【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第498話 異動辞令は破棄されました

『ヘルハウンドって、溶岩の中でも活動できたっけ!?』

 

『やめろ! 水浴び後じゃあるまいし、体を振るわせるな! 溶岩が飛んでくる!』

 

『あ、でも、炎耐性の装備のおかげで、わりと勝てそう』

 

 うんうん。良い具合に逃げてくれているな。

 スライムやゴブリンと違って、ヘルハウンドはわりと経験値が多いモンスターだから、簡単に倒させてはまずい。

 ここはあくまでも、冒険者を楽しませるダンジョンであって、鍛えることを助けてはいけない。

 なのでヘルハウンドには、負ける前に逃げるよう指示を徹底している。

 

 あいつら、長時間でないのなら溶岩の中でも活動できるみたいだし、逃げる時も溶岩の中に飛び込めば安全だ。

 溶岩でも活動できる、ゴーレムやスライム。ヘルハウンドみたいな、炎系のモンスター。

 さらには、炎魔法だけを使用するゴブリンメイジやコボルトメイジ。

 なんとなく、溶岩エリアらしい敵だらけにできている。

 

「新しいモンスターも増えていますね?」

 

「はい。なんかそれっぽい子たちが、新たに生成されたので」

 

 例えばフレイムクラブ。アイアンシザーズの仲間かと思ったけど、サイズはかなり小さいし、あの子たちよりも弱い。

 ただし、炎耐性がかなり高いらしく、溶岩の中から忍び寄り、侵入者をハサミで挟んで嫌がらせをする。

 

『カニうぜえ!』

 

『小さいから、近づいたこと気付きにくいんだよ。こいつら……』

 

 小さいのは悪いことばかりではないな。

 意識が逸れている間に、今の侵入者たちみたいに、絶妙な嫌がらせをされることも少なくない。

 

 例えばフレイムリザード。最初はサラマンダーかと思ったが、よくよく考えるとサラマンダーって、テクニティスの種族だった。

 ということは、こちらの世界のサラマンダーは、火のトカゲみたいな種族ではないようだ。

 こいつらは、ダンジョンの壁に張り付いており、侵入者がきたら這い寄ってくる。

 ……俺を最初に襲った、地底魔界の外のトカゲたちを思い出すな。あいつら、今もあの山の中にいるんだろうか。

 

『こいつら、やっぱり火球を吐いてくるみたいだな』

 

『それだけじゃないわよ。可燃性のガスみたいなものも吐いている!』

 

『……爆発しない?』

 

『逃げるわよ!』

 

 あ、冒険者たちが逃げた。

 ということは、フレイムリザードだけが……。

 爆発に巻き込まれて全滅してしまったか。

 なんか、モンスターというよりは、使い切りの罠みたいなやつらだなあ。

 

 再生成してやると、本人たちもけろっとしているし、きっとそういう子たちなんだろう。

 まあ、要するに俺の自爆と同じようなものだし、ペットは飼い主に似るってことかもしれないな。

 

 あとはマグマトータス。岩石のような甲羅に、真っ赤に焼けたような色の皮膚。

 この子たちも、当然ながら溶岩への耐性を持っている。

 動きは遅いのだが、見るからに固そうな甲羅で、冒険者たちの攻撃を防いでおり、時間をかければ攻撃に転ずる。

 

『そろそろやばいか!』

 

『防御!』

 

『よし、またしばらくは攻撃されないはずだ!』

 

 今回の冒険者たちは、マグマトータスの衝撃波をしっかりと防御できるパーティらしいが、あれに巻き込まれると行動不能になるか気絶する。

 もっと上位ならば、痺れるだけですむらしいが、大抵はそのままゲームオーバーとなる攻撃だ。

 無策で挑むと、そのまま入り口まで送られるなんてことは、ざらにある。

 

「レイさん。あのカニたち、余ったりは……」

 

「余ってはいないけど、追加で生成できるから海にも欲しいなら、いつでも生成できるぞ」

 

「部屋の中で、水槽に入れて飼うとかもできますか?」

 

「水槽……あったっけ?」

 

「テクニティスさん、お願いします!」

 

「まあ、いいっすけど。オクイたまにぐいぐいくるから、怖いんすよねえ……」

 

 海鮮好きな奥居の琴線に触れたようだ。

 まあ、マグマの中じゃないと活動できないわけでもないし、フレイムクラブたちはペットとしてかわいがってもらおう。

 

「フィオナ様もいります?」

 

「いえ、私は水槽に入れるなら、レイを……」

 

「それなら、大きめの水槽がいいですね」

 

 水は入らないよな? さすがに、その状態だと溺死するし、俺に合わせた環境だと信じたい。

 

「魔王様とレイ様って、ちょっと難しい関係だよねえ……」

 

「どこまでが冗談で、どこまでが本気かわかんねえんだよなあ……」

 

 クララとロペスの話声が聞こえたが、俺にもわからん。

 なので、もしも水槽で飼われることになったとしても、快適に過ごせるよう考えておこう。

 

「じょ、冗談ですからね~? ごほんっ、ええと……モンスターだけでなく、罠もしっかりしてますねえ」

 

「ええ、このあたりも殺傷力は抑えさせられました」

 

「抑えたではなく、抑えさせられたなんですね……」

 

 だって、アナンタが全部だめだししてくるから……。

 もう俺たちの仕事は、そうやるのが最も効率が良いんです。

 

