【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

466 / 469
第466話 自浄機能稼働中

「あなたのこと噂になっていますよ」

 

 突然そんなことを言ったからか、目の前の転生者の男は訝しげに私を見る。

 いや、にらみつけると言ったほうがいいのかもしれません。

 この態度から、すでに他の転生者と同じく、この世界を乱す転生者ということが、なんとなく理解できました。

 

「なんだお前。エーニルキアかアルマセグシアの国民か?」

 

「いいえ、あなたと同じ転生者でルイス・アラーニャと申します」

 

「なんだ、お前も転生者かよ」

 

 私の言葉に、向こうは興味を無さそうな反応を取る。

 こちらが名乗っても、名乗り返すという考えすらないらしい。

 どうやら、彼の中ではこの世界の住人だろうが、同じ境遇の転生者だろうが、等しく自分に劣る存在なんでしょうね。

 

「それで、俺に接触してなんのつもりだ?」

 

「忠告しに来ました。あまり、女神の力で好き勝手しないほうがいいですよ。この世界にはこの世界の秩序があり、私たちはそれを乱すべきではありません」

 

 男はいよいようんざりした顔をする。

 ああ、またこの手のタイプですか。そうでしょうね。

 自分勝手に力を振るうからこそ、こうして噂になっているのでしょうから、最初から説得できるなど思っていませんでした。

 

「ルナティックアビスは、元からNPCだって殺せるゲームだろ。ゲーム通りに行動して何が悪い」

 

「ゲームではありません。こうして私たちが生きているこの世界は、すでに現実です」

 

 ゲーム感覚で、ただ力を行使するだけ。

 そして、他人にどれだけ迷惑をかけようが気にすることさえない。

 生前からそんな身勝手な人間だったのか。それとも、転生する際に女神にその意識を肥大化させられたのか。

 私は後者だと思う。だって、そうでなければ、あまりにも身勝手な人間が多すぎる。

 

「その手はなんですか?」

 

 気付けば男は私に手をかざしていた。

 こういう反応も、すでに何度か見てきている。

 つまり、邪魔になったのでしょう。

 

「要するに、俺のやることが気に入らない。敵ってことでいいんだろ?」

 

「はあ……。戦うということですか」

 

 話し合いは失敗し、いつのまにか戦いへと変わってしまったらしい。

 であれば、もうこちらも言葉を交わす意味もないと割り切って対処する。

 

「では、せめてこの中で。この世界をこれ以上破壊されたくありません」

 

「……その中が罠じゃないという保証は?」

 

「ありませんね、正々堂々と戦うことを信じてもらうしかありません。私は先に入りますので、あなたが入らないというのであれば、私を倒せなくなりますよ?」

 

 それだけ言い残し、空間の中へと移動する。

 追ってくるなら戦うし、追ってこないならその程度だったと割り切る。

 しばらくの間はありましたが、どうやら私を殺したいみたいですね。

 

「本当に誰もいないみたいだな」

 

「言ったはずです。この世界をこれ以上破壊されたくないと。それ以外の意図はありません」

 

 この中なら自由に戦っても問題ありませんからね。

 

    ◇

 

「ふむ、また一人転生者の消息がつかめなくなったか」

 

「はい、リズワン様。あまり良くない噂が流れていた転生者たちが、ここにきて次々と消息を絶っています」

 

 転生者の中には、俺たちを軽視する者も少なくない。

 特にひどい者になると、気軽に殺そうとさえしてくる危険なやつもいる。

 エーニルキアからはぐれた者は、特にその手の転生者が多い。

 あの王が、もはや飼い殺しすら不要と判断したということは、制御不能と判断されたということだろう。

 そんな者たちが反感を買って、この世界の者たちに襲いかかり、返り討ちにでもあったのか?

