【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第477話 臨時パーティ開催中

「ルイスお姉ちゃん」

 

 拠点としている街へと帰ると、子供たちがそれに気付いて駆け寄ってきた。

 よそ者にすぎない私を、この街は温かく受け入れてくれています。

 自分たちに、それほどの余裕が無いはずなのに。

 

「お土産は~?」

 

「変なこと言わないの。ごめんねルイスさん」

 

「いいえ、かまいません。今日はダンジョンを攻略したので、いくつかのアイテムやモンスターの素材を」

 

 それらを渡すと、どちらかというと大人たちが喜んでくれました。

 子供にはつまらないものなのか、不満そうですね。

 

「あなたたちには、お菓子をあげましょう」

 

 赤の他人である子供たちにお菓子を配る……。

 前の世界では、なんか下手したら通報されそうな気もしますが、この世界ではそんなこともありません。

 

「ありがとう、ルイスお姉ちゃん」

 

「すみません、この子たちが……」

 

 平和です。平和な街です。

 住民は善良で、元の世界よりは貧しいですが、心は豊かです。

 こんな良い街が……もうすぐ滅びるなんて。

 

 ここは、じきに炎に包まれる。

 四天王ピルカヤと戦う舞台は、燃え盛る街の中ということが多い。

 その一つがこの街であり、当然ながら生存者なんて期待できません。

 仮に逃げ延びたとしても、生きる場所を奪われた者たちが、この世界で次の安住の地を探すことはできるのか……。

 無理でしょうね。

 

「お姉ちゃん大丈夫?」

 

「ええ、すみません。少し考えごとを」

 

「戻ったばかりで疲れているのにすみませんね。ほら、お姉さん疲れているんだから、宿で休ませてあげないと」

 

 その言葉に、街の人々は私を心配しながら去っていきました。

 勘違いさせてしまいましたね。

 まだ予兆はない。ですが、ピルカヤは生きている。あるいは復活している。

 であれば、ここがいつ戦場にされるかわかったものではありません。

 

 勇者たちは、魔王と戦った。その前に魔王軍を根こそぎ殺害した。

 だというのに、この街が無事ということは、ピルカヤとの戦闘回数が少なくなるようなフラグで進んでいる可能性が高い。

 だけど、今後も無事だと安心できるわけでもない。

 

 現実ですからね……ここは。

 

「一秒後にピルカヤが訪れ、ここを焼き払っても不思議ではありません」

 

 これまでは、魔王軍の復活はまだ先だと安心していました。猶予があると思っていました。

 ですが、どうやらそうではなく、魔王軍は水面下で動いていた。

 それが、狡猾な魔王の策略とも知らずに……。

 

「やはり、一刻も早くピルカヤだけでも倒さないと」

 

 この世界に害をなす転生者の粛清をしている場合じゃない。

 アルマセグシアに向かって、オルナスに協力を仰がないといけない。

 この地を離れることへの不安はあるけれど、文字通り火元を消してやらないと、この街を守ることなどできないのだから。

 

    ◇

 

「……いない」

 

 勇者がいない。アルマセグシアにたどり着いた私が知った事実。

 どうやら、オルナスは蘇生後のレベルダウンをなんとかするために、部下を連れてモンスターを倒しに行っているらしい。

 たしかに、オルナスの力を取り戻すことは、何よりも優先すべきことでしょうけど……。

 なんて間が悪い。

 

「このままこの街にいても仕方ありません……。すぐに帰って」

 

 そう考えていた私の目に、とある店の店員と常連らしき客のやり取りが映りました。

 

「来たわよ~」

 

「良いタイミングだな。ちょうど開店だ」

 

 ……店員のほうは、あの名前。転生者ですね。

 客の方は……見えない。隠している?

