【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「嘘っ! もう!?」
「あの、テンユウ様。何がでしょうか……?」
心配そうに尋ねてくるレイライ。それに、レンシャとスイリョウも、アタシのことを心配そうに見つめている。
駄目ね。こんな風に心配をかけるつもりはなかったのに、つい叫んじゃったわ。
でもしょうがないじゃない。まさか、蘇生直後にピルカヤから連絡が来るなんて、こっちも想像してないって話よ。
「えっと、ほら、あれよ。もう蘇生したんだな~って……ね?」
「むしろ、なぜ死んでいるんですか。私たちに連絡していただければ、テンユウ様をお守りしたのですが……」
「まあまあ、こっちもちょ~っと、計算外だったのよ。調査中に、転生者に襲われるなんてね」
アタシの言葉に、三人が目を細める。
ごめんね、転生者。でも、アタシを殺せる相手なんて、勇者か魔王軍か転生者くらいだし、消去法でそうなっちゃうのよ。
「やはり、転生者というのは危険ですね」
「まあ、こればかりは当たり外れもピンキリよねえ。全員が全員ってわけでもないし」
それは彼女たちもしっかり理解しているみたいで、不満そうながらも異論はないらしい。
まあ、これで魔王軍に殺されたことは、なんとか誤魔化せそうね。
「その転生者の居場所や特徴は?」
「テンユウ様がお力を取り戻している間に、私たちで始末します」
「平気よ。相討ちだもの」
なんか物騒な雰囲気ねえ。
勇者なんて、死んでなんぼみたいなところあるし、アタシの死なんて重くとらえる必要ないんだけど。
「では、しばらくは私たちが護衛いたします」
「まあまあ、落ち着きなさいって。あんたたちの調査も進めないといけないんだから、アタシを護衛している暇があったら、それぞれ趣味と調査をしちゃいなさいって」
なんか、三人ともテイランにこもろうとしていたわね……。
アタシが死ぬのなんて、今回が初めてってわけでもないし、そんな献身的に保護しなくていいわよ。
それでも、結局は最低一人は護衛にということになってしまった。
困ったわねえ……。これじゃあ、ピルカヤや魔王軍に、秘密裏に会うのが難しいわあ。
「とりあえず、力を取り戻さなくっちゃね」
「では、やはり三人でお供を」
「そこであんたたちに頼ったら、アタシの力にならないわ」
これは本当のこと。
だから、レイライも納得はしていないけれど引き下がってくれた。
まあ、魔王軍に会う以上、最低限力は取り戻したいからね。
ピルカヤには悪いけど、しばらくは連絡しないで待ってもらいましょ。
……というか、女神にバレないように、もう一度虚無の種子みたいなアイテムを用意してほしいって言ったわよね?
蘇生して、力を取り戻して、それでもまだそんなアイテムは用意できないと思っていたんだけど……。
あの子、そこのところわかっているのかしら?
まさか、考えなしや面白半分で、あのアイテムで呼び出そうとしてないわよね?
