【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第555話 縁の下の力持ちたち

「宰相様、宰相様!」

 

「どうした?」

 

 ハーフリングの少女たちが、俺の元へと駆け寄ってくる。

 相変わらず三人一緒で仲がいいな。しかし、今日はその三人で外出予定じゃなかったっけ?

 

「大変なんです!」

 

「そう、とても大変です!」

 

「大変なことが起こっています!」

 

 どうしよう。三人もいるのに、大変ということ以外何一つわからない。

 まあ、それだけ大変ということがわかった。と考えることもできるけど。

 

「襲撃か? それならピルカヤに」

 

「いえ! お客さんです!」

 

「モンスター園待ちのお客さんたちです!」

 

「たくさんいます!」

 

 なるほど、なんとなく見えてきた。

 おそらくは、外出しようとしたところ、職場に向かう客たちを見かけたのだろう。

 それが思いのほか大人数だったため、こうして俺のところまで知らせに来たのか。

 

「ピルカヤ。モンスター園に向かう客の数を教えてくれ」

 

「おっけー。けっこう来てるねえ。二、三十人くらいかな?」

 

 この時間帯でそれなら、一日でその三倍くらいにはなりそうだ。

 ということは、ピルカヤが言っていたモンスター騒動が解決したって、本当だったのか?

 疑うわけではないけれど、入念に調べなおしてもらっていたが、いまだにおかしなモンスターは一匹もいないらしいからな。

 騒動が解決したことで、なんとなく自粛していた常連たちが戻ってきている?

 

「どうします!? とりあえず、休暇をキャンセルして働きましょうか!」

 

「え、休暇はいいのか?」

 

「稼ぎ時ですよ! ハーフリングの血が騒ぎます!」

 

「まあ、やる気だというのなら……」

 

 ワーカーホリック……というよりは、最近モンスター園が休みで暇だったようだ。

 内部向けには案内すら必要ないため、彼女たちの中では金稼ぎの熱がくすぶり続けていたのかもしれない。

 

「ピルカヤ、モンスター調査はいったん終了で。とりあえず、モンスター園の職員たちの中で、今からでも働ける者を招集しておいてくれ」

 

「りょうか~い。あ、それと外出していたモンスターたちが戻ってるみたいだよ」

 

「わかった。そっちも会っておく」

 

 最近、頻繁に出かけていたからなあ。

 やはり野生のゴブリンを与えたことで、面倒を見てやっているからだろうな。

 散歩に連れ出してやっているように見えるし。

 万が一数が減っていないかのチェックだけすませてしまおう。

 

    ◇

 

「お帰り。楽しかったか?」

 

“ご主人様! 俺たち、変なモンスターたちを狩りつくしました!”

 

“ブラックゴブリンたちが、がんばってくれました!”

 

 なんか、やけに嬉しそうだな。きっと、外出先でいいことでもあったのだろう。

 ソウルイーターやケルベロスと違って、この子たちがこうして群がってくるのは珍しい。

 とりあえず、頭でもなでておこう。

 

「なんかわからないけど、良かったな」

 

 ゴブリンもブラックゴブリンも、すっかり上手くやっているようだ。

 ついでに野生のゴブリンも、急にこちらを攻撃しない程度には大人しくなっている。

 というか、ゴブリンたちが押さえつけているおかげか。あれは。

 

「人数は……減っていないな。それじゃあ、長旅だったろうし疲れただろ。マギレマさんに頼んであるから、食事でもして休んでくれ」

 

 一匹ずつ頭をなでて人数を数えていくが、問題なさそうだ。

 傷一つ負っていないし、慌てた様子も無い。

 ならば、人間たちに見つかるようなヘマはせずに、外出を楽しんでいたのだろう。

 

「それにしても、ゴブリン以外の子たちは外出しなくていいのかな?」

 

 今度、それとなく聞いてみるか。

 ソウルイーターとかセルケトとか、でかくて目立つ子たちは方法を考えないといけないけれど、まずは本人の意思を知ることも大切だろう。

 

    ◇

 

「と思っていたんだけど、誰も外出する気はないみたいです」

 

「そうなんですか。まあ、あの子たちはレイのことが好きですからね。離れたくはないのでしょう」

 

「でも、ゴブリンたちは頻繁に外出していたんですけどね」

 

「それも、最近はしていないのでしょう? 何か、やるべきことでもあったんじゃないですか?」

 

 そうなのかな?

 たしかに、あれ以来めっきり外出しなくなってしまった。

 野生のゴブリンの散歩も、ダンジョン内ですませているみたいだし。

 

「案外、あの子たちがモンスター騒動を解決してくれたのかもしれませんね」

 

「ゴブリンたちが?」

 

 だとしたら、何のためにだろう。

 やっぱり同じモンスターとして、変なモンスターの存在は気に食わないとか?

