【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第526話 運営に片足を突っ込んだ男

「知識関連アイテムが多めに出る宝箱だと!?」

 

「それは興味あるわね。ええ、別に趣味ではなく、本当にテイランのためよ」

 

 レンシャの姐御、俺に言い訳しないでテンユウの旦那……姐御? にしてくれ。

 カジノで期間限定ピックアップ宝箱の準備をしていると、いつもの二人がさっそく食いついてきた。

 二人だけでなく、常連客たちもわりと興味津々なようだし、こりゃあ、すでに成功が確約されていそうだな。

 

「知識関連ねえ。魔本とか?」

 

「魔法関連の装備とかもかな」

 

「俺たちとは無縁だなあ」

 

 ただ、懸念していたようにこういう客もいる。

 そうだよなあ。今までと違って、叡智の宝箱から出るものは、わりと方向性が決まっている。

 それらを求めない者にとっては、ハズレが増えているようなものだ。

 

「ちゃんと、いつもと同じ宝箱もあるぜ。安心して楽しんでいってくれ」

 

「そっちのほうがいいな」

 

「私たちじゃ、頭の良さそうなアイテムなんて、使いこなせないからねえ」

 

 まあ、催し物が一つ増えたようなものだからな。

 マイナスにはならねえだろ。

 もう一つの懸念は、さすがにこんな怪しげな宝箱を疑問視されないかってことだが……。

 

「ねえ、ロペスくん」

 

「なんだ? レンシャの姐御」

 

「詮索するのは良くないと思うんだけど、さすがに気になるわ。この宝箱、いったいなんなの?」

 

 ま、そうだよなあ。

 これを表に出すことを決めたときから、ボスやダスカロスの旦那も心配していたことだ。

 だから、こういう困ったときの解決策も、すでに決まっている。

 

「仲間の力だな。要は転生者の力さ」

 

「そうよね……。ごめんなさい、あまり大っぴらに言いたいことでもなかったでしょ」

 

「ま、レンシャの姐御以外も気にしていただろうし、ここで説明しておけたのは、悪いことでもないだろうな」

 

 周囲も納得している。女神の加護って大したもんだねえ。

 女神自体は、ずいぶんとくそったれだけどな。力だけは本物だ。

 不思議な力は、大抵それで説明がつく。

 

「一応言っておく。誰の力か、それは言わんほうがいいぞ」

 

「ああ、気遣い感謝するぜ。リズワンの旦那」

 

 誰の力かなんて言ったら、そいつが狙われかねないからなあ。

 以前昆虫人が攻めてきたときも、どいつがどの能力かは、わからないように同時進行されていたし。

 転生者の力は強力だが、そいつ自身を狙われる可能性を高める。

 まあ、うちのボスを狙おうもんなら、ビッグボスや四天王や十魔将やモンスターに襲われるし、そんな命知らずなことはおすすめできねえが。

 

    ◇

 

「あら、レンシャ。今日は随分とたくさんの本を……あら? それ、全部魔本じゃないの。どうしたの?」

 

「欲望のダンジョンのカジノで、引き当てました」

 

「……意味わかんない」

 

 意味はわからない。でも、なぜそうなったかはわかる。

 あの宰相。また、やりたい放題しているんでしょうねえ……。

 魔本の作成までして、宝箱に詰めているってことかしら?

 そういえば、深淵の書がどうとかも言っていたけれど……まさか、混ざってないでしょね!?

 

「ちょっと、見せてくれる?」

 

「はい、なかなか面白い効果も多いですよ」

 

 魔本。こっちも魔本。あ、これは魔法の教本ね。こっちは、学術書。

 ……さすがに、あんなやばいものは、軽々と提供していないようね。

 そんなことしていたら、殴りに行かなきゃならなかったわ。

 

「次は、別の種類のアイテムを、出しやすいようにするみたいですし、楽しみです」

 

「へ、へ~。そうなの」

 

 できるの?

 できそうね……。まあ、人類に損害があるわけじゃないし、気にするだけ無駄ね。たぶん、いちいち気にしていたら、疲れるわ。

 それに、どの道それらに関して、アタシが話せることもないし。

 

「それにしても、入手できるアイテムの種類まで意のままとか、女神、転生者ばっか贔屓してなあい?」

 

「テンユウ様も、がんばって女神様の力を引き出してください!」

 

「宝箱作るのすら無理よ。魔本なら、作ってあげるから、それで我慢なさい」

 

    ◇

 

「これまでとは、別の客層がつかめたかもしれないな」

 

「ああ、宿に泊まってはいるものの、カジノに来ない客たちが、今回は顔を見せていたぜ」

 

