【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第488話 割れた鏡のように

「私の偽物……いや、コピーか」

 

 ルイスは自身の力をコピーと言っていた。

 すなわち、他者の能力だけでなく、他者自身をコピーすることもできる力ということか。

 四人の私が一斉に斬りかかる。

 意思はないらしく、私と同等の速度と技が襲いかかった。

 だが……。

 

「そこに意思がないのであれば、見切るのはたやすい」

 

 なにしろ自分自身の攻撃だからな。

 最短の道しか辿らないというのであれば、どこにどのタイミングでくるかなど、目を閉じていてもわかるくらいだ。

 一人目、最小限の動きで回避する。二人目、こちらも剣を構え受け止める。三人目、二人目を盾にすることで攻撃は中断する。四人目、ここだ。

 天嵐覇刃に魔力を注ぎ、私の周囲のコピーを全て暴風で吹き飛ばす。

 

「ここまで……」

 

 ルイスの驚愕したような声を背に、風の力で体勢を崩したコピーを順に切り伏せる。

 どの程度の力が必要かもすでにわかっている。なんせ、私自身なのだからな。

 

「コピーできているのは、ステータスと技能だけか」

 

「それでも、自分が四人相手となれば、こうも簡単にはいかないはずなんですけどね!」

 

 むしろ、自分が四人だからこそ、簡単だと思うのだがな。

 これが、ピルカヤやプリミラ、リグマが四人だったほうが、よほど厄介だっただろう。

 

 それに、コピーは天嵐覇刃の力を使いこなせていなかった。

 いや、そもそも天嵐覇刃の模倣品ではあるが、その力を宿していなかった。

 魔王様から賜った武器の差ということか。

 

「少なくとも、ウルラガは同じ方法で倒せましたが……やはり、あなたもこれで倒せるというのは、虫のいい話でしたか」

 

 ということは、まだ先があるということか。

 嬉しい話じゃないか。敵は私のことを侮っていない。

 それでいて、あらゆる手を尽くして私を殺そうとして挑んでいる。

 私が蘇生した直後に挑んだ獣人のようだ。私が醜態をさらすことになった獣人のようだ。

 

 ならば——それを打ち破る。そして、この戦いの幕引きとしよう。

 

「これが、私の本気です」

 

「あなた相手に、出し惜しみしている余裕はありません」

 

「この後に、ピルカヤとの戦闘まで控えているのなら、なおさらですね」

 

「ですから、この戦いもそろそろ終わりにしましょう」

 

 四人か。まあ、私をコピーできたのであれば、自分自身をコピーできてもおかしくはない。

 ただ、先ほどの私のコピーと違って、全てのルイスが言葉を発したな。

 自分自身のコピーは、リグマの分体のように、独立して意思を持たせることができるのか?

 それとも、ピルカヤの分身のように、本体が全てを操作しているのか?

 

「天嵐覇刃」

 

 暴風を発生させ、前方へと打ち込む。

 ルイスたちは回避し、四方から雷化した突進で反撃される。

 回避……。なるほど、それもできたのか。

 私の肌は切り裂かれ、血が流れた。

 

 意思がないとはいえ、さすがに、この数の自分自身を相手にするのは、骨が折れそうだな。

 ルイスが生成した十六人の私のコピー。それらが一斉に私に襲いかかった。

 

「貴様自身をコピーし続ければ、私のコピーも無限に作れるということか」

 

 回避。いや、半ば逃げるように動き回る。

 コピーたちは、愚直に追い続けるが、ルイスのほうは油断なくこちらを見据えていた。

 

「いいえ。私自身を増やしすぎると、脳への負担が大きすぎるので、無限にとはいきません」

 

 正直に追いかけてきたコピーたちをまとめて屠るべく、天嵐覇刃で広範囲を攻撃する。

 コピーだけであれば、それで対処できたかもしれない。

 だが、やはりルイス本体が厄介か……。

 コピーは消滅した。だが、それは私の攻撃が直撃したためではなく、ルイス自身が消したためだ。

 

「消去も作成も自由自在……か」

 

「コピーが死んだ場合と、自分自身で消した場合では、消耗が違いますからね」

 

「だから、攻撃が当たる前に消したほうが、省エネで戦えるんですよ」

 

 このままでは、攻撃を透過させる自身のコピーと戦うようなものか……。

 ルイスはあとどれほどコピーを作れる?

