【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第499話 あなたは雑魚です

「テンユウは、今日も生き返ってないのか?」

 

「そうみたい。な~んか、返事は全然ないんだよね~」

 

 勇者の蘇生って、案外時間がかかるんだなあ。

 俺が知っている蘇生は、蘇生薬を用いたものであり、一瞬で蘇るのでもっと気楽に考えていた。

 女神の力を有しているとはいえ、死からの蘇生というものは、やはり一筋縄ではいかないということか。

 

「快復の湯の改良は終わった。医療に関する人手も増やして、そっちは教育中。ついでにダンジョンも改良した。だけど、まだ時間がありそうだな」

 

「最後のは、ぜんっぜん関係ないけどね~。レイの趣味にまで割ける時間があるってことは、本当にテンユウの蘇生って時間かかってるねぇ」

 

 趣味ではあるけれど、快復の湯改良の副産物なので、まるっきり関係が無いというわけでもないんだ。

 それに、いつもの三人のおかげで、喜びのダンジョンの新たな要素としてわりと人気だしな。

 やはり、溶岩エリアのボスを倒した後も、あらかじめ魔力をそこそこ注いだ、良い宝箱を設置したのが好評な理由か。

 

「ついでだし、レイ自身も鍛えてみたら?」

 

「俺? う~ん……。たしかに、加護ばかりじゃなくて、身を守る手段が欲しいな。自爆以外にも」

 

「自爆は、身を守る手段じゃないと思うけどな~……」

 

 むしろ、守るべき身を自ら破壊しているよな。

 でも、不死鳥の羽があるから大丈夫。問題は、自爆で倒しきれずに、蘇生後に再び襲われることだ。

 ということは、自爆の威力を上げればその欠点も克服できることに……。

 

「ロマーナに効率的な自爆を教わるか……。いや、ピルカヤなら魔力の扱いも四天王で一番上手だし、炎系だし、自爆の教え方上手いんじゃないか?」

 

「ボク、そういうのやってないから。あと、ロマーナにも聞かないようにね。あとで怒られたらかわいそうでしょ」

 

 駄目か。褒めたのに乗ってこないとは、どうやらピルカヤは、本当に自爆を教える気がないみたいだ。

 

「リピアネムさんあたりに、戦い方を習うとかのほうが、まだマシなんじゃないかなぁ?」

 

「真っ当な戦いというのなら、そうだろうな。リピアネムか……」

 

 なんか、走ってくる音が聞こえるな。

 え、もしかして俺たちの会話、リピアネムに聞こえるの?

 竜人って、そんなに耳が良いのか?

 

「ということで、リピアネムさん呼んでおいたよ。レイが呼んでるって言ったら、すぐ走ってきた」

 

「呼ばれたぞ! レイ殿が、私を求めていると聞いた!」

 

 気が利くのは助かるけれど、駆けつけさせて大丈夫か?

 勝手に職場を放棄して、またマギレマさんに怒られないのか?

 

「なあピルカヤ。マギレマさんの様子は?」

 

「え? え~と……あちゃあ、怒ってるね~」

 

「じゃあ、リピアネムには持ち場に戻ってもらったほうが……」

 

「事情を話したら、レイのためなら仕方ないから、こっちを優先してって言ってるよ。リピアネムさんは、戻ったら謝ったほうがいいかも」

 

「うむ、マギレマもレイ殿のことが好きだからな! 料理より優先してくれたのだろう。」

 

 四天王と十魔将は、相変わらず俺に友好的だなあ。

 そういうことであれば、厚意に甘えてしまうとするか。

 

    ◇

 

「まず、レイってどのくらい強いんだっけ?」

 

「たしかレイ様は、日々のダンジョン作成や稼働によって、成長されていたはずです」

 

「戦わなくても自動で強くなるって、わりと破格の力だよなあ」

 

「だが、実戦なくしては強くはなれん。私がしっかりと教えよう」

 

 そうして戦闘可能な広場に移動しているうちに、なんか四天王が全員ついてきた。

 あと、当然ながら腕にはフィオナ様がひっついている。

 というか、それ以外にもちらほらと様々な者たちが、野次馬のように集まっているな……。

 なんだこれ、たかだか俺の訓練のために、なんでこんな大事になっているんだ。

 

