【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第571話 翻訳できたらアナンタくんが一番欲しい人材

「増やしすぎたね」

 

「そうだね!」

 

「そんなに力強く同意しないでも……」

 

「抗議してんだよぉ!」

 

 なるほど、そうだったのか。

 だけどその抗議は、増やした後だと手遅れなんだ。諦めてくれ。

 

「くそぉっ! 反省してねぇ!」

 

「反省はしている。そのうえで、次につなげるつもりだ」

 

「つなげたことあったっけ……?」

 

 ……アナンタが、次につなげてくれるはずだ。

 

「ったく、ただでさえ配置しきれていないモンスターが増えていたっていうのに、プラスモンスターのために乱造しやがってよぉ……」

 

「はは」

 

「なんの笑い!? 俺面白いこと言った!?」

 

 いや、自嘲だ。

 日頃から魔王様のガシャ癖に苦言を呈していたのに、自分まで似たようなことをしてしまったのは、本気で反省すべきところだからな。

 

「どうすんだよぉ。全員待機させておくかぁ?」

 

「いや、いっそのこと新しくダンジョンを」

 

「えぇ……」

 

「作ろうと思うんだけど、言い終わる前に嫌そうだな」

 

「当たり前だろぉ」

 

 まあ、バランス調整は本当に大変だからな。

 だけど、俺にもいい案がある。きっと、これならアナンタの負担も最小限ですむはずだ。

 

「今回は罠を使わない」

 

「お?」

 

「通路と部屋だけを適当に作って、モンスターだけを配置しようと思う」

 

「配置するモンスターの数は?」

 

「たくさん」

 

「馬鹿!」

 

 違うんだって、ちゃんと聞いてくれよ。

 気持ちはわかるけれど、今回は本当に大丈夫なんだって。

 

「大量にモンスターを配置するけれど、襲いかかるかどうかはモンスターