【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第487話 あなたの鱗に乱反射する光

「ボクが戦おうと思ったのに~!」

 

 ピルカヤの不満そうな声が響く。

 無理もない。相手はピルカヤを狙っているのだから、テンユウに続いてピルカヤが戦うべきなのだろう。

 万が一失敗したとしても、ピルカヤの存在はすでに明るみに出ているのだから、それが一番被害が少ないのだとは思う。

 リピアネムの存在までバレたら、いよいよ勇者たちが集結しそうだしな。

 

 だけど、テンユウを逃がしたうえに、ルイスまで仕留め損なうのだけはまずい。

 だから、ピルカヤには別の役割に注力してもらう。

 

「ピルカヤ。あのルイスが本体か、世界中を調べてくれ」

 

「え」

 

「ダスカロスとディキティスとエピクレシ。ルイスがここから逃げられないよう、モンスターと魔族とアンデッドの指示を」

 

 絶対に逃がせない。

 ピルカヤの生存を知っていて、ウルラガさえも倒す転生者なんて危険すぎる。

 

「プネヴマ。ヨハンのときみたいに、魂が逃げないように見張ってくれ」

 

 だから、戦闘はリピアネムに頼み、それ以外の抜け道はそれぞれの実力者に塞いでもらう。

 

「まあ、そういうことなら……」

 

 ピルカヤは、自分だけにできる仕事を振られたためか、大人しく俺の指示に従ってくれた。

 十魔将たちも、特に異論はないらしく、各々が動き出す。

 

    ◇

 

 ピルカヤの存在をテンユウに知られた。

 よりにもよってテンユウだ。これがイドなら、まだ良かったのだが……。

 まずい状況なのは間違いない。だが、私にはそれをどうにかする手段もない。

 

 ならば、せめてこちらの問題を解決すべきだろう。

 相手はウルラガを倒すほどの者だ。

 であれば、私が適任だろう。

 

「まさか……リピアネム」

 

「ああ、魔王軍四天王リピアネムだ。お前の命を奪いに来た」

 

「ピルカヤだけでなく、リピアネムまで……良いでしょう。ここで四天王を二人倒せるのなら、魔王討伐もずっと楽になります」

 

 相手は私に動じることもなく、魔力を球状に展開させた。

 周囲の景色がぶれる。そしてすぐに視界が切り替わる。

 足元には真っ白な砂。見渡す限りそれ以外何もない空間。

 ここならば、戦いやすいだろうな。そんな感想くらいしか出てこない殺風景な場所だった。

 

 なるほど、これがレイ殿が言っていた空間か。たしかに、新たな空間を作成して、そこに何らかのものを送り込めるらしい。

 だが、こちらにとっても都合は良い。あのままカジノで戦っては、少なからず被害が出ていただろうからな。

 

「行きますよ。四天王最強」

 

「来るがいい。転生者」

 

 転生者というものは、能力は様々だ。

 ルイスのように、空間を作成する者は直接戦闘を苦手としている場合が多いが、そんな様子はまったくない。

 敵はこの空間の中で、ナルカミが炎をまとうように、両手に雷をまとった。

 ドリュが言っていたとおりの戦法だ。

 少なくとも能力が二つあり、おそらくそれ以上にも能力がある。レイ殿はそう言っていた。

 ならば、それら全てを切り伏せる。それが私の役目ということになる。

 

「やはり! 当たりませんか!」

 

 敵は焦る様子も見せず、まとっていた雷は手から腕へと、腕から上半身へと、そうして全身を包むように輝いた。

 まるで、本人が雷光そのものになったようだな。

 ピルカヤのような精霊としての在り方に似ている。

 当然、雷そのものになったということは……。

 

「ここだ」

 

 速度も先ほどより上昇している。

 だが、まだ見切れる。本物の雷というわけでもあるまい。

 私の動体視力であれば、この速度であっても対応し、一太刀入れることも難しくはない。

 

「……平然と、雷を切りますか」

 

「当然だ。その程度できなくて、何が四天王最強か」

 

 それでも……最期は魔王様に全てを託さざるを得なかった。

 まったくもって許しがたい。自分の弱さが嫌になる。

 勇者に敗北し、あまつさえ転生者相手に苦戦し……二度と、あのような醜態を見せるものか。

 

「さすがに……下っ端である魔族とは違いますね。あなたも、あの竜も」

 

 ルイスの雰囲気が変わった。

 まとっていた雷はそのままに、魔力がさらに注がれている?

