【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「テイランの病か。初めて聞く話だな」
「国への入国制限が厳しい点や、一部の者以外は外に出ないことを考えると、その病は以前から蔓延していたのかもしれない」
テラペイアとダスカロスは、テンユウの言葉が真実であるという方面で考えているようだ。
テイランの入国制限って、情報の秘匿というよりは病が原因だったのか?
そう考えると、テンユウの言っていたことの信憑性が増す。
別の病も混ざって感染力が上がったというのは、放っておいたらまずそうだ。
「治すだけなら、快復の湯でいけそうだけど、そういえばテンユウたちって快復の湯の調査もしていたっけ」
「国民をそこまで移動させられなかったのだろうな。おそらく、周囲へ感染が拡大することを危惧していたのだろう」
人類のほとんどが滅びるみたいだからなあ……。
それ自体は、地底魔界からしたら別に問題ないんだけど。女神が動き出すのは、いかにも良くない。
だけど、それでテイランを助けたら、敵対する人類が増えるってわけだし……。
「適当に人類に蔓延するまで放置するとか?」
万が一うちの者たちが罹患したとしても、そっちは快復の湯で治せるだろうし、敵の数をある程度減らすのもありなのでは?
女神が動くほどの人類が減る前に、治すことができるなら問題ないだろう。
「それが一番だが、その病の爆発力などもわからないので、調整するのは難しいだろうな」
医者としての見解か、テラペイアは俺の案には反対らしい。
たしかに、急激に感染者が増えた場合、治療が間に合わない可能性もあるか。
「治すたびに感染者が増える可能性もあれば、病の症状が急激に重くなる可能性もある」
「ということは、バランスを調整して人類を減らすっていうのは……」
「私としてはおすすめできないね」
コントロールしきれない可能性のほうが高いか……。
そうして想定以上に人類が減ったら、女神に気付かれると。
仕方ない。この病を利用するのは諦めるとするか。
「あとは、テンユウの言葉が本当かどうかだけど」
「本当なんでしょうねえ」
その疑問については、フィオナ様が答えてくれた。
勇者と相対する機会が多かったため、フィオナ様であればテンユウのこともある程度わかるようだ。
「なんと言いますか。テンユウは、そういっただまし討ちみたいなのはしませんから」
「これが罠だとしたら、テンユウらしくないってことですか」
「ええ、勇者ですからね。他の者なら罠を疑いますが、テンユウ本人が単独で動いているというなら、話は別です」
なら、まずは話を聞いてみる価値はあるってことか。
問題は、誰が話すかだな。
テンユウの中で生存している魔王軍の面々は、魔王であるフィオナ様と、直接対峙したピルカヤか。
まず、他の四天王には会わせないほうがいい。それに、十魔将もやめておくか。
かといって、フィオナ様を危機にさらすのはなあ……。
「とりあえず、俺とピルカヤで話すか」
「それなら、私も一緒に話しましょう」
「いえ、さすがにフィオナ様と勇者を対面させるのは……」
「私なら、テンユウが何かを企んでいてもどうにかできます。ですが、レイはそのままやられちゃうじゃないですか」
「俺の場合、死んでも蘇生してもらえればそれで」
「なら、私だって万が一テンユウに負けても、蘇生薬を使えば問題ありません」
いやあ、さすがに魔王様に蘇生薬が効くかわからないし、ちょっと怖いなあ。
「俺は無理として、アスピダとかが話すのはどうでしょうか?」
ドリュの提案もありかもしれない。
十魔将でもない魔族たちなら、勇者たちから逃れて生きていてもそこまで不思議じゃないだろうからな。
その線で行けば、俺もそのうちの一人ってことで、そこまで危険視されないと思うんだけど。
「それなら、俺が一般の魔族のふりしても同じじゃないか?」
「たしかに、レイ自身はどの道テンユウに会う必要があるだろうな」
「ダスカロス?」
