【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第456話 事故物件の原因の女

「プネヴマ様、お食事ですか?」

 

「え……あ、う、うん……」

 

 だ、誰だっけ……。ええと、たしか従業員の……。

 慣れない。地底魔界に魔族以外がいることは、いまだに慣れない。

 というか魔族が相手でも、私は緊張してしまう自信がある。

 い、癒しを求めないと……。

 

「今は、食堂行かないほうがいいですよ?」

 

「え……な、なんで……」

 

 もしかして、食堂で何か事件でも起きたの?

 マギレマちゃんが、ナツラちゃんを殴ってるとか?

 でも、それなら事件ってほどでもないし……。

 

 そんなことを考えていると、他の従業員のみんなは食堂へと向かっていく。

 あ、あれ……? まあそうだよね。もうお昼だし、みんな食事をしに行くのは普通のことだよね。

 でも、食堂には行かないほうが良いって……。

 私だけ行かないほうが良いってこと? ……も、もしかして、いじめられてる?

 こ、怖い……。これだから、人類は……。いや、魔族も……。

 

「おや、あなたも食事ですか」

 

「エ、エピクレシちゃ~ん……」

 

 怖くない魔族がいたので、私は避難するかのように抱き着いた。

 ああ、安心した……。雑に引き剥がされたけれど、これで少しは落ち着ける。

 

「では、一緒に食事しますか」

 

「あ、あの……良いんでしょうか? エピクレシ様。今は、プネヴマ様は食堂に行かないほうが」

 

 やっぱり、私だけは行かないほうがって言われている……。

 もしかして、バンシーにだけ効く、変な魔法でも発生しているとか……?

 テクニティスくんがアイテム作りに失敗したとかなら、あり得るかもしれない。

 でも、それなら食堂というのもおかしな話だし……。

 や、やっぱり、いじめられてる?

 

「別にかまいません。どうせ、すぐに元に戻りますし」

 

「そ、そうですか。では、俺たちはこれで」

 

 エピクレシちゃんの言葉に、従業員の人たちは食堂に向かっちゃった。

 やっぱりエピクレシちゃんってすごい……。

 しっかりと、十魔将しているなあ……。

 

    ◇

 

「あ、それ一口ください」

 

「どうぞ」

 

「もう一口ください」

 

「どうぞ」

 

「もう一口」

 

「ひな鳥ですか?」

 

 ……。食堂について最初に目にしたのは、とても素晴らしい光景だった。

 

「ぐえぇぇ……」

 

 魔王様にデザートをねだられたため、レイ様はスプーンを魔王様の口元へと運ぶ。

 魔王様は、遠慮なくそれを口にするも、一度では満足せずに何度も何度も……。

 あれって、レイ様が使っていたスプーンじゃないの? やはりお二人はそういう関係……。

 この光景を目に焼き付けておかないと……。

 

『エ、エピクレシちゃん。私、しばらくあの光景見ているから……。先に食べていて……』

 

「また魂が抜けましたか。先ほどの従業員たちの警告どおりでしたね」

 

 あ、また魂が口から出ちゃってる。

 でも、それならそれで、落ち着いてあの光景を見ていられるし、戻るのは後でいいや……。

 そんなことよりも、今はじっくりとあのお二人を観察して……。

 あ、体が引っ張られていく。エピクレシちゃん。エピクレシちゃん! テラペイアくんのところに連れて行くのは、もうちょっとだけ待って!

 

『わ、私のことは……放っておいていいから……』

 

「まったくもう。マギレマには、後で食事を運んでもらわないといけませんね」

 

 ああ、聞こえてない……。

 こうして私は、親切な友人のおかげですぐに復帰した……。

 

    ◇

 

「なんかプネヴマが、急に食堂で倒れた」

 

「いつものことなので、気にしないで良いですよ?」

 

 その通りなんだけど、あの光景に慣れて良いものなのかと不安にもなる。

 今は平和だから良いけれど、敵に奇襲されて倒されたとかの場合、判断できなくなりそうだ。

 ……原因をつきとめて、あの体質の改善とかできないものだろうか。

 

「テラペイアはどう思う?」

 

「その辺に放り投げておいてくれると助かるね」

 

「医者が匙を投げるほどかあ……」

 

「いや、優先順位の問題だ」

 

 なるほど。つまり、エピクレシの言うとおり、見た目ほど大変なことではないと。

 にしても、倒れ方で判別できないのは、やはり不便だ……。

 

「特に問題なく倒れるときは、倒れますって宣言してもらうか」

 

「そのころには、魂が抜けているので聞こえないと思いますよ?」

 

「となると、あとは倒れにくくなってもらうとか」

 

「そうしてもらえるのなら、私も助かる」

 

 だよなあ。毎日運び込まれているし、それがなくなるだけでもテラペイアの負担が減りそうだ。

 ということで、プネヴマを強化しよう。

 

「原因は二人にはわからないのか?」

 

「わかるぞ」

 

「わかります」

 

 え、そうなの?