 まさかまた、この世界を害する悪しき転生者なのでは……。

 あの街を襲った転生者といい、ロペスといい、次から次へと……。

 

「喫茶店……ですか」

 

 休憩も兼ねて、一度様子を見てみますかね。

 

    ◇

 

「いらっしゃいませ」

 

 店に入ると、先ほどの転生者の男が一礼しました。

 内装は落ち着けるような作りをしていて、ほどよく静かな空間は、自身の時間を楽しませてくれることが期待できます。

 ……普通の、いえわりと良い喫茶店ですね。

 悪事は働いていないようですし、考えすぎだったのでしょうか。

 

「注文が決まったら、お申し付けください」

 

 店員も、こちらを急かすことなく、ゆったりとした時間が流れていく……。

 先に入っていた常連客も、この時間を楽しんでいるようですし、特におかしな店ではありませんね。

 

 ……でも、それならどうして、私にステータスが見えないのでしょうか。

 お偉いさんが、お忍びで利用していたり……?

 そんなふうにまじまじと見てしまっていたためか、その常連客は私の視線に気づくと笑顔で尋ねてきました。

 

「どうしたの? なにか、用事かしら?」

 

「あ、いえ、すみません……。なんと言いますか、情報遮断の結界のような痕跡があったため、少し気になってしまいまして」

 

「……あらぁ。あなたこれがわかるの? なかなか魔法に詳しいのねえ」

 

 常連客の女性から、興味深そうな視線を向けられる。

 まあ、私が魔法に長けているのではなく、単なる女神の加護なんですけど。

 なんとなくばつが悪くなってしまい、私は席を立って店を出ようとした。

 

「すみません。私はこれで」

 

「あら、もう行っちゃうの? ゆっくりしていけばいいのに。良いお店よ? ここ」

 

「ええ、それは同意しますが、急いでいまして。勇者様にお会いできなかったので、すぐに街まで戻らないと」

 

「……何かあったの?」

 

 私の言葉を聞いて、女性は真剣なまなざしで問いかけた。

 なんとなく、その真剣な表情に気圧されてしまった私は、隠す理由もないので正直に状況を口にする。

 

「私の街が四天王に襲われそうなので、心配なんです」

 

「物騒な話ね……。なるほど、だからオルナスに会いに来たってこと」

 

 ……勇者を呼び捨て?

 

「四天王は倒したはずだけど、まさか生きているの?」

 

「いえ。実際に見たわけではなく、あくまでも噂と言いますか」

 

 残念ながら、こちらも生存は確認できていない。

 ピルカヤという言葉は聞いたけれど、それが四天王かどうか、生存しているかまではわからない。

 でも、それが万が一四天王だった場合。

 あの街が危険なのは確かなんです。

 

「誰の噂かしら? プリミラ? リグマ? ピルカヤ? まさか……リピアネムじゃないでしょうね?」

 

「ピルカヤです」

 

 私の言葉に、女性はホッとしつつも困ったような表情へと変わりました。

 わかります。一番危険なのは、間違いなくリピアネムでしょう。

 ですが、ピルカヤはピルカヤで、相当に厄介な存在。

 と言いますか、四天王ならば誰もが脅威ですね……。

 

「よし、オルナスに代わって手伝ってあげる。ピルカヤの居場所に案内なさい」

 

「え」

 

「店員さん。お勘定よろしく~」

 

「ああ、またのご利用お待ちしています」

 

 女性は、私の分まで料金を支払うと、私を連れて店の外へと向かった。

 え……オルナスの代わり?

 

「さて、お忍びは終わりね。始めまして、テイランの勇者テンユウよ。勇者として、あなたの街に迫る脅威を調査するわ」

 

「テ、テンユウ……様」

 

 さきほどまで一般の女性だった姿が、私がよく知る主人公の一人へと姿を変えた。

 勇者テンユウ……。それは奇しくも、私がこの件で最善と考えていた勇者でした。

 

    ◇

 

『聞いていたか? 宰相様』

 

「ああ、ピルカヤのこと、バレてるみたいだな」

 

 店を出たとはいえ、かろうじてダンジョンの一部での会話なので、なんとか聞き取ることができた。

 

『え~? なんで~?』

 

 ピルカヤの不満そうな声が聞こえるが、今回は心当たりがないな。

 もしかして、またモリーのときみたいに存在を気取られないことに特化した転生者か?

 いや、あの空間作成の力だとしたら、歪みは発生するはず。

 もしかして、あの歪みはわざと?

 本当は、完全に痕跡を消して別の空間に退避できるのか?

 

「ルイス・アラーニャか……」

 

 ちょっと、まずそうな相手っぽいな。

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