【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第473話 神様の気まぐれ

 欲望のダンジョン。

 なんの変哲もないといいますか、喜びのダンジョンほどの特異性はありませんね。

 

 油断していたらきっと死にます。

 モンスターたちは加減なんてしてくれません。

 罠も巧妙に設置されています。

 であれば、やはり喜びのダンジョンのほうが異常なのでしょう。

 魔王が実験的に作成したか、あるいは……転生者の仕業か。

 

「ということは、ロペスさんがこの近くにカジノを作った理由は……」

 

 商店や宿ならわかります。

 ダンジョン目当ての冒険者に、最も近い場所で品を売るのであれば、ニーズに合っていますから。

 ですが、ロペスさんや奥居さんは、あくまでも娯楽施設。

 ダンジョンの近くに作らずとも、アルマセグシアあたりに作ったほうが……。

 

「市場を荒らさないように、わざわざ辺鄙な場所に作っているのでしょうか」

 

 ならば、カジノでさえなければ、私もむしろ賞賛できたのに……。

 本当に、その一点だけが残念です。

 ギャンブルにのめり込むと人はおかしくなる。

 そんなこと、私自身が前世で身に沁みて理解していますから……。

 苦しむのは本人のみならず、家族もなのです。

 私のように……。

 

「あとは、宝箱の出どころがこのダンジョンという可能性ですが……」

 

 どうやら当てが外れそうですね。

 たしかに宝箱はあります。ですが、喜びのダンジョンのように大量にというわけではありません。

 毎日これらを回収したとしても、とてもカジノで使う分を補えるとは思えません。

 

「いったいどこから……」

 

 もしかして、宝箱を作成するのがロペスさんの力?

 それならカジノを経営したのも、理解できるかもしれません。

 自身の力で生成できる宝箱を売り物にすれば、元手なしで稼げますからね。

 そこに無理なくシフトするために、カジノを作ったというのであれば、やはり彼は商才があるのでしょう。

 

「参りましたね……。彼の言うとおり、綺麗事だけでなんとかできない問題なのかもしれません」

 

 カジノをやめさせることなら、きっと可能でしょう。

 力も私のほうが強く、あの場で働いているのが流れ者の転生者や迫害種なので、よく思っていない者も少なからずいますので。

 ですが、それで無理やりやめさせたところで、その転生者や迫害種を路頭に迷わせるのも違います。

 

「後回しなんでしょうかねえ……」

 

 解決策を見いだせないまま、欲望のダンジョンを進んで行く。

 現れるモンスターは、一体ずつ私とともに別の空間へと送り、確実に倒す。

 罠も発生直後に別の空間に送ることで、安全に進んで行く。

 便利ですね。この力。

 

「それにしても、わざわざこんな危険な場所で……」

 

 ……なぜこんな場所で?

 この世界の者たちの邪魔にならない場所だとしても、もっと安全な荒野などはいくらでもあります。

 宝箱を回収するため? いいえ。ここの宝箱だけでは、カジノで使う分をまかないきれません。

 ダンジョンの利用客をそのまま自分のカジノの客にしようとした?

 だとしても、わざわざダンジョンの隣に構えるのは不自然ではないでしょうか?

 

 ……もしかして。

 魔王軍と――通じている?

 そんなはずは、という気持ちが先に来るも、それで辻褄が合ってしまう。

 ダンジョンを作れる魔王軍であれば、宝箱をより大量に確保できる。

 危険なダンジョンに店を構えているのも、仲間であれば何も問題はなく、むしろ荒くれ者の冒険者に絡まれても処理しやすい……。

 

 どこまで?

 魔王軍は、どこまで復活している?

 五人の勇者が、魔王以外を倒したことは聞いています。

 魔王もしばらくは動かなくなったのは、その後の動向からも正しいでしょう。

 ですが、動けないのか動かないのか……もしかして、水面下で動いていたのだとしたら?

 四天王や十魔将まで復活していたとしたら……。

 

「ここまで、ですね」

 

 私は、あえて興味をなくしたような独り言を呟きました。

 もしもピルカヤが復活していたとしたら、私の行動も発言も筒抜けになっているかもしれませんから……。

 

 問題は、ロペスさんや奥居さん。

 転生者でありながら魔王軍に協力しているとしたら、ゲームの知識が無い?

 

 どのエンディングでも、魔王軍は滅んでいる。

 バッドエンドでは、魔王軍が世界を征服した後に、壊神で世界ごと。

 ノーマルエンドでは、人類に敗北して。

 トゥルーエンドでは、やはり壊神の力によって。

 

 はっきり言ってしまうと、魔王軍は泥舟でしかありません。

 ですが、それもあくまでゲームでの話……。

 あの二人は、魔王軍を勝たせようと動いている?

