【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第502話 無感情の魔人

「来たみたい」

 

「へえ、本当に相手からの反応がわかるんだな」

 

 ピルカヤの日課となっていたアイテムへの魔力注入。

 今日も今日とて無意味に終わるかと思ったが、ついに向こうから反応が返ってきた。

 魔力を受信したアイテムは、光りながら震えており、スマホの着信を思い出す。

 

「ということは、いよいよテンユウがこちらに来るということか」

 

「今回はばれてもいいし、入り口付近をよく見張っておくよ。合図をしたら虚無の種子を使ってくれたら、そこまでテンユウを誘導するね」

 

「ああ、頼んだ」

 

 テンユウと直接話すことになるのは、当事者であるピルカヤと俺とテラペイアとルトラ。

 どうせ顔見せすることになる、テラペイアとルトラの部下たちにも、全員控えていてもらう。

 あとは、念のためいつでも駆け寄れるように、フィオナ様や四天王は待機しておいてくれるそうだ。

 特にプネヴマは、俺が死んだら即座に魂を回収するよう張り切っている。

 

「いいですか? 何かあったら、まずは逃げることを最優先してください。自爆しないで、逃げるんですよ? いいですね?」

 

「わかっていますって……」

 

 自爆をするなとすごく念押しされるけれど、俺だって自爆するべきときは見極めますよ。

 ゼラシアの巣のときは、他に戦闘手段がなかったうえ、女王を自爆で倒せると思ったからこその行動だ。

 逃げれば味方だらけの地底魔界で、それも倒しても無意味とも言える勇者相手に、自爆するつもりはない。

 

「ピルカヤ。テラペイア。ルトラ。もしものときは、レイを守ってください」

 

「了解で~す」

 

「ええ、足止めくらいはしてみせます」

 

「魔王様もおっしゃっていたが、素直に逃げてくれよ? レイ」

 

 壁くらいは作るつもりだけどな。

 イドのときのように、一旦拘束して攻撃して、それで逃げるのが一番良さそうだ。

 向こうを自由に動かした場合、何をしてくるかわからないしな。

 

「魔王様。モンスターも護衛として配置するのはいかがでしょうか?」

 

「採用です。さすがはダスカロス」

 

 なんか、みんなが随分と心配性だ。

 蘇生薬のストックもあることだし、最悪死んだとしても切り替えていけばいいと思うんだけどな……。

 まあ、モンスターも一緒というのは、わりと助かる。

 勇者相手にどこまで食らいつけるか、近くで観察できるのなら今後のためにもなるし。

 

「なんか、すでにテンユウが裏切って襲う想定だなあ……。一応、向こうも会話する気でくるはずなんだけど」

 

「それはそれ、これはこれです。リグマ。用心するに越したことはありませんからね」

 

「俺の分体、レイくんの服にしのばせておきます?」

 

「採用……いえ、う~ん……。テンユウの場合、小さな分体でも感づきそうですかね。残念ながら、不採用としましょう」

 

 フィオナ様がわりと真剣に魔王様している。

 さて、俺も準備するか。モンスターたちを連れて行く許可が下りたので、適当に見繕って一緒に来てもらおう。

 

「ソウルイーターとゴブリンとケルベロスと……食人花とバジリスクと……」

 

「逆にテンユウがはめられたと思わないかねえ」

 

「モンスターと十魔将と魔族だらけの空間ですからね。戦意があると思われるかもしれませんが、軽率なことはしないはずなので、大丈夫でしょう」

 

 リグマの心配をプリミラが否定する。

 本当に話し合いに来た場合は、こちらが多少戦力多めだったとしても問題ないみたいだな。

 よし、それならもう少し超位モンスターも……。

 

    ◇

 

 さて、超高速で力を取り戻したわ。

 あらかじめ、モンスターが大量発生している場所を調査しておいたおかげね。

 そこでしっかりと戦えることも示したし、レンシャもスイリョウもレイライも、もうアタシに付きっきりでもなくなった。

 ということは、いよいよピルカヤたちとの話し合いかしら。

 

 毎日毎日ご丁寧に連絡されるけれど、ようやく反応を返すことができる。

 でも、一つ心配ね。従者たちがついてこないように、アタシ一人で大丈夫と証明するために、力を取り戻してしまった。

 話し合いと言ったくせに、そんな万全の状態で向かってしまったら、アタシに戦意があると勘違いされないかしら……。

 

「……」

 

 欲望のダンジョンの前につくと、うっすらと火の球が浮かんでいる。

 ピルカヤね。攻撃してこないし、こうしてアタシを案内してくれている。

 この子は、今のアタシを見て何を考えたのかしら? やっぱり、力を取り戻すことなく会うべきだったかしら?

