【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第476話 迷える子羊は神にすがる

「女神が悪と断じていたのだから……」

 

 倒さなくてはいけない。

 この世界の管理者が悪と認定しているのであれば、やはりロペス・トタネスは悪なのでしょう。

 彼を殺すことで、彼のもとで働いている者たちは、職を失う。

 でも、その能力があれば、他でもやっていけるはずなのですから……。

 

 ……本当に?

 迫害種とされている彼ら彼女らは、能力とは関係なく雇用されないのでは?

 ロペスさんが言っていたように、私の行動で幾人もの現地民が路頭に迷うのでは?

 

「それも……多数を守るためには、仕方がないことなのですから……」

 

 せめて、もっと決定的にこの世界を害する者だったら……。

 いえ、そんなことを望むものではありません。

 

「調査が……必要ですね」

 

 決心がつかないため、誰にでもない私自身を納得させるかのように、そんな言い訳を口にしました。

 

    ◇

 

「ロペス様。あの女性、連日外れ続きです」

 

「そうだな。そろそろ、魔力操作で当てさせてやってくれ」

 

「ロペス様。リズワン王が、ロペス様と後で話したいと」

 

「わかった。落ち着いたら向かうと伝えておいてくれ。あと、ドリンクでも振る舞っておいてくれ」

 

「ロペス様。私たちの女王が、かまってもらえなくてさみしそうです。魔王様と宰相様みたいに、後ろから抱きついてあげてください」

 

「何を言っているのかなあ!? 君たちは!」

 

「いや、そんなことしたら、俺殺されるだろ……」

 

「……殺さないのに」

 

 今日も今日とて、カジノは盛況だ。

 だが、いつものことなので、目が回るような忙しさということもない。

 その証拠にダークエルフたちは、自分たちの女王をからかっているくらいだからな。

 

「ロペス様。宝箱がそろそろ不足してきました」

 

「おお、そうか。それじゃあ、ちょっと行ってくる」

 

 リズワン王とレンシャの姐御。また盛大に宝箱を開けてくれたみたいだなあ……。

 あの二人に加えて、何人かの常連が来た場合、準備していた宝箱は簡単に枯渇するもんな。

 

 単に店にある分が不足しただけでは、わざわざ俺に報告せずに倉庫から持ってくるだろう。

 だから、俺に報告したということは、倉庫の宝箱までなくなりそうということだ。

 一旦地底魔界まで戻って、ボスに作ってもらわねえと。

 

「……?」

 

 視線を感じる?

 周囲を見渡すと、なんか真っ赤になってこちらを睨んでいる女王様がいるが、あの視線ではないな。

 というか、なんで俺に怒るんだよ……。どちらかというと、あんたの部下の不始末じゃんか。

 

『ロペス~。レイが、宝箱用意したってさ~』

 

 ああ、ピルカヤの旦那の視線だったか。

 近くにあった松明が揺らいでいるし、ここから俺たちの様子を見て、ボスに伝えてくれたみたいだな。

 

「ありがとなピルカヤの旦那。ボスにすぐ取りに行くと伝えてくれ」

 

 それにしても仕事が早い。

 宝箱の不足が俺に伝わり、補充を頼もうとした瞬間には、すでに用意してもらえているとは。

 

「女王様……」

 

「なんだい?」

 

「ええと……宝箱取りに行くから、ここを任せても?」

 

「行ってきたらいいじゃないか」

 

「ロペス様。そこは、一緒に取りに行くところです」

 

「いや、そういう仕事なら昆虫人の兵隊たちに頼むから……」

 

 俺と女王様二人が向かっても効率悪いだろ。

 

「俺の代わりに、しばらくここを頼むなら、女王様が適任だろ」

 

「ま、まあ、君がそういうのなら、良いとも」

 

「ああ、女王様なら間違いないからな。しばらく頼むぜ」

 

「これはこれで良いと思います!」

 

「うるさいな君たちは! サボってないで、働くよ!」

 

 女王様、部下に舐められてんのかなあ……。

 いや、信頼されているのは確かだし、あれがダークエルフなりのやり取りなのかもしれねえな。

 

 まあ、俺は俺でさっさと仕事を済ませてしまうか。

 

    ◇

 

 カジノを出て、ダンジョンの中を進んで行く。

 罠を避けて、モンスターたちの邪魔にならないよう、さっさと進む。

 今の時間だと、侵入者もわりといるからなあ。

 その横で平然と歩いていったら、さすがに不審に思われるだろう。

 慎重に、人目につかないように地底魔界付近を目指す。

 

「倉庫広げてもらうかねえ……」

 

 業務中に宝箱を取りに戻るのは、わりと面倒だからな。

 というか、そうまでする必要が出てくるなんて、リズワン王たちに限らず、宝箱にハマってる客たちの熱意を甘く見ていたか?

