【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

506 / 583
第506話 3から始まるカウントダウン

「設置完了シマシタ」

 

「ああ、ありがとう」

 

 昆虫兵の報告により、いよいよもって準備が完了した。

 クララとテクニティスが設置してくれた転移魔法陣。それによって、テイランまで伸ばしたダンジョンへと移動できる。

 

「テンユウが用意した土地は、人通りが少ないし罠もないみたいだよ~」

 

「ああ、ありがとうピルカヤ。誓約で縛られている以上無理だけど、念のため確認したかったからな」

 

 互いに裏切らないとはいえ、何か抜け道があったとしたら大変だ。

 テンユウと実際に話してみて、なんとなくその人となりは理解したし、そんなやつではないんだろうけど、ついつい心配してしまう。

 これはもう、俺自身がそういう性格だからだろうな。

 

「では、いざテイランに行きますか」

 

 やたらと気合を入れてフィオナ様が宣言する。

 もしかして、外出ということで気分が高揚しているのか?

 だが、残念ながらテイランに行くと行っても、俺たちはあくまでも地底魔界を進むだけだ。

 外に出ることはないし、ダンジョンの延長線上での活動となる。

 

「向こうの文化はしっかりと勉強しましたからね! 辛い料理が多いそうですが、私はそれも好きなので大丈夫です」

 

 あ、やっぱり勘違いしてるな、これ。

 どうやらフィオナ様の中では、テイランで観光しつつ治療することになっているようだ。

 ……仕方ない。俺が訂正するしかないか。

 

「フィオナ様。テイランの国には入りませんよ? あくまでも、地底魔界で治療します」

 

「ええ!?」

 

「さすがに、魔王軍が国にいたら問題ですからね。人目につかない場所を用意されたので、そこで活動する予定です」

 

「ぐう……。ま、まあ、別にいいですけどね! 私は地底魔界好きですし!」

 

 本当のことだろうけれど、楽しみにしていたのも本当なんだろうな。

 なんか心なしか肩を落としたような姿に、なぜか罪悪感が浮かんでくる。

 

「魔王様~。料理なら、あたしが作りますよ?」

 

「ありがとうございます、マギレマ。あなたの料理のほうが美味しいですからね」

 

 それも本当だろうけれど、やはり楽しみにしていたのか、まだガッカリした様子が伝わってくる。

 

「この件がすんだら、俺がテイランの街並みでも再現できるよう、ダンジョンマスターの力をフル稼働させますか?」

 

「いえ、さすがにそんな無駄遣いをさせるわけには……」

 

「フィオナ様のためなら、無駄なことはありませんけど」

 

 視線を逸らし申し訳なさそうにするフィオナ様。たまに弱気になるんだよな、この魔族。

 ということで、ここはちょっと強めに言うくらいがちょうど良いとみた。

 

「俺の魔力は全部フィオナ様のためのものですから。なんでも言ってください」

 

「そうですか。では……宝箱ガシャを百連」

 

「そういうのはやっていません」

 

「うそつき!」

 

 そっち方面に流れたら、もうどうしようもないんです。

 こういうときは、なんかわりと粘り強いからな、この魔族。

 だから、かなり強めに却下するくらいがちょうど良いんだよ。

 

「馬鹿なことやってないで、さっさと行きますよ」

 

「あれ? 今プリミラ、私のこと馬鹿って言いました?」

 

「大丈夫です。俺も馬鹿って言われました。宰相なのに」

 

 だが、否定できないし、プリミラが正しい。

 俺たちは叱られた者同士、傷を舐め合うかのように仲良く転移するのだった。

 余談だが、手をつないだ俺たちを見て、プネヴマが倒れた。

 ……テラペイアもテイランに向かっていなくなるのに、プネヴマは大丈夫なんだろうか。

 

    ◇

 

 転移した先は、まあいつも通りというべきか。岩肌がむき出しになっている洞窟だな。

 ひんやりと涼しく、土の匂いがわずかに混ざっており、今では慣れ親しんでほっとするような場所だ。

 

「いつも通りの景色ですね~」

 

 だが、フィオナ様はそんな見慣れた景色に、少々がっかりしている。

 

「俺は好きですけどね。俺の居場所ですし」

 

「……まあ、他の国より地底魔界のほうが、いい場所ですからね!」

 

 フォローしておくと、フィオナ様の機嫌も直ったようで、笑顔を咲かせながら俺の頭をなでた。

 他の国を楽しみにしているのか、それとも対抗意識を燃やしているのか、よくわからない状態だなあ。

 

 さて、改めて見回してみると、広さは十分だな。

 テイランの国民の治療というだけあって、治療のための場所はかなり大きめに確保してくれたようだ。

 俺だったら、ダンジョンマスターの力で作成できるけれど、テンユウの場合はそうもいかない。

 よくもまあ、こんな場所を探し出してくれたものだ。

 

 この広い空間には快復の源泉を作るのが良さそうだな。

 そして、その先にはスタッフルームではないけれど、通路の先にまた人を収容できる空間がある。

 この通路を壁で塞いでおけば、テイランの患者たちと顔を合わせる心配もなさそうか。

 ということで、とりあえず魔王軍のみんなは、この部屋で待機するとしよう。

 

「とりあえず、俺たちはこっちで作業しましょうか」

 

「そうですね。向こうの広い空間に温泉を作るのであれば、こちらを従業員のための部屋にするのが良さそうです」

 

