【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第469話 危険物にのし飾り

「さあ、次こそ蘇生薬です!」

 

 まだまだ宝箱が残っているためか、フィオナ様は余裕の表情で魔力を注いでいく。

 この表情が、また泣き顔に変わるのかあ……。

 なるべくなら、笑っていてほしいんだけどな。

 それはそれとして、フィオナ様は泣き顔もかわいいと思う。

 

「装備ですね。残念ながら、四天王や十魔将のものよりも質は劣ります」

 

「そう簡単に、そんな上位陣の装備を更新できないでしょうね」

 

 いや、四天王全員が強化済みであることを考えると、そうでもないのか?

 この魔王様、なにげにガシャ運が良いような気がしてきた。

 単に蘇生薬という一点狙いだから、ハズレばかりという印象が大きいだけだな。

 

「次こそは!」

 

「蘇生薬じゃありませんね」

 

「なんの!」

 

「薬ではあるんですけどね」

 

「まだまだ!」

 

「不死鳥の羽なので、惜しくはあります」

 

 あ、かわいい。

 フィオナ様がぷるぷると震えている。

 だけど、やはりこの顔より笑顔の方が好きなので、いい加減当たってほしいと俺自身願っている。

 

「……いったん、徳を積みましょう」

 

「また、信心に頼るようになってしまいましたか」

 

「祈りの力が足りていない可能性がありますからね。そろそろ残弾も少ないことですし、やみくもに引いては敗北しそうです」

 

 そうは言うものの、ガシャなんて結局は運と魔力が全てだからなあ。

 やみくもに引く以外にできることなどないはずだ。

 

「よし! 掃除しましょう」

 

「なんですか、急に」

 

「こうもハズレを引くのは、きっと心が磨かれていないためです。掃除をすることで、地底魔界も心をきれいにしてしまいましょう」

 

 それ、試験勉強中の気分転換みたいなもので、最終的にはそちらに時間をかけてしまうことになりそうですね。

 というか……。

 

「フィオナ様の心はきれいですけど?」

 

「うっ……。嬉しい言葉ではありますが、今の私を甘やかしてはいけません」

 

 これは、どうやら本気のようだな。

 普段なら、むしろもっと甘やかせと甘えてくるのに、今はなんとか自制しているみたいだ。

 

 それにしても、掃除か……。

 

「黎明の宝玉、使います?」

 

 以前引き当てたアイテムの一つだが、魔力を注ぐことで周囲を浄化する効果があるはずだ。

 うちの従業員たちは真面目なのか、掃除は自分たちで行うため、いまだに使用したことはない。

 

「いえ。楽せず自ら動くことが徳につながるはずです」

 

 まあ、トップがこれだもんなあ。

 部下も自然に真面目になるのは、当然のことなのかもしれない。

 

「あと、あれはあくまでも、浄化アイテムです。なので、ゴミを消すとかではなく、ゴミがとても綺麗になるだけですね」

 

「ああ、そういう……」

 

 なら、どの道掃除には向いていないようだな。

 呪いや病原菌などを排除するってことか。

 今度、テラペイアに預けておこう。

 医務室なら、あの宝玉で綺麗にする意味もありそうだし。

 

「ということで、ついてきなさい。徹底的に掃除しますよ! 私の宰相」

 

「じゃあ、ガシャは一旦お開きですか?」

 

「そうなりますね。先ほどまでのハズレは、一旦みんなで分けておいてください」

 

 いつも通り、自らの魔力を消費して、部下に様々な物資を配る魔王様となった。

 これも徳にならないのだろうか?

 

「お掃除か~。江梨子ちゃん、私たちも掃除する?」

 

「そうね。せっかくだし、部屋や職場を綺麗にしてもいいかも」

 

「師匠の職場も、掃除したほうが良いんじゃないですか? だいぶ散らかっていますし」

 

「う……。まあ、そのなんだ。あれはあれで、便利だが……まあ、この機会に片すのもいいかもしれん」

 

「僕も手伝いますよ」

 

「すまん……」

 

 転生者たちも、魔族たちも、従業員たちも、各々掃除をするようになったらしい。

 理由はともかく、一応魔王様の提案なので、それにならって行動するみたいだな。

 影響力があるのはいいことだけど、その行動理由がガシャなのが若干残念ではある。

 

    ◇

 

「さて、みんないなくなったことですし、私とレイは玉座の間のお掃除です」

 

「物はまったくないので、わりと楽そうですね」

 

「ええ。玉座くらいしかありませんからね」

 

 ここで勇者たちと戦ったようだし。

 さすがに、散らかっているということもない。

 生活感丸出しの場で戦ったら、勇者たちも嫌だろうからなあ。

 

「そういえば、信心と言っていましたが、当然あの女神に対してではないですよね?」

 

「当たり前じゃないですか! 誰が、あんなのを信仰しますか!」

 

 だよなあ。あれを信仰するようだったら、俺は全力でフィオナ様を止めていたと思う。

 となると、別の神様か?

