【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
まさかルトラがあれだけ熱中するとはな。
やはり、精霊というものは、少し俺たちと違うらしい。
ということは、もしかしたらテクニティスも……。
一時期は転移温泉の作成と、その出力の調整で共に行動することが多かった。
だけど、転移先の調整はテクニティスでさえ困難であり、彼にその作業を任せっぱなしにするよりは、一旦凍結してしまっている。
そのため最近はカールと一緒に、何やら色々と作っているようだ。
「久しぶりに、様子を見に行ってみるか」
報告してくれているので、便利な魔法道具を作っているのは知っているが、現場は見ていないからな。
まあ、あの二人は真面目だし、そう大変なことにもなっていないだろう。
◇
「だから、魔力を込めすぎているから、補強しないと危険だと言っているだろうが!」
「最後はそのまま爆破するほうが良いって、言ってるんすよ!」
大変なことになっていた。
この二人の作業場、あまり近寄っていなかったから知らなかったが、大声でもめてるな。
なんか、風間が黄昏ているけれど、もしかしてこれが日常茶飯事なのか?
「なんか大変そうだな」
「レイさん……。いえ、いつものことですので」
やはり、これが日常の光景だったようだ。
テクニティスもカールも、俺とフィオナ様に気付かないほどには熱中しているらしい。
もうこの時点で、昨日のルトラを思い出す。
やはり精霊……。仕事が大好きで手を抜かず、熱中しすぎて暴走するものなのか。
いや、カールはドワーフだけど。
「あの、師匠。テクニティスさん。魔王様とレイさんがいらっしゃいました」
「何!? し、失礼しました。魔王様、レイ様」
「カザマ言うのが遅いっすよ! すみませんでした! 魔王様、レイ様!」
一応、風間の声は届くみたいだな。
さすがは弟子だ。というか、勇者らしく人徳が備わっているのだろう。
「いや、俺もフィオナ様も、見学に来ただけだから気にしないでくれ」
「ええ。以前も言いましたが、私たちを気にして作業を中断する必要はありません」
そんなこと言ったっけ?
二人が頷いている様子からすると、本当に過去にそんな発言があったらしい。
もしかすると、俺がダンジョン製作中とかに、フィオナ様はフィオナ様で部下の様子を見回ったりしていたのかもな。
「ところで、二人は何をもめていたんだ?」
どうやら技術職同士、主張がぶつかり合っていたように見えた。
というか、最後は爆破とか、なんか面白そうな言葉が聞こえた。
「これっす」
「これは……ゴーレム?」
テクニティスが見せたのは、少し小さいが金属で作られた人形のような物だった。
ラッシュガーディアンやゴーレムを彷彿されるそれは、テクニティスの指示に従ってしっかりと動いている。
俺が作ったモンスターではない。もしかして、二人が一から作ったということか。
「試作品なんすけどね。レイ様が生成されるモンスターたちを参考に、自分たちもゴーレムを作ってみたっす」
「すごいな。試作品というわりには、しっかりと命令に従っているようだし」
「師匠とテクニティスさん。腕は良いですからね」
「なんか含みがある言い方じゃねえか。タケミ」
カールにじろっとにらまれるも、風間は軽く受け流す。
ただ、言われる覚えがあるのか、カールもそれ以上は追及しないようだ。
「ここまで完全な物ができているのなら、なんでさっきはもめていたんだ?」
それがますますわからない。
製作途中なら、その方針でぶつかることもあるだろう。
だけど、これはすでに完成している。
今さら、何か争う必要などあるのだろうか?
「その金属ゴーレムなのですが、駆動するための魔力が少々多すぎまして」
「ふむ。たしかに、レイが作るゴーレムたちと比較しても、明らかに魔力量は多いですね」
「はい。ですので、衝撃を与えすぎると魔力が暴発し、周囲を巻き込んで破裂するのです」
たしかに、自爆したときの魔力の流れと似ている。
この小さな体で接近し、下手に刺激を与えたら爆発するということか。
「……良いじゃないか」
俺がそう呟くと、カールは顔が残念そうにし、テクニティスは嬉しそうに反応した。
「ほら! レイ様ならわかってくれると思っていたっす!」
「いえ、ですが……。それだと危険で」
「まあ、周囲に置いといて、急に爆発されるのは困るけど」
そう言うと、テクニティスとカールの表情が先ほどとは逆になる。
君たち仲良いね。
「ほら見ろ。レイ様は、宰相として安全性もしっかりと考慮されている」
「で、でも、レイ様は爆破と岩が好きっすから!」
それはその通り。
どちらも好きだ。なので俺は、起爆岩とか常にアナンタに内緒で仕掛けたいと思っている。
「だから問題は、この金属ゴーレムの用途だな。日常で使用するなら爆破したらまずいし、侵入者を相手にするなら爆破はむしろ武器になる」
それに尽きる。
爆破自体はぶっちゃけ悪くないが、その用途次第で問題になるということだ。
だから、そもそも何を目的としてこのゴーレムを作ったか、そこを知らないことには判断しかねる。
「……」
「……」
なんでそこで二人して黙るの?
