【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

519 / 521
第519話 ビー玉みたいな目で企む断捨離

「実際のところ、今のダンジョン魔力って、どうなっているんだ?」

 

 リグマがそう尋ねてきたのは、フィオナ様と別れてダンジョンを進んでからのことだった。

 おそらく、フィオナ様が一緒にいたら、またガシャをねだられるので、気を遣ってくれたのだろう。

 

「そうだなあ。さすがに、枯渇したってわけじゃないよ」

 

「だろうな。レイくん、魔王様と違って、考えなしに散財しないだろうし」

 

 わかっているじゃないか。

 俺のことも、フィオナ様のことも。

 まあ、さすがのフィオナ様も、考えなしに使い切るのは、ごくまれにだ。

 そう。ごくまれに、そうしようとするので、俺たちが止めているのだ……。

 

「ただ、テイランの国民を治療するときに、さすがに蘇生薬を使いすぎたのも事実だ」

 

「だろうなあ。まさか、何十人も蘇生するなんて、レイくんのこと、まだまだわかってなかったよ」

 

「俺だって、ちゃんと使うときは使うんだぞ。溜め込むばかりじゃないさ」

 

「そういう意味じゃないんだけどなあ……」

 

 あのときは、本当にふだんの節制が嘘のように、一気に使いすぎたからなあ。

 だが、そのおかげで、テイランでの治療はかなり順調だった。

 それに、何よりもフィオナ様の望む、かつての魔王軍の復興に近づけたので、決して悪いことではない。

 

「そんで、次はテクニティスと、ラプティキと、イピレティスか」

 

「そうだな。全員、そんなに部下がいるとは思わなかったから、また魔力を溜めるところからだけど」

 

「溜めればなんとかなっちゃうの、やっぱりやばいよなあ」

 

 ダンジョンマスタースキルさんは、魔力さえあれば応えてくれるからな。

 影冠樹にみんなの魔力を溜めてもらって、ということも考えたが、それでは一万までけっこう遠い。

 フィオナ様が毎日溜めれば、その限りではないが、あの方には自分でガシャを楽しんでもらいたいし、やはり俺は別途ダンジョン魔力を溜めたほうが良いだろう。

 

「まあ、ほうっておいても、各店舗の入場客のおかげで、いずれは溜まるんだけどね」

 

「マギレマのところが、一番稼いでるんだっけ?」

 

「あそこやばいよ。一日に、どれだけ客が来ているんだって、毎回驚いている」

 

 ダンジョン魔力も、マギレマさんのおかげで一気に増えるし、通貨もどんどん増えているからな。

 今では、その通貨だけで食材を賄えそうだし、彼女が店を開けば、ダンジョン関係なしに成功したと思う。

 ただ、ダンジョン魔力が一気に増えるといっても、大所帯となったダンジョンは、日々の整備だけでけっこうな魔力が必要になる。

 

「う~ん……。ダンジョンの見直しが必要か? あまり魔力を食うようなら、削減するとか」

 

 でも、どのダンジョンも、色々と知恵を絞った結果だし、失敗というわけではない。

 なので、できることならば、取り壊しとかはしたくないなあ。

 

「別に、なんでもかんでも削減する必要は、ないんじゃねえの?」

 

「だけど、無駄はよくないし」

 

「そうかねえ。おじさんは、無駄と余裕は別物だと思うよ」

 

 余裕? どうだろう。たしかに、ダンジョン全体で見れば、けっこうな黒字ではある。

 だけど、その浪費の多いダンジョンがなければ、もっと黒字になるのだから、やはり無駄なのではないだろうか。

 

「無駄だと思っているダンジョン、色々と実験したり、施設や罠を作ったり消したりしているところだろ?」

 

「まあ、そうなるな。だけど、そんなことしないで、安定させればダンジョン魔力も、もっと」

 

「実験のための資金は、無駄だからと削っちゃ駄目でしょうが。そもそも、熱量変換室だって、レイくんが言う無駄から生まれたものだ」

 

 たしかに、あれの発端は、試しに施設を作ったところからだったな。

 であれば、そういった冒険心を無くしてしまうのも、またダンジョンのためにはならないか。

 

