【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「テンユウは、今日も生き返ってないのか?」
「そうみたい。な~んか、返事は全然ないんだよね~」
勇者の蘇生って、案外時間がかかるんだなあ。
俺が知っている蘇生は、蘇生薬を用いたものであり、一瞬で蘇るのでもっと気楽に考えていた。
女神の力を有しているとはいえ、死からの蘇生というものは、やはり一筋縄ではいかないということか。
「快復の湯の改良は終わった。医療に関する人手も増やして、そっちは教育中。ついでにダンジョンも改良した。だけど、まだ時間がありそうだな」
「最後のは、ぜんっぜん関係ないけどね~。レイの趣味にまで割ける時間があるってことは、本当にテンユウの蘇生って時間かかってるねぇ」
趣味ではあるけれど、快復の湯改良の副産物なので、まるっきり関係が無いというわけでもないんだ。
それに、いつもの三人のおかげで、喜びのダンジョンの新たな要素としてわりと人気だしな。
やはり、溶岩エリアのボスを倒した後も、あらかじめ魔力をそこそこ注いだ、良い宝箱を設置したのが好評な理由か。
「ついでだし、レイ自身も鍛えてみたら?」
「俺? う~ん……。たしかに、加護ばかりじゃなくて、身を守る手段が欲しいな。自爆以外にも」
「自爆は、身を守る手段じゃないと思うけどな~……」
むしろ、守るべき身を自ら破壊しているよな。
でも、不死鳥の羽があるから大丈夫。問題は、自爆で倒しきれずに、蘇生後に再び襲われることだ。
ということは、自爆の威力を上げればその欠点も克服できることに……。
「ロマーナに効率的な自爆を教わるか……。いや、ピルカヤなら魔力の扱いも四天王で一番上手だし、炎系だし、自爆の教え方上手いんじゃないか?」
「ボク、そういうのやってないから。あと、ロマーナにも聞かないようにね。あとで怒られたらかわいそうでしょ」
駄目か。褒めたのに乗ってこないとは、どうやらピルカヤは、本当に自爆を教える気がないみたいだ。
「リピアネムさんあたりに、戦い方を習うとかのほうが、まだマシなんじゃないかなぁ?」
「真っ当な戦いというのなら、そうだろうな。リピアネムか……」
なんか、走ってくる音が聞こえるな。
え、もしかして俺たちの会話、リピアネムに聞こえるの?
竜人って、そんなに耳が良いのか?
「ということで、リピアネムさん呼んでおいたよ。レイが呼んでるって言ったら、すぐ走ってきた」
「呼ばれたぞ! レイ殿が、私を求めていると聞いた!」
気が利くのは助かるけれど、駆けつけさせて大丈夫か?
勝手に職場を放棄して、またマギレマさんに怒られないのか?