「レイ様って、戦っても強いのか?」

 

「当然だろう。見ろ、四天王様と魔王様が勢ぞろいしているじゃないか」

 

 やめてくれオーガたちよ。俺は弱いぞ。

 談笑しているお前たちのうち、一人が相手でも勝ち目がないぞ。

 

「そういえば、レイって今はどのくらいのステータスなんでしたっけ?」

 

「ええと、そうですね」

 

 フィオナ様に尋ねられステータスを教える。

 別に知られて困るもんでもないし、ちゃんと俺が弱いとみんなにわかってもらおう。

 

 和泉(いずみ)玲(れい) 魔力:99 筋力:30 技術:39 頑強:38 敏捷:29

 

 まあ、さすがにこの前から成長もないか。

 魔力が最大になってから、一気に成長も遅くなっているもんな。

 ゆくゆくは、魔力の最大値を引き上げる方法を探りたいところだ。

 

「へえ、魔力そんなに増えていたんだな。おじさん負けちゃってるよ」

 

「私とおそろいです」

 

 リグマはそれ以外が強いだろ。

 あと、プリミラがなんか心なしかドヤ顔している。

 いや、表情はほぼ変わっていないんだけど、雰囲気がドヤ顔しているときのフィオナ様っぽい。

 

「むむむ……レイも早く魔力を9999にしてください!」

 

「無茶言わないでください。かぐや姫ですか。あなたは」

 

 俺だって、そんな魔力があるなら欲しいですよ。

 一日に何匹もの超位モンスターを生成できるじゃないですか。

 

「あと、魔力は高くても攻撃魔法とかにはむいていないから、もっぱらダンジョン作成か自爆用ですからね」

 

「自爆は駄目ですよ?」

 

「わかっています」

 

 心配そうにぎゅっと抱きしめなくても、さすがにこの場で自爆はしませんよ。

 というか、リピアネムとか自爆しても鱗に傷一つ付きそうもないし。

 

「それ以外のステータスも、低位モンスターよりは高いよなあ。もしかして、今のレイくんならゴブリンキングたちにも勝てるんじゃないか?」

 

「たしかに……ステータスだけなら勝っているな」

 

「では、手始めにゴブリンたちと戦ってみると良い」

 

 リピアネムの言葉を聞いて、ゴブリンたちがやる気満々で俺の前にやってきた。

 え、なんでそんなにやる気なんだ……。もしかして、俺に攻撃できるチャンスということで、そんなにやる気に……?

 

「まあ、とりあえずやってみるか……」

 

 嫌われていたらどうしよう。

 いや、わりと懐いてくれているはずだし、きっと仕事に私情は挟んだりしないはずだ。

 これは単に自分たちに新たな仕事が与えられたことで、やる気に満ちているだけだと思いたい。

 

 そんなやる気に満ちたゴブリンが、俺に向かって駆け寄ってくる。

 いつもなら頭をなでるだけだが、今回は武器をかまえているため、しっかりと対処が必要だな。

 ええと……避ければいいんだよな。

 一応適当な装備として剣と盾を持ってみたけれど、あれを受け止められるか自信がない。

 

「とりあえず、避け……重い」

 

 盾と剣重いな。そのせいで、想像よりも何倍も動きが遅い。

 風間とかタイラーとか、こんなもの持ってよく動き回れるなあ……。

 あ、ゴブリンの攻撃がもう目の前に……。

 

 せめて安全な場所で受け止めようとするが、その攻撃は俺に届くことはなかった。

 ……なんか、当たりそうになったら急激に減速して、攻撃を止めてくれたみたいだ。

 まずいなあ。ゴブリンに気を遣わせてしまっている。

 なんか、見るからに隙だらけなのも絶対わざとだろ。これ。

 

「ええと……」

 

 剣を振るう。これもひどいものだ。重くてへろへろな攻撃ということは、自分が一番わかる。

 だというのに、なんの手ごたえも無いのに、ゴブリンは致命傷を受けたかのように倒れた。

 ……そうだね。君たちには散々演技させたもんね。いやあ、上手になったもんだなあ。やられたふり。

 