 てっきり原因不明かと思っていたため、難航する覚悟でいたんだけど……。

 すでに解決の糸口は見えているのかもしれない。

 

「じゃあ、その原因を取り除けば……」

 

「駄目だ」

 

「それは駄目です」

 

 なんでさ……。

 いくら見た目ほど危険でないとはいえ、プネヴマが毎回倒れていたらかわいそうだろうが。

 

「あれは、魔王様とレイを見ただけで倒れる」

 

「え……フィオナ様と俺って、そんなに恐れられているの?」

 

「恐れといいますか、推しです」

 

 意味がわからない。

 よくわからないが、プネヴマはフィオナ様と俺を見て倒れてしまうらしい。

 なるほど、原因を取り除けないわけだ。俺はともかく、フィオナ様を地底魔界から追い出すわけにもいかないからな。

 

「……じゃあ、イピレティスと一緒に俺についてきてもらって、ずっと見てもらうことで慣れてもらうとか」

 

「……まあ、喜びそうですし。良いんじゃないでしょうか? たぶん、何度も倒れますけど」

 

「慣れるかどうかは疑問ではあるが、やってみる価値はあるかもしれない。それなら、私も同行させてもらおう」

 

 つまり、一時的に十魔将が三人もついてくるってことか。

 まあ、フィオナ様って魔王だし、そのくらい厳重な警備体制になっても不思議ではないか。

 

    ◇

 

「暑苦しいです」

 

「? おかしいですね。ちゃんと魔力で涼しくしてから抱き着いていますが」

 

「視覚的な意味で、腕が暑苦しいです」

 

「本当は嬉しいくせに~」

 

「……」

 

「嬉しいくせに~」

 

「嬉しいですけど、暑苦しいです」

 

 今日も今日とて腕にフィオナ様が抱き着いてくる。

 そして、これもいつもながらのことだが、うざ絡みとドヤ顔だ。

 おかげで、煩悩なく対処できている。

 

「ぐえ~」

 

 そしてプネヴマが倒れた。

 イピレティスが倒れる前に支えて、テラペイアが瞬時に蘇生した。

 すごいな。十魔将……。

 

「なぐさめなさい」

 

「手段はどうします? なでますか? 膝枕されますか?」

 

「え~と……今日は膝枕ですね。さあ、遠慮なく魔王の膝で寝るのです!」

 

 ガシャは今日もハズレだ。

 そうしてなぐさめることを強要されるのも、いつものこと。

 今日は俺が膝枕をされることで、心の安寧をはかるらしい。

 

「ぐえ~」

 

 心どころか、後ろで魂が抜けていく声が聞こえる。

 見た目美少女なのに、声が汚い。いや、声は綺麗だけど、断末魔みたいなのが汚い。

 トップである魔王様が、見た目は美しくもこんなに残念なわけだし、部下がそうでも仕方ないのだろうか?

 

「……なんでつねるんですか?」

 

「馬鹿にされていたからです」

 

「何も言っていませんが?」

 

「レイの考えていることなど、私にはお見通しなんですよ」

 

「それなら……」

 

 フィオナ様のガシャはきっと明日も外れるので、明日の慰める方法も考えておいてください。

 

「今、俺が考えたことわかります?」

 

「ガシャのことを考えていました」

 

 まじかこの魔族……。

 もしかして、本当に心を読めているんじゃないだろうか。

 

「私のために、明日は十連ガシャをすると考えていました」

 

「あ、それハズレです。魔王様って大したことないんですね」

 

「なにをぅ!?」

 

 つねられる力がほんの少し強くなった。

 目の前では、憤慨している魔王様のかわいらしい顔が見える。

 

「ぐえ~」

 

 二回目じゃないか?

 もしかして、倒れて蘇生して、その後また倒れた?

 

    ◇

 

「……無理そうだな」

 

「無理そうですねえ」

 

『あ、わ、私のことは……気にせず、お二人で……思う存分、イチャイチャしてください……』

 

「テラペイア。蘇生は?」

 

「無駄だと思ってね。とりあえず、放置している」

 

「やっぱり医者が匙を投げている……」

 

 あ、き、聞こえてない……。

 というか、魔王様とレイ様が……二人して……私の心配を……。

 な、なんて贅沢な……。あ、また魂が出そう……。

 あれ? 魂の状態だから、さらに魂が出たら……どうなるんだろう?

 ……出ないみたい……だね。よかった……。

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