【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第493話 登ればリピアネムになれる

 テンユウ様が死んだ。

 それ自体は、あり得ることだった。

 勇者であるテンユウ様は、女神の力で蘇生できる。

 あの方は、それすらも前提として、時に死さえも策に含めるからだ。

 

「……ただ、今回はちょっと違うわよね」

 

「レンシャは、直接聞いたんだよね? テンユウ様が、ちょっと死んでくるって言ったの」

 

 そう。あの方はまるで散歩するような気軽さで、そんなことを私に告げた。

 スイリョウとレイライが不在であり、私もたまたま欲望のダンジョンに向かっていなかったため、テンユウ様は私に言伝を残した。

 どうやら、一人のほうが動きやすかったらしい。

 かくして私は、二人にテンユウ様の言葉を伝えるために、テイランに残り続けたのだった。

 

「魂はすでに戻られているから、あとは蘇生を待つだけだけど……」

 

「テンユウ様を殺すほどの脅威って、魔王軍? それとも転生者?」

 

 あるいは……まさか、勇者であるテンユウ様さえも、病が悪化した……?

 もしもそうであるならば、私たちに残された時間は想像以上に短いということになる。

 

 テンユウ様や私たち、一部の耐性が強い者たちでさえ蝕まれたのであれば、テイランが滅ぶのは時間の問題ね……。

 そして、テイランから次々と外界へ……。

 女神は、いまだに動いていない。

 きっと、人類がほぼ死滅するまで動こうともしない。

 

「二人の成果は?」

 

「快復の湯は、やっぱりうちで再現するのは無理そう……。湯を作るのも、水質を保持するのも、内部の魔力を調整するのも、どれもとんでもない技術だから……」

 

 一番期待できる快復の湯、それを調査していたスイリョウは、申し訳なさそうにしていた。

 でも、スイリョウで無理なら、残念ながら再現できない。

 

「喜びのダンジョンの大量の宝箱は、たぶん高効率で生成しているからだと思う。あの場所の魔力なのか、転生者の力なのか、そこまでは何度挑んでもわからない……」

 

 大量の宝箱を安定して入手できるのであれば、万能薬や蘇生薬さえも手に入る可能性が高まる。

 だから、レイライは喜びのダンジョンを調査していた。

 だけど、こちらも結果は芳しくない。

 まあ、そうよね……。宝箱を自在になんて、ダンジョン自身か転生者くらいしか、どうにもできないだろうから。

 

「レンシャは?」

 

「こっちも駄目。ロペスくん自身は、宝箱を作る力じゃないみたいだし、あくまでもダンジョンからかき集めているみたいよ」

 

「それ、私たちでもできないかな?」

 

「無理そうね。ロペスくんたちは転生者。だからこそ、ダンジョンを安全に効率的に探索できているんだと思うわ」

 

 こちらの調査もレイライと似たようなもの。

 宝箱の安定した入手は、転生者であるロペスくんたちの特権らしく、どうにも真似できそうにない。

 欲望のダンジョンで、とっかかりを見つけるか、あるいは薬を入手できないかとも思うけど……こちらも、成果は出ていないわね。

 

「宝箱から出てきたアイテムを譲ってもらおうにも、万能薬って高いからねえ……」

 

「蘇生薬なんて、国レベルでのやり取りになるし、自分たちで入手しないと、国がどんどん貧しくなるわ」

 

 まいったわねえ……。

 復活するとはいえ、テンユウ様が亡くなられたためか、私たちの話し合いはどうにも暗い内容になってしまう。

 

「気晴らしに、カジノでも行ってきたら?」

 

 そんなに暗かったのだろうか?

 二人に勧められるも、今はさすがにそういうわけにもいかない。

 テンユウ様が、復活されたときにお傍にいるべきだし、今の状態を見られたら、リズワン王やロペスくんに余計な心配をかけそうだからね。

 あの二人、聡いから私の様子なんて、筒抜けでしょうね。

 

「テンユウ様、龍神様の調査進んでいるのかしら?」

 

「一度死ぬ必要があったのって、もしかして神様関係だからかな?」

 

 わからない。

 わからないけれど、今はそう思っておこう。

 あの方なら、きっとテイランを救ってくれる。

 それだけが、滅びゆくこの国の望みなのだから。

 

    ◇

 

「テンユウ~……駄目だ~」

 

「今日も反応は無いか」

 

「死んでんじゃないの~?」

 

「だろうなあ。復活まで、毎日連絡して様子をうかがうとしようか」

 

