【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「それじゃあ、玉座の間の掃除も終わったことですし、次はフィオナ様の部屋のほうですかね」
「二人でさくっと終わらせてしまいましょう」
あ、やっぱり俺も手伝うんですね。
自分の部屋の掃除なので、あまり他人には手伝わせたくないかと思ったが、そこは面倒くささが勝ったのだろう。
「まあ、普段から部屋に入り浸っているので、いまさらですか」
「そのとおりです。もはや私の部屋はレイの部屋のようなものですし、レイの私物も私の部屋に置いたほうが良いんじゃないですか?」
同棲でもさせようとしているんだろうか。
まあ、効率的ではあるか。魔王と宰相がまとまっていたほうが、何かあったときの報告も一度で済むし。
「なら、なおさらしっかりと掃除しないといけませんね。さすがに、俺の私物を置くほどのスペースはなかったはずですし」
「あ、あれ? わりと前向きに考えてくれています? いいでしょう! 毎日一緒に暮らして、毎日一緒に寝てやりますとも!」
なんかいつものテンパったときのフィオナ様だ。
どうやら、同棲の案は冗談だったらしく、俺がそれに乗ってしまったことで、後に引けなくなっているな。これは。
「冗談ですよね?」
「む……そ、そうですけど~? さすがに、一緒に暮らすのは……」
「ですよねえ」
「でも、一緒に寝たいんですけど! 今日も、寝ますよ! 良いですね!」
なんでそんな強気で来るんだ。この魔王様は。
まあ、どの道今日は一緒に寝る日だったし、それに関しては何の不満もないけれど。
「さて、まずはどこから片付けるかですね」
「私は、一旦魔王ボックスや本の整理をしますので、レイも適当に片付けてください」
わりと大雑把な指示だな。
だけど、普段目にしている本棚やアイテム類をフィオナ様が担当するのなら、俺は普段は目にしていない部分を片付けるってことか。
とりあえず、このあたりには何が置いてあるのかな……。
「ちなみに、こっちがいるものボックスで、こっちがいらないものボックスです」
宝箱が二つ用意された。
相変わらず、開封後の宝箱を活用される方だなあ。
とりあえず、俺はこの棚から見ていくとするか。
◇
「魔力系の触媒? これはよくわからないので、一旦いるものか……」
エピクレシの研究室にあるようなものが、わりとたくさん出てきた。
フィオナ様、そういう研究はしないと思うので、エピクレシへの褒美用に溜めてあるのかもしれない。
「こっちは、布類。ラプティキさんに全部渡しているわけじゃないのか」
四天王や十魔将、転生者や従業員。
それぞれに必要なものは、その場で全て渡していると思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
案外大量に、多種多様な物がこの部屋にはしまってあった。
さすがに食料類こそないものの、部下たちが喜びそうなものが保管されている。
「こっちは、結晶系か」
音楽結晶ではないから、映像結晶だな。
魔導映写館に全てを明け渡したわけではなく、個人で楽しむためにいくつか保管してあるみたいだ。
なんの映像か確認しておかないと、いるかいらないかの判断もできそうにないな。
「あ、それは!」
俺が映像を流そうとした直前に、フィオナ様が慌てたように反応した。
なんか、見られてはいけない映像だったりする?
だけど、すでに映像は流れ始めた。
魔導映写館のような設備はないため、巨大なスクリーンに流れることこそないものの、小さく画面が投影される。
これは……。
「俺?」
「あ、え、え~と……それは、違うのです」
俺じゃない? いや、どう見ても俺だよなあ。
小さな映像の中に映し出されたのは、まぎれもなく俺自身であり、いつも通りダンジョンを作成しているようだ。
「……ピルカヤに頼んで、働いているあなたの姿を映像化しました。ごめんなさい」
「……まあ、地底魔界での仕事は、定期的に魔王様に見られているのはみんな知っていますけど」
普段ぐーたらなくせに、暇すぎるのか実はそれは演技なのか、抜き打ちで部下の仕事を観察しているんだよなあ。
そうやって査定を下していると考えると、少し怖いな。この魔王様。
俺の行動を記録しているのは、もしかして何かまずいことをしたためか……?