 

 洞窟に足を踏み入れると、以前と同じく賑やかなカジノの音が聞こえ、海につながる道も見え、商店に宿も充実している。

 ……魔王軍と転生者が協力して、こんな施設ができているとしたら、その転生者の力は本当に大したものよねえ。

 ただ、うちのレンシャもそうだけど、ただ搾取されているというわけでもなく、なんというか人類と共生しようとしているようにも見えるのよね。

 

 であれば、今回の休戦というか協力関係への不安も薄れるわ。

 魔王軍と人類が手を組む日が本当にくるとしたら……いえ、無理ね。今回みたいな理由でもないかぎり、いつまでも仲良くなんて夢物語にすぎない。

 アタシは勇者。人類に期待されてしまっている。望まれてしまっている。だから、アタシが人類を裏切るわけにはいかないのだから……。

 

「ここね」

 

 道中では罠も起動しなければ、モンスターにも遭遇しなかった。

 そんな安全なダンジョンの奥まで進むと、ひと際大きな部屋の中にポツンと空間の歪みが見える。

 まあ、疑っていたわけじゃないけれど、あの短期間に本当に新たな虚無の種子を手に入れてたのねえ……。

 魔王軍、もしかしてとんでもない力を蓄えてない?

 

 まあ、それも全て後回し。

 今はこちらに戦意がないことを証明し、なんとか協力して……いえ、救ってもらわないといけないのだから。

 

    ◇

 

 ……そんなこと考えていたアタシが馬鹿みたいじゃない!

 なに!? ピルカヤは、まあいいわ……。わかるわ。

 後ろにいるのは、テラペイアとルトラよね? 十魔将が二人……。まあ、これもいいでしょう。

 十魔将の部下たちも思ったよりも多い。生き延びた者たちがいたのか、あるいは決戦から避難していたのか、わからなくもない。

 問題は……。

 

「魔王軍宰相のレイだ。よろしく」

 

 なにあんた!?

 いえ、あんたじゃない。あんたの周りの大量のモンスターどういうつもりよ!?

 え、はめられた? アタシ殺されるの? 自分が少し力を取り戻して、相手に戦意がないか疑われることを心配していたのが、馬鹿らしくなる。

 なんなの。この勇者と決戦しようというような戦力は。

 それでいて、戦意なさそうなのがもう意味わかんないわよ!

 

「えっと……。勇者のテンユウよ。よろしくね~」

 

 そんな風に、普段の自分らしく返せたのことを褒めてほしいくらいだわ。

 ええと、ケルベロス? ケツァルコアトル? セルケト?

 それが、なんかたくさんいるわね……。

 あと、あんたなんでソウルイーターに巻き付かれているの? 捕食寸前なの? 助けよっか?

 

「まずは、このアイテムでお互いをルールで縛ろうか」

 

「あらあ、準備万端ねえ」

 

 なにこいつ……。なんで、その状態で淡々と話を進められるの?

 えぇ……。魔王軍の宰相って言ったわよね。なんか、頭のネジ外れたのが出てきちゃった……。

 大丈夫かしら? アタシ、この場で雑に殺されたりしないわよね?

 

 ソウルイーターに巻き付かれた男は、それにまったく動じることもなくアタシと会話を続ける。

 いや、誰かあの姿に何か言いなさいよ。アタシ試されてるの?

 あれを指摘するの、もしかしてアタシの役目なの?

 

 不安を抱えていた魔王軍との交渉。

 それが、まったく予想だにしていない別の路線で心配になってきた……。

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