【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「うわ~すごい。これって、温泉なんですか? 滝なんですか?」
「わからない。だけど温泉として利用できるなら、どっちでもいいんじゃないか?」
たぶん、温泉のはずだ。
温泉関連のメニューの上位版っぽいし。
まあ、あの滝に巻き込まれても危険というわけでもないし、気にすることもないだろう。
……いや、時任の場合、なんか巻き込まれて沈んでいそうな姿が目に浮かんだ。
「一応、滝に巻き込まれないよう気を付けような」
「はい! すみっこに入ります!」
さて、問題は効果のほうだ。
まさかあの滝が追加されただけで、消費魔力が増えたということもあるまい。
しっかりと効能のほうも上昇していると思いたいが……。
「快復の湯の場合、実験しづらいな」
ゴブリンたちに頼めば、改良食人花の花粉症とかにかかって試してくれそうだけど。
「モンスターで実験しようとしていないか?」
「……」
「まあ、君たちがそれでいいのであれば、私からは何も言うまい」
いいのかな?
ゴブリンが自分のことを指さししているし、まあいいか。
なんなら、ピルカヤに燃やされていたときよりは、健全ともいえるだろう。
「まずは改良食人花で、ゴブリンを花粉症にして」
この時点で辛そうだな。
なんというか、怪我をしたり死んだりするよりも辛そうに見える。
身近な辛さだろうか。イドに腕を血まみれにされたり、自爆して死んだ時よりも、なんかきつそうなイメージがわいてくる。
「じゃあ、ルトラとテラペイアは、様子見してくれ」
「まずは、効能自体を確かめるわけだな」
「それでは、私たちは手出しせずに温泉だけに任せてみますね」
そうして涙と鼻水まみれのゴブリンがお湯に浸かった。
浸かった時点で、多少症状が緩和されたのか、だいぶ落ち着いている様子だ。
なるほど、病を抑制するだけであれば、二人の力は不要ということか。
であれば、とりあえず片っ端から温泉に浸けておけば、時間稼ぎくらいにはなるかもしれないな。
幸いなことに、耐久温泉については鳴神やオーガで実験済みだし、ルトラならなんとかしてくれるだろう。
……まあ、ルトラがそっちにつきっきりになったら、さらに手が足りなくなるので、最低限様子見するってことにしないといけないが。
「治療はやっぱり、テラペイアとルトラの手が必要そうかな?」
「だが、これまでよりは工程は減らせそうだ」
「はい。これなら、一度にもっとたくさんの管理ができそうです」
なるほど、完全に手が離れるわけではないが、それでもふだんよりはだいぶ楽そうだな。
そういうことならば、魔力を90も消費した価値はあるのかもしれない。
「結局、俺たちはテイランのほうに行かないと駄目そうだな」
「まあ、そこは仕方ないだろうね。重症なうえに感染の恐れがあるのであれば、医者である私たちが向かうべきだ」
俺とルトラは医者じゃないけれど、助手みたいなものだしな。
だが、そうなってくると、フィオナ様に心配されるので、やはり用心棒を……。
「そうだ。用心棒というか、ウルラガは大丈夫なのか? ずっとリグマが回復させているけれど」
「もうちょいだなあ。一回完全に死んだから、それなりに時間は必要なんだよ」
「時間がかかるのはいいけれど、ちゃんと復活できるのか?」
「そこはおじさんに任せておけって、ここまで独立した分体なんだから、そうそう簡単に消滅しねえさ」
こっちはこっちで、専門家ともいえるリグマに任せるしかないな。
その間のカジノの用心棒はナツラを始めとしたオーガを増やしているし、それでどうにかなるだろう。
「用心棒が必要なら、僕がいますよ~」
「ひっつくな……。ああ、そっか男だったから別にいいのか」
「もっとこう、どきどきするとかないんですか!?」
「同性だしなあ……」
性別が反転したときは、フィオナ様相手でも冷静でいられるから、やはり性別というのは大事なのかもしれない。
あれ? ということは、あの状態でイピレティスにくっつかれたら、わりと危険なのか?
……男って知らなかったときも、フィオナ様のときほど緊張しなかったし、問題無いか。イピレティスだしな。
「魔王様や四天王も近くにいるだろうから、護衛に関しては問題ないだろう」
ダスカロスが当然のように言うが、そんな偉い面々が全員テイランに行って万が一感染でもしたら……治せば良いだけか。
よし、問題ないな。
「ということで、テイランでの治療の準備も終わりか。よし、ついでに温泉を全て源泉にしてしまおう」
「相変わらず、なんでもダンジョンの改築につなげるねえ」
そっちがメインだからな。
フィオナ様のために、侵入者を撃退できるようにするし、フィオナ様のために、地底魔界を快適にしたい。
そこは最初からずっと変わらないから、新しいメニューができるのであれば、なんでも試していこう。
◇
「そうしてできあがったのが、あの溶岩の滝ですか」
「なんか、快適に過ごす施設というよりは、あれだけ罠みたいですね」
フィオナ様は、大量の溶岩を見上げながら感心したような、呆れたような声色を発した。
それを聞いて、こちらはこちらでなんだか他人事みたいに返してしまう。
「ピルカヤとテクニティスなら、楽しめるかもしれませんが……う~ん、すごい見た目ですねえ」
ある意味で魔王の拠点っぽい見た目でもある。
他の温泉と違って、溶岩溜まりに上空から溶岩が流れてきているからなあ。
なんとも邪悪そうじゃないか。
「罠として、利用しましょうか」
「それがいいかもしれませんね」
俺の提案にフィオナ様もうなずき、溶岩の源泉は地底魔界のダンジョンスペースへと移動することとなった。
ピルカヤもテクニティスも、別に風呂好きって感じでもないからなあ。
いっそ、ここから溶岩系のモンスターを増やして、中を泳がせておくのが良いのかもしれないな。
「ちなみに、フィオナ様って溶岩の中でも活動できますか?」
「で、できますけど、魔王に何をさせようとしているんですか……」
いえ、ちょっと気になったので聞いてみただけです。
ただ、勇者たちを相手にするとき、フィオナ様だけ一方的に攻撃できるのなら、溶岩の中に沈んでもらうのもありか?
「なんだか、よからぬことを企んでいるような……」
「フィオナ様に溶岩の中を泳いでもらおうかと」
「レイは、たまにとんでもないこと考えますねえ……」
駄目そうか。駄目そうだな。
有利な戦場として利用できそうだったが、本人が嫌がるのであればやめておこう。
フィオナ様のステータスであれば、溶岩や極寒の地も大丈夫そうだし、毒とかの耐性もあることを考えると……定期的にフィールドが切り替わって、それらが全員に襲いかかるとか良いかもしれない。
「よし、フィオナ様の決戦場を火と氷と毒とかで埋め尽くします」
「わ、私どうなっちゃうんでしょうね」
そのためには、一番いい罠を作りたい。
今玉座の間を改築しても、後で作り直しになるだろうから我慢するが、最上位の罠っぽいものが出たら、設置するのもよさそうだ。
◇
「な、なんか……温泉作りのはずだったのに、いつも以上に罠を強化しようとしてるのは、なんなんだよぉ……」
「ウルラガが負けたからかな? 侵入者を撃退できないと、不安なんじゃない?」
「罠だけで敵を倒せるなら、俺たちが動かなくてすむし楽でいいけど」
「俺の負担は増えそうじゃない? 増えそうだよな? お前らだけずるいぞぉ!」
「まあまあ。いつもどおり、レイくんの制御頼んだぞ」
「そのいい笑顔は、なんなんだよぉ……。お前、俺の本体だろぉ……」