【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第460話 最弱の猛獣使い

「女王様。オ掃除、終ワリマシタ」

 

「ご苦労様。魔王軍の皆様にご迷惑はおかけしていないわね?」

 

「大丈夫デス」

 

 大丈夫かしら。いえ、この子たちがそう言うのなら、間違いないはずね。

 良くも悪くも素直な子たちだから、もしも何か失敗してもごまかしたりはしないもの。

 ……いえ、聞き方が間違っていたわね。

 

「魔王軍だけでなく、転生者や他の従業員への迷惑は?」

 

「大丈夫デス」

 

 今度こそ安心した。

 さっきの質問では、そのあたりの報告がされていなかった可能性があるから。

 だけど、他の皆様たちへご迷惑をおかけしていないことは、本当のことみたい。

 

 私たち、下っ端だもんねぇ……。

 この地底魔界でご迷惑をおかけしないように、一つ一つ仕事をこなしていかないと。

 

 別に、地底魔界で暮らしているわけではない。

 私たちの場合は、巣はそのままだから、そちらで生活している者もかなり多い。

 なんだったら、今まで通り互いに無関係のままでも良いとさえ言っていただいている。

 

 まあ、それで安心できないわよねえ……。

 だって、魔王軍の実力を知ってしまったのだから。

 あのときは、本当に巣が消滅するかと思った。魔王様の怒り、それを受けて私は種の根絶を覚悟した。

 

 人類と魔族の争いは知っていたけれど、私の想定よりも遥かに上の次元の力で争っていたなんて……。

 魔王軍怖い。それと戦える人類も怖い。だから、私たちは庇護してもらわないと……。

 

 幸いなことに、魔王軍は私たちを人手として扱ってくれるみたい。

 なら、少しずつ役立てることを証明しないとね。

 

    ◇

 

「よし、今日は三人も見つけた~」

 

 宿の中で人が燃えた。

 魔王軍の従業員が炭となり床を汚す。私は兵隊に命じてその床を掃除させた。

 ……四天王ピルカヤ様。地底魔界の全てを見通しているだけでなく、世界中を見通せる恐ろしい方。

 魔王軍の従業員が裏切って人類に情報を漏らそうとしたことで、魔王様の指示を仰ぐよりも先に裏切り者を処分した。

 

「あ、あの……掃除終わりました。ピルカヤ様」

 

「ああ、ごめんね~。床を汚すなんて、最期まで迷惑なやつらだったよね~」

 

 その言葉に、私は愛想笑いするくらいしかできない。

 私たちを仲間と認めてくれているのはわかっている。

 だけど、裏切った末路が目の前にあるのだから。

 ……いや、もう痕跡もないわね。さすがは四天王。気分一つで私程度の命なら簡単に終わらせられるでしょう。

 

「レイ~。密告しようとしてたやつら燃やしたといた~。え? ……まあ、怪しそうだから夜通し見てたんだけど」

 

 ピルカヤ様は、どうやら宰相様に連絡を入れているらしい。

 この場にいるかのように会話しているので、きっと分体を通して会話しているのね。

 

「いや、だって引継ぎなんてしたら、ボクの手柄が減る……い、いやぁ? 別になんでもないけどぉ? ……なんでさ! レイのケチ!」

 

 ……何かをごまかしているような会話内容。そして、おそらく宰相様に言い負かされたということだけはわかった。

 つい先ほど恐ろしいと感じた四天王が、今は不満そうにしている。

 だけど、不機嫌というわけでもなく恐ろしさは感じない。

 四天王相手に、いったい何を言ったのかしら……。そして不満ながらも従わせるとは。

 

    ◇

 

「とても助かります」

 

「い、いえ、ご活用いただけているようで、なによりです」

 

 私たちの巣は、魔力の実を大量に栽培することに使われている。

 魔力回復薬の量産のため、四天王であるプリミラ様が直々に畑の様子を見るために、頻繁に訪れる。

 

「さて、問題はこれで解決するはずです」

 

「は、はい……」

 

 問題というのは、やはり私たち昆虫人という種族だ。

 迫害種だもんね。そりゃあ、そんなやつらが魔力の実を育てていたら、奪っていく種族だってそれなりにいる。

 プリミラ様にそれを伝えたところ、大量のグリフィンやヒポグリフ、コカトリスたちを引き連れてやってきた。

 ……というか、何匹かケツァルコアトルまでいるような。

 

「それでは、よろしくお願いします」

 

 プリミラ様の指示をしっかりと理解しているらしく、翼をもつモンスターたちが巣の中を自由に飛び回る。

 この子たちのために、宰相様が直々に私たちの巣を改良したため、今ではやけに高い天井の上にいるため、一見すると存在に気付かないでしょう。

 特に……魔力の実を奪うことだけを考えている者たちには……。

 

「……問題ありませんね。死体はダンジョンが吸収するため、放置しておいてください」

 

「は、はい……」

 

 大量のモンスターを使役し、一切の慈悲なく命が散らされていった。

 私たちも、少なからず争いを続けていた種族だけど、よ、容赦ない……。

 

『プリミラさ~ん。レイから連絡きてるよ~』

 

「ピルカヤ様。つなげてください」

 

 どうやら、また宰相様からお話があるようだけど、宰相様ってやっぱり忙しそうね……。

 

「いえ、大丈夫です。お借りした子たちだけで足りております」

 

 どうやら、モンスターたちの話みたい。

 借りた……。ということは、あの大量のモンスターは、宰相様が使役しているということよね。

 私の巣で将たちを殺したときも、ケルベロスを使役していたみたいだし、モンスターを扱う力をお持ちなのは間違いない。

 

「いえ、大丈夫です。いえ、ですから……ケツァルコアトルを量産するのはおやめください」

 

 何しようとしてるの!?

