【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第452話 彼女が軍服を着ない理由:改造しそうだから

「はい。みんなの軍服」

 

「やった~。ラプティキさん、大好き~」

 

 転生者たちが、ラプティキさんのもとに集まっているかと思ったら、魔王軍の軍服を支給されていた。

 きっと、あれ全部手作りなんだろうなあ。

 相変わらず、一人であれだけの服を作るとは、忙しい魔族だ。

 

「む、俺の分もあるのか」

 

「まあ、一人だけ差別するわけにはいかないからね。破るんじゃないわよ? 変身するときは脱ぎなさい」

 

「心得た! 感謝するぞ、ラプティキ様!」

 

 みんな各々軍服を身にまとっている。

 フィオナ様やピルカヤのように羽織るだけの者、リグマのように腰に結ぶ者、きちんと着てみる者と個性が出るな。

 

「あ、レイさ~ん! どうですか? これで私も魔王軍時任です」

 

「ああ、みんな似合ってるけど、仕事中は脱いでもらうぞ」

 

「ええ!? ま、まだ、魔王軍ポイント足りませんか? 認めてもらうために、お茶くみとかします?」

 

 時任がえらくショックを受けている。

 お茶くみ……。マギレマさんの領分だし、間に合っているかな。

 

「いや、店で働くときに、俺たちがこの格好をするのはまずいだろ」

 

「なるほど! 隠れ魔王軍だからね!」

 

 ロペスは、俺の意図しているところをすぐに理解してくれたようで、時任にちゃんと説明してあげている。

 奥居あたりもわかっていたようだが、風間や原や世良も、ロペスの説明で気付いたみたいだな。

 

「お店の店長さんは、あくまでも表向きの顔で、裏の顔は魔王軍の時任。……エージェントっぽい!」

 

「裏で暗躍してないけどな。俺たち」

 

「裏表なしの時任です!」

 

 別に魔王軍として、人類に危害を加えるような指示はしていないからな。

 彼らはしっかりと働くことで魔王軍に貢献しているのだから、それ以上を望むつもりもない。

 

「それにしても、ラプティキさんっていつも働いてるよな。ちゃんと休んでる?」

 

「ええ。マギレマじゃあるまいし、ずっと働きっぱなしというわけではないわ」

 

 マギレマさんとピルカヤが、うちのワーカーホリックコンビだもんな。

 どちらも欠かせない人材であり、だからこそ健康のために休んでほしいのだけど……。

 

「そういえば、ラプティキさんとマギレマさんって、なんか仲良さそうですよね。魔王軍の同期だったりするんですか?」

 

 たしかに、時任の言うとおりだ。

 二人の距離感は、魔王軍の同僚というよりは、友人みたいな関係と言われたほうがしっくりとくる。

 エピクレシとプネヴマと似ている関係性だ。

 

「同期でもあるんだけど、もっと前からの腐れ縁かしら」

 

「それって、魔王軍に入る前から?」

 

「ええ。レイさんも聞いたことがあるかもしれないけれど、あの子昔はヤンチャだったから、私が間に入って話すことも多かったわね」

 

 ヤンチャなマギレマさん……。

 時任みたいに元気だったんだろうか。

 だとしたら、今のマギレマさんとだいぶ違うし、過去の話を恥ずかしがるのもわかる気がする。

 

「幼なじみか。僕と新と友香みたいですね」

 

「そんな良いものじゃなくて、腐れ縁だけどね」

 

 そう言いながらも、ラプティキさんは満更でもない表情だった。

 やはりエピクレシに似ている。

 つまり、マギレマさんはプネヴマと同じく、ラプティキさんに世話を焼かれていた側なんだろうな。

 

「それにしても、種族は別に見えるが、幼い頃から交流があったのか。魔族とは、様々な種族が共に暮らしているものなのか?」

 

「場所によるわね。同じ種族だけで固まっていることも多いわよ」

 

「つまり、ラプティキ様とマギレマ様は、特殊なケースということか」

 

「まあ……ヤンチャすぎたあの子を止める羽目になったというか……。私、わりと真面目だったから」

 

 十魔将の中でも貴重な常識人だからな。

 改めて考えると、なかなか癖が強いものだ。

 

「ちなみに、マギレマの姐御って、昔ヤンチャしていたってことは、今は落ち着いているんだよな? 何がきっかけなんだい?」

 

「料理ね」

 

「へえ、昔は料理好きじゃなかったんですか?」

 

「私の服作りを暇そうに見ていたわ。そんなものの何が楽しいんだって聞かれたから、色々と試させてみたら料理を気に入ったみたい」

 

