【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「はい。みんなの軍服」
「やった~。ラプティキさん、大好き~」
転生者たちが、ラプティキさんのもとに集まっているかと思ったら、魔王軍の軍服を支給されていた。
きっと、あれ全部手作りなんだろうなあ。
相変わらず、一人であれだけの服を作るとは、忙しい魔族だ。
「む、俺の分もあるのか」
「まあ、一人だけ差別するわけにはいかないからね。破るんじゃないわよ? 変身するときは脱ぎなさい」
「心得た! 感謝するぞ、ラプティキ様!」
みんな各々軍服を身にまとっている。
フィオナ様やピルカヤのように羽織るだけの者、リグマのように腰に結ぶ者、きちんと着てみる者と個性が出るな。
「あ、レイさ~ん! どうですか? これで私も魔王軍時任です」
「ああ、みんな似合ってるけど、仕事中は脱いでもらうぞ」
「ええ!? ま、まだ、魔王軍ポイント足りませんか? 認めてもらうために、お茶くみとかします?」
時任がえらくショックを受けている。
お茶くみ……。マギレマさんの領分だし、間に合っているかな。
「いや、店で働くときに、俺たちがこの格好をするのはまずいだろ」
「なるほど! 隠れ魔王軍だからね!」
ロペスは、俺の意図しているところをすぐに理解してくれたようで、時任にちゃんと説明してあげている。
奥居あたりもわかっていたようだが、風間や原や世良も、ロペスの説明で気付いたみたいだな。
「お店の店長さんは、あくまでも表向きの顔で、裏の顔は魔王軍の時任。……エージェントっぽい!」
「裏で暗躍してないけどな。俺たち」
「裏表なしの時任です!」
別に魔王軍として、人類に危害を加えるような指示はしていないからな。
彼らはしっかりと働くことで魔王軍に貢献しているのだから、それ以上を望むつもりもない。
「それにしても、ラプティキさんっていつも働いてるよな。ちゃんと休んでる?」
「ええ。マギレマじゃあるまいし、ずっと働きっぱなしというわけではないわ」
マギレマさんとピルカヤが、うちのワーカーホリックコンビだもんな。
どちらも欠かせない人材であり、だからこそ健康のために休んでほしいのだけど……。
「そういえば、ラプティキさんとマギレマさんって、なんか仲良さそうですよね。魔王軍の同期だったりするんですか?」
たしかに、時任の言うとおりだ。
二人の距離感は、魔王軍の同僚というよりは、友人みたいな関係と言われたほうがしっくりとくる。
エピクレシとプネヴマと似ている関係性だ。
「同期でもあるんだけど、もっと前からの腐れ縁かしら」
「それって、魔王軍に入る前から?」
「ええ。レイさんも聞いたことがあるかもしれないけれど、あの子昔はヤンチャだったから、私が間に入って話すことも多かったわね」
ヤンチャなマギレマさん……。
時任みたいに元気だったんだろうか。
だとしたら、今のマギレマさんとだいぶ違うし、過去の話を恥ずかしがるのもわかる気がする。
「幼なじみか。僕と新と友香みたいですね」
「そんな良いものじゃなくて、腐れ縁だけどね」
そう言いながらも、ラプティキさんは満更でもない表情だった。
やはりエピクレシに似ている。
つまり、マギレマさんはプネヴマと同じく、ラプティキさんに世話を焼かれていた側なんだろうな。
「それにしても、種族は別に見えるが、幼い頃から交流があったのか。魔族とは、様々な種族が共に暮らしているものなのか?」
「場所によるわね。同じ種族だけで固まっていることも多いわよ」
「つまり、ラプティキ様とマギレマ様は、特殊なケースということか」
「まあ……ヤンチャすぎたあの子を止める羽目になったというか……。私、わりと真面目だったから」
十魔将の中でも貴重な常識人だからな。
改めて考えると、なかなか癖が強いものだ。
「ちなみに、マギレマの姐御って、昔ヤンチャしていたってことは、今は落ち着いているんだよな? 何がきっかけなんだい?」
「料理ね」
「へえ、昔は料理好きじゃなかったんですか?」