 

「確信しました。私の力を十全に活かせば、あなたですら討ち取れる」

 

 基本は、私のコピーによる波状攻撃。少しでも隙を見せるとルイス本体の雷による攻撃。

 なるほど、うまく力を使いこなしている。

 肌が切り裂かれ、血が流れる箇所も、雷に焼かれた箇所も、徐々に増えている。

 わずかではあるが、確実に押されているということだ。

 

「すみません。私がもっと強ければ、あなたを楽に倒せたんでしょうね」

 

 なるほどな。

 すでに、貴様は私に勝ったつもりということか。

 たしかに、貴様が増えてからは防戦一方だ。そのうえで、避けきれず受け切れず、ダメージは蓄積している。

 だが、私は貴様を倒してこいと命令され、それを承諾した。

 命令は必ず完遂してみせよう。

 

    ◇

 

 脳への負担は大きい。

 四人が限界。それ以上は、戦いどころではなくなります。

 ですが、私のコピーとリピアネムのコピーであれば、なんとか四天王最強の破壊竜すらも、追い詰められるとわかったのは助かります。

 ここで勝利できれば、他の四天王にも十分通用するということでしょうから。

 

 リピアネムは、十人を超える自分自身を相手に、よくもっているほうでしょう。

 これでまだ致命的な隙を晒さないのは、もはやゲームのとき以上の強さとしか言えません。

 だから、焦らず確実にそのときを……。

 

 幾度目かわからない。リピアネムコピーたちによる攻撃、それから逃げる本物。

 何度も見た光景。だけど、今回は違う!

 さすがに傷を負いすぎたのか、確実に体勢を崩した!

 ならここで!

 

「終わりです! リピアネム!」

 

 四人が限界。なら、ここで五人目の私のコピーを作成して、無理をしてでも確実に倒す!

 変身される前に、ここで四天王最強を葬る!

 五人目の私は、すぐに新たなリピアネムのコピーを作成し、これで二十人のリピアネムを使役できた。

 オリジナルに劣るとはいえ、これだけの数ならば、このタイミングでの増員ならば、確実に仕留められる!

 

 そう確信した瞬間、私の耳に轟音が響きました。

 

 ……なに? なにがあったの?

 目がチカチカする。耳が痺れ、体は全身が痛みを……。

 コピーは……いや、まずは目の前をしっかりと見ないと。

 

 そうして私が必死に目を凝らすと、そこには巨大な竜がいました……。

 ああ、そういうことですか。間に合わなかったのですね。

 つまり、先ほどの轟音は変身したリピアネムの咆哮ということですか。

 

 ……馬鹿げている。

 私どころか、自身のコピーをまとめて吹き飛ばし、戦闘不能にするほどの咆哮。

 音による攻撃? いいえ、体が吹き飛ばされたのでしょう。

 同時に広範囲への暴風が発生し、それに耐えきれず私もコピーたちも戦闘不能にされたということですか。

 ……これが破壊竜。だから、これに変身する前に倒そうとしたのに。

 

「……化け物」

 

 動けない私とコピーたちを、巨大な竜が蹂躙する。

 爪で、尾で、牙で、ただの一撃で私のコピーも、自分自身のコピーさえも、葬り去っていく。

 そうして、全てが倒された後に、最後の一人の私も……。

 

 間違えましたかね……。

 この世界を守ろうと、私を受け入れた街を守ろうと、脅威の排除に動きました。

 主人公である勇者すら殺した魔王軍。そんな危険な存在は、一刻も早く排除しないといけないと気が逸りすぎましたかね。

 

 これまで粛清してきた身勝手な転生者たちと同じく、私自身も、女神の加護を過信した転生者の一人だったということですか。

 

 ああ、本当に失敗した。

 だって、この戦いだけは余計なことを考えずに、これだけに集中できた。

 だから、楽しかった。

 私は、余計なことを考えずに、ただ思うままに生きれば良かった。

 

「ありがとうございます。私を殺してくれて」

 

 だから、最後にあなたに感謝を——。

 

    ◇

 

「終わったみたいだね~。さっすがリピアネムさん」

 

「良かった。中が見えないから、少し不安だったんだ」

 

 しかも、相手は能力すらわかっていない転生者だしな。

 あとは、実はこれが偵察のためであって、本体が遠くにいたり、死んでも逃げられる力とかでないかだけど……。

 

「ピルカヤ、ルイスらしき存在は?」

 

「一応見える範囲にはいないね~」

 

「ダスカロス、ダンジョンにも?」

 

「ああ、見当たらない」

 

「プネヴマ」

 

「えっと……魂、地底魔界で……漂っています……」

 

 大丈夫そうだな。

 ウルラガのほうも、リグマが回収して吸収していたので、しばらく療養すれば問題ないらしいし、これでとりあえずは安心か。

 あとは、苦戦したらしく傷だらけになっているリピアネムを迎えに……。

 

「終わったぞ!」

 

 なんか、血まみれのリピアネムが駆け寄ってきた。

 尻尾ふるな。血がそこら中に飛び散っているのはいいとしても、それで倒れでもしたらどうする。

 

「どうだ? 私は強いだろう?」

 

「ああ。さすがは四天王最強だ。よくやってくれた」

 

 俺の言葉に、リピアネムは満足気に目を細めた。

 テンユウはピルカヤが、ルイスはリピアネムが倒してくれたようだし、ひとまず危機は去ったみたいだな。

 

 ……相手は転生者。それはもはや珍しいことではない。

 だけど、何かが違えば、うちにいる転生者のように仲間にできたのかもしれない。

 きっとルイスは、俺たちを悪と思い行動に出た。

 それが間違いでないのが、相いれない最大の理由なんだろうな……。

 今後も俺は悪として、自分が守りたい者のために、世界を害するということを忘れてはいけないのだと思う。

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