【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第485話 曲者のまいた種

 全盛期の力、完全に取り戻してるじゃない!

 もはや疑う余地もないわね。

 完全に、アタシが知ってるピルカヤそのものだわ。

 

「早すぎるでしょ……。なんで、もう復活してるのよ」

 

 魔王の力が、それだけ残っていたってことよね……。

 ああ、嫌だ嫌だ。いよいよ勇者に、人類に勝ち目がなくなってきちゃうじゃない。

 それとも、ピルカヤだけ最優先で復活させたのかしら?

 それだけの価値があるからね。この精霊には。

 

「ま~だ、生きてる。いい加減倒れてくれないかなぁ」

 

「倒れないわよ! 勇者舐めんじゃないわよ。四天王!」

 

 四天王との一対一。それなら、アタシたち勇者が有利なはずなんだから。

 ……あの例外の化け物は別だけどね。

 なんなの、リピアネムとかいうやばいの。

 まあ、それに比べたらピルカヤは、はるかにマシだし、ここで退くわけにはいかない。

 

「あんたが魔王軍で功績をあげたがっているように、アタシたち勇者にも使命ってもんがあるのよ」

 

「へぇ、そうなんだ。君の言う使命って、導き? それとも呪縛?」

 

 ……痛いところついてくるじゃないの。

 他の種族と考えがズレている精霊なのに。

 道を指し示す目標なんかではなく、呪縛ね。これは。

 

「勇者って大変なのよ。こう見えてもね」

 

 それでも、アタシが諦めるわけにはいかない。

 勇者が投げ出したら、人類はいよいよ終わりだし、あの女神に任せたら、さらに最悪かもしれないのだから。

 

「ふ~ん。息が詰まりそうな生き方だねぇ」

 

「自由奔放な精霊とは違うのよ。アタシたちは」

 

「ま、いいや。終わりにしてあげるよ」

 

 容赦ないわね。こいつ……。

 ピルカヤは、再び魔力を解き放つと、洞窟の中の温度がどんどん上昇していく。

 これさえも、多少の実力者以外にはダメージを与える攻撃となりかねない。

 だというのに、これが攻撃前の下準備でしかないのだから、四天王ってほんと強いわよねぇ。

 

「今度こそ、殺してあげるよ!」

 

「言ったでしょ。勇者舐めんなよ。精霊!」

 

    ◇

 

「おい、ピルカヤ」

 

「大丈夫大丈夫。ちゃんと加減して、いい感じに負けるから」

 

 ピルカヤの言葉にほっと安堵した。

 また頭に血が上っているのかと思ったが、しっかりと冷静に戦ってくれているらしい。

 ということは、最大の攻撃と見せかけて、そのままテンユウに討ち取られる予定ってことか。

 

 視界の先を見つめると、ピルカヤは先ほど以上の大規模な攻撃を仕掛けようとしている。

 先ほどの攻撃ですら、テンユウはほぼ無傷で切り抜けた。

 であれば、もう少し火力を上げたとしても、テンユウなら無事だと判断したのだろう。

 そうして、大技の直後の隙を突いてもらって、上手に敗北するってところかな。

 

「まあ、オーロラみたいになっていないし、さすがに本気じゃないか」

 

「そうそう。ボク、今ならもっと強いからね」

 

 フィオナ様のおかげで、四天王は全員パワーアップしている。

 なので、こうして分体で本気を出しても、以前の全力に近い力を発揮できているんだろうな。

 

「フィオナ様のガシャ、やっぱりわりとアタリですよね」

 

「皮肉ですか? 皮肉ですね? ついに、宰相が私を裏切りましたか?」

 

「本音なんですけど……」

 

「あなたが私を裏切ったら、私は泣きながら世界を滅ぼしますからね!」

 

「一生裏切りませんから、落ち着いてください。というか、今もう泣きそうです」

 

 あなたの部下が真剣に戦っている最中でしょうが。

 思い切り抱きしめなくても、俺は逃げませんよ。

 

「まったくもう。あなたは永遠に私の隣です」

 

「そのつもりだと、何度も言ってるじゃないですか」

 

 さては……信用されてない?

 ピルカヤじゃないけれど、俺ももっと功績を積んで信頼を勝ち取らねば……。

 よし、ダンジョンの難易度アップだ。

 と思っていたら、なんかアナンタにすごい顔で見られた。

 ……バレたか?