俺、なんか変なこと言ってる?
「師匠もテクニティスさんも、技術者ですから……」
「それは知っているけど、俺はこれの用途を」
「作ることだけを考えていて、明確な用途は決めていなかったんだと思います」
「まじかあ……」
それじゃあ、なおさら判断できないなあ。
俺たちのお手伝いをさせたいのなら、カールの案を採用して爆破をしないようにする。
ダンジョンで敵と戦わせたいのなら、テクニティスの案を採用して爆破するようにする。
俺が判断できるのは、それくらいだ。
「作ることは悪くないけど、用途は決めておかないと迷走するぞ」
「はいっす……」
「ええ、気を付けます……」
「それにしても、何に使うか決めずに、ここまでの完成品を作るのはすごいな」
改めて金属製のゴーレムを見るが、しっかりと動いている。
まるでうちのゴーレムのように、意志を持っているかのようだ。
「師匠もテクニティスさんも、技術はすごいんですよねえ」
「やはり含みがある言い方だな」
「レイさんが言ったとおり、何に使うかくらいは決めてから動きましょうよ」
「う……まあ、善処する」
この感じだと、これが初めてということじゃない気がしてきた。
なので俺は、風間に尋ねてみることにする。
「もしかして他にも、用途は決まっていないけど作成された物があるのか?」
「はい……。といいますか、作成したけど使い物にならなかったものも……」
まあ、それは仕方ない。
発明って、往々にしてそういうものというイメージはあるから。
そうやって何事もチャレンジしていって、とんでもないものを作る場合もあるだろう。
「特に、ゴーレムに関しては、ちょっとすごいものが」
風間がそう言いながら、俺たちを倉庫代わりにしている広間へと案内してくれた。
なんか色々あるな。いつの間にか、これだけたくさんの道具を作っていたのか。
だけど、報告に上がっていないということは、きっとどれも使い道が無いということに……。
普段報告されている分だけでもけっこうな量だったが、実はあれで半分程度だったんだな。
さて、そんな中特に目を引くのは、やはり巨大な制作物だろう。
「あれ……ゴーレムなのか?」
「すごいですよねえ。僕も、見るたびにわりとわくわくします」
「あれこそは、巨大金属ゴーレム。テラスティオっす!」
「またお前は勝手に……戦略ゴーレム。リーズィだと言っただろう」
なんとなく、巨大ロボ的なゴーレムということはわかった。
だけど、二人の中では名前すら折り合いがついていないらしい。
「僕は、ロボットゴーレムのジャイアントって呼んでいます」
「見事にばらばらだな……」
しかし、これがお蔵入りになっているのはもったいなくないか?
もしかして、まだ未完成なんだろうか?
「これ、ダンジョンで使わないのか?」
「うっ……」
カールもテクニティスも、俺の疑問に口を閉ざしてしまう。
やはり未完成。あるいは、重大な欠陥でもあるのだろう。
「それ、動かすのに必要な魔力が多すぎて、ただの置物になっているんです……」
「で、でも、魔力さえあれば、ちゃんと動かせるっすよ!」
「なるほど。それなら、ダンジョン魔力を使えば……」
「ただ、まともに戦闘させるのであれば、普段レイ様が宝箱を開ける際に注いでいる量の百倍くらいは、魔力が必要に」
「倉庫に眠らせておくことにしよう」
なんという燃費の悪さだ。
カールが言っているのは、俺の一万ガシャのことだろ?
つまり、百万もの魔力が一度の戦闘で必要に……。
駄目だな。さすがにそれは許容できない。
そんなことをするくらいなら、蘇生薬狙いでガシャをしたり、ダンジョンを作り替えたり、モンスターを大量生成したほうがいいだろう。
技術職二人。情熱はあるのだが、ちょっと暴走気味なこともあるみたいだな……。
風間という比較的冷静な者が近くにいて、良かったのかもしれない。