 できるできない以前に、そんな驚きが先にきてしまう。

 超位モンスターを量産できる宰相様……。

 無慈悲と思っていた四天王様ですら、やりすぎといさめる側に回らせるとは……。

 

    ◇

 

「ダートルさん。なんで、昆虫人なんか……」

 

「まあまあ。ダークエルフやオーガも働いているんだし、今さら種族も何もないでしょうが」

 

 宿で作業するのは、私たちだけでなく人間や獣人も多い。

 そんな中で、私たちを疎ましく思う者がいるのは当然だと思う。

 

「そもそも、俺たちみ~んな魔族の部下なんだからさあ。種族がどうとか、考えるだけ損だと思うぜ」

 

 そんな彼らを取り仕切るのは、四天王のリグマ様。

 人間のふりをしているらしく、ダートルという偽名を名乗っているらしい。

 今はそんなリグマ様に、不満そうに愚痴をこぼす従業員の相手をしている。

 

「それですよ。そもそも、魔族の言いなりになるのはもう限界です!」

 

「でもなあ。諦めたらわりと良い生活だぜ? まあ、真面目に働いていればいずれ自由だし。適度に頑張っていこうじゃない」

 

「いいえ。ダートルさんほどの方なら、俺たちを統率して、魔族どもに反乱できると思うんですよ!」

 

「あ、そういう感じ? う~ん……そういえば、密告しようとして焼き殺されたやつがいたよなあ」

 

「はい! あいつらのためにも、俺たちで魔族を出し抜いてやりましょう!」

 

「はい。アウト~」

 

「え……」

 

 その男たちは、リグマ様に体を貫かれてしまった……。

 きっと、何が起こったのかもわかっていないんでしょうね。

 

「ごめ~ん。掃除の仕事増やしちゃった~。おじさんも手伝うから、みんなで終わらせようなぁ」

 

「は、はい……」

 

 血にまみれた床を、私は兵隊たちと一緒に掃除する。

 それに、言葉通りにリグマ様まで熱心に床掃除をしている……。

 部下に優しい方なのだと思う。だからこそ、偽りの姿である人間の姿も信用され、ああして裏切りの話を相談もされていた。

 だけど、そんな相手をやはり躊躇なく絶命させる姿は、きっと割り切っているからなんでしょうね……。

 

 魔王軍の四天王。当然ながら最優先すべきは魔王様や魔王軍そのもの。

 協力者には優しいけれど、裏切りは決して許さない方々。

 

『リグマさ~ん。レイから~』

 

「おや? アナンタがついに、レイくんに根負けして倒れでもしちゃった?」

 

 また宰相様から……。本当に忙しい方ね。

 

「いや無理! 無理! 無理! おじさん、がんばってるよね?」

 

 なんか……急に苦労性な雰囲気が漂ってきている……。

 

「もうちょっとがんばれるけど、がんばりたくないの! なんでレイくんそういう見極めは上手いんだよ……」

 

 も、もしかして四天王をあごで使っている?

 い、いえ。宰相様だし、命令系統的には正しいのかしら?

 

「あ~……。もう、しょうがねえなぁ……。ナルカミが慣れるまでな。分体で補佐しときますよ~」

 

 どうやら、私と同時期に魔王軍に入った、ナルカミの仕事の補助を頼まれたらしい。

 リグマ様は、裏切り者を処分したときの雰囲気など、すでに霧散しており、なんだか哀愁が漂う姿に……。

 

「お、お疲れ様です」

 

「ほんとうにね~。まあ、実際のところ、無理じゃないからやるんだけどさあ。レイくん、おじさんの限界への理解高すぎないかなあ」

 

 そ、それは宰相様ですし……。

 恐ろしい四天王を上手に使い、なんなら振り回しているわね……。

 

    ◇

 

「はあ」

 

「おや、お疲れだねえ。仕事にはまだ慣れないかい?」

 

「体力が足りないのなら、体を鍛えたほうが良いぞ」

 

 ダークエルフの女王。オーガの族長。

 気づけば休憩時間に雑談することも増えてきた。

 特に、ナツラとこうして会話する日が来るなんて、少し前までは考えてもいなかったわね。

 だけど、気兼ねなく思ったことを話せる相手なのも事実だし、遠慮なくぶちまけておきましょう。

 

「四天王様、たまに恐ろしいと思って……」

 

「ああ、敵と味方への対応が実に明確に分かれている方々だからね」

 

「だけどそれよりも……」

 

「それ以上に恐ろしいことが?」

 

「そんな四天王様たちを振り回す宰相様……。もしかして、一番怖いのかなって」

 

 私の発言に、クララもナツラも何も答えなかった。

 ……な、何か言ってくれないと怖いんだけど!

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