【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第566話 周囲を巻き込む甘いご馳走

「レイさん!」

 

「な、なんだ?」

 

 気合十分な時任に、思わず一歩引いてしまった。

 なるほど。ピルカヤたちが、奥居相手に引いていた気持ちを理解できた。

 

「今日はクリスマスです! この世界にも、クリスマスってあるんですかね!?」

 

「クリスマス……?」

 

 そういえば、そんな日付だったっけ。

 だけど、フィオナ様たち魔王軍の面々は、特に気にするようなそぶりはない。

 ということは、そもそもこの世界にはそんなイベントはないんじゃないか?

 

「なにそれ? アイテム?」

 

「いえ、日付が関係しているようなので、トキトウたちの風習の一つではないでしょうか?」

 

「聞いたことないな。だけど、転生者組はみんな知ってそうだし、有名な行事なのかねえ」

 

「あの気迫だ。おそらく、戦闘に関するものと見た」

 

 見ないで。

 そして、イピレティスやオーガ組は座りなさい。

 ドヤ顔で断言するリピアネム相手に、そうかもしれないねと肯定してやると尻尾が動く。

 そんな俺たちを見ながら、時任は申し訳なさそうに口を開いた。

 

「あ、あの、すみません。戦闘とは全然関係ないです」

 

「そうか」

 

 リピアネムは、心なしかしょんぼりしている。

 そうだね。全然関係なかったね。

 君たち、そういう行事とは無関係に戦いたいときに戦うんだから、別にかまわないでしょ。

 

「じゃあ、どういう風習なのさ?」

 

「サンタさんが来ます!」

 

「家族と過ごします」

 

「恋人と仲良くします」

 

「プレゼントがもらえます」

 

「ご馳走を食べる日ですかね?」

 

「教会行って聖歌を歌ったな」

 

「子供たちにおもちゃを配る日だ!」

 

 返ってくる言葉がバラバラすぎて、ピルカヤや四天王たちは頭にはてなマークを浮かべている。

 そうだよなあ。人によってクリスマスの意味は異なるだろう。

 にしても、うちの転生者たち、ものの見事に異なるクリスマスのイメージを抱いているらしい。

 

「ふむ……。クリスマス」

 

「どうします? フィオナ様」

 

 興味は持っているようだが、この説明では何をすれば良いかもわからないだろう。

 

「とりあえず、教会は駄目です」

 

「ああ、それは気にしないでくれ。子供のころの話だし、あんな女神に会った以上は神なんてクソくらえだ」

 

 まあ、それはロペスに限らず、みんなそうだろう。

 あの風間や時任、鳴神でさえ納得している。

 

「ですが、他は楽しそうなので全部やりましょう」

 

「さすが魔王様!」

 

 まあ、比較的平和な内容ばかりだったし、問題ないか。

 ……家族や恋人と過ごす部分は、どうするんだ?

 

「フィオナ様。家族や恋人がいない者は?」

 

「おや、心配しています? 仕方ないですね~。寂しがり屋なレイには、私が一日べったりとくっついていてあげましょう」

 

「いえ、俺以外の話だったんですけど……」

 

「じゃあ、レイには家族と恋人がいるってことですか!? どこですか!? 連れてきなさい!」

 

「そうじゃなくて、俺は一人でも別に問題ないという意味で……」

 

「なんだ。焦らせないでくださいよ。まったくもう」

 

 そもそもあなた知ってるでしょ。俺は転生者で、すぐにあなたに拾われたんですよ。

 あなたが知らない家族や恋人なんて、存在するはずもありません。

 

「では、ご馳走とプレゼントですね。マギレマ~。ご馳走は頼みました」

 

「は~い。それじゃあ転生者のみんな。どんな料理が良いか、お姉さんと話し合おっか」

 

 魔王様の命を受け、マギレマさんは転生者たちを連れて厨房へと向かっていった。

 きっと、ものすごい豪華な料理になるだろうな。

 

    ◇

 

「さあ、みんなへのプレゼントの準備です!」

 

「まさか……今から、大量にガシャを引くつもりですか?」

 

「魔王と宰相ですからね! 部下への労いのために、がんばって準備しますよ!」

 

「魔力絶対足りませんって……」

 

「大丈夫です! 影冠樹を使えば、きっとどうにでもなりますから」

 

「それでも、足りるかどうか……」

 

 まあ、やるだけやってみるか。

 特別な日ということであれば、フィオナ様へのご褒美も兼ねてこのくらいは許されるだろう。

 

「やってみますか。あまり熱中しないでくださいよ?」

 

「もちろんです。さあ、まずはトキトウのプレゼントから引きましょう」

 

 たぶん、狙ったものは引けないので、そういうことは考えなくても良いです。

 こうして俺たちは二人で宝箱を作り続けた。

 

「……蘇生薬が出ません」

 

「時任に何をプレゼントしようとしているんですか」

 

「トキトウへのプレゼントと見せかければ、物欲センサーも騙せると思ったんですよ!」

 

 その結果、さらに何も引けなくなっているじゃないですか。

 仕方ない。こうなったら、手当たり次第にガシャを頑張るしかないぞ。

 

「……魔王ボックス行きのアイテムが、次々と増えていきます」

 

「今日だけで、新しい魔王ボックスが増えましたからね」

 

 これは、大掃除まで必要になりそうだなあ。

 ……いっそ、魔王ボックスの中から、みんなへのプレゼントを見繕えば良いんじゃないか?