 威力が変わった? 範囲? おかしい。出力は変わらないのであれば、あの魔力は何のために。

 

「っ!」

 

 回避に徹する。

 先ほどのように、回避と同時に攻撃に転ずることはできなかった。

 

「……これも、駄目ですか」

 

「速くなっている」

 

 本気を出したということか?

 いや、違うだろう。今の攻撃も、その前も、どちらも本気の一撃だったはずだ。

 違いがあるとすれば……。

 

「なるほどな」

 

「嘘でしょう……? まさか、こんなすぐに適応されるんですか?」

 

 攻撃の起こりが見えなかった。いや、感じなかった。

 気配を消した。あるいは、存在感を希薄な状態まで変化させた。

 さらに、今は音すらも無かった。

 なるほど、空間作成に雷化、それに加えて認識阻害のような力まで持っていたか。

 

「その力で、ピルカヤやドリュの存在を見抜いたということか」

 

「……やはり、一筋縄ではいきませんね。手札全てを切らないと、あなたは倒せませんか」

 

 ということは、三つではなく四つということか?

 いや、それ以上だろうとかまうものか。初志貫徹。私は全てを真正面から切り伏せるのみだ。

 

「いきます!」

 

 言葉が終わるよりも先に、雷の攻撃が四方から迫っていた。

 回避、切断、これは……鱗で防ぐ。

 速いな。攻撃の存在感も希薄で、速度まで上昇し続け、なるほど、強敵に違いない。

 ウルラガが敗北したというのも、わからなくもない。

 だが……。

 

「——っ!」

 

 雷化による移動で、ルイスが後ろに回り込んだと思ったら、大きく口を開いた。

 あれは……ブレスか?

 それも、ウルラガと同じ属性……。人間の身でありながら……そういうことか。

 だが、それは私には通用しない。

 ウルラガに散々食らった攻撃のため、対処方法もよくわかっている。

 

「竜のブレスすら切り伏せますか。よくもまあ、剣技のみをそこまで昇華させたものです……」

 

 こちらの技に感心しているが、それは貴様も同じことだろう。ルイス・アラーニャ。

 

「貴様こそ、よくもまあそこまで、他者の力を使いこなすものだ」

 

「……まあ、先ほどの竜のブレスまで使ったら、バレますよね」

 

 レイ殿は一つ間違えていたらしい。

 そうか、あの方も間違えることはあるのか……。

 ルイスは複数の女神の加護を所持しているのではない。

 おそらく、他者の力を模倣するというのが、ルイスの加護なのだろう。

 

「空間作成。雷化。おそらくではあるが、加速。気配消失。そしてブレス。それが、貴様が模倣した力か」

 

「神託なんてものもありますけどね。女神様とお話できる力ですが、あまり気軽に使うと機嫌を損ねてしまうため、しばらく使えませんが」

 

 それは、助かった……。

 魔王様もレイ殿も、女神に認識されずに地底魔界を繁栄させたいようだからな。

 ここで神託なんてされては、女神によって魔王軍が本格的に滅ぼされることとなる。

 

 さて、それは心配しなくても良いようだが、相手の力が模倣であるならば、戦いが長引くのもまずいな。

 私の剣技がそのまま攻撃として返ってきた場合、他の能力も備えているルイスが優勢となってしまう。

 ならば……。

 

「終わらせるとしよう」

 

 天嵐覇刃の力を以て、真正面から敵を滅ぼす。

 それだけだ。

 

「さすがに、本気の四天王。それも、最強の四天王が相手では分が悪いですね」

 

「まだ、隠していた札があるか?」

 

「ええ。私の加護、コピー。他の力を得る前は、こういう使い方をしていたんです」

 

 ルイスの周囲が歪む。

 新たな空間を作成した? いや、違う……。

 無から生物を創造した。一見するとまるでレイ殿のモンスターのようだ。

 だが、生成されたものは、私が一番よく理解している存在だ。

 

 ルイスの周辺には、剣をかまえた四人の私が作りだされていた。

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