【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第483話 相性最悪の勇者戦

「いるんでしょ? ピルカヤ」

 

 ルイスちゃんと別れ、先ほどの場所へと戻ったアタシは、崩れ落ちた岩の前でそう呟いた。

 なんかあの子カジノに向かっちゃったけど、レンシャみたいに賭博にハマったとかじゃないわよね?

 まあ、しっかりしていそうな子だったし、さすがにそれは無いと思いたい。

 それよりも、今はあの子を巻き込まないように、こっちに集中しないとね……。

 

「……」

 

 返事はない。だけど、アタシには確信がある。

 これでも勇者の中では、魔力に関しては最も秀でている。

 だから、アタシが間違えているとは思っていない。

 わざわざ対策もしないで、ここの調査をしただけあって、ピルカヤの視線はしっかりと感じた。

 魔力の残滓は確かにそこにあった。

 

「根競べといっても、こっちが不利だし面倒なのよねえ……。お互い仕事はさっさと終わらせたいでしょ? さっさと出てきてくれないかしら?」

 

 四天王ピルカヤ。

 まあ、魔王が復活させるなら、優先順位はかなり高いでしょうね。

 ピルカヤがいるかいないかで、得られる情報が違いすぎるもの。

 だから、魔王が想定以上に力を残していたのなら、ピルカヤが復活していることは不思議じゃないわねえ。

 

 やっぱりというか、アタシたちが命を捨てて挑んでも、魔王の力を削ぐことすらできなかったってことでしょうね。

 嫌だわあ……。勇者を一撃で殺す魔法だから、もしかしたら無理して力を注いだなんて期待もしたけれど、案の定それほどの力の差があるってことじゃない。

 あのリピアネムですら、魔王の前では前座も前座って実力になるわけだし、ちょっと受け入れたくない事実ね。

 切り崩すには、アタシたちが強くなって魔王に挑む……以外にも何か必要なんでしょうね。

 

 さてと、返事はまだみたい。

 どこまで復活しているのかしら。ピルカヤだけ? それとも四天王全員? 十魔将は?

 ダスカロスも復活しているのなら、今ごろ魔王と一緒にピルカヤの行動を決めているころかしら。

 

    ◇

 

「なるほど……どおりで、テンユウとルイスの会話を見ることができたわけだ」

 

 欲望のダンジョンに二人が侵入した様子を、ピルカヤを通して観察することができた。

 こちらの拠点であり、当然ながらピルカヤ用に松明を設置しているので、当然と言えば当然だ。

 しかし、以前フィオナ様から聞いたとおり、ピルカヤの力は強力ゆえに、知れ渡っている。

 対策もいくつかあるため、すんなりと二人の様子を監視できたこと自体がおかしかった。

 

「あえて、ピルカヤに監視させることで、向こうはピルカヤの存在を探っていたか」

 

 そういうことをしてくる勇者か……。厄介だな。

 イドは当然として、オルナスだって、そんな回りくどいことはしなかった。

 ということは、テンユウは魔力あるいは技量が高いタイプの勇者ってことだな。

 

「奥居。テンユウって、魔法と技を得意としている勇者だったか?」

 

 唯一のゲーム経験者に確認をとる。

 しかし、奥居は残念ながらゲームをすぐに投げ出したプレイヤーだ。

 そのため、俺の質問になんとか思い出すようなそぶりを見せるも、確信がなさそうだった。

 

「ええと、すみません。私、一番簡単と言われてイドばかり使っていたので、テンユウのことはわかりません」

 

 イドが一番簡単ってことみたいだし、テンユウはやっぱり操作に癖があるような技量系のキャラクターっぽいか。

 ピルカヤの存在はすでに確信をもって知られているだろうし、ここで戦わせて負けたふりをするしかないか?

