【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第527話 うちにはそんなスペースはありません

「ディキティス様。聞きました? 宰相様の宝箱の話」

 

 訓練の合間に、オーガたちからそんな話を振られた。

 宝箱……。もしや、また魔王様が、蘇生薬を引き当てたのか? いや、宰相殿ということは、そちらがさらに大量の蘇生薬を……。

 

「いや、耳には入っていない。蘇生薬でも引いたのか?」

 

「いえいえ。それが、新しい宝箱を作ったそうなんです」

 

 新しい宝箱……。

 彼は彼で、いったいどこを目指しているのだろうか。

 元々、考えるより試す傾向にあったが、最近ではそれがさらに顕著になっている気がする。

 

「どんな宝箱なんだ?」

 

 とはいえ、新しい宝箱というのが気になるのは事実。

 私が少々考えた程度では、答えが出なかったため、話題を提供したオーガに尋ねてみる。

 

「なんでも、知識関連のアイテムばかり出る宝箱と、薬品関連のアイテムばかり出る宝箱を作ったみたいです」

 

「彼は、何を目指しているんだ……?」

 

 いや、物資の補充がしやすくなるという点では、今後の地底魔界のためになると、理解はしている。

 だが、魔王様も、そのようなことは、できなかったと記憶しているのだが……。

 

「宰相様ですからね」

 

「そうか。そうだな。宰相殿であれば、仕方あるまい」

 

 ともあれ、薬品宝箱は、なかなか興味深い。

 安定して回復薬を入手できるようになれば、今後の訓練も、加減を減らすことができるからな。

 

「俺たち、薬品系の宝箱で回復薬もらって、戦闘や訓練に使おうと思ってます」

 

 どうやら、オーガたちも同じ考えのようだ。

 存外、彼らとは気が合うような気がする。

 厳しくしてもついてくるし、私と考えが似通っているのかもしれないな。

 

「ディキティス様。回復するから、厳しくしてもいいとか、考えてません?」

 

 ドリュから、そんなことを尋ねられる。

 こちらはこちらで、さすがは私の部下だ。

 よく考えを理解しているじゃないか。

 

「そうだが?」

 

「い、以前から、そんなに厳しかったでしたっけ……?」

 

 以前……。以前か。

 いや、以前はそこまでの余裕もなかったからな。

 人類との戦いも続いていたため、下手に怪我などはさせられなかった。

 回復薬のような物資も無駄遣いできず、かといってテラペイアたちを頼るのも、余計な仕事を増やすことになるからな。

 

「今は状況が違うからな。宰相殿の力で、気兼ねなく鍛錬を行えるようになった」

 

「いえ、なんと言いますか。もっと、倫理観とか……」

 

 何を言う。

 モンスターたちなんか、どうせ蘇るからと、訓練中も死を前提とし始めているぞ。

 オーガたちは、私と似通った考えのため、死ななければ怪我も問題ない。

 周囲を見回し、ドリュは、自分が少数派だということに気づいたのか、ため息をついていた。

 

「俺の周りが、なんかやばいやつらだらけに……」

 

 今、私もやばいやつ扱いしていなかったか?

 それに、宰相殿も含んでいないか?

 

 疲れた様子のドリュを慰めようとしているのか、ソウルイーターが近づく。

 

「特にお前らは、もう少し命を大切にしろって……」

 

 そんな彼女のことを、ドリュは心配そうに見つめていた。

 

「そういえば、お前らそろそろ柵の中行かなくていいのか?」

 

 その言葉を聞いて、モンスターたちはぞろぞろと移動を開始した。

 そうか。なにやら、また不思議なことを始めていたな。

 モンスターたちを、柵に入れて、そこで世話をするとか。

 いずれ、鑑賞用の土地にするらしいが、あれは私にもよくわからない。

 

 うちのモンスターたちであれば、柵の中で大人しくするだけの知性はある。

 なんなら、柵すら不要だ。

 食事も、マギレマのところで、我々と同じように食べている。

 

 そんな彼らに、あえて野生のモンスターたちのように、振る舞わせようとしているらしい。

 可能ではある。演技も得意だからな。

 だが、見に来た者たちを、あざむいている気がする。

 

「……宰相殿の考えを、全て理解しようとするのは、無謀だからな」

 

「ディキティス様でそうなら、俺たちはもっと無理ですね」

 

 モンスターたちを見送りながら、私と部下たちは、そのように、結論を出すのだった。

 

