【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第494話 きっと落ち着けない決戦場

「うわ~すごい。これって、温泉なんですか? 滝なんですか?」

 

「わからない。だけど温泉として利用できるなら、どっちでもいいんじゃないか?」

 

 たぶん、温泉のはずだ。

 温泉関連のメニューの上位版っぽいし。

 まあ、あの滝に巻き込まれても危険というわけでもないし、気にすることもないだろう。

 ……いや、時任の場合、なんか巻き込まれて沈んでいそうな姿が目に浮かんだ。

 

「一応、滝に巻き込まれないよう気を付けような」

 

「はい! すみっこに入ります!」

 

 さて、問題は効果のほうだ。

 まさかあの滝が追加されただけで、消費魔力が増えたということもあるまい。

 しっかりと効能のほうも上昇していると思いたいが……。

 

「快復の湯の場合、実験しづらいな」

 

 ゴブリンたちに頼めば、改良食人花の花粉症とかにかかって試してくれそうだけど。

 

「モンスターで実験しようとしていないか?」

 

「……」

 

「まあ、君たちがそれでいいのであれば、私からは何も言うまい」

 

 いいのかな?

 ゴブリンが自分のことを指さししているし、まあいいか。

 なんなら、ピルカヤに燃やされていたときよりは、健全ともいえるだろう。

 

「まずは改良食人花で、ゴブリンを花粉症にして」

 

 この時点で辛そうだな。

 なんというか、怪我をしたり死んだりするよりも辛そうに見える。

 身近な辛さだろうか。イドに腕を血まみれにされたり、自爆して死んだ時よりも、なんかきつそうなイメージがわいてくる。

 

「じゃあ、ルトラとテラペイアは、様子見してくれ」

 

「まずは、効能自体を確かめるわけだな」

 

「それでは、私たちは手出しせずに温泉だけに任せてみますね」

 

 そうして涙と鼻水まみれのゴブリンがお湯に浸かった。

 浸かった時点で、多少症状が緩和されたのか、だいぶ落ち着いている様子だ。

 なるほど、病を抑制するだけであれば、二人の力は不要ということか。

 

 であれば、とりあえず片っ端から温泉に浸けておけば、時間稼ぎくらいにはなるかもしれないな。

 幸いなことに、耐久温泉については鳴神やオーガで実験済みだし、ルトラならなんとかしてくれるだろう。

 ……まあ、ルトラがそっちにつきっきりになったら、さらに手が足りなくなるので、最低限様子見するってことにしないといけないが。

 

「治療はやっぱり、テラペイアとルトラの手が必要そうかな?」

 

「だが、これまでよりは工程は減らせそうだ」

 

「はい。これなら、一度にもっとたくさんの管理ができそうです」

 

 なるほど、完全に手が離れるわけではないが、それでもふだんよりはだいぶ楽そうだな。

 そういうことならば、魔力を90も消費した価値はあるのかもしれない。

 

「結局、俺たちはテイランのほうに行かないと駄目そうだな」

 

「まあ、そこは仕方ないだろうね。重症なうえに感染の恐れがあるのであれば、医者である私たちが向かうべきだ」

 

 俺とルトラは医者じゃないけれど、助手みたいなものだしな。

 だが、そうなってくると、フィオナ様に心配されるので、やはり用心棒を……。

 

「そうだ。用心棒というか、ウルラガは大丈夫なのか? ずっとリグマが回復させているけれど」

 

「もうちょいだなあ。一回完全に死んだから、それなりに時間は必要なんだよ」

 

「時間がかかるのはいいけれど、ちゃんと復活できるのか?」

 

「そこはおじさんに任せておけって、ここまで独立した分体なんだから、そうそう簡単に消滅しねえさ」

 

 こっちはこっちで、専門家ともいえるリグマに任せるしかないな。

 その間のカジノの用心棒はナツラを始めとしたオーガを増やしているし、それでどうにかなるだろう。

 

「用心棒が必要なら、僕がいますよ~」

 

「ひっつくな……。ああ、そっか男だったから別にいいのか」

 

「もっとこう、どきどきするとかないんですか!?」

 

「同性だしなあ……」

 

 性別が反転したときは、フィオナ様相手でも冷静でいられるから、やはり性別というのは大事なのかもしれない。

 あれ? ということは、あの状態でイピレティスにくっつかれたら、わりと危険なのか?

