ってみるか」

 

「はい。試してみるのが良いと思います」

 

 ちょっとテンションが上がっているな。

 やはり精霊。自分の分野の仕事には、興味津々というわけだ。

 

    ◇

 

「なるほど。湯に浸かれば良いと」

 

「ああ。ルトラが管理してくれるから、指示に従ってくれ」

 

「心得た! ヒーローらしく、湯治に勤しもうではないか!」

 

 ヒーローらしい入浴ってなんだろう……。

 鳴神は、今日も正義が迷子になっているようだ。

 

「ナツラとゼラシアも悪いが付き合ってくれ」

 

「承知しました」

 

「温泉に浸かることが仕事……。良いのでしょうか?」

 

「大事な検証の一つだからな」

 

 ゼラシアだけは困惑しているが、なにも難しいことはないので安心してほしい。

 

 とりあえず、部屋を三つ作って、それぞれに温泉を作るとしよう。

 今の温泉とは別の実験用の温泉に浸けておいたほうが、何かと便利そうだからな。

 

 ……鳴神、大人しく温泉に入っていられるだろうか。

 いや、ナツラも心配になってきた。

 プリミラみたいに、アヒルのおもちゃで遊んでもらうか?

 いや、いっそのこと魔導映写を流してしまえば……。

 

「なにやら、失礼なことを想像された気がします」

 

「プリミラ」

 

 仕事に区切りがついたのか、いつの間にかプリミラが来ていたようだ。

 手にはお風呂セットと……やはり、継ぎ接ぎのアヒルが。

 

「鳴神やナツラを温泉に浸けて、出汁を取ろうとしているんだけど」

 

「たしかに、試す価値はありますね」

 

「二人が大人しく温泉に入っていられるか心配になって、プリミラみたいにアヒルと戯れてもらおうかと」

 

「……貸しませんよ?」

 

 アヒルを隠された。

 まあ、これからプリミラも温泉に入るみたいだからな。

 さすがに、それを奪うつもりはない。

 

「それか、魔導映写の施設を流用して、映像結晶でも観せておけば大人しくなるかなって」

 

「なるほど……。たしかに、良い案かもしれませんね。私にもお願いします」

 

 意外と食いつきが良いな。

 よし、そういうことなら、さっそく四人分の準備をするか。

 

 そうして、万全の状態で温泉の検証を行うことにした。

 あとは、ルトラに任せておこう。

 

    ◇

 

「というわけで、温泉に浸かりながら映像を楽しんでもらっています」

 

「ええ、ずるい! 私もそれ欲しいです!」

 

 フィオナ様にねだられる。

 映像結晶好きだからな。この魔族。

 

「なら、フィオナ様用の温泉と映像結晶でも用意しましょうか」

 

「ふやけるまで、楽しみましょう!」

 

 長風呂になりそうだな。

 そう意気込んでいたフィオナ様だったが、何やら急に冷静になったようだ。

 

「いえ、でもそうしたらレイと一緒に観られませんね」

 

「そりゃあそうでしょう。まさか、一緒に温泉に入るわけにもいきませんし」

 

「レ……レ、レ、レイが! 望むのであれば、私も覚悟を決めますけど!?」

 

「いえ、さすがにそこは覚悟を決めないでくださいよ……」

 

 自分で何言ってるのかわかっているのだろうか。この魔族。

 それって、俺と混浴して映像結晶を観るってことだぞ。

 いくら抱き枕に慣れた俺だって、そんなの理性が保つはずがないでしょうが。

 あなた、自分が美しくて可愛いことを、もっと自覚してくださいよ。

 

「さ、さすがに、私だって恥ずかしいので、まだやめておきましょう……」

 

 まだってなんですか。

 いつか羞恥が消えたあかつきには、実行するんじゃないでしょうね?

 ……もしかして、フィオナ様にとっての俺は、プリミラにとってのアヒルくらいの感覚なのか?

 

 そんな結論を出していると、ピルカヤから連絡が入った。

 

『ルトラ、そろそろ止めたほうが良いと思うよ~?』

 

「ルトラを? 何かあったのか?」

 

『言っておくけど、あの子、ボクに負けず仕事好きだからね?』

 

 ……なんか、含みのある言い方だな。

 ちょっと、温泉に向かうとするか。

 

    ◇

 

「うおぉ! この程度の熱さに負けるかあ!」

 

「水分と塩分補給が必要ですね。ではどうぞ」

 

 鳴神に、球体の水を渡して飲ませている。

 ピルカヤが言うには、ナツラとゼラシアも同じような状況らしい。

 

『い、いくつ映像結晶を観れば、解放していただけるのでしょうか……』

 

『そちらは……まだ、普通の温泉のようです。もう少し頑張りましょう』

 

 ゼラシアの言葉に、ルトラは淡々と観察と検証を続けていた。

 

『暇だ……。もう出ても良いだろう?』

 

『駄目です。私はレイ様に任されました。あなたたちから出汁が取れて、新たな温泉が作成されるまで我慢してください』

 

 その言葉を聞いて、ナツラは渋々とお湯に浸かり続ける。

 ……なんか、俺のせいでずっと温泉に入れられていたらしい。

 

「ルトラって、そんな融通効かなかったっけ……。昆虫人の兵隊じゃあるまいし」

 

「だから言ったじゃん。あの子、ボクと同じく仕事好きだって」

 

 テクニティスといい、ルトラといい、熱中したらみんなこうなのか……。

 精霊、やはり種族による違いのせいか、たまに妙なズレを感じるなあ。

 それはともかく、釜茹での刑みたいなことをされている三人を助けないと。

 

「ルトラ~! 出汁が出ないなら出ないでいいから、無理はさせないでくれ~!」

 

「いえ、レイ様。水分も塩分も与えていますし、温度管理も完璧です。必ずや、新たな温泉を作り出してみせます」

 

 かわいく意気込まなくていいから。

 やけに張り切るルトラを説得するのは、思いのほか骨が折れた。

 比較的まともな十魔将かと思っていたが、スイッチが入るとわりとやばい子みたいだなあ……。

 

    ◇

 

「俺の熱気が勝ったか!」

 

「ただ、これですとレイ様が作る溶岩温泉と変わりませんね……」

 

「ヒーロー要素は溶け出ていないか!」

 

「残念ながら、そのような成分は見当たりません」

 

 後日、鳴神の出汁から溶岩温泉ができたらしい。

 あいついよいよ人間やめてるよなあ。

 なんで普通に浸かっていられるんだよ……。

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