【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「女神が悪と断じていたのだから……」
倒さなくてはいけない。
この世界の管理者が悪と認定しているのであれば、やはりロペス・トタネスは悪なのでしょう。
彼を殺すことで、彼のもとで働いている者たちは、職を失う。
でも、その能力があれば、他でもやっていけるはずなのですから……。
……本当に?
迫害種とされている彼ら彼女らは、能力とは関係なく雇用されないのでは?
ロペスさんが言っていたように、私の行動で幾人もの現地民が路頭に迷うのでは?
「それも……多数を守るためには、仕方がないことなのですから……」
せめて、もっと決定的にこの世界を害する者だったら……。
いえ、そんなことを望むものではありません。
「調査が……必要ですね」
決心がつかないため、誰にでもない私自身を納得させるかのように、そんな言い訳を口にしました。
◇
「ロペス様。あの女性、連日外れ続きです」
「そうだな。そろそろ、魔力操作で当てさせてやってくれ」
「ロペス様。リズワン王が、ロペス様と後で話したいと」
「わかった。落ち着いたら向かうと伝えておいてくれ。あと、ドリンクでも振る舞っておいてくれ」
「ロペス様。私たちの女王が、かまってもらえなくてさみしそうです。魔王様と宰相様みたいに、後ろから抱きついてあげてください」
「何を言っているのかなあ!? 君たちは!」
「いや、そんなことしたら、俺殺されるだろ……」
「……殺さないのに」
今日も今日とて、カジノは盛況だ。
だが、いつものことなので、目が回るような忙しさということもない。
その証拠にダークエルフたちは、自分たちの女王をからかっているくらいだからな。
「ロペス様。宝箱がそろそろ不足してきました」
「おお、そうか。それじゃあ、ちょっと行ってくる」
リズワン王とレンシャの姐御。また盛大に宝箱を開けてくれたみたいだなあ……。
あの二人に加えて、何人かの常連が来た場合、準備していた宝箱は簡単に枯渇するもんな。
単に店にある分が不足しただけでは、わざわざ俺に報告せずに倉庫から持ってくるだろう。
だから、俺に報告したということは、倉庫の宝箱までなくなりそうということだ。
一旦地底魔界まで戻って、ボスに作ってもらわねえと。
「……?」
視線を感じる?
周囲を見渡すと、なんか真っ赤になってこちらを睨んでいる女王様がいるが、あの視線ではないな。
というか、なんで俺に怒るんだよ……。どちらかというと、あんたの部下の不始末じゃんか。
『ロペス~。レイが、宝箱用意したってさ~』
ああ、ピルカヤの旦那の視線だったか。
近くにあった松明が揺らいでいるし、ここから俺たちの様子を見て、ボスに伝えてくれたみたいだな。
「ありがとなピルカヤの旦那。ボスにすぐ取りに行くと伝えてくれ」
それにしても仕事が早い。
宝箱の不足が俺に伝わり、補充を頼もうとした瞬間には、すでに用意してもらえているとは。
「女王様……」
「なんだい?」
「ええと……宝箱取りに行くから、ここを任せても?」
「行ってきたらいいじゃないか」
「ロペス様。そこは、一緒に取りに行くところです」
「いや、そういう仕事なら昆虫人の兵隊たちに頼むから……」
俺と女王様二人が向かっても効率悪いだろ。
「俺の代わりに、しばらくここを頼むなら、女王様が適任だろ」
「ま、まあ、君がそういうのなら、良いとも」
「ああ、女王様なら間違いないからな。しばらく頼むぜ」
「これはこれで良いと思います!」
「うるさいな君たちは! サボってないで、働くよ!」
女王様、部下に舐められてんのかなあ……。
いや、信頼されているのは確かだし、あれがダークエルフなりのやり取りなのかもしれねえな。
まあ、俺は俺でさっさと仕事を済ませてしまうか。
◇
カジノを出て、ダンジョンの中を進んで行く。
罠を避けて、モンスターたちの邪魔にならないよう、さっさと進む。
今の時間だと、侵入者もわりといるからなあ。
その横で平然と歩いていったら、さすがに不審に思われるだろう。
慎重に、人目につかないように地底魔界付近を目指す。
「倉庫広げてもらうかねえ……」
業務中に宝箱を取りに戻るのは、わりと面倒だからな。
というか、そうまでする必要が出てくるなんて、リズワン王たちに限らず、宝箱にハマってる客たちの熱意を甘く見ていたか?
