【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第505話 堂々たる密会現場の準備

 さて、やることいっぱいね。

 最低限だけど、力は取り戻せたし、ここからは準備に費やしましょ。

 

「テンユウ様! また、お一人で!」

 

「あ~ら、レンシャ。ちょうど良かったわ」

 

「へ?」

 

 人手ゲット。さあ、ばりばり働いてもらうわよ~。

 アタシの考えが、うっすらと伝わってきたのか、レンシャは後ずさりしている。

 以心伝心で嬉しいわ。でも、甘いわね。この間合いで、アタシから逃げられるはずないでしょ。

 

「レンシャ~。テンユウ様はいた~?」

 

「ここにいるわよ~。そして、人手追加ね。さあ、手伝いなさいな」

 

 入れ食いね。

 続いてスイリョウが手伝いに来てくれたみたい。

 本人にそんな意思はない? アタシは勇者で、この子たちは従者。

 なら、あんたたちの意思なんて、紙切れのように薄っぺらいと知りなさい。

 

「……」

 

「待ちなさい。レイライ。二人の様子を見て、無言で引き返さない」

 

「そうよ。レイライ! あんたも、巻き込まれなさい!」

 

「テンユウさま~。なんで、こんな古びた洞窟の掃除なんて~……」

 

 仕方ないじゃないの。

 あんたたちは知らないでしょうし、今後も会わせるつもりはないけれど、相手は魔王軍よ。

 国賓と言っても良いじゃない。ただでさえ、こんな洞窟にしか招けないんだから、せめて綺麗にしておきたいじゃないの。

 

 それに、仕込みが必要だしね……。

 さすがに、ここで魔王軍に活動なんでさせたら、絶対に女神にバレるもの。

 だから、この洞窟全体を、アタシの全力を以て隠蔽する。

 女神にバレたらまずいのは、あちらだけじゃない。

 魔王軍と手を組んだ勇者なんて、女神に何されるかわかったもんじゃないからねえ。

 

「ほんっと! やること山積みで、いっそ笑えてくるわねえ!」

 

「テンユウ様も、手伝ってくださいよ~」

 

「あら、ごめんなさい。それじゃあ、たくさん働いて、テイランの国民を救いましょ」

 

 良い子たちね。

 それを聞いた途端に、誰もが真剣な表情で、真面目に動き出した。

 この国は、アタシたちの国よ。だから、アタシたちで守らないと。

 

「テンユウ様」

 

「何かしら?」

 

「本当に、テイランは救われるんですか?」

 

 スイリョウの不安そうな顔に、アタシはできるかぎり安心させるように微笑む。

 大丈夫。確実にとは言えないけれど、可能性が最も高いところに、アタシは賭けた。

 あとは、彼らに任せるだけ。

 ほんっと、頼むわよ~……? 丸投げして悪いけど、あんたたちに、世界の命運がかかっているんだから。

 

「ふふっ」

 

「どうしました?」

 

「いいえ。ちょっと、面白い状況になってきた、と思ってね」

 

 ほんと、意味わかんない。

 勇者が魔王軍にすがるなんて、意味不明な状況よね。

 もうわかっている。あんたたちは、きっと悪なんかじゃない。

 

 だけど、アタシは、あんたたちとは敵対するしかない。

 女神だけでなく、世界中の人々がきっとそうなのだから。

 かつての魔王軍の恐ろしさを知っているから。今さら手を取りあうことはできない。

 勇者ではあるけれど、人類を代表するつもりはないけれど、それでも、人類が弱くてごめんね。

 

    ◇

 

「さて、こんなところかしら」

 

 まあ、さすがにダンジョンみたいに、綺麗な場所にはできないわよね。

 だけど、最初に比べたら、ずっと良くなったんじゃないかしら?

 じめっとして冷たくて、こけ臭い場所だったけれど、魔法で温度を調整し、テイラン自慢の香りの香も用意して、ちょっとはおしゃれになったわね。

 

「テンユウ様。その魔法……」

 

「ええ、ここで内緒の宴をするの」

 

「……ついに、協力者が?」

 

「そうね。だけど、アタシたちの国を救えるほどの力。おいそれと、その情報を広めるわけにはいかない。だから、決して誰にも見つからないように、秘密裏に行動するの」

 

 ほんと、悪いわねえ。

 本来なら、国中で感謝して、あなたたちを称えなければいけないのに。

 返せるものはなく、それどころか、その恩を仇で返すだけ……。

 

「やっと……国の人たちが、救われるのですね」

 

 だけど、アタシは、やっぱりこの国が好きだから。

 きっと、アタシはろくな死に方をしないんでしょうね。

 蘇生できる安っぽい死ではなく、蘇生できなくなったときの本当の最期。

 不義理なアタシにお似合いの、ひどい末路が待っているのだろう。

 

    ◇

 

「テンユウ様! また、魔力の暴走が!」

 

「待ってなさい! すぐ、行くから!」

 

 都に戻ると、症状が軽い者たちが、すでに戦闘を開始していた。

 ああ、またなの。すぐに、アタシも駆けつけ、最前線へと立つ。

 

「あ……あははは! すごくきれい! みんな、凍ってちょうだい!」

 

「まったくもう。あなたの魔法は綺麗だけど、そんな風に他人に迷惑かける子じゃなかったでしょ」

 