「ええと。なんか失敗しましたっけ? このときの俺」
いつも通りダンジョンの案を考え、いつも通りアナンタに却下され、いつも通りバランス調整後のダンジョン構築をしたはずなんだけど。
やはり、一度ダメ出しされたのがマイナス査定なのか?
となると、俺の仕事は毎回マイナスされていそうだ。
「い、いえ。いつも楽しそうでかわいいなと思っていますよ? べ、別にいつでも見られるようになんて邪な考えは……」
……もしかして、ペットカメラの映像くらいに思っています?
なるほど。フィオナ様にとって、俺の作業風景は動物系の映像みたいなものなのだろう。
「まあ、趣味なら何も言いません。これは、いるボックスのほうでいいんですね?」
「もちろんです! あ、あれ? 盗撮なので怒られると思ったのですが」
「たまに見ているということは知っていますし、別にいつでも見て良いですよ」
それで楽しめるというのなら、何も問題ない。
てっきり、俺の仕事のダメな部分を証拠化したのかと焦ったが、そうでないのなら気にする必要ないからな。
「じゃあ、今後もたっぷりあなたを見ますからね!」
「ええ。ついでに、何かダメそうなところがあったら、いつでも言ってください」
「……魔王にガシャを引かせる回数が少ないのは、あまり良くないと思うのですがいかがですか?」
「宰相としては、あまり無駄な魔力を使いすぎるのもいかがなものかと思います」
「くっ……手ごわい」
あなたの宰相を舐めないでくださいね。魔王様。
そちらが俺の仕事ぶりを観察するというのであれば、こちらもあなたのわがままが魔王としてなのか、フィオナ様としてなのか、しっかりと見極めますから。
「……断ったのに、なんか上機嫌ですね」
「いえ。まあ……はい。レイの姿を映像結晶に収める許可をもらえたので」
「俺なんかの姿、いつでも誰でも、見たければ勝手に見ればいいと思います」
「まあ、言わんとしてることはわからないでもないですけど、私も別に今のこの姿を映像結晶に収められても気にしませんし」
まあ、そんなことする変なやつはいないだろうし、意味のない話だな。
◇
「きょ……許可が出た……! ピルカヤ様……! エピクレシちゃん……! 早く!」
プネヴマが、またも興奮状態で私たちに催促する。
要するに、今のお二人の姿を映像結晶に収めろということでしょうね。
「一応断ったりしたほうが、よくありません? そもそも、これ盗み聞きじゃないですか」
「またダスカロスに怒られない?」
「だ……大丈夫……! みんなの……お掃除が終わって……次の作業を聞こうと……しただけだし……。お邪魔にならないため……念の為、ピルカヤ様……に、お二人の様子を……見てもらっただけだから……」
まあ、実際にそうでしたし、念の為様子を見てもらわないと、お二人の邪魔をすることになっていたのは事実です。
しかし、この子が言うとやけに言い訳っぽく聞こえるのは、なぜでしょうね……。
「その言い訳、ダスカロスに通じますかね?」
「無理だろうな」
私の問いかけへの答えは、目の前の幽霊からではなく、背後から聞こえてきました。
「あ、ダスカロス」
「ひ、ひぇっ……!」
こうして私の残念な友人は、ダスカロスに引きずられていった。
なんか目配せしてますけど、自分がいない間のお二人の様子を映像化してくれということでしょうねえ……。
これからのお説教よりも、そんなことを頼むほうが大事とか、わりと余裕ありますね。あの子。
「はあ……ピルカヤ様。お二人のお姿、本当に保存してもいいか、確認していただけますか?」
まあ、当人が気にしないのであれば、協力してあげましょうかね。