 カジノを利用する客の中に、魔法使いだったり理詰めで宝箱に挑もうとする者がいた。

 ロペスの言うとおり、これまでは客ではなかった者たちだ。

 叡智の宝箱のおかげで、その手の者たちを引っ張りだせたということだな。

 宿に泊まっている以上は、追加でダンジョン魔力を徴収できるわけではない。

 カジノ来ても来なくても、こちらには大したメリットはない。

 

 だけど、その手の客層にも興味を持ってもらえた、ということが大切だ。

 今回は、宿泊客から新規の客を獲得できた。

 しかし、この噂でも広まれば、これまでこのダンジョンに見向きもしていなかった者たちも、通うようになってくれるかもしれない。

 

「となると、叡智の宝箱以外にも、色々な宝箱ができたら助かるな」

 

「はい! 蘇生薬箱が良いと思います!」

 

「そんなもの作れたら、もう人類相手にせこせこ動く必要すら、なくなってきそうですね」

 

 まあ、実際は、それでも怖いけどな。あの女神が……。

 もしもあれと戦うことになったら、蘇生薬なんて湯水のごとく消費することになるだろう。

 それでも……勝てる見込みがあるのかすら、わからない。

 

「まあ、とにかく無理です」

 

「では、薬品の宝箱で手を打ちましょう」

 

「俺が渋ってるみたいに言わないでください。そもそも俺だって、どうやって指向性を与えるのかわかっていませんから」

 

 前回は……多めに魔力を注いだだけだったな。

 そこに指向性を獲得させた他の要因は……フィオナ様に、本でも出たら良いと考えたからか?

 じゃあ、蘇生薬を引いてもらいたいと思いながら、多めに魔力を消費することで、本当に蘇生薬箱が……。

 まさかな。とは思いつつ、試すだけは試してしまうのが、俺という魔族なのだ。

 

 フィオナ様が蘇生薬を引けますように。

 そんな祈願とともに、宝箱を作成する。

 すると、通常の宝箱とも、叡智の宝箱とも色が違う箱が現れる。

 メニューは、どうだ? 目を向けて、確認する。そこには、しっかりと名前が記載されていた。

 

 秘薬の宝箱作成:消費魔力 10

 

「違うんだよな~……」

 

「ど、どうしました? レイ。なんか、やさぐれてませんか?」

 

「蘇生の宝箱ではなく、秘薬の宝箱が解禁されました」

 

「なるほど、惜しいですね」

 

 惜しいのかな? せめて、もっと蘇生薬っぽい名前なら、フィオナ様にも喜んでもらえたというのに。

 

「ですが、そこまでお膳立てしてもらえたのなら、あとは私の役目ですね」

 

「いえ、さすがに、これでは蘇生薬確定というわけでは」

 

「もう、ほぼ勝ったようなものですね。はい、勝ちました。では、消化試合といきましょう」

 

 なんで、毎回毎回自信だけは、たっぷりとあるんですか。

 どうせ、また泣く羽目になりますよ?

 気軽に魔力を注いだフィオナ様の指示で、俺は宝箱を開封する。

 

「回復薬だらけ!」

 

「すごい量ですねえ。もしかして、これまでの最高記録を抜いたんじゃないですか?」

 

「いりませんけど!? そんな記録! トキトウ! お店の在庫として、保管してください!」

 

「は~い! いくよ。ハルカちゃん! がんばって、運ぼうね!」

 

 落ち込んでも、しっかりと指示は出すあたり、傷は浅いのかもしれない。

 ……俺に向かって、崩れ落ちてこないでくださいよ。

 はいはい。魔王として、ちゃんと指示だけは出せたんですね。偉いですよ。

 

    ◇

 

「それにしても、名前負けしてるよなあ。秘薬といっておきながら、回復薬の詰め合わせなんて」

 

 なんか、若干詐欺のような宝箱じゃないか。

 そう落ち込んでいると、ロペスが少し考えてから、意見を述べる。

 

「商店の在庫が不足したときは、そっちを開ければ期待値は上がりそうだよな」

 

 たしかに、そういう使い方はあるか。

 これまでみたいに、完全にランダムというわけじゃないから、可能性がぐっと上がりそうだ。

 

「そうなると、今までのガシャみたいに、何が当たるかわからないって、ことにはならないな」

 

「むむ……。それでは、部下のみんなが楽しめませんね」

 

 楽しませようとしていたんですか。

 変なところで、部下に気遣いをする魔王様だ。

 

「であれば、やはりこれまで通り宝箱を……? でも、秘薬と名乗っているのであれば、蘇生薬の可能性は上がるかもしれないですし……」

 

「まあ、今は半々くらいで良いんじゃないですか?」

 

 変に部下を気遣うよりは、フィオナ様が喜ぶ結果を選んでもらいたい。

 ということで、今後はしれっと、一度に二つ以上の宝箱を俺におねだりするのだった。

 ちゃっかりしてやがる。さすがは、魔王だ。

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