 魔力の暴走が、この子を蝕んでいる。

 正気が定まらない様子から、それはすぐにわかった。

 この子は、もっと大人しい子だった。こんな風に誰かを傷つける子じゃなかった。

 

 皮肉なものよねえ。

 あれだけ魔法を研究し、魔力を増やしたがっていた私たちだというのに。

 病のせいで、タガが外れて、望み通り魔力が増え続けた結果が、これなのだから。

 正気を失い、ただ暴走するだけの存在になってしまうなんて。

 仲間同士で、戦うことになるなんて。

 

「眠りなさい」

 

「あ……」

 

 全てを凍結させようとする攻撃を解析し、分解する。

 相手に返すことはしない。だって、この子は敵じゃないのだから。

 

「す、すみません。テンユウ様。お手をわずらわせてしまい」

 

「いいのよ。だって、これがアタシの仕事だもの。それよりも、その子、第三段階よ。隔離して」

 

「はい……」

 

 第三段階。魔力に精神と肉体を支配される。

 こうなってしまうと、基本的には周囲をただ傷つけるだけの生き物になる。

 隔離できる場所も、あといくつ残っていたかしらねえ……。

 

 本当に、最近になって第三段階への変異が多すぎる。

 余計なことしてくれるわ。女神の加護で、勇者の国が攻撃されるなんて。

 そもそも、病を蔓延させる女神の使者って、どういうことよ!

 ぶん殴りたいわ。もう、死んじゃったみたいだけど。

 

「あなたたちも、休みなさいな。第一段階とはいえ、楽ではないはずよ。熱はあるし、体もだるいでしょ」

 

「し、しかし、他の者に比べたら」

 

「駄目よ。まともに動ける、アタシたちとは違うのだから。無理したら、悪化しちゃう」

 

 アタシの言葉に、みんな納得してくれたみたいで、頭を下げて去っていく。

 律義ねえ。病人なんだから、さっさと帰って寝なさいな。

 

『テンユウ様』

 

 今度は何かしら?

 レイライが、伝令魔法を使用して話しかけてきた。

 また、別の場所で、魔力を暴走させた子でも出てきたかしら?

 

『イドが、訪問しています』

 

「あら? すぐ行くわ。待たせておいて」

 

 珍しいわね。

 勇者だから、病に罹患する心配はないけれど、それにしたって、あの子がわざわざこの国に来るなんて。

 待たせたらまた怒りそうだし、ゆっくりと行くことにしましょ。

 

    ◇

 

「遅え!」

 

「あ~ら、ごめんなさ~い? ちょっと、忙しくってねえ」

 

「嘘つくんじゃねえ。てめえのパーティメンバーから話は聞いている。用事はすんだはずなのに、なにをぐずぐずしていやがった」

 

「え~。なんのこと~? わかんな~い」

 

 言っても無駄だと思ったのか、イドは舌打ちして本題を切り出すみたい。

 あら、切り替え早くて嫌あねえ。やっぱり、向かうのを遅くしておいて、正解だったわ。

 

「お前、死んだらしいな?」

 

「まあねえ。勇者といっても、死ぬときは死ぬわ」

 

 当然、自分自身が一番知っていることだからか、イドは反論しない。

 ほらね? この子、冷静なときは、頭が回るから駄目なのよ。

 

「そんなことは知っている。それよりも、問題は、誰がてめえを殺したか。だ」

 

「あら~。心配してくれているの? 立派になったわねえ」

 

「うるせえ。お前が、簡単に殺されるほどのやつだ。情報をよこせ」

 

 さて、ここからね。

 悟られないように、しっかりと話さないと。

 多少なりとも、イラついているおかげで、なんとかバレずにすみそうだからね。

 

「転生者よ。さすがに、女神の加護というだけはあるわ。アタシたちにまで、届きうる力を持っている場合がある」

 

「うちにいたやつは、大したことなかったけどな」

 

「そりゃ当然。ピンキリですもの。アタリもハズレもあるわよね」

 

「どんなやつだ。どんな力だ。お前を殺したのは」

 

「なあに? まさか、報復でもしてくれるの? 成長したわねえ」

 

 アタシの言葉に、イドは明らかに嫌そうな表情を浮かべていた。

 なによその反応。怒らせようとしたんだけど、予想外の反応しないでくれる?

 

「安心なさい。殺されたといっても、こっちだって勇者よ? ちゃんと、相討ちにまでは持って行ったわ」

 

「……」

 

 探られている。

 だけど、色々と揺さぶったおかげか、冷静には判断できていないわね。

 イドは、しばらく黙った後、席を立った。

 

「あら、もう行くの?」

 

「俺の獲物じゃないようだからな。ここにいても、時間の無駄だ」

 

「そう。ま、それがいいわね。残念ながら、テイランは、相変わらず病が蔓延している。いくらあんたでも、長居しないほうがいいわ」

 

「……治療の目途は?」

 

「ぜ~んぜん。ほんと、嫌になるわねえ」

 

 心配してくれているのかしら?

 でも、悪いわね。本当のことは言えないの。

 アタシの様子を見て、イドは今度こそ立ち去っていった。

 

 獲物ねえ……。例の寄生の転生者とかいうやつかしら?

 あの子はあの子で、なんか本当に変な転生者と遭遇しているわねえ。

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