 なんか意外だ。

 マギレマさんのことだから、物心ついたときには料理好きなのかと思っていた。

 

「だからマギレマが本格的に料理をするようになったのは、魔王様に仕えてからよ」

 

「それであれほど上手くなるって、マギレマさんすごいですね」

 

 それだけ努力したのか、それとも元々才能があったのか。

 両方かもしれないな。

 

「だけど、服には相変わらず無頓着なのよねえ……。あなたたちからも言ってくれないかしら? もっとおしゃれしなさいって」

 

「マギレマさん綺麗ですからね」

 

「もっといろんな服着ても良いのにって思います」

 

「頼むわよ。女子組! あなたたちなら、マギレマを説得できるから」

 

 ラプティキさんがやけに意気込んでいる。

 この魔族はこの魔族で、やはり仕事に熱中するきらいがあるようだ。

 

    ◇

 

「マギレマさ~ん!」

 

「どうしたの? トキトウちゃん、おやつ?」

 

「おやつも食べます! それと、マギレマさんにかわいい服を着てほしいです!」

 

「……ラプティキか~」

 

「はいっ!」

 

 すごいな時任。駆け引きとかこれっぽっちもない。

 単に頼まれたとおりにお願いしている。

 あまりにも純粋なお願いすぎて、マギレマさんもわりと困っているぞ。

 

「ええと……はい。今日のおやつ」

 

「やった~。絶対おいしいやつだ~」

 

 なんか時任が、ウサギというよりも犬に見えてくる。

 なんなら、マギレマさんの犬のうちの一匹くらいだとしてもおかしくない。

 

「でも、マギレマさんいつもそのチューブトップだけですよね? 服装変えたりしないんですか? 美人なのに、もったいない」

 

「おっと……。ラプティキ、色んな子に変なこと吹き込んで……。ええとね、あたしはこれでいいんだよ。そういうのは、もっと別の子たちに任せるから」

 

「素材がこんなにいいのにねえ」

 

「素材のままの料理も良いですけど、手間暇かけた料理も良いですよ?」

 

「うっ……。そう言われると弱いなぁ」

 

 すごいな転生者女子組。

 マギレマさんが折れかけているぞ。

 四人の女性陣は、その後もマギレマさんに代わる代わる言葉を向けて、結局はマギレマさんが根負けしてしまったようだ。

 

「女の子たちのパワーってすごいね」

 

「ああ。あいつら、俺より交渉上手いんじゃねえか?」

 

 風間とロペスも、感心しながらその様子を見ていたが、あまり関わりたくもないらしく、少し遠巻きに間食を取っていた。

 

「おや、なんだか賑やかですね」

 

「あ、魔王様。マギレマさんにおしゃれをお勧めしていました!」

 

「魔王様も見た目すごく綺麗ですよね」

 

「ふふん! なんせ、レイが大好きな見た目ですからね!」

 

 何言ってんだあの魔族。

 合ってるけど、それを周りに自慢するのは違うでしょうが。

 

「魔王様も、ラプティキさんに色々な服作ってもらっていますよね?」

 

「ああ。あの子はそういうの好きですからねえ」

 

「でも、メイド服しか見たことないです。着ないんですか?」

 

「着てますよ? レイの前で、二人きりのときに」

 

 止めよう。

 あの魔王。このままじゃ、色々と変なことを口走る。

 

「あ、そういう……。それなら、しょうがないですね!」

 

「? ええ。レイは色んな姿の私が大好きですから」

 

「魔王様とレイさん、やっぱり……」

 

 よし、帰らせよう。

 なんか変な噂が広まる気しかしない。

 たしかにあなたの見た目も中身も大好きですけど、そういうのじゃありません。忠義です。

 

「フィオナ様、部屋に戻りましょう」

 

「え、私まだ何も食べてないんですが」

 

「誰か、後で軽食持ってきて」

 

「はい」

 

 マギレマさんの部下にお願いして、俺たちはフィオナ様の部屋に向かうことにした。

 

「なるほど。あの流れで部屋に直行ということは、また私の色々な姿を見たいということですね!」

 

「もうそれでいいです……」

 

    ◇

 

「あのねえ……。あの子たちを巻き込むのはずるくない?」

 

「それが一番効果的でしょ?」

 

「アタシは、これで良いんだって」

 

「まあ、昔頼まれて作ったやたらと長くて、背中に大きく文字が書いてある服よりはマシね」

 

「もう卒業したの! そういうのは!」

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