なんてことを考えていると、行き止まりへとたどり着いた。
「ピルカヤの旦那」
念の為周囲を見渡し、誰もいないことを確認してから小声で呼びかける。
すると俺の到着はすぐにボスへと伝わり、目の前の壁が崩れ落ち、そのまま消滅する。
「悪いなボス。想定以上に宝箱が人気みたいだ」
「ボスではないな。俺が頼まれて持ってきた」
「おっとすまねえ」
っと、出てきたのはドリュだったか。
まあ、ボスが直接こっちに渡しに来る必要もないし、当然と言えば当然だったな。
『太客が重なったからなあ。倉庫を拡張して、もう少し在庫を増やしておくか』
「そうしてくれるとありがたいね」
ボス自身とはピルカヤの旦那のおかげで話ができるし問題ない。
そして、話が早くて助かる。
ボスはボスで、俺と同じ考えに至ってくれていたらしい。
今回ほどの消費はそうそうないだろうが、そのたびに取りに戻るのは時間がかかるからな。
「それじゃあ、もらっていくぜ。ドリュ。兵隊たち、これを倉庫まで運ぶの手伝ってくれ」
「カシコマリマシタ」
俺の指示に嫌な顔一つせず、昆虫人の兵たちはきびきびと働いてくれた。
もしかしたら、俺が一緒にいなくても問題なかったか?
いや……頑張ってくれているんだが、カジノでの働きを見る限りでは、こいつらだけに任せたら何か失敗しそうなんだよなあ。
今回は急ぎだし、こうして見てやらないといけないが、もう少し余裕があるときは全て任せてみるか。
とりあえず、待たせている客のために急いでカジノに戻らないとな。
◇
「ああ……理由ができてしまいましたか」
できてよかったのか。できないほうがよかったのか。
今でも答えは出ていません。
ですが、こうなった以上は、迷っていることもできないでしょうね。
カジノの様子を見張っていると、気になっていた宝箱の話になっていました。
欲望のダンジョンだけでは、どう考えてもまかないきれない量の宝箱。
それが不足しているため、ロペスさんは取りに行くとダンジョンに向かった。
存在を消したままついていくと、ロペスさんは罠にもかからずモンスターにも襲われず、安全な道を進んでいく。
それはまだわかります。ダンジョンの隣で商売しているだけあって、そのあたりは熟知しているというのなら説明はつきます。
ですが、問題はその後……。
「まさか、魔族と通じていたなんて……」
行き止まりまでやってきたロペスさんでしたが、壁が急に消えてなくなり、中からは魔族の男が現れました。
間違いなく敵でしょう。ゲームで見たような気がしますが、私も魔王軍の全てを熟知しているわけではありません。
ですが、あの百足の下半身を見るに、あの男が魔族であり、魔王軍なのは間違いないはずです。
ロペスさんは、その男から宝箱をいくつも受け取っていました。
つまり、あのカジノ自体が魔王軍に関連していた。
大方人類から資金を奪い疲弊させようとしていた、といったところでしょうか?
「ロペスさん……あなた、本当に人類を裏切って魔王軍についてしまっていたんですか」
これで……彼を殺す理由ができてしまった。
彼の配下が路頭に迷い不幸になることもあるでしょう。
ですが、私は女神の言うとおり、魔王を魔王の仲間を討ちます。
ただ、軽率に私だけで挑むのもよくありません。
「ピルカヤ……たしかに、そう言っていましたからね」
つまり、四天王が最低でも一人は蘇っている。
用心のため対策していて良かった。
あとは……四天王を私が倒せるかどうか。
いずれ魔王を倒すことを考えると、四天王なんかで躓くわけにはいかない。
だけど、今の力の差がわからないことには、下手に挑んでも返り討ちでしょうね。
……勇者に協力を仰げば。
リック? 大きな騒ぎになって、魔王を刺激しそうですね。
イド? 一人で四天王に挑みそうですが、最悪四天王を倒せればそれでもいいかもしれません。
テンユウ? ……理想的なのですが、テイランに伝手がありません。ゲームと同じなら門前払いでしょうね。
へーロス? こちらはこちらで単身で挑みそうですが、そもそも私にルダルとの伝手はありません。
「オルナスが一番適しているでしょうか……。最も適しているのは、テイランのテンユウですが、無理でしょうからね」