 それまでは、こちらはこちらで準備を進めるか。

 おそらく、快復の湯が必要なので、その改良ができれば良さそうだな。

 

 ……とはいえ、これが案外難しい。

 テラペイアが魔力を調整し、ルトラが水質を調整しても、一向に改良できる気配がない。

 世良の聖女の力を混ぜてみたり、風間の勇者の力を混ぜてみても、やはり今の快復の湯から変わらない。

 快復の湯は、この状態が完全であり、改良の余地はないのだろうか……。

 

 できれば、作っただけで俺たちの手を離れたら、もっと扱いやすいんだけどなあ。

 ルトラとテラペイアが付きっきりにならずにすむのなら、大量に作成してあとは自由に使ってもらえばいい。

 

「やっぱり、いったん毒混ぜとく?」

 

「君の考えは、たまに私たちですら理解できないことがあるね」

 

「テラペイア、たまにじゃないぞ。わりと頻繁にだぁ……」

 

 アナンタがなんか失礼なこと言ってる。

 スイカだって、甘くするために塩を振るだろ。

 快復の湯も、きっと毒という反対のものが混入されることで、より快復力を高めてくれるかもしれないじゃないか。

 

「ルトラ、毒入れたらどうなると思う?」

 

「温泉のように見える毒の罠が完成すると思います」

 

「また悪質な罠作ろうとしてんのか、お前はぁ……」

 

 いや、今のは違う。

 ルトラの想像力が不足している可能性だってあるだろ。

 ……いや、こと温泉に関しては、ルトラの意見が正しいかあ。

 

「仕方ない。毒はあきらめよう」

 

「お前の説得、こんなにめんどくさいのかよぉ……」

 

「納得したならすぐに折れるけど、毒の可能性も捨てたもんじゃないと思うんだ」

 

「捨てろぉ。そんなわけのわからない持論」

 

 しかし、そうなるとどうしたものか。

 わりと、正攻法の改良は試してきた。

 万能薬を追加しても効力が増さなかったことから、それ以外の視点が大事だと思ったんだけどな。

 

「手当たり次第に作るか」

 

 ならば、基本に帰ろう。

 罠やモンスター、ダンジョンのメニューは何度も使うことで解禁され、強化されてきた。

 つまり、快復の湯も何度も作って練度を上げることで、上位版を作れるかもしれない。

 

 ……そういえば、俺のレベルってどうなっていたっけ。

 魔力ばかりが伸び続け、その魔力も頭打ちとなってから、あまり気にならなくなっていた。

 ふと気になり、温泉作りの片手間でステータスを確認する。

 

 和泉(いずみ)玲(れい) 魔力:99 筋力:30 技術:39 頑強:38 敏捷:29

 

 ……うん、やっぱりこんなものか。

 魔力だけは、すでに99まで達した。

 だけど、そこから魔力は伸びなくなった。

 いったんの上限だろうけれど、四天王や勇者は100を超えるし、フィオナ様なんかさらに上の次元だ。

 壁を破るようなことができれば、俺もこの先に到達するんだろうか?

 

 ……いっそのこと、魔力のほとんどを消費させて快復の湯を作るか。

 快復の湯の消費魔力は60その1.5倍も魔力を使えば、あるいは効能が増したりしないだろうか。

 

「よし、贅沢に使うか」

 

 ちまちまと、回復して作っては消してはもうやめだ。

 必要以上に魔力を注いで、さらなる強化を目指そうじゃないか。

 そうして、メニューを念じながら選択する。

 罠のパラメータをいじるときのように、作成時にちょっとしたオプションを付与するイメージだ。

 

 そこまで決めたらあとは作るだけ。

 大部分の魔力を消費することで、俺はたしかに90ほどの魔力を失ったと直感でわかった。

 消費は予定通り、あとは効能だが……。

 

「なんか、すごいことになった」

 

「滝……ですかね?」

 

「お前、なにしてんだよぉ……」

 

「……快復の湯よりも、効果が高い。だが、これは温泉か?」

 

 ええと、メニューには……。

 

 快復の源泉:消費魔力 90

 

 なるほど、源泉。

 いや、源泉ってこんなに豪快だったっけ?

 

「快復の源泉らしい」

 

「意味わかんねぇ……」

 

 アナンタは思考を放棄したらしい。

 だけど、俺にもわからない。まあ、ダンジョンマスタースキルさんのことだし、変に考えずに受け入れるのがいいだろう。

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