 フィオナ様からも賛同してもらったので、魔王軍のみんなで移動する。

 さすがに四十人くらいとなると、大所帯だな。

 くれぐれも、テンユウ以外には見つからないようにしておこう。

 

「壁作成」

 

 全員が移動したのを見計らい、壁を作成して通路を遮る。

 まだ慣れていないのか、テラペイアとルトラの部下たちが、びくっと肩を震わせているけれど、早く慣れてね。

 

 あとは、このまま単なる洞窟では体を休めにくい。

 しっかりとした部屋にしてしまおう。

 

「広間作成」

 

「こ、こんなに簡単に改築が……」

 

「慣れなさい。レイは、そういうやつだ」

 

 テラペイアの言うとおりだ。

 俺はなんかもうそういう存在として、みんなには受け入れてもらおうと思う。

 

「宿作成」

 

「ルトラ様」

 

「慣れてください」

 

 よし、これで十分休める場所へと変わったな。

 元々用意してもらっていた空間だけでは足りず、壁をえぐって宿を作成したけれど、まあ許してもらえるだろう。

 そもそも、地底はフィオナ様のものだからな。ここは、魔王軍の縄張りと思ってもいいはずだ。

 

「レイ~。テンユウが来たよ~」

 

 作業もひと段落し、その成果を見ながら満足している俺に、ピルカヤが声をかける。

 彼には、こちらでも相変わらず見張りを頼んでいるが、早速活躍してくれたみたいだ。

 

「ちょうど良かった。それじゃあ、フィオナ様とピルカヤ以外の四天王は、こっちで待機していてください」

 

 さすがに、あのときテンユウと対面した者以外を見せるつもりはない。

 なので、作ったばかりのスタッフルーム兼休憩室で、休んでもらいつつ、何かあったら駆けつけてもらおう。

 

「消去」

 

 テンユウが到着する前に、壁を消して俺とピルカヤ、テラペイアとルトラだけが、快復の源泉設置予定の部屋へ移動する。

 そうして再び壁を作ってしまえば、テンユウでさえ容易にはあの奥へと入り込めない。

 イドなら、一発でぶっ壊すだろうけどな……。

 

「あら、ピルカヤ。やっぱりあんたも来たのね」

 

「そりゃあ、ボク四天王だからね。君が悪さしないように、よ~く見張っておいてあげるよ」

 

「しないわよ、そんなこと。今回は、全面的に協力してもらう身だもの。ここで足を引っ張っても、誰も得しないじゃない」

 

 テンユウは両手を上げて降参するようなポーズをとった。

 なんとなく、ピルカヤと相性よさそうだよなあ。普段は軽いやり取りをしているところが似ている。

 ただ、そんな姿を見せながらも、一瞬で意識を切り替えるのがピルカヤだ。

 それに似ているテンユウも、今はこうして和やかにやり取りできていても、次の瞬間には敵という可能性もある。

 

「というわけで、改めてよろしくね。……え~と、代表者って、ピルカヤ? それとも宰相のあなた?」

 

「レイのほうだね」

 

「やっぱりねえ……。なんというか、あんたすごいもんね」

 

「なあ、テンユウ」

 

「何かしら?」

 

 会話を遮るようで悪いが、何よりも気になることがある。

 それを解決しないことには、安心して話はできないし、そもそもこの場から即撤退する心づもりだ。

 

「ここは、虚無の種子みたいに別空間じゃないぞ。魔王軍と勇者が話していて大丈夫なのか?」

 

 女神に目をつけられないように、だからこそ今までは虚無の種子で話していた。

 そして、そこで作業内容も全て取り決めたため、こうして再びテンユウと話すことになるとは思っていなかった。

 だからこそ気になる。今のこの状況、女神に筒抜けじゃないのか?

 

「安心してちょうだい。ここはテイラン、アタシの祖国よ。勇者という立場もあるし、地の利だってある。だから、しっかりと準備すれば、女神さえも認識できない結界も張れるの」

 

「たしかに、ボクもろくに見えないもんね~。だから、いつもテイランって調査しづらかったんだ」

 

「そういうこと。これで、少しは安心できたかしら?」

 

 ピルカヤに目配せすると、彼はこちらを安心させるように頷く。

 そんな俺たちの様子を見て、テンユウは困ったように笑うのだった。

 ピルカヤが問題無いと判断しているし、そもそも女神にばれたら困るというのはテンユウも同じ。

 ならば、ここは疑うべき場面でもないか。

 

「ああ、悪かったな。話を遮って」

 

「気にしてないわ。それじゃあ改めてよろしくね。レイ」

 

「ああ、よろしく」

 

 今度こそ、とテンユウは俺に手を差し伸べる。

 俺のほうも、ここで拒絶する理由などないので、それに応じて握手をした。

 

「無防備ねえ。駄目よ? 敵との握手に簡単に応じちゃ」

 

「え、なんかされた?」

 

 とりあえず、起爆岩で……。

 

「待った待った! なんもしてないから! なんか、あんた一瞬でスイッチ入るから怖いわね!」

 

「レイだもん」

 

「魔王軍の宰相様ってだけあるわよねえ……。あくまでも、忠告よ。無防備に握手に応じたから、油断してるのかと思ったけど……そんな感じじゃないわねえ」

 

 いや、だいぶ油断していた。

 たしかに俺たちとテンユウは敵同士だもんな。

 ここで慣れ合ったとしても、最後はしっかりと敵として別れるよう改めて心がけておこう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。