 そんなこんなで、およそ戦闘と呼べる代物ではなくなったからだろう。

 ソウルイーターをはじめとして、多くのモンスターたちが俺の元へとやってきた。

 巻き付いたり、抱きついたりしてくるけど、そうじゃない。

 

「違うから! 遊んでるわけじゃないから!」

 

 その言葉を聞いて、モンスターたちは離れてくれたが、やはり遊んでいるように見えるレベルかあ……。

 

「リピアネム」

 

「うむ。レイ殿は、まだまだこれからだ」

 

「だよなあ。さすがに、ステータスだけでなく経験がとにかく足りていない」

 

「僕たちも、最初そんな感じだったからわかります」

 

 風間の言葉に、原も世良も頷く。

 この三人がそう言うのなら、わりと心強い。

 今では、すっかりと戦闘ができる魔族の勇者パーティだもんな。

 

「とりあえず、起き上がってくれ」

 

 俺の言葉に、ゴブリンはあっさりと起き上がる。

 まあ、そりゃあそうだよな。俺の攻撃当たっていないし、接待されただけだから。

 

「剣も盾も重い。筋力の数値は上がっているはずなんだけどなあ……」

 

「慣れが必要なのではないか? レイ殿は、普段それらに触れることもないからな」

 

「ということは、日常でこれらを持ち歩いてみるのがいいか」

 

「あるいは、それらを使わずに戦うか」

 

 武器と防具が合っていないってことか。

 自分に合う装備を探すところからとなると、冒険者たちって大変なんだな。

 これからは、こちらもしっかりと罠やモンスターで迎え撃たないと。

 

「レイ殿の場合、いっそダンジョンの作成で戦うのはどうだ?」

 

「ダンジョンの作成……」

 

 そういえば、前にイド相手にはそうやって対処したっけ。

 たしかに、今の俺ならば、あれが一番性に合っているような気がするな。

 

「よし、ゴブリンもう一回だ」

 

 俺の言葉に、ゴブリンは迷わずこちらに攻撃をしかけた。

 先ほどの焼き直しかというほどに、まったく同じ速度と太刀筋で攻撃をしかけてくる。

 避ける。受ける。どちらも違う。

 いや、厳密には受けるに分類されるか。

 

「壁作成」

 

 相手の攻撃がわかっているならば、これでなんとかなる。

 敵の攻撃速度にあわせて、壁を作成する。

 敵の攻撃の強さにあわせて、あらかじめ強度は決めてある。

 だから当然ながら、ゴブリンの攻撃は壁がしっかりと受け止めてはじき返してくれた。

 

「なるほど、やっぱりこれが一番やりやすいってわけだ」

 

「うむ。先ほどよりもずっといい。ならば、レイ殿は敵の攻撃の回避と、目を鍛えるべきだな」

 

 まあ、それが一番無難だよなあ。

 結局のところ、ダンジョンマスタースキル頼りというのが気になるが、まずは敵の攻撃をさばけるようにがんばるか。

 

    ◇

 

 そんなこんなで、俺が戦えないとみんなに見てもらったところ、一つだけよろしくない結果を招くこととなった。

 

「そうですか。剣や盾すら重くて、まともに動けないと……」

 

「いやあ、ステータスが上がったからいけると思ったんですけど、非力ですねえ」

 

 さすがに、少々情けなさを感じる。

 フィオナ様は、そんな俺に呆れた視線を……向けることはないな。この魔王様、部下には優しいし。

 ……呆れた視線じゃないけど、なんかいつもの視線もでない。ちょっと、興奮しているというか、なんか様子がおかしくない?

 

「では、これは押し返せますか?」

 

 なんか、両手をつかまれて押し倒されそうになっている。

 いや、無理……。力が強すぎてびくともしない。さすがは魔王様だ。俺程度では抵抗もできない。

 

「無理……です……」

 

「ふふ、私がその気になれば、レイをこんな風に倒せちゃうんですね」

 

「それはそうでしょう。フィオナ様、俺たちとは比べ物にならない強さなんですから……」

 

「レイはかわいいですねえ」

 

「悪かったですね。非力で」

 

 若干すねるような言い方になってしまった。

 そんな俺を見て、フィオナ様はハッとした様子で、俺の頭をなでてくる。

 まったく、魔王と比べられたら誰だって非力でしょうが。

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