 

 まずは……話が必要ですね。

 決めつけだけで動くには、問題が大きすぎますから。

 

    ◇

 

「また来たのかい……」

 

「ええ。今回は転生者同士として、聞きたいことがありまして」

 

「とは言っても、俺は元のゲームのこと知らないからなあ」

 

「やはり、そうでしたか……」

 

 俺の言葉を予想していたらしく、ルイスはむしろ納得したような表情を見せた。

 

「奥居さんも、同じく知識はほとんどない。そうですね?」

 

「あまり聞いたことはないな。なんで、そんなことがわかるんだい?」

 

 何かヘマをしたか?

 ゲームプレイヤーであれば、決して行うことがないような、おかしな行動を……。

 まあ、魔王軍の傘下という時点で、そうだろうけどな。

 

「ゲームプレイヤーであれば、魔王の拠点ともいえるダンジョンに、店を構えようなんて考えませんから」

 

「危険は重々承知している。だが、幸いこちらには頼れる用心棒もいるからな」

 

「竜人ですか……。彼も転生者なのですか?」

 

「いや? 現地で会った協力者さ」

 

 俺の言葉に、ルイスは思案するような素振りを見せる。

 この様子だと、こいつわりと深いところまでゲームのこと知っていそうだな。

 

「あなたたち、魔王軍とつながっていませんよね?」

 

「そんなことになったら、俺たちは勇者に狙われるだろうな。ぞっとする話だ」

 

「……ええ。本当に危険な道です。その先には滅び以外ありません」

 

 どうかねえ……。

 どちらかというと、この道以外こそが滅びの道な気がするが。

 いったい、何をそんなに恐れている?

 

「俺たちが勇者に殺されるっていうのが、あんたの言う滅びってわけだ」

 

「いいえ。もっと大局的なものです。文字通り、この世界が壊れるのですから」

 

「……物騒な話だなあ」

 

「ええ、それほど危険なのです。魔王軍と、魔王軍が起こそうとしているものは」

 

 ……魔王軍が起こそうとしているもの?

 まるで、ビッグボス以上の脅威がいるかのような口振りじゃないか。

 勘弁してくれよ。ビッグボスでさえ、生きる天災のような方だぞ? それを上回る……前にジノが言っていた滅びの未来ってやつか?

 

「ゲームの知識ってわけだ。それを教えてもらえれば、俺たちみたいな知識がないやつも、危機感を持てると思うんだが」

 

「混乱のほうが大きいでしょうね。中には自暴自棄になって、この世界をめちゃくちゃに荒らす者も少なくないはずです。あなたも少なからず、見てきたのでしょう? 女神から得た力を傲慢に振るう者たちを」

 

 それについては、何も言い返せねえなあ……。

 あの人畜無害なトキトウでさえ、女神の力は毎日便利そうに使っている。

 それだけ大きなものを与えられたのだから、無理もないだろう。

 

「さらには、率先して自身が依代になって、世界を滅んでも生き延びようとする者さえ現れるかもしれません」

 

 依代か……。

 概念的な危機であり、依代に憑くことで力を発揮する何か?

 あるいは霊か……それとも――神か。

 神なら最悪だな。俺たちの力を与えたのも神だ。

 それだけの存在が滅びを招くというのなら、戦える者がどれほどいるか。

 自暴自棄になるという懸念のほうが当たりそうだ。

 

「そのうえで、もう一度聞きます。ロペスさん。あなた、魔王軍と手を組んでいませんよね?」

 

「疑り深いねえ……。俺だって平和な日々が一番さ。争いは好きじゃないんだ」

 

「……そうですか。今日はこれで帰ります」

 

「次こそは、客としてきてくれよ~」

 

「それはお断りします。私、賭け事は嫌いなので」

 

 ……ありゃあ、疑いは晴れてないよなあ。

 今後は、ボスたちとの関係を気取られないようにしねえと。

 

    ◇

 

「フィオナ様と相性悪いかもしれませんね」

 

「ええ。まさか、賭け事が嫌いな転生者とは……」

 

 まさかってなんだ。

 意外そうな顔をしているが、うちの魔王様は転生者をなんだと思っているんだろうか。

 

「ロペスなら大丈夫だろうけど、あまり嗅ぎ回られると面倒そうですね」

 

 かと言って、モンスターでどこまで太刀打ちできるのか。

 相手の実力が未知数というのは、実にやりにくいものだ。

 いっそ、喜びのダンジョンの常連にでもなってもらって、あの場所に縛り付けられないものか。

 

「十魔将、四天王、あるいは私が相手をしましょうか?」

 

「やめてください。なんでそんなに好戦的なんですか」

 

「レイが困っているようですからね! 私の宰相の負担を減らそうという、魔王的気遣いです」

 

「それはどうも……」

 

「おやぁ? 刺さりました? 刺さっちゃいましたかぁ?」

 

「フィオナ様の情報は、誰にも漏らしたくないので、大人しく読書でもしていてください」

 

「独占欲が強いですねえ。私の宰相は」

 

 違うんだけど、まあいいか。

 それが一番楽だということはわかるけど、万が一を考えると最善とは言えない。

 まずは、相手の情報を得るところからだろうな。

 この魔王様に、もしもなんてあってはならないのだから。

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