【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第471話 毎日見つめ合う二人の主従

「喜びのダンジョン……」

 

 ダンジョンですよね?

 人類の脅威となるような場所に、なぜこのような名前が……。

 まさかこれも、悪しき転生者の所業なのでしょうか?

 であれば、また粛清しなければ……この世界の平和のためにも、同じ転生者である私が何とかしなければなりません。

 

「昆虫人のお店ですか」

 

 たしか、このゲームでは迫害されていた種族のはずですね。

 それがこうして、まっとうな商売をしているとは、ゲームよりも良いところもあるのでしょうか?

 応援の意味も込めて、少しお買い物しておきましょう。

 

「いらっしゃいませ」

 

「魔力を回復する薬の専門店ですか……」

 

「ええ。このダンジョンに適した商品ですので」

 

「なるほど……では、いくつか購入させてください」

 

 昆虫人の方は、ごく普通に接客してくれました。

 特に暗い様子でもないため、やはりゲームよりも良い環境なのでしょうね。

 そんな昆虫人にとっての喜びということでしょうか……?

 

    ◇

 

 ダンジョンの中を進んで行く。

 別に今回が初のダンジョンというわけではありません。

 何度か踏破しています。ゲームで見たことがあるものも、見たことがないものも、ダンジョンですらなかったものもです。

 なので、やることは変わりません。

 

 罠に気をつけながら一歩一歩進んで、モンスターが出たら油断なく倒すだけ。

 危なそうなら迷わず引き返す。それを徹底し、欲はかかない。

 それを心に刻みながら進んでいきますが……ちょっと長いですね。

 

 もしかして、ダンジョンではなく単なる洞窟だったのでしょうか?

 いえ、それだとあのお店も意味がわかりませんね。

 それに、私以外もここに潜る者がいるということは、ダンジョンの可能性が高いということ。

 とりあえず、もう少し進んでみましょうか。

 

「人だかり?」

 

 真っすぐ進み続けてようやくたどり着いた扉の前、そこには何人かの冒険者が並んでいました。

 扉が開かない? というわけでもなさそうです。

 彼らは大人しく順番を待つかのようにしており、開かない扉を前に奮闘している様子すらありませんので。

 

「あの? 入らないんですか?」

 

 なので、声をかけてみると、暇そうにしていた冒険者の方は、私の問いに答えてくれました。

 

「順番を待っているんだ」

 

「はぁ。順番……?」

 

「その様子じゃ、あんたここは初めてみたいだな」

 

「ええ。噂を聞いたので訪れてみたのですが、何やら独自のルールでもあるようですね」

 

 尋ねた方は、どうやらここを熟知しているようなので、順番待ちとやらの時間で話を聞いてみることにしました。

 

「看板にあったとおり、ここで得た力というかアイテムは、この場限りのものなんだ」

 

「そうなのですか。でも、そうなると探索する利点がないのでは?」

 

「ボスを倒した際の宝箱だけは別でね。みんなそれ目当てなんだよ」

 

 なんだか腑に落ちません。

 それなら、ここ以外のダンジョンで良いのでは?

 他のダンジョンでも、ボスを倒したあとに宝箱は手に入ります。

 それに、道中手に入れたアイテムが消えることもありません。

 

「ここはその分大量のアイテムが手に入るからな。道中に高ランクの装備が手に入ると楽だし楽しいぞ?」

 

「なるほど……安全に探索ができるわけですね」

 

「そう。特に他よりもはるかに安全だ。ここのモンスターたちの特性なのか、逃げた相手を追うことはない。ここでの死者はいまだにゼロだからな」

 

「それはまあ……」

 

 なんとも、怪しいダンジョンですね……。

 何かしらの意図がありそうといいますか、そもそもダンジョンは魔王の意思で作られるため、どれも意図はあるのでしょうけど。

 侵入者を生かすことにどんな意味が……。

 

「それで、ここの順番待ちは、最初の部屋の大量の宝箱を取り合いにしないためのものだ」

 

「最初の部屋?」

 

「ああ、この先には毎回必ず大量の宝箱が配置されている。それらの中身で強化し、ダンジョンを探索するのがここのやり方だ」

 

「ですが、先に入った者が独占したら、後の者たちは何も得られないのでは?」

 

「平気平気。しばらく待っていたら、この部屋の宝箱はすぐに作成されるみたいだから」

 

 ますます怪しい……。

 これ、転生者絡みではないでしょうか?

