【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第467話 社長にボーナスはありません

「初めまして」

 

「ん? ああ、初めまして」

 

 見覚えのない女だ。ということは、うちのカジノにきた新規の客ってことだな。

 それにしても、わざわざ俺に挨拶しに来る客なんて珍しい。

 

「あなたがロペスさんですね」

 

「……ああ」

 

 俺を知っている?

 だが、この時点では、まだ判断できない。

 警戒すべき敵なのか、それとも単にどこかで噂を聞いてきただけなのか。

 

「私は、転生者のルイス・アラーニャと申します」

 

「それはどうも。俺は、ロペス・トタネスだ」

 

 転生者かあ……。それをわざわざ名乗って接触する。

 俺たちの仲間になりたいのか、あるいは……。

 とにかく、この場で話すというのは良くないな。とりあえず、客に聞かれないような場所に移るとするか。

 

    ◇

 

「ロペスさん。随分とこちらの世界で成功していますね」

 

「まあな。運が良かったみたいだ」

 

「ただ、カジノというのがどうもいただけない」

 

 すでに面倒ごとの予感がする。

 ヨハンといい、ホリイといい、こうしてわざわざ俺に絡んでくる転生者って、ろくなやついねえからなあ……。

 現に、ルイスもカジノに難色を示そうとしている。

 

「もしあなたが、真っ当な商売で成功したというのであれば、私も口出しする気はありませんでした。ですが、この世界の者から金銭を巻き上げる商売は、さすがに見過ごせません」

 

「おいおい、勘弁してくれよ。ちゃんと見返りはあるし、互いに合意の上での商売だぞ?」

 

「この世界の者を食い物にする。それは、私が見てきた他の転生者たちと同じだと思うのです」

 

「娯楽と商品を提供して金銭を得る。それって、真っ当な商売じゃないのかい?」

 

「あなたのそれは、違法なギャンブルです」

 

 ああ、そういうタイプね。

 潔癖症というか、なんというか、この手の人間は元の世界でも見たことがある。

 そして、話が通じないというのもわかっている。

 

「じゃあどうする? まさか、このまま商売をやめて路頭に迷えとでも言うのかい?」

 

「真っ当に生きましょう。あなたがその気なら、こんな方法以外でも稼げるはずですし、私たちも協力します」

 

 完全に善意のつもりなのが質が悪い。

 そもそも、これだって真っ当に生きていると思うんだけどねえ……。

 要するに、ルイスが気に入った商売以外は認めないってところか。

 

「覚えはありませんか? あなた、わりとやっかみを受けていますよ?」

 

「まあ、成功した相手を妬むやつがいるのは、どの世界も同じだろうな」

 

「同じ転生者の中にも、あなたを妬んでいる者もいるはずです」

 

「だろうなあ」

 

 前に、俺の顔見知りのハーフリングを利用して、ここで違法品を売るように命じた者もいたくらいだし。

 現地民にも転生者にも、俺を嫌っている者が一定数いても不思議ではない。

 

「率直に言いますと、迷惑なんですよ。中には、あなたを妬むあまりに嫌がらせをしようとして、ここで麻薬のようなものを売ろうとした者までいました」

 

 ちょうど、思い浮かべていたできごとを言い当てられる。

 こいつ、そのことも知っているってことは、まさか関係者なのか……?

 いや、名目としては、この世界の平和のためみたいな言い方だったな。

 だとしたら、そんなやつがこの世界の住人の害となるような、違法品の売買を命じることはないか。

 

「あなたを恨むあまりに、この世界に有害な物をばらまくよう指示した転生者は、すでに粛清しました」

 

「……そりゃあ助かる。手をわずらわせてすまなかったな」

 

 こいつも、俺と同じような界隈の人間か?

 いや、なんかそんな様子ではない気がする……。

 だが、ルイスが言う粛清というのが、要するに落とし前を付けたということなのはたしかだろう。

 

 そして問題は、この女があのハーフリングを唆した大本までたどり着いたことか。

 それだけの調査をする力を持っている。そして、転生者を倒すだけの力も持っている。

 ……敵にしたら、なんだか厄介なことになりそうだなあ。

 

「この世界に有害なものを作らないでください。この世界を害する行為を、私は見過ごすことはできません」

 

「転生者が、この世界で商売して成功することが許せないってことかい?」

 

「いいえ。それ自体は何の問題もありません。例えば、あなたと同じ場所で海を提供しているオクイさん。それに真っ当に商売をしているトキトウさん。彼女たちを見習うべきでは?」

 

 二人のことも知っているか。

 ……不気味な女に見えてきた。女神の加護で調査している?