 なんてことを考えていると、行き止まりへとたどり着いた。

 

「ピルカヤの旦那」

 

 念の為周囲を見渡し、誰もいないことを確認してから小声で呼びかける。

 すると俺の到着はすぐにボスへと伝わり、目の前の壁が崩れ落ち、そのまま消滅する。

 

「悪いなボス。想定以上に宝箱が人気みたいだ」

 

「ボスではないな。俺が頼まれて持ってきた」

 

「おっとすまねえ」

 

 っと、出てきたのはドリュだったか。

 まあ、ボスが直接こっちに渡しに来る必要もないし、当然と言えば当然だったな。

 

『太客が重なったからなあ。倉庫を拡張して、もう少し在庫を増やしておくか』

 

「そうしてくれるとありがたいね」

 

 ボス自身とはピルカヤの旦那のおかげで話ができるし問題ない。

 そして、話が早くて助かる。

 ボスはボスで、俺と同じ考えに至ってくれていたらしい。

 今回ほどの消費はそうそうないだろうが、そのたびに取りに戻るのは時間がかかるからな。

 

「それじゃあ、もらっていくぜ。ドリュ。兵隊たち、これを倉庫まで運ぶの手伝ってくれ」

 

「カシコマリマシタ」

 

 俺の指示に嫌な顔一つせず、昆虫人の兵たちはきびきびと働いてくれた。

 もしかしたら、俺が一緒にいなくても問題なかったか?

 いや……頑張ってくれているんだが、カジノでの働きを見る限りでは、こいつらだけに任せたら何か失敗しそうなんだよなあ。

 今回は急ぎだし、こうして見てやらないといけないが、もう少し余裕があるときは全て任せてみるか。

 

 とりあえず、待たせている客のために急いでカジノに戻らないとな。

 

    ◇

 

「ああ……理由ができてしまいましたか」

 

 できてよかったのか。できないほうがよかったのか。

 今でも答えは出ていません。

 ですが、こうなった以上は、迷っていることもできないでしょうね。

 

 カジノの様子を見張っていると、気になっていた宝箱の話になっていました。

 欲望のダンジョンだけでは、どう考えてもまかないきれない量の宝箱。

 それが不足しているため、ロペスさんは取りに行くとダンジョンに向かった。

 

 存在を消したままついていくと、ロペスさんは罠にもかからずモンスターにも襲われず、安全な道を進んでいく。

 それはまだわかります。ダンジョンの隣で商売しているだけあって、そのあたりは熟知しているというのなら説明はつきます。

 ですが、問題はその後……。

 

「まさか、魔族と通じていたなんて……」

 

 行き止まりまでやってきたロペスさんでしたが、壁が急に消えてなくなり、中からは魔族の男が現れました。

 間違いなく敵でしょう。ゲームで見たような気がしますが、私も魔王軍の全てを熟知しているわけではありません。

 ですが、あの百足の下半身を見るに、あの男が魔族であり、魔王軍なのは間違いないはずです。

 

 ロペスさんは、その男から宝箱をいくつも受け取っていました。

 つまり、あのカジノ自体が魔王軍に関連していた。

 大方人類から資金を奪い疲弊させようとしていた、といったところでしょうか?

 

「ロペスさん……あなた、本当に人類を裏切って魔王軍についてしまっていたんですか」

 

 これで……彼を殺す理由ができてしまった。

 彼の配下が路頭に迷い不幸になることもあるでしょう。

 ですが、私は女神の言うとおり、魔王を魔王の仲間を討ちます。

 

 ただ、軽率に私だけで挑むのもよくありません。

 

「ピルカヤ……たしかに、そう言っていましたからね」

 

 つまり、四天王が最低でも一人は蘇っている。

 用心のため対策していて良かった。

 あとは……四天王を私が倒せるかどうか。

 いずれ魔王を倒すことを考えると、四天王なんかで躓くわけにはいかない。

 

 だけど、今の力の差がわからないことには、下手に挑んでも返り討ちでしょうね。

 ……勇者に協力を仰げば。

 リック? 大きな騒ぎになって、魔王を刺激しそうですね。

 イド? 一人で四天王に挑みそうですが、最悪四天王を倒せればそれでもいいかもしれません。

 テンユウ? ……理想的なのですが、テイランに伝手がありません。ゲームと同じなら門前払いでしょうね。

 へーロス? こちらはこちらで単身で挑みそうですが、そもそも私にルダルとの伝手はありません。

 

「オルナスが一番適しているでしょうか……。最も適しているのは、テイランのテンユウですが、無理でしょうからね」

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