【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「ロマーナって、仲間を蘇らせたいとか思っていたりします?」
「聖光の刃をですか……。ええと……」
エピクレシの言葉に、ロマーナは頭を悩ませている。
意外だな。ロマーナのことだから、部下の復活なんて迷わず望むものかと思っていた。
「もしかして、仲の悪い部下でもいたか?」
「いえ! 皆よく従ってくれていました。私の判断ミスで全滅させたのが、申し訳ない者たちばかりです」
まあ、そうだろうな。
魔王軍に馴染むのもわりと早かったし、率いていた者たちと上手くやっている光景が容易に目に浮かぶ。
だとしたら、なぜ復活を渋るのか。
「以前も言いましたが、死後に意識を取り戻すのは恐ろしいものです」
その後が虚無であり、女神が復活させるまでは意識すら無いらしいからな。
女神への信仰心が高い者ならともかく、そうでない者にとってはプネヴマの意思一つで、殺されるような恐怖なのだろう。
改めて考えると、プネヴマって怖い能力だよなあ。
「あ……えっ……えへへ……ええと……な、なんでしょうか……」
「いや、プネヴマってすごいなと思って」
「は……はうぅ……」
この人見知りの少女にしか見えない存在が、どうにも恐ろしい力を持っているものだ。
普段はちょっとした拍子で簡単に倒れているが、その姿からは想像もつかない。
「ですが、アンデッド化を了承すれば、あなたのように復活できますよ? もっとも、触媒が準備でき次第ですが」
「ええ。私は恐怖に負けてそれを望みました。ですが、私の部下たちは、私ほど弱くありません」
「つまり、アンデッド化を拒むということですか」
「最高評議会と敵対し、魔王軍に降る。それを拒む者は多そうですから……」
元々は敵対していたわけだしなあ。
ロマーナが特別だったと考えたほうがよさそうだ。
自分自身に置き換えると、フィオナ様を裏切って女神につくようなものだろ?
……気持ち悪いな。
「どうしました? レイ」
「いえ、俺は一生フィオナ様の味方です」
「ふふん! なんと言っても、レイは私のものですからね」
本当に、ロマーナのやつは、よく決断してくれたものだ。
そんな彼女にとって、以前の職場よりもいい環境だと思えるよう、これからも地底魔界を発展させていきたいところだな。
「気が向いたら言ってください。すぐにアンデッド化はできませんが、こちらも準備をしますので」
「ええ、ありがとうございます。エピクレシ様」
エピクレシとロマーナは、仲良くやっているようだ。
彼女のポリシーなのか、アンデッドにも意思は持たせているため、一人一人と交流を欠かさないようにしているらしい。
ディキティスもそうだが、部下のことをしっかりと見ているようで、頼れるが大変そうな上司だな。
◇
「……」
エピクレシ様の言葉を思い返す。
マウリ、カスパー、ヴァスコ。それだけでなく、隊員の一人一人が真面目で優秀だった。
そう、真面目だったのです……。
「魂の状態からでも、反逆しそうですね」
祖国ヤニシアで、最高評議会に仕えていた彼らは、魔王軍に降ることなど決してないでしょう。
元隊長にして裏切り者の私は、決して許されないということも理解できています。
……国を裏切って、人類を裏切って、私は死の恐怖から解放された。
「であれば、彼らに殺されても仕方ないのでしょう」
「え! ロマーナさん、誰かに殺されるんですか!? 私が結界張っておきます?」
「あ、アラタちゃん。いえ、そういうわけでは」
「ロマーナさんほどの人が諦めて殺される……。もしかして、魔王様や四天王を怒らせたとか……」
「い、いえいえ。しっかりと評価していただけています。……評価してもらえていますよね?」
自分で言ってみてなんですが、少し不安になってしまいました。
いえ大丈夫です。先ほども、部下の復活を検討いただけましたし、それは私の働きを評価していただいたからこそのはずです。