 

「フィオナ様」

 

「なんですか!? 次は勝ちます!」

 

「落ち着いてください」

 

 熱中しすぎなので、フィオナ様の目に手のひらをかざして視界を奪った。

 そうしたら、フィオナ様は落ち着きを取り戻してくれたようだ。

 ……犬ですか? 犬だな。なんか手のひらの匂い嗅がれているし。

 

「落ち着きました?」

 

「良い匂いがしました」

 

「それは良かったです……」

 

 そんなに匂うかなあ……。

 魔王の嗅覚だし、常人よりかなり鋭いのかもしれない。

 

「プレゼントの話に戻りますよ。とりあえず、魔王ボックスから見繕うのはどうですか?」

 

「魔王ボックスですか。う~ん……。みんなが喜びそうなものは、たぶん入っていないんですよねえ。ほら、宝箱のハズレって、その場で欲しい者に渡しているじゃないですか」

 

「あ~……」

 

 だから魔王ボックスは、それ以外の使いどころのないアイテムだらけってわけか。

 たしかに、普段あげている物のほうが喜ばれそうだ。

 となると、アイテムをなんとかして引くしかないのか?

 ダンジョン魔力まで使えば……。いや、せっかく溜まってきたダンジョン魔力だ。

 もうすぐ、蘇生薬のためにガシャを回す予定だし、ここで浪費はまずい。

 

「あ、こういうのはどうです?」

 

 一つ思いついたことがあったので、俺はフィオナ様に提案した。

 すると、フィオナ様は感心した様子で話を聞いてくれて、その後俺の頭をなでるのだった。

 

「さすがは、私のレイです」

 

「それはどうも」

 

    ◇

 

「おお、すごいな」

 

「あ、魔王様とレイさん! どうです? クリスマスらしいご馳走ですよ!」

 

「作ったのはマギレマさんたちでしょ」

 

「いやいや。転生者のみんなも手伝ってくれて助かったよ~」

 

 どうやら、料理はマギレマさんと彼女の部下だけでなく、転生者の女性陣も協力して作ったらしい。

 みんな料理ができるんだな。原と世良は風間に弁当とか作ってそうだし、奥居はしっかりもののイメージだからわかるが、まさか時任までまともに料理ができるとは……。

 

「それじゃあ、みんなで楽しく食べましょう!」

 

 今日ばかりは、わりと大騒ぎになっても無礼講だろう。

 マギレマさんも笑顔で、そんな賑やかな食卓を見守ってくれている。

 それにしても、こうも大勢で食事をするのは初めてかもしれないな。

 食堂を大きめに作っておいて良かった。

 

「レイ、レイ。これ美味しいですよ」

 

「鳥肉ですか」

 

「ええ、スタッフィングです。はいどうぞ」

 

 どうやら、ターキーの中にパンや野菜が詰め込まれた料理らしい。

 それは良いんだけど、当然のように俺に食べさせようとしてくるのは……。

 

「どうぞ」

 

「自分で食べられますけど」

 

「どうぞ」

 

 まあいいか。風間と原と世良も、同じようなことしているから、羞恥心は感じない。

 そもそもフィオナ様相手に遠慮とかいらないし、食べさせてもらうとしよう。

 

「美味しいですね」

 

「でしょう? じゃあ、次は私ですね」

 

「必要ですかね? これ」

 

「必要です。さあ、食べさせてください」

 

 フィオナ様は時折ひな鳥になる。

 俺が食べ物を与えないといけないのだが、なんか一生懸命食べる姿が微笑ましい。

 なので、ついつい食べ物を与えすぎるのだ。

 

「黙々と食べますねえ」

 

「食べさせてくれるので、つい」

 

 この魔族、けっこう食べるけれど、全然太らないよなあ。

 定期的にお腹を触る機会があるけれど、無駄な肉がついている気配が全然ないし。

 

「……どうしました?」

 

「いえ、太らないなあと思って」

 

「ほほう? 疑っていますね? なら、いつもみたいに確かめさせてあげましょう。ほら、どうです? 全然余分なぜい肉なんてありません」

 

「知っています。知っていますから、さすがに人前では……」

 

「あ……」

 

 さすがにはしゃぎすぎたのか、視線が俺たちへと集まっていた。

 今日は無礼講なのでマギレマさんが怒ることもなかったが、それが却って恥ずかしくなり、俺とフィオナ様は静かに食事を再開するのだった。

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