 ですが、その目的がわかりません。

 宝を餌に転生者を狩ろうというわけでもなく、搾取しようというわけでもなく、手が込んでいる割に何をしたいのかが読めませんね……。

 生かして帰すよう徹底しているのであれば、危害を加えているのかすら判断できません。

 

「ありがとうございました。では、私はあなたがたの後を待ってから挑むことにします」

 

「ああ、楽しんでいってくれ」

 

 楽しむ……。ダンジョンなのに?

 目的がわからない以上、実際に探検してみるのが早そうですね。

 

    ◇

 

 なるほど、一時とはいえ強力な装備が手に入り、それらでモンスターを倒すのは、たしかに楽しめるともいえます。

 一時的な強力な力の体験。それがこのダンジョンの良さであり、喜びと呼ばれる理由ですか。

 

「ボスもわりと簡単に倒せましたし。何度も挑む者がいるのも、わからなくはありません」

 

 ……困りましたね。

 巧みにダンジョンに誘い込み、現地の者たちの殺戮を目的としているのであれば、間違いなく悪しき転生者なのですが。

 現地の者を楽しませることを目的としているのであれば、粛清すべきではないはず……。

 そもそも、このようにモンスターや宝箱を操れるとも思えませんし、魔王の仕業と考えるべきでしょうか?

 

「……保留ですね。やはり、それよりは欲望のダンジョンのカジノのほうが問題です」

 

 ここは判断しかねるため、まずはそちらを先に対処しましょう。

 さて、ロペスさんは私の忠告を聞いてくれたでしょうか。

 できることなら、転生者同士協力し合える関係が望ましいのですが……。

 

    ◇

 

「ということみたいだよ~」

 

「勘弁してほしいねえ。ルイスのやつ、またうちに来るのかよ」

 

 ピルカヤの発言に、ロペスはうんざりしたような言葉で応えた。

 まあ、この手のトラブルは、基本的にはロペスのところにいくからなあ。

 他に向かわれると困るので、対応可能なロペスに矛先が向くように、あえてロペスを目立たせているということもある。

 現に、発言こそ嫌そうに聞こえるが、その態度はまったく堪えた様子もなく、彼ならばどうとでもなることが伺える。

 

「どうする? 戦闘になるようなら、モンスター作っておこうか?」

 

「いや、そのほうが警戒されそうだし、気持ちだけ受け取っておくよ。ボス」

 

 まあ、ルイスのステータスからすると、モンスターでは実力不足かもしれないしな。

 ウルラガになんとかしてもらうのがよさそうか。

 

「適当に煙に巻いとくさ。どうやら、完全に俺を敵視しているわけでもなさそうだしな」

 

「わかった。何か必要になったら言ってくれ」

 

 ロペスは、いつも通りにカジノに向かった。

 たぶん、ルイスが来たとしても、何食わぬ顔でカジノを経営するんだろうなあ。

 

「カジノ、閉鎖したら色々面倒だからなあ」

 

「おや、そんな話に? なんですか? ついにリズワンやレンシャが破産しました?」

 

「カジノで破産しそうなのは、フィオナ様くらいだと思います」

 

「なにをぅ!? あの二人だって、私と大して変わらないじゃないですか!」

 

 どちらかというと、破産しないと怒ってほしかったんだけど、そっちに怒るかあ……。

 

「フィオナ様、放っておいたら破滅しそうなので、俺が毎日監視しておきますね」

 

「信用がないですねえ! いえ……なぁんだ。つまり、毎日私を見ていたいということじゃないですか。素直にそう言ったらいいのに」

 

「……まあ、毎日見ていても飽きませんけど」

 

「では、たっぷりと今日の私を見る許可を出しましょう。さあどうぞ」

 

 この後ひたすらフィオナ様を見つめる謎の時間が設けられた。

 自分の顔に自信があるようでなによりですね。

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