「難しいな。そうなると、どこから費用を捻出するか」

 

「まあ、実際に見直すこと自体はありだと思うぜ。本当に無駄なものがあるなら、そこは容赦なく削っていいだろうし」

 

「それが一番かもな。まずは、何が無駄なのか、何が余裕なのか、洗い出しをしてみよう」

 

 となると、ダスカロスには、ついてきてもらいたいか。

 あとは、できればプリミラにも、意見をもらいたいところだ。

 よし、ダンジョン内の視察といこうじゃないか。

 

    ◇

 

「よ~し、今日も無理せず、がんばろうぜ」

 

「君、気を抜きすぎじゃないかい?」

 

 一応ここの責任者なので、朝から従業員に向けて軽く話をしていると、隣に立っていた女王様があきれ顔を浮かべた。

 いやいや、無理はよくないだろ。何も手を抜けとは言っていないんだ。

 それに、最近の問題がすべて解決したし、しばらくは適度に、肩の力を抜いていいだろ。

 

「魔王様の接待も成功した。ここを嗅ぎまわるルイスも、もういない。となると、のんびりやろうじゃねえの」

 

「まったくもう。知らないからね。あとで焦ることになっても」

 

「へいへい」

 

 返事まで雑になったためか、女王様はため息をついた。

 まあ、仕事は真面目にやるけどな。うちの従業員たちも、そのことは重々承知している。

 だから、朝のミーティングなんて、この程度のゆるさでいいのさ。

 

「さて、まずはスロットの魔力を注いでくれ」

 

 ダークエルフたちに指示を出す。

 魔力の無駄遣いということもあり、スロット類の魔力で稼働しているものは全て、営業時間外に魔力を入れていないからな。

 静まり返っていたカジノに、賑やかな音が差し込まれる。

 もうじき仕事が始まる、と気分も切り替えられるというものだ。

 

 そんなふうに準備が完了したら、昆虫人が表情を変えずに近づいてきた。

 彼女たちから、こちらに話しかけてくる。ということは、何かあったということだな。

 雑談とか、一切しねえからな。そのため、必要な報告のために、来たのだということがわかる。

 

「どうした? 機材のトラブルでも起きたか?」

 

 さすがに、まだ客もいないから、あるとしたらそのくらいか。

 であれば、故障した機材は回収して、テクニティスの旦那に預かってもらうのがいいだろう。

 あたりをつけて、対応方法を考えていると、昆虫人の女性は淡々とそれを告げた。

 

「宰相様ガ、イラシテオリマス」

 

「そうかい。じゃあ、会いに行ってくる」

 

 ボスが? 何かあったか? それとも、ふらりと寄って遊びに来たか?

 幸いまだ開店前だし、ボスを優先することはいくらでもできる。

 軽い気持ちで会いに行くと、ボスはなんだか物々しい雰囲気で店内を見回っていた。

 

「……女王様。ボスは、一体何を?」

 

「視察みたいだね」

 

 ……珍しいな。

 今までは、俺たちを信用してくれていたため、そういったことはしてこなかった。

 ボスの後ろに、ダスカロスの旦那と、プリミラの姐御もいることから、どうやら本気だということは伝わってくる。

 

「機材が多すぎるか?」

 

「いや、カジノは盛況だ。減らしてしまうと、客足が減ることにつながる」

 

「じゃあ、従業員は?」

 

「たしかに、今は過剰になってきているかもしれませんね」

 

 なんか、リストラの方向に話が進んでいないか?

 ……やべえ。相手はボスだぞ。そうと決断したら、情け容赦なくクビを切られる。

 どうやら、俺は少しばかり気が抜けていたようだ。

 

「よし、今日も無理せず、全力で頑張るぞ。お前ら」

 

「君、言っていることが、さっきと違わないかい?」

 

「何を言っているんだ。俺は、いつだって真面目に全力だぜ。女王様」

 

「はあ……。それでいいよ。君がクビにでもされたら、私だって困るんだからね」

 

 表情を変えず、淡々と店内を見て回るボスたちの邪魔をしないよう、俺たちは今日も真面目に働くことにした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。