 

『喰らえっ!』

 

 っと、ピルカヤのほうに集中しないと。

 フィオナ様もそう思ったのか、俺を抱きしめる力が無意識に強くなっているらしい。

 

 映し出された視界の先では、ピルカヤが先ほど以上の炎を波のように放出している。

 範囲が凄まじいな。これ、ゲームならどうやって回避するんだろう。

 

 しかしテンユウはテンユウで、その炎の波にしっかりと対応できている。

 相変わらず、魔力関係の攻撃は分析されて支配権を奪われるのは変わらない。

 波の一部はテンユウの制御下となり、それで力を拮抗させているようだ。

 

「あとは、適当に力負けして隙だらけになってと……」

 

 それがピルカヤのプランだった。

 たしかに、目に映る光景では、わずかにピルカヤが押され始めている。

 ……あれ、なんかテンユウのほうの炎も勢いが減っていないか?

 ピルカヤの炎の波を押し返すどころか、このままじゃテンユウが……。

 

「あ、あれ? ボク強くなりすぎた?」

 

 ピルカヤが急いでテンユウへの攻撃を中断しようとするも、テンユウが炎の波に呑み込まれるほうが早かった……。

 

「倒しちゃったな……」

 

「……ボ、ボク強いからね!」

 

 テンユウの姿はすでに見えない。

 あの炎の中ってことだよな。これは、さすがの勇者も……。

 

「ピルカヤ、テンユウはまだ生きています」

 

「えっ?」

 

 フィオナ様の真剣な声、それに気を取られたピルカヤは、分体を隙に晒してしまった。

 

『火の海で海水浴なんて、お肌が焼けちゃいそうねえ!』

 

『えっ』

 

 ピルカヤの近くの火の中から、テンユウが現れた。

 着飾った見た目はボロボロになり、肌も火に焼かれている。

 そんな状態でも、テンユウはピルカヤを倒すべく隙を見逃さなかったのだ。

 

『……残念ね。ここまでみたい』

 

 隙だらけのピルカヤにテンユウの拳が届く。

 魔力を込めていたようなので、本当ならそこから攻撃に発展したのだろう。

 だが、いくら勇者とはいえ、ピルカヤの火の中を隠れて進むのは、無理があったようだ。

 テンユウは、ピルカヤの胸に拳を当てたまま、その場で崩れ落ちた。

 

「ピルカヤ……」

 

「……とりあえず、分体を戻すね」

 

 テンユウは、完全に息絶えたらしい。

 倒れた体は動くこともなく、生命活動を停止した証として、ダンジョンは徐々にテンユウの体を魔力へと分解していった。

 

 う~ん。ピルカヤが強くなりすぎたのか?

 いや、それでも加減しようとしていたしなあ。

 もしかして、あれはテンユウの偽物とか、死んだふりだったという線は……無さそうだな。ダンジョン魔力はしっかりと増えている。

 

 それも、イドが死んだときと同じ量だ。

 勇者の場合特別なのか、比較的多めのダンジョン魔力を得られるからな。

 どうやら、テンユウは確実に死んでいるらしい。

 

「ねえねえ。レイ」

 

「どうした? ああ、功績の話か? 予定は違ったけど、勇者を倒したんだし十分役立ってると思うぞ」

 

「だよねぇ! ボクすごいでしょ!」

 

「ええ、ピルカヤはとても頼りになりますね」

 

 俺とフィオナ様に褒められて、ピルカヤは機嫌良さそうに浮かんでいる。

 まあ、もう一度テンユウが攻めてくる可能性は高いし、なんなら他の者たちに言いふらされるだろうけどな。

 そうなると、あの場所は最悪放棄したほうがいいか。

 欲望のダンジョン自体も、下手したら放棄かなあ……。

 

 もったいないが、魔王軍のことがバレるよりはずっといい。

 そう割り切ろうとしていると、ピルカヤがはっとした様子で俺に話しかけた。

 

「褒められたいけど、今はそれじゃなかった! ええと……レイって、虚無の種子持ってたよね?」

 

「ああ、まだ使ってないな。ダンジョンに利用しようにも、アナンタが全部却下するし」

 

「当たり前だぁ……」

 

 せっかく使うのなら、徹底的に敵を撃退したいじゃないか。

 そんな俺の思いは届かないらしい。

 

「それ、ボクにちょうだい」

 

「珍しいな……。フィオナ様どうします?」

 

「あれはレイの物なので、レイが決めて良いですよ」

 

 ということであれば、ピルカヤに今回や今までの功績の褒美として渡してもいいか。

 おそらく、俺では持て余すだけだろうし。

 そう判断して、俺はピルカヤに虚無の種子を渡すことにした。

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