    ◇

 

「え、餌だよ~」

 

 ハーフリングたちが、モンスターたちに食事を与える。

 最初の頃と比べて、随分慣れてきてはいるが、まだ少々ぎこちない。

 襲うことはない、とわかっているはずなんだけどなあ。

 

「レイさん、レイさん」

 

 そんな様子を眺めていると、時任が話しかけてきた。

 なんか、わくわくした様子だな。

 いつもより、さらに明るい声色だった気がする。

 

「どうした?」

 

「私も、餌やりしてみたいです!」

 

「かまわないぞ。せっかくだから、ハーフリングたちに、教えてもらってくれ」

 

 今後、モンスター園を作るとしたら、あのハーフリングたちを飼育係に見立てる。

 触れ合いも全て、彼女たちに任せるので、ちょうどいい練習になるだろう。

 

「私も、ソウルイーターちゃんに、ご飯あげていいですか!」

 

「え、は、はい! どうぞ!」

 

 ハーフリングに、肉の塊を手渡されると、時任は、自信満々で、ソウルイーターに近寄っていった。

 

「ほ~ら、ご飯だよ~」

 

 次の瞬間、時任の手がソウルイーターの口の中に消える。

 

「お~……。なんか、面白い感触だねえ」

 

 当然、腕ごと食べられたわけでなく、ソウルイーターは、時任が持っていた肉だけを、綺麗に平らげた。

 

「芹香。よく平然としていられるわねえ。食べられるかもしれないわよ?」

 

「え~? ソウルイーターちゃん、かしこいよ? ほら、ワタリだって、腕をちょん切ったりしないでしょ?」

 

「それもそうね。なら、大丈夫かしら」

 

 初期に仲間入りした転生者だからか、二人とも順応してるなあ。

 いっそ、この二人をモンスター園の飼育係に?

 いや、それだと今の職場が立ち行かなくなりそうだな。

 それに、ハーフリングたちの仕事がなくなる。

 

「ということで、がんばって、あの二人を見習ってくれ」

 

「どういうことですか!?」

 

「ト、トキトウさん! コツを教えてください!」

 

「えっと……慣れ?」

 

 それが一番だな。

 このまま、しばらく世話し続けていれば、嫌でも慣れるはずだ。

 そのころには、うちの住人だな。

 もうわりと、こちらの事情を教えているため、逃がす気はない。

 

「ひえぇ……!」

 

 おっかなびっくり世話をする姿を見て、俺は退路を断つように考えていた。

 

「よし、ロペス。あのハーフリングたち、うちで正式に雇おう」

 

「そりゃあいいんだが、大丈夫かねえ」

 

「やっぱり、預けてくれたハーフリングに、抗議されそうか?」

 

「いや、可能なら引き取ってくれと言われたし、そっちは問題なさそうだ」

 

 なら、もううちの職員にしても良さそうだな。

 そうなると、何が心配なんだろう。

 俺の尋ねたいことがわかったのか、ロペスはそのまま話を続けてくれた。

 

「だけどよお。あんな怖がりながら飼育しているんだぜ? 本当に、モンスター園って大丈夫か?」

 

「そこは、慣れるだろうから。そのうち、もっとテキパキと働いてくれるさ」

 

「いや、飼育員はそれで良いんだけどな? ……客は、どうなんだ? 飼育員ですらあれなら、客はもっと怖がって、そもそも見に来ないんじゃないか?」

 

「……なるほど」

 

 いや、諦めるな。

 動物園だって、肉食獣は怖いけれど、観察している分には楽しいだろ。

 モンスターたちは、柵の中から出てこないってことにすれば、まだまだ可能性はある。

 

「あと、モンスターがどれほど人気なのかを考えると……。ちょっと、なあ」

 

「みんなかわいいと思うけど」

 

「そりゃあ、俺たちは身内だからな。俺だって、俺を殺しかけた鳥とか、今ではわりと好きだが、野生のモンスターと思われるなら、わざわざ観に来るかねぇ?」

 

 ……前途多難な気がしてきた。

 こんなにかわいいのにもったいない。

 

「いっそ、リピアネム第二形態でも展示しておくか……」

 

「それは、俺も観に行きたいが、四天王はさすがに駄目だろ」

 

「冗談だ」

 

 そう、冗談だ。

 だからリピアネムよ。勝手に柵の中に入ろうとするな!

 ハーフリングたちには、一応お前のこと内緒なんだから!

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