ダスカロスの言葉に、フィオナ様が眉をひそめた。
珍しい。いつもはダスカロスの言葉が全て正しいので、折れることしかなかったのに。
「もしもテイランの病を完治するというのであれば、快復の湯を改良できるレイと、それらを使いこなせるテラペイアとルトラは、現地の近くで作業する必要もでてきます。であれば、安全な地底魔界にいるうちに対面し、テンユウという存在を直接確認しておくべきです」
「う……そうですよねえ」
それもそうか。
そもそも、病を治すというのが最終目標であり、テンユウと話すのはその前段階だ。
アルマセグシアの快復の湯のように、長時間並ばせてからというのでは効率が悪すぎる。
テラペイアが危惧していたとおり、そこからいつ爆発的に感染が拡がるかもわからないので、俺は現地で大量に快復の湯を作り続けるべきなんだろう。
そして、テラペイアとルトラも、それらの患者のために調整をするためには、遠隔でちまちまやっていては間に合わないか。
国民たちの前に姿を現す必要はないが、俺たちは少なくともテイランの近くで作業するしかないようだ。
「仕方ありませんね……。では、レイと私とピルカヤで話しましょう。レイが直接テンユウに会うというのであれば、私も話を聞きます」
そこは譲れないという雰囲気に、俺たちは口を出すことはできそうになかった。
まあ、フィオナ様の言うこともわからなくはない。
今のところ勇者に確実に勝てそうなのはフィオナ様くらいだからな。
四天王でさえ、何かあったら敗北する可能性を考えると、俺とピルカヤだけで会うよりは安全なのだろう。
だけど、やっぱりフィオナ様を危険にさらしたくないなあ……。
そうしないために、俺が直接話をしようとしたけれど、結局二人ともテンユウと会うことになってしまった。
「じゃあ、テンユウから預かったアイテム使ってみますね~?」
「ふむ……。テクニティス、どういうものかわかりますか?」
「そうっすねえ……」
念のため、おかしなアイテムでないかテクニティスが確認をする。
まあ、罠の可能性は低いが、疑ったほうがいいからな。
「ピルカヤ様の魔力で、相手に信号が送られるっぽいっすね。あとは、相手からの信号を受けられる、発信と受信だけの簡単なアイテムみたいっす」
なるほど、これで話すのではなく、あくまでも合図を送っているだけということか。
万が一にも女神にバレないように、話は直接別の空間で行うようだ。
「なら問題ありませんね。ピルカヤ、合図を送ってください」
「は~い」
フィオナ様の許可も得て、ピルカヤはさっそくアイテムを使用した。
テクニティスの話では、相手から合図が返ってくるとのことだが、その後再び欲望のダンジョンに訪れるってことだろうな。
「……」
ただ、相手が反応しないっぽいな。
ピルカヤが魔力を注いで、なんらかの反応が送られているのはたしかだが、一向に返ってこない。
「テクニティス~。反応ないよ~?」
「あれ、おかしいっすね……。たしかに、向こうからの合図も受信できるはずっすけど」
「単に、テンユウが蘇生していないだけでは?」
あ……。そうか、死んだ後にピルカヤと会話していたらしいから、なんか蘇生した気がしていたが、そういえばテンユウ死んでた。
ダスカロスの言葉に、フィオナ様もピルカヤもテクニティスもハッとしている。
「蘇生してからにしてくれとは言われなかったのか?」
「ええと……次も虚無の種子みたいなところで、とか言ってたかな?」
「こちらが、そう簡単に女神に干渉されない空間を用意できないと思ってのことだろうな。そのころには、テンユウも蘇生している算段だったのだろう」
なるほど。さっきフィオナ様がガシャで引いていなかったら、別の空間なんてあてがなかったもんな。
もしも俺たちが虚無の種子みたいなものを用意できなかったら、テンユウはどうしていたんだろう?
「とりあえず、毎日定期的に連絡してみましょう」
なんかしまらないなあ。
ただ、現時点ではこれ以上できることがないのも事実。
俺たちは、その場で一度解散することにした。