「私の服作りを暇そうに見ていたわ。そんなものの何が楽しいんだって聞かれたから、色々と試させてみたら料理を気に入ったみたい」
なんか意外だ。
マギレマさんのことだから、物心ついたときには料理好きなのかと思っていた。
「だからマギレマが本格的に料理をするようになったのは、魔王様に仕えてからよ」
「それであれほど上手くなるって、マギレマさんすごいですね」
それだけ努力したのか、それとも元々才能があったのか。
両方かもしれないな。
「だけど、服には相変わらず無頓着なのよねえ……。あなたたちからも言ってくれないかしら? もっとおしゃれしなさいって」
「マギレマさん綺麗ですからね」
「もっといろんな服着ても良いのにって思います」
「頼むわよ。女子組! あなたたちなら、マギレマを説得できるから」
ラプティキさんがやけに意気込んでいる。
この魔族はこの魔族で、やはり仕事に熱中するきらいがあるようだ。
◇
「マギレマさ~ん!」
「どうしたの? トキトウちゃん、おやつ?」
「おやつも食べます! それと、マギレマさんにかわいい服を着てほしいです!」
「……ラプティキか~」
「はいっ!」
すごいな時任。駆け引きとかこれっぽっちもない。
単に頼まれたとおりにお願いしている。
あまりにも純粋なお願いすぎて、マギレマさんもわりと困っているぞ。
「ええと……はい。今日のおやつ」
「やった~。絶対おいしいやつだ~」
なんか時任が、ウサギというよりも犬に見えてくる。
なんなら、マギレマさんの犬のうちの一匹くらいだとしてもおかしくない。
「でも、マギレマさんいつもそのチューブトップだけですよね? 服装変えたりしないんですか? 美人なのに、もったいない」
「おっと……。ラプティキ、色んな子に変なこと吹き込んで……。ええとね、あたしはこれでいいんだよ。そういうのは、もっと別の子たちに任せるから」
「素材がこんなにいいのにねえ」
「素材のままの料理も良いですけど、手間暇かけた料理も良いですよ?」
「うっ……。そう言われると弱いなぁ」
すごいな転生者女子組。
マギレマさんが折れかけているぞ。
四人の女性陣は、その後もマギレマさんに代わる代わる言葉を向けて、結局はマギレマさんが根負けしてしまったようだ。
「女の子たちのパワーってすごいね」
「ああ。あいつら、俺より交渉上手いんじゃねえか?」
風間とロペスも、感心しながらその様子を見ていたが、あまり関わりたくもないらしく、少し遠巻きに間食を取っていた。
「おや、なんだか賑やかですね」
「あ、魔王様。マギレマさんにおしゃれをお勧めしていました!」
「魔王様も見た目すごく綺麗ですよね」
「ふふん! なんせ、レイが大好きな見た目ですからね!」
何言ってんだあの魔族。
合ってるけど、それを周りに自慢するのは違うでしょうが。
「魔王様も、ラプティキさんに色々な服作ってもらっていますよね?」
「ああ。あの子はそういうの好きですからねえ」
「でも、メイド服しか見たことないです。着ないんですか?」
「着てますよ? レイの前で、二人きりのときに」
止めよう。
あの魔王。このままじゃ、色々と変なことを口走る。
「あ、そういう……。それなら、しょうがないですね!」
「? ええ。レイは色んな姿の私が大好きですから」
「魔王様とレイさん、やっぱり……」
よし、帰らせよう。
なんか変な噂が広まる気しかしない。
たしかにあなたの見た目も中身も大好きですけど、そういうのじゃありません。忠義です。
「フィオナ様、部屋に戻りましょう」
「え、私まだ何も食べてないんですが」
「誰か、後で軽食持ってきて」
「はい」
マギレマさんの部下にお願いして、俺たちはフィオナ様の部屋に向かうことにした。
「なるほど。あの流れで部屋に直行ということは、また私の色々な姿を見たいということですね!」
「もうそれでいいです……」
◇
「あのねえ……。あの子たちを巻き込むのはずるくない?」
「それが一番効果的でしょ?」
「アタシは、これで良いんだって」
「まあ、昔頼まれて作ったやたらと長くて、背中に大きく文字が書いてある服よりはマシね」
「もう卒業したの! そういうのは!」