 だけど、イドならともかく、テンユウってそういうの気づきそうだしなあ……。

 

「しょうがないな~。ちょっと、本気で戦ってくるよ」

 

「勝てるのか?」

 

「う~ん。魔王様のおかげで、ボクもパワーアップしてるけど、勝てるかは微妙だね~」

 

「ピルカヤは炎だからな。テンユウとは特に相性が悪い」

 

 たしかに、さっきの二人の調査のときも、ルイスが物理的な罠を対応し、テンユウがそれ以外の罠を対応していたからな。

 炎を霧散させたり散らしたりしていることから、ピルカヤの攻撃も同じように対処しそうなことは想像がつく。

 

「でも、あれを放置するわけにもいかないからねえ」

 

 ピルカヤが指さしたテンユウの姿は、すでにぼんやりとして見えなくなっていた。

 いや……共有してもらっているはずの視界が、全てもやがかかったように朧げになっている……。

 

「もしかして、ピルカヤの力を妨害しているのか?」

 

「ボクの魔力だけを阻害して、目の共有を邪魔されちゃってる。ほんっと、嫌になるよ」

 

「もしかして、テンユウがその気になれば、ピルカヤの監視を無効化できるってことか?」

 

「さすがに監視全般ってことではないけどね。ただ、少なくとも地底魔界の中でなら、こうして共有は邪魔されちゃうみたい」

 

 すでに、ピルカヤの視界共有はできなくなっていた。

 真っ白な映像しか目に入ってこない。これは、あまりにも厄介だ……。

 

「まあ、ちょっと行ってくるよ。分体のほうに、ほとんどの力をつぎ込めば、きっとテンユウも騙せるだろうし」

 

「念のため、不死鳥の羽を……」

 

「どうだろうね? こう言ったら悪いけど、ドリュと違ってボクのことは、確実に死んだかどうか観察されると思うよ?」

 

 ピルカヤを万が一仕留めそこなっていたとなったら、人類にとってはあまりにも不利な状況だもんな。

 現に、ピルカヤのおかげでこれまでも、色々と楽をさせてもらっていたわけだし。

 

「では、最悪の場合、蘇生薬を使いましょう」

 

「え~。魔王様、どうせ蘇生薬引けないんですから、大事にしておいたほうがいいですよ~?」

 

「私をなんだと思っているんですか!? 引けますし。蘇生薬とか、十個くらい引けますから。……レイが」

 

 なんか、勝手に一蓮托生にされたけど望むところだ。

 俺は、これからもフィオナ様と一緒に生きていくし、蘇生薬は俺が作ればいい。

 

「まあ、本体は残しておきますから、なけなしの蘇生薬を使わせないようにがんばりますけどね~」

 

 そう言い残して、ピルカヤの力の大部分を引き継いだ分体は、テンユウの元へと向かって行った。

 軽い口調ではあるが、わずかな緊張感が伝わったので、ピルカヤもテンユウのことを重く見ているみたいだな……。

 

    ◆

 

「使うか。テンユウ……」

 

「一番簡単なリックでも、一番使いやすいイドでもダメだったのに。無茶するなあ」

 

「いや、俺こういう癖のあるキャラのほうが得意だし」

 

「いつも自信だけはあるんだよなあ」

 

 友人の呆れた声を後目に、青年はコントローラーを握る。

 そうしてゲームの最初に主人公であるテンユウを選択し、彼は心が折れた。

 

「なにこれ!? やること多すぎて、パニックなんだけど!?」

 

「ほら、さっさと周辺の魔力を可視化して、敵の攻撃だけを解析して、解析終わったら敵に反射しろよ」

 

「そんなの、間に合わないって!」

 

「敵の行動パターン完璧に覚えてないと、たぶん使いこなせないよなあ」

 

「テンユウ使える人って、めちゃくちゃ上手い人だけみたいだし」

 

 本来ならば避けるか防ぐかすべき敵の魔法攻撃。

 テンユウの力を使うことで、それを無効化して敵への攻撃に変換することができる。

 しかし、とにかく操作が忙しいため、敵と操作キャラの距離、敵の攻撃の隙、行動後の後隙等を考えないと、テンユウを使いこなすことは難しい。

 もちろん、それらを使わずに戦うことも可能だが、彼は完璧にテンユウを使いこなしたいと考え、なんとかその特性を駆使して戦っていた。

 

「ほら、反射した!」

 

「次きてるぞ。また反射しないと」

 

「ピルカヤの手数多すぎんだよ!」

 

「四天王だもんなあ……」

 

 そうして抗うこと数時間。

 彼が操作するキャラクターは、テンユウではなくイドへと変わるのだった。

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