「なあピルカヤ。マギレマさんの様子は?」
「え? え~と……あちゃあ、怒ってるね~」
「じゃあ、リピアネムには持ち場に戻ってもらったほうが……」
「事情を話したら、レイのためなら仕方ないから、こっちを優先してって言ってるよ。リピアネムさんは、戻ったら謝ったほうがいいかも」
「うむ、マギレマもレイ殿のことが好きだからな! 料理より優先してくれたのだろう。」
四天王と十魔将は、相変わらず俺に友好的だなあ。
そういうことであれば、厚意に甘えてしまうとするか。
◇
「まず、レイってどのくらい強いんだっけ?」
「たしかレイ様は、日々のダンジョン作成や稼働によって、成長されていたはずです」
「戦わなくても自動で強くなるって、わりと破格の力だよなあ」
「だが、実戦なくしては強くはなれん。私がしっかりと教えよう」
そうして戦闘可能な広場に移動しているうちに、なんか四天王が全員ついてきた。
あと、当然ながら腕にはフィオナ様がひっついている。
というか、それ以外にもちらほらと様々な者たちが、野次馬のように集まっているな……。
なんだこれ、たかだか俺の訓練のために、なんでこんな大事になっているんだ。
「レイ様って、戦っても強いのか?」
「当然だろう。見ろ、四天王様と魔王様が勢ぞろいしているじゃないか」
やめてくれオーガたちよ。俺は弱いぞ。
談笑しているお前たちのうち、一人が相手でも勝ち目がないぞ。
「そういえば、レイって今はどのくらいのステータスなんでしたっけ?」
「ええと、そうですね」
フィオナ様に尋ねられステータスを教える。
別に知られて困るもんでもないし、ちゃんと俺が弱いとみんなにわかってもらおう。
まあ、さすがにこの前から成長もないか。
魔力が最大になってから、一気に成長も遅くなっているもんな。
ゆくゆくは、魔力の最大値を引き上げる方法を探りたいところだ。
「へえ、魔力そんなに増えていたんだな。おじさん負けちゃってるよ」
「私とおそろいです」
リグマはそれ以外が強いだろ。
あと、プリミラがなんか心なしかドヤ顔している。
いや、表情はほぼ変わっていないんだけど、雰囲気がドヤ顔しているときのフィオナ様っぽい。
「むむむ……レイも早く魔力を9999にしてください!」
「無茶言わないでください。かぐや姫ですか。あなたは」
俺だって、そんな魔力があるなら欲しいですよ。
一日に何匹もの超位モンスターを生成できるじゃないですか。
「あと、魔力は高くても攻撃魔法とかにはむいていないから、もっぱらダンジョン作成か自爆用ですからね」
「自爆は駄目ですよ?」
「わかっています」
心配そうにぎゅっと抱きしめなくても、さすがにこの場で自爆はしませんよ。
というか、リピアネムとか自爆しても鱗に傷一つ付きそうもないし。
「それ以外のステータスも、低位モンスターよりは高いよなあ。もしかして、今のレイくんならゴブリンキングたちにも勝てるんじゃないか?」
「たしかに……ステータスだけなら勝っているな」
「では、手始めにゴブリンたちと戦ってみると良い」
リピアネムの言葉を聞いて、ゴブリンたちがやる気満々で俺の前にやってきた。
え、なんでそんなにやる気なんだ……。もしかして、俺に攻撃できるチャンスということで、そんなにやる気に……?
「まあ、とりあえずやってみるか……」
嫌われていたらどうしよう。
いや、わりと懐いてくれているはずだし、きっと仕事に私情は挟んだりしないはずだ。
これは単に自分たちに新たな仕事が与えられたことで、やる気に満ちているだけだと思いたい。
そんなやる気に満ちたゴブリンが、俺に向かって駆け寄ってくる。
いつもなら頭をなでるだけだが、今回は武器をかまえているため、しっかりと対処が必要だな。
ええと……避ければいいんだよな。
一応適当な装備として剣と盾を持ってみたけれど、あれを受け止められるか自信がない。
「とりあえず、避け……重い」
盾と剣重いな。そのせいで、想像よりも何倍も動きが遅い。
風間とかタイラーとか、こんなもの持ってよく動き回れるなあ……。
あ、ゴブリンの攻撃がもう目の前に……。
せめて安全な場所で受け止めようとするが、その攻撃は俺に届くことはなかった。
……なんか、当たりそうになったら急激に減速して、攻撃を止めてくれたみたいだ。