◇
「今日もテンユウからの連絡はなし。と」
「これ、壊れてるんじゃないの~?」
毎日連絡しても何の反応もないため、ピルカヤはそろそろ痺れを切らしそうだ。
「いえ、ピルカヤ様。それは正常に稼働しているっす」
「まあ、テクニティスが言うなら……」
だが、その手のスペシャリストであるテクニティスが、故障ではないと断言してしまっているので、ピルカヤも認めざるを得ない。
ということは、テンユウが蘇生していないか、あるいは……。
「案外、蘇生しているけれど、レベルをもとに戻すまでは、連絡する気がないのかもな」
「え~……。戦う気ないのに~」
「それでも、念の為に万全の状態で、魔王軍と話し合いに臨みたいんだろうさ」
気持ちは分からなくもない。
ピルカヤとの対話自体、テンユウにとっては危険な賭けだっただろうし、他の四天王やフィオナ様や十魔将までいることを考えると、最低限実力は戻したくなると思うのも仕方がない話だろう。
ただ、そうなると相変わらず準備期間ということになるな。
それは正直助かる。こちらの研究が終わるのももう少し時間がかかるだろうからな。
「テクニティスとプネヴマ」
「はいっす」
「ひゃ……ひゃい……」
「契紋の環の調整は順調か? 勇者の魂にも通用できれば最高なんだけど」
それは以前フィオナ様が引いたアイテムの一つであり、二つの腕輪のようなアイテムだ。
互いに誓約を交わし、それに両者が合意することで、魂に強制効果が付与される。
破ることのできない誓いとなるわけだが……。
さすがに、勇者が相手だと効果が薄いというか、最悪誓約が破棄される可能性もあるらしい。
「もう少し時間がかかりそうっすねえ……。互いの魂に刻み込む誓約魔法の出力自体は上げられても、勇者や四天王様くらいになると、効き目が薄くなって力ずくで破れる可能性もあるっす」
つまり、あとは出力だけの問題ということか。
そこまで進んでいるのは、さすがはテクニティスとプネヴマだな。
専門分野二人ということもあり、なんとかテンユウとの話し合いまでにはできそうか。
「一方的にルールを守らせるだけだと、効き目が薄いんだっけ」
「そうっすね。互いに取り決めたルールであれば、出力が増して決して破れない誓約になるっす」
「それでも、テンユウは勇者だから、ルールで縛れない可能性がある。と」
「そうっすねえ……」
相手の力量の問題か。それとも、テンユウが魔力に長けているからか。
できれば、向こうの国民を救うことを条件に、こちらの情報は一切漏らさないように契約したい。
そうしないと、この一時的な休戦が終わった後に、テンユウが知り得た情報を人類に共有されてしまうからな……。
「テンユウと誓約を決める者が強かったら、向こうを誓約で縛れるのか?」
「そのはずっすけど……。相手が勇者となると、四天王であるピルカヤ様やリピアネム様ですら、完璧にとはいかないっすねえ」
「でも、それである程度抑制するしかないんじゃないかな? まさか、魔王様を会わせるわけにもいかないでしょ」
そうだよなあ。
そもそも向こうと話すのは、テイランで行動する俺とテラペイアとルトラ、それにその部下たちだけだ。
すでに生存がばれているピルカヤはともかく、リピアネムまで出してしまうと、魔王軍の復興が余計に勘ぐられる。
「……テクニティス。その誓約の効果って、魔力に比例して高まるのか?」
「そうっすね。あとは、勇者は女神の加護も干渉するので、本人の魔力に女神の力が加算されるっす」
女神の加護と魔力の高さがキーということか……。
ということは、もしかしたら。
「俺なら魔力もわりと高いし、女神の加護を持っているから、テンユウと対等に誓約を決められないか?」
「え、レイ様がっすか……。う~ん、たしかに……いや……いけそう……っすかね?」
「試す価値はあるってことだな」
「そうっすねえ。正直なところ、ピルカヤ様より効果は高そうっす」
であれば問題ない。
俺は元々テンユウと話すつもりだったし、これでこちらの情報を人類にバラすなと制御できるのなら、今後も安心できる。
「え~。レイが危険な目に遭ったら、魔王様怒るよ?」
「元々テンユウとは会話する必要もあったし、ついでだから大丈夫。死んだとしても、蘇生薬があるからな」
「む……仕方ありませんが、死なないように。テラペイア、ルトラ、わかっていますね?」
「ええ、最優先で守りましょう」
病の件が罠だとしたら、俺たちが一網打尽にされるだろうが、ここまで手が込んでいたらさすがに本当ではないかと思う。
女神から隠れて虚無の種子の空間で話して、そもそも会話のために一度命を捨てているくらいだからな。
これが、フィオナ様を試すためというのなら、理解できるが、ピルカヤや魔王軍の残党を騙すためというのは、どうにもやりすぎではと思う。
だから、恐らくはテンユウの提案は真実なのだろう。
それに、もしも罠だったとしたら、なおさら四天王や魔王様を会わせるわけには行かない。
やっぱり、俺がテンユウと誓約を交わす必要がありそうだ。
宰相として、魔王様の代わりに勇者と交渉し、協力しないとな。