 

「なんか悪いわね。私たちと同じ転生者が」

 

「いや、大転生だからな。人柄まで考慮されていないことは、こちらも重々承知している」

 

 だからこそ、この鳳姉弟のように友好的なものは国に招くし、悪評の絶えない転生者たちはどの国も気にも留めていない。

 どうせ、自滅すると知っているからな。

 転生者同士で争うこともあれば、この世界の者をなめて返り討ちにあうこともある。

 女神の加護一つでどうにかなるほど、この世界は弱くはないつもりだ。

 

「さて、こうなってくると他の転生者も心配だ。ということで、俺は欲望のダンジョンに視察に行くことにする」

 

「おい待て。嬉々としてさぼろうとするな。馬鹿」

 

 王様だぞ! 馬鹿とはなんだ。馬鹿とは。

 

    ◇

 

「ひどくないか? 俺、王様なんだけど」

 

「結局、こうしてうちに遊びにきているから、俺はその部下の言うことが正しいと思うぜ……」

 

 というか、なんかどこかで聞いたことがあるセリフだよなあ……。

 うちのビッグボスと少し似ているよ。この王様。

 

「つれないなロペスよ。お前を心配して視察にきたんじゃないか」

 

「いや、そりゃあありがてえけど。うちで遊んでばかりで、あんたのところの部下が、うちに悪印象を抱くとそれはそれで困りそうだなあ」

 

「転生者って相変わらずまちまちよねえ」

 

「うむ。善良な者もいれば悪人もいる。目立たず生活している者もいれば、こうして商才を見せる者もいる。世界が違うだけで、俺たちと同じということだ」

 

「勇者もいるくらいだもんねえ」

 

 ……タケミのこと、もしかしてばれているのか?

 リズワン王もレンシャの姐御も、こうして友好的だし普段は店のカモにすぎないのだが、油断していると何かを探られそうで怖いな。

 とりあえず、一旦頭を馬鹿に切り替えてもらうか。

 

「まあ、俺は俺の生き方しかできないってことだ。どの世界にいようとな。というわけで、お二人さん。今日も俺のために宝箱でハズレを引いてくれ」

 

「その挑戦受けて立とうじゃないか!」

 

「次は引けるから。最近ハズレばっかりだし、そろそろアタリがくる確率の方が高いし!」

 

 そうして二人とも、今日も宝箱からハズレを引いた。

 いや、それなりに良いアイテムや装備も出ているはずなんだけど、なんか二人のアタリの基準が高くなっているみたいだ。

 ……そういうところも、うちのビッグボスみたいだよなあ。

 

    ◇

 

「というわけで、今日もリズワン王とレンシャの姐御は外れてた」

 

「そうか。……うん。報告してもらえるのは良いんだけど、ガシャの結果いるかなあ?」

 

「いえ、大事ですよ。なんせ、あの二人が外れ続けているということは、そろそろ私にアタリが回ってくるということですから」

 

「なんですか。その超理論」

 

 三人で運を共有でもしているのか?

 フィオナ様は、今日も意味不明な根拠で自信がいっぱいのようだ。

 

「二人とも見ていなさい。今日こそ、蘇生薬ですから」

 

「はい。それじゃあ、外れたら慰めるから、ロペスは開封後は出ていっていいぞ」

 

「おう。悪いなボス」

 

「開ける前から負けのことを考える宰相がいますか!」

 

「敵は内にいたみたいですね」

 

 でも、慰めるんだから良いじゃないですか。

 最終的にはちゃんと味方ですよ。

 とりあえず、宝箱を作成したので、さっさと外れてください。

 

「う~……。慰めの時間、三倍に増やしてやります」

 

「丸一日慰められる気ですか」

 

「勝てばいいんですよ。勝てば!」

 

 そんな会話をしていたせいなんだろうな。

 開ける前から外れたときのことを考えてしまったせいで、フィオナ様は今日も時任の店の在庫を補充してくれた。

 

「じゃあ、俺は職場に戻るな」

 

「ああ。あまり働きすぎるなよ」

 

「ボスこそ……なんか、ビッグボスがすごい密着しているな」

 

「もはや、取り憑いている悪霊のそれだと思う」

 

 フィオナ様がすっごいべたべたしてくる。

 今の俺、男性なんですけど。

 なんか、最近は女性同士でひっついているせいか、あなた俺に密着しすぎではないでしょうか?

 ……よし、ダンジョンのことを考えよう。

 あの魔本、俺がいつでも使えるようにビブリオンから借りておくべきかなあ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。