 だが、そうなると転生者を倒してきた実力のほうは……レベルを上げたとかか?

 

「それでは、また後日。どうか賢明な判断をしていることを望みます」

 

「……俺もあんたにただで倒される気はない。粛清とやらをする気なら、全力で抵抗させてもらうぜ」

 

「かまいません。あなたのところの用心棒である竜人が相手だろうと、この世界のためであれば倒してみせましょう」

 

 ……また、厄介なのに目を付けられた。

 とりあえず、ボスに報告するかねえ。

 

    ◇

 

「ルイス・アラーニャ」

 

「ああ、そう名乗っていた」

 

 名乗り通りだ。ステータスに表記されている名前は、名乗りと同じものだった。

 ロペスからピルカヤを通じて、俺もその様子はよく見ていた。

 

 ルイス・アラーニャ 魔力:72 筋力:43 技術:61 頑強:63 敏捷:65

 

 鳴神よりも、わずかに弱い程度の実力者。

 ステータスによっては、鳴神以上のものもあるし、何よりも転生者としての力も当然ある。

 もしもゲームの知識まであるのなら、相当に厄介な相手なのかもしれない。

 

「超位モンスターを大量にけしかけるか」

 

「どんなときでも全力なのは、ボスの良いところでもあり怖いところでもあると思うぜ」

 

 だってやばそうな相手じゃないか。

 とはいえ、下手に手出しはできないか?

 能力すら判明してないと、モンスターをぶつけて偵察するのさえ、遠慮したいな。

 

「用心棒にウルラガがいるから、問題無いと思いたいが……」

 

「おう。久しぶりに面白そうな仕事になりそうだ」

 

 やる気だなあ。

 それにしても、時任や奥居のことは認めているみたいだし、なんとかロペスの方も穏便に認めてもらえないだろうか。

 

「カジノの操作でもして、利用客を多めに勝たせてみるか?」

 

「あの言い方だと、俺がこの世界の人間たちを食い物にしているのが、許せないみたいだしなあ」

 

 別に、金儲けに躍起になっているというわけでもない。

 それで面倒ごとを一つ避けられるのであれば、別に客に勝たせること自体は問題ないが……。

 

「ダンジョンもそうだが、カジノの勝ち負けのバランスもかなり大変そうだからなあ。ここで崩したら、客が離れないかが心配だな」

 

「そうなんだよなあ。あいつら、脳が焼けているから、簡単に勝てるとそれはそれで不満言いそうで」

 

「まあ、とりあえずは、様子見としてボーナス期間ってことにしておくか」

 

 いったんはそれで様子見。

 こちらもあの忠告後に行動したので、ルイスのような人間であればそこはきちんと評価するだろう。

 少なくとも、次にいきなり戦闘ということはなくなるはずだ。

 

    ◇

 

「それでレイ」

 

「なんですか? フィオナ様」

 

「そのボーナス期間とやら、もっとも優先すべきである魔王にはいつ訪れるのでしょうか?」

 

「フィオナ様の宝箱については、俺もテコ入れできないので諦めてください」

 

「そこをなんとか!」

 

 綺麗に頭を下げてこないでくださいよ。

 あなた魔王ですからね?

 

「俺だって何とかできるならしていますって……」

 

 あ、この魔王様、頭を下げたまま角で俺をチクチクとついてきやがった。

 俺のせいじゃないでしょうが。

 あなたの物欲やら運やらの問題ですって。

 

「仕方ありませんね。なら、今日も宝箱を作ってください。そして、私を思う存分甘やかしなさい」

 

「はいはい。それじゃあ慰める準備をしておきますよ」

 

「まだ負けたわけじゃありません!」

 

 甘やかせと言ったのあなたじゃないですか……。

 ロペスよ。うちにも宝箱に脳を焼かれたのが一人いるぞ。

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