「大丈夫ですか? ロマーナ先生の調子が悪いようであれば、今日の訓練お休みしたほうが良いと思いますけど」
「そうだな。テラペイアに……いや、アンデッドということであれば、エピクレシに診てもらうほうが良いだろう」
転生者であるアラタちゃんにトモカちゃん、カザマくんは私を師として慕ってくれている。
そして、同じく彼らを指導しているダスカロス様は、こうして私の体調を真剣に案じてくれている。
テラペイア様やエピクレシ様の元へ行けば、真剣に診察してもらえるでしょう。
転生者はわかります。女神様の使徒ともいえるので、ヤニシアにいたころの私と同じく、人類という陣営ですから。
ですが、女神様に悪と断定されてきた魔王軍が、魔族が、迫害種たちが、良い人たちなんですよねえ……。
「少し、善悪について考えていました」
「つまり、俺の同志ということか!」
まあ、たまにナルカミくんのように、よくわからない子もいますが……。
少なくともうちの転生者たちは、善だと思います。
その一方で、獣人や人間を巻き込んで毒殺した転生者や、各国を病で苦しめた転生者、巣を乗っ取った転生者たちまでいる。
女神様が送り込んだ者の中に、そんな悪と断じられる者もいます。
女神様の意図がわかりません。
「ナルカミくんは、何が正義だと思いますか?」
「ふむ。俺も模索中であり、仮の答えではあるが、罪なき民たちが笑える世界を作る者こそが正義だ」
それは、私がかつて抱えた理念に似ている気がする。
私が聖光の刃の隊長として、国のために尽くしていた理由。
それは、最高評議会の役に立つためではなく、ヤニシアの国民が穏やかな日常を送れるようにするため。
こうして魔王軍に仕えてからは、地底魔界の民が平穏な日常を送れるよう、力を貸している。
どの国もどの種族も、きっと同じことだろう。
なんせ、魔族たちの国がここまで穏やかなのだから。
「平和な世界。難しいですね……」
「永遠の課題だな! 同志として、共に協力しようではないか!」
「ええ。あなたの力、きっと借りる日が来るでしょう」
かつて守った国は、今の国の敵であることに違いはない。
だけど、この国は自ら侵略しようと考えてはいない。
私が袂を分かった国と戦う日が来るとしたら、きっとあちらの国が攻めてくるときなのでしょう。
そのとき私は、どう動くのか……。今のうちに考えなければいけません。
目を背けるのか。敵として迎え撃つのか。いずれかを、あるいは双方を説得するのか。
一つわかることは、こんな悩みはかつての部下たちに背負わせるべきではない。
やはり、エピクレシ様のご厚意は、断るべきなのでしょうね。
「さて、悩むのもいいが、体を動かすことで晴れることもある。かかってくるがいい、風間に原に世良よ!」
「いや。そういうことなら、ロマーナさんと戦うんじゃないの?」
「今はお前たちを鍛える時間と聞いているのでな」
「合ってるけど、なんか釈然としないなあ」
「カザマたちであれば私が鍛えるので、君とロマーナで実戦訓練をしてもかまわないぞ?」
それも悪くないかもしれませんね。
そもそも、隊長になってからも私は深く考えるのは性に合っていないと言いますか。
理想としては、魔力を効率的に大爆発させて悩みごと吹っ飛ばすのが、好ましいですからね。
「それでは、少し付き合ってもらいましょうか」
「ダークヒーロー鳴神奏一。全力で相手をしよう!」
◇
「ステータスは、鳴神のほうが上なのに、ロマーナが勝つんだな」
「戦い方の問題だろうな。ロマーナの戦い方は上手い」
ダスカロスの言うとおり、魔力制御はさすがのものらしい。
伊達に、エルフの国の戦闘部隊隊長だっただけのことはある。
「それにしても……」
「駄目だぞ」
まだ何も言ってないじゃないか……。
「効率的な自爆を含めた戦法、俺も学びたかったなあ」
「だから、駄目だぞ」
鳴神に勝利したロマーナは、両腕が破損していたらしく、エピクレシにひどく叱られていた。
やはり脳筋族……。それを食らって平然としている鳴神といい、うちってそういうの多いなあ。