 だとしたら、うちにいる変なグレムリンたちが次のターゲットにならないよう、気を付けておこう。

 

「そのおかげで、モンスター園のお客さんも戻ったみたいですし、労ってあげるのもいいかもしれませんね」

 

「たしかに、そうですね」

 

 本当にそんな意図があったのかはわからないが、まあ日頃からがんばってくれているわけだし、たまにはそうやって労うのも悪くないだろう。

 とりあえず、食事? それとも温泉? さすがに、お金が欲しいとかは言わないだろうしなあ。

 

「どうやって労うべきですかね?」

 

「部下の功労に報いるのは、上の者として悩みますからねえ」

 

 そういえばこの魔族、魔王様だった。

 自分以外が部下なので、その手の話題はお手の物だよな。

 

「フィオナ様なら、どうやって褒めていますか?」

 

「え~と……。リピアネムの場合は、戦ってあげます」

 

「たまに一撃でのされていますけど、あれって褒美だったんですか……」

 

 てっきり、なんか口を滑らせた結果怒られているとばかり……。

 あるいはツッコミとか。

 強者二人だから攻撃に見えているだけで、本人たちにとってはじゃれあいなのかと思っていた。

 

「リグマは、お酒と食事と温泉ですね」

 

「褒美以外でも勝手に楽しんでますけどね」

 

 ただ、魔王様からの褒美という名目で堂々と休むのは、また別格なのかもしれない。

 となると、ゴブリンたちには休暇を与えるのもいいか?

 

「ピルカヤは、褒めるだけで喜びます」

 

「あいつ、仕事中毒のくせに安上がりすぎるんですよねえ……」

 

 魔王様だけでなく、俺が褒めるだけでも喜ぶからな。

 それでいいのか精霊。

 

「プリミラの場合は……魔力を畑にちょろっと流してあげています」

 

「え!? フィオナ様が、他人のために魔力を!?」

 

「なんですか! その反応は!」

 

 だって、フィオナ様だぞ。

 自分の魔力の全てをガシャの費用だと思っているような方だ。

 それが、まさか部下のために魔力を使うだなんて……。

 

「褒美ですからね! 私だって、たまにはガシャ以外にも魔力を使うときくらいあります」

 

 普段はガシャのためにしか使わないと、自覚はあるらしい。

 

「あとは、レイへの褒美ですね」

 

「俺への」

 

「ほら、こうやって膝枕して頭をなでて、あとは一緒に寝てあげるときもありますからね。特別扱いです」

 

「これ、フィオナ様がやりたくてやっていることじゃないんですか?」

 

「私がやりたいというのもあります! お互いに得しているなら、いいことじゃないですか」

 

 それもそうだ。

 よかった。てっきり、俺への褒美で嫌々やっているとか言い出すのかと思った。

 まあ、俺も嫌いじゃないし、今後もせいぜいフィオナ様から褒美をもらってやるとするか。

 

「なぜ、つねるんです」

 

「なんか、傲慢なことを考えている気がしたからです」

 

    ◇

 

「あ、ゴブリンさんたちかえってきた~」

 

「おう、元気そうだな」

 

「かしこいからね!」

 

「賢さは関係あるのかなあ……」

 

 なんにせよ、久しぶりの地底魔界は異変もなく平和そのものだ。

 どうやら、ご主人様を困らせていたモンスターは、完全に狩りつくせたようで、モンスター園のほうも順調に客が戻っているらしい。

 

「さて、それじゃあ俺たちも、モンスター園の仕事に行くとするか」

 

 外出して散々休みはもらっていたからな。

 実際は戦いだったが、俺たちの場合は完全に休みだ。

 なんせ、野生のゴブリンを連れて歩いていただけで、戦いはブラックゴブリン任せだからな。

 

「先輩、大丈夫ですか? 俺たち代わります?」

 

「いや、むしろ戦っていたお前らのほうこそ休んでおけ。それに、モンスター園にお前たちみたいな新種がいたら、いろいろと面倒が起きそうだ」

 

 ダンジョンで戦う分には、ゆっくりと観察している暇もないからいいけれど、モンスター園で働かせるのはなあ。

 なんなら、ダンジョンでブラックゴブリンたちに返り討ちにされたやつが来てしまったら、ダンジョンとモンスター園がグルだと結び付けられかねない。

 

「……」

 

 そんな話をしていると、じっとこちらに向けられた視線を感じる。

 いや、目が無いから視線も何もないんだけど、なんか見られていることはわかる。

 

「駄目だからな」

 

「なんで~!」

 

「危険だから」

 

「私、かしこいから襲わないよ!」

 

「でも、人間たちはまだお前らに慣れていないから、モンスター園では働いちゃだめだ」

 

 ソウルイーターとケルベロス、それにセルケトやケツァルコアトルたちもか。

 お前らが展示されていたら、さすがの人間だって触れ合う度胸なんてないだろうなあ……。

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