 ……男って知らなかったときも、フィオナ様のときほど緊張しなかったし、問題無いか。イピレティスだしな。

 

「魔王様や四天王も近くにいるだろうから、護衛に関しては問題ないだろう」

 

 ダスカロスが当然のように言うが、そんな偉い面々が全員テイランに行って万が一感染でもしたら……治せば良いだけか。

 よし、問題ないな。

 

「ということで、テイランでの治療の準備も終わりか。よし、ついでに温泉を全て源泉にしてしまおう」

 

「相変わらず、なんでもダンジョンの改築につなげるねえ」

 

 そっちがメインだからな。

 フィオナ様のために、侵入者を撃退できるようにするし、フィオナ様のために、地底魔界を快適にしたい。

 そこは最初からずっと変わらないから、新しいメニューができるのであれば、なんでも試していこう。

 

    ◇

 

「そうしてできあがったのが、あの溶岩の滝ですか」

 

「なんか、快適に過ごす施設というよりは、あれだけ罠みたいですね」

 

 フィオナ様は、大量の溶岩を見上げながら感心したような、呆れたような声色を発した。

 それを聞いて、こちらはこちらでなんだか他人事みたいに返してしまう。

 

「ピルカヤとテクニティスなら、楽しめるかもしれませんが……う~ん、すごい見た目ですねえ」

 

 ある意味で魔王の拠点っぽい見た目でもある。

 他の温泉と違って、溶岩溜まりに上空から溶岩が流れてきているからなあ。

 なんとも邪悪そうじゃないか。

 

「罠として、利用しましょうか」

 

「それがいいかもしれませんね」

 

 俺の提案にフィオナ様もうなずき、溶岩の源泉は地底魔界のダンジョンスペースへと移動することとなった。

 ピルカヤもテクニティスも、別に風呂好きって感じでもないからなあ。

 いっそ、ここから溶岩系のモンスターを増やして、中を泳がせておくのが良いのかもしれないな。

 

「ちなみに、フィオナ様って溶岩の中でも活動できますか?」

 

「で、できますけど、魔王に何をさせようとしているんですか……」

 

 いえ、ちょっと気になったので聞いてみただけです。

 ただ、勇者たちを相手にするとき、フィオナ様だけ一方的に攻撃できるのなら、溶岩の中に沈んでもらうのもありか?

 

「なんだか、よからぬことを企んでいるような……」

 

「フィオナ様に溶岩の中を泳いでもらおうかと」

 

「レイは、たまにとんでもないこと考えますねえ……」

 

 駄目そうか。駄目そうだな。

 有利な戦場として利用できそうだったが、本人が嫌がるのであればやめておこう。

 フィオナ様のステータスであれば、溶岩や極寒の地も大丈夫そうだし、毒とかの耐性もあることを考えると……定期的にフィールドが切り替わって、それらが全員に襲いかかるとか良いかもしれない。

 

「よし、フィオナ様の決戦場を火と氷と毒とかで埋め尽くします」

 

「わ、私どうなっちゃうんでしょうね」

 

 そのためには、一番いい罠を作りたい。

 今玉座の間を改築しても、後で作り直しになるだろうから我慢するが、最上位の罠っぽいものが出たら、設置するのもよさそうだ。

 

    ◇

 

「な、なんか……温泉作りのはずだったのに、いつも以上に罠を強化しようとしてるのは、なんなんだよぉ……」

 

「ウルラガが負けたからかな? 侵入者を撃退できないと、不安なんじゃない?」

 

「罠だけで敵を倒せるなら、俺たちが動かなくてすむし楽でいいけど」

 

「俺の負担は増えそうじゃない? 増えそうだよな? お前らだけずるいぞぉ!」

 

「まあまあ。いつもどおり、レイくんの制御頼んだぞ」

 

「そのいい笑顔は、なんなんだよぉ……。お前、俺の本体だろぉ……」

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