 

「この世界って、他に信仰対象があるんですか?」

 

「なにもあの女神だけが信仰対象ではありませんからねえ。姿なき上位存在だろうと、祈りが本物であればそれは信仰です」

 

 そのあたりは、俺の前の世界の祈りに近いのかもしれないな。

 なまじ存在が確認されているため、あの女神への信仰が強いというだけであり、それ以外を信仰することもあるというわけか。

 

「もしも別の神様がいるのなら、あの女神の代わりにこの世界を管理してほしいものですけどね」

 

「う~ん……。あれであの女神の手腕は、なかなかのものなんですよねえ。今は世界を監視しないで自動化できているほど、信仰心が揺るがなくなってしまっていますし」

 

 そのおかげで、俺たちが目を付けられていないともいえるが、なんとも複雑な状況だ。

 それだけ、女神の力が絶対的であるということへの裏返しだもんな。

 

「まあ、そもそもそんな神様との伝手なんてありませんか」

 

 さすがのフィオナ様だって、そんな繋がりなどないだろう。

 などと考えていると、フィオナ様は少し迷ったようなそぶりを見せた。

 何かあるけれど、俺には明かせないってことだろうか?

 

「さっき当てた深淵の書ですが、あれが伝手ともいえるかもしれませんね」

 

「そういえば、あの本の効果を聞いていませんでしたね。神様関係って、そんなにすごい本だったんですか?」

 

「まあ、すごいことは間違いないですよ? ただ、すごすぎるせいで使用には危険が伴うのです」

 

 危険……。まあ、神への伝手といえるほどのアイテムなら、とんでもない代物であることは想像に難くないからな。

 

「魔力を消費し、神と呼べるような高次元の存在と交信する。そうして、力を得るのがあの本です」

 

「聞いただけでも相当にすごい効果じゃないですか?」

 

「そうなんですよ。ただ、神らしき何か高次元の存在なので、正しく神につながるかは不明なんですよね」

 

「使用した人に聞いてみるとか……」

 

「使用者は精神が崩壊しています」

 

 やばそう。

 まあ、何の準備もなく神と交信をするんだもんな。真っ当な精神ではそのまま壊れてもおかしくないか。

 そう考えると、あの女神のやつは、一応転生者である俺たちに加減していた可能性がある。

 もしもあいつが加減なくその場に存在していたら、俺たちは転生どころかあの場で心が壊れていたのかもしれない。

 

「となると、再生成可能なモンスターたちや、不死鳥の羽で復活しても、そのまま精神が壊れそうですね」

 

「ええ。なので、この本はビブリオンに厳重に保管してもらうことにしましょう」

 

「魔本と違って、誰でも貸し出しできるようにはしない方が良さそうですね」

 

「そうですねえ。試練を乗り越えても貸し出しできないよう、彼女にはしっかりと伝えておくことにします」

 

 下手したら影冠樹よりもとんでもない代物だ。

 悪用どころか誤って使用しただけでも大変だし、封印しておくのがいいんだろう。

 ……いや、罠として勇者たちに使わせたら、蘇生後も精神が崩壊したままなのでは?

 

「勇者に使わせられませんかね?」

 

「どうでしょう。ただ、あまりお勧めはしませんね」

 

 フィオナ様は、俺の案に否定的な態度を示した。

 

「まず、使用者の精神こそ崩壊しますが、絶大な破壊の力をもたらします。そのため、地底魔界どころか魔王軍の被害も未知数です」

 

「なるほど……」

 

「さらに、勇者の精神が崩壊するほどの事案であれば、さすがの女神も異変に気付きます。いえ、そもそも深淵の書で高次元の存在の力が世に放たれたら、その時点で女神が異変の調査を行いそうですね」

 

「それを聞くと、ますます使い道が無くなりますねえ」

 

「そういうことです。やはり悪用されないよう、封印するのが一番良さそうです」

 

 なんだか、爆弾みたいなアイテムが手に入ってしまった。

 どうせ燃やそうとしても、変なことが起こるんだろうなあ。

 うちでしっかりと保管しておかないと。

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