『しっかし、いくら耐性がついているといっても、こうも暑苦しいと嫌になるな……』

 

『あの床なんて、見るからに熱で熱そうよねえ……』

 

『いや、よく見ろ。いくつかのタイルは、冷却床じゃないか? そうか、あの安全な床を踏んで進めば……』

 

 そう言った男が、落とし穴に落ちていった。

 冷却床と見せかけた落とし穴。初見では面白いほど引っかかるよなあ。

 

「相変わらず、安全地帯と見せかけて罠にかけるのは、匠の域だな。君は」

 

「ダスカロスのお墨付きなら、今後も安心して設置できるな」

 

「褒めた……のか? 私は……」

 

「ダスカロス。諦めろぉ……」

 

 また別の場所では、つり橋を進んでいる冒険者たちの姿が見えた。

 俺の力では、相変わらず一階層しか作れず、二階や地下は作れない。

 だけど、高めの天井の部屋と組み合わせることで、つり橋の下にマグマなんて部屋も作れている。

 あのあたりは、そんな部屋だらけになっており、足を滑らせると溶岩に落ちてしまう危険な部屋だ。

 ……まあ、落ちても実は助けるんだけど。

 

『こんなところでモンスターに襲われたら、たまったもんじゃないわね……』

 

『ええ、だから急ぎましょう。だからといって、焦って足を滑らせるなんて真似はしたくないけど』

 

『……走って!』

 

『ちょっと! 焦るなって言ってるでしょ! そんなに慌てたら、落下するじゃない!』

 

『つり橋が熱で壊れそうなの!』

 

『嘘でしょ!?』

 

 つり橋は、一見すると全て同じに見える。

 しかし、耐久力が低めのものは、実は他よりもぼろぼろな見た目で作られており、ダンジョンの熱のせいで徐々に朽ちる仕掛けだ。

 今回の侵入者たちは、ちょうど渡っている最中につり橋が朽ちたようだな。運の悪いことだ。

 

「あ、落ちた」

 

「落下中に気絶したんですか? 全員意識がなさそうですけど」

 

「隠れていたナイトメアシープに眠らせました」

 

 さすがに、あんな状況じゃ身構えることもできず、面白いように眠っていく。

 そうして意識を失った侵入者たちは、溶岩に落下する前にゴーレムたちに回収され、ダンジョンの入り口まで運ばれた。

 

「ナイトメアシープ、汗だくですねえ」

 

「さすがに、熱耐性がないと大変みたいですね……。一応、烈火の湯(改)にも入れたんですけど、熱はなかなか辛いようです」

 

「氷結床でも、近くに作ってあげるのはどうですか?」

 

「あ、それいいですね。さすがはフィオナ様。魔王として、ダンジョンを作ってきただけのことはありますね」

 

 俺の言葉に、フィオナ様は得意げなドヤ顔を見せつけてきた。

 そういう顔をしなければ、もっと素直に尊敬できるんだけどなあ……。

 ただ、俺自身がそういう顔をするフィオナ様のことが好きなので、何も指摘しないようにしよう。

 

「溶岩の滝の裏の隠し扉。高温すぎて冷却しないと開かない扉。なるほど……なかなかコンセプトに沿っている、面白いダンジョンでした」

 

「ありがとうございます」

 

「そして、ボスはゴーレムなんですね」

 

「はい、溶鉄ゴーレムという亜種です。最初は、別の候補を考えていたんですけど、ダスカロスたちに止められました」

 

「なるほど……。きっと、今のボスでちょうど良かったんでしょうね」

 

 まあ、そこは俺も納得している。

 というか、彼女をどうやってボスにするか悩んだが、どうにもいい案が思い浮かばなかったからな。

 

 フィオナ様からもしっかりと評価していただいたことだし、喜びのダンジョンの溶岩エリアはしばらく稼働させてもよさそうだな。

 

    ◇

 

「あら、小さいカニね」

 

「お疲れ様です、プシシモさん。この子はレイさんにもらいました」

 

 宰相様に……。

 モンスターを自由に生成して、それを部下に与えるとか、やっぱりとんでもない方よねえ。

 

「新しいダンジョンを作ったんだっけ?」

 

「というよりは、喜びのダンジョンに炎系のエリアを作ったみたいですよ」

 

「炎系……」

 

「ええ、溶岩が流れるようなダンジョンで、この子やフレイムリザードが配属されています。ボスは溶鉄ゴーレムとか」

 

 ……え、つまり前に聞かれたあれって、そういうこと?

 私は、自分の頬に冷や汗が流れるのがわかった。

 

「どうしました? なんか、様子がおかしいですけど」

 

「私、前に宰相様に聞かれたことがあるの。私の種族のこと、あとは戦闘と演技ができるかどうか」

 

「プシシモさんの種族って、たしか……」

 

「フレイムインプよ……」

 

 オクイもきっと察したのでしょうね。

 なんと反応していいかわからず、彼女はわずかに乾いたように笑った。

 

「その溶岩エリアのボスとして、私を配属しようとしていたってことよね……」

 

「えっと、ダスカロスさんたちが止めたみたいなので、大丈夫です」

 

 いえ、死ねと言うなら死ぬけどね……。

 演技ってことは、あのモンスターたちみたいに死んだふりをして、侵入者たちを騙せってことよね?

 無理……。私には、そんな器用な真似できないもの。

 プリミラ様やアナンタ様、ダスカロス様が止めてくれたようで、本当によかった……。

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