まずいなあ。ゴブリンに気を遣わせてしまっている。
なんか、見るからに隙だらけなのも絶対わざとだろ。これ。
「ええと……」
剣を振るう。これもひどいものだ。重くてへろへろな攻撃ということは、自分が一番わかる。
だというのに、なんの手ごたえも無いのに、ゴブリンは致命傷を受けたかのように倒れた。
……そうだね。君たちには散々演技させたもんね。いやあ、上手になったもんだなあ。やられたふり。
そんなこんなで、およそ戦闘と呼べる代物ではなくなったからだろう。
ソウルイーターをはじめとして、多くのモンスターたちが俺の元へとやってきた。
巻き付いたり、抱きついたりしてくるけど、そうじゃない。
「違うから! 遊んでるわけじゃないから!」
その言葉を聞いて、モンスターたちは離れてくれたが、やはり遊んでいるように見えるレベルかあ……。
「リピアネム」
「うむ。レイ殿は、まだまだこれからだ」
「だよなあ。さすがに、ステータスだけでなく経験がとにかく足りていない」
「僕たちも、最初そんな感じだったからわかります」
風間の言葉に、原も世良も頷く。
この三人がそう言うのなら、わりと心強い。
今では、すっかりと戦闘ができる魔族の勇者パーティだもんな。
「とりあえず、起き上がってくれ」
俺の言葉に、ゴブリンはあっさりと起き上がる。
まあ、そりゃあそうだよな。俺の攻撃当たっていないし、接待されただけだから。
「剣も盾も重い。筋力の数値は上がっているはずなんだけどなあ……」
「慣れが必要なのではないか? レイ殿は、普段それらに触れることもないからな」
「ということは、日常でこれらを持ち歩いてみるのがいいか」
「あるいは、それらを使わずに戦うか」
武器と防具が合っていないってことか。
自分に合う装備を探すところからとなると、冒険者たちって大変なんだな。
これからは、こちらもしっかりと罠やモンスターで迎え撃たないと。
「レイ殿の場合、いっそダンジョンの作成で戦うのはどうだ?」
「ダンジョンの作成……」
そういえば、前にイド相手にはそうやって対処したっけ。
たしかに、今の俺ならば、あれが一番性に合っているような気がするな。
「よし、ゴブリンもう一回だ」
俺の言葉に、ゴブリンは迷わずこちらに攻撃をしかけた。
先ほどの焼き直しかというほどに、まったく同じ速度と太刀筋で攻撃をしかけてくる。
避ける。受ける。どちらも違う。
いや、厳密には受けるに分類されるか。
「壁作成」
相手の攻撃がわかっているならば、これでなんとかなる。
敵の攻撃速度にあわせて、壁を作成する。
敵の攻撃の強さにあわせて、あらかじめ強度は決めてある。
だから当然ながら、ゴブリンの攻撃は壁がしっかりと受け止めてはじき返してくれた。
「なるほど、やっぱりこれが一番やりやすいってわけだ」
「うむ。先ほどよりもずっといい。ならば、レイ殿は敵の攻撃の回避と、目を鍛えるべきだな」
まあ、それが一番無難だよなあ。
結局のところ、ダンジョンマスタースキル頼りというのが気になるが、まずは敵の攻撃をさばけるようにがんばるか。
◇
そんなこんなで、俺が戦えないとみんなに見てもらったところ、一つだけよろしくない結果を招くこととなった。
「そうですか。剣や盾すら重くて、まともに動けないと……」
「いやあ、ステータスが上がったからいけると思ったんですけど、非力ですねえ」
さすがに、少々情けなさを感じる。
フィオナ様は、そんな俺に呆れた視線を……向けることはないな。この魔王様、部下には優しいし。
……呆れた視線じゃないけど、なんかいつもの視線もでない。ちょっと、興奮しているというか、なんか様子がおかしくない?
「では、これは押し返せますか?」
なんか、両手をつかまれて押し倒されそうになっている。
いや、無理……。力が強すぎてびくともしない。さすがは魔王様だ。俺程度では抵抗もできない。
「無理……です……」
「ふふ、私がその気になれば、レイをこんな風に倒せちゃうんですね」
「それはそうでしょう。フィオナ様、俺たちとは比べ物にならない強さなんですから……」
「レイはかわいいですねえ」
「悪かったですね。非力で」
若干すねるような言い方になってしまった。
そんな俺を見て、フィオナ様はハッとした様子で、俺の頭をなでてくる。
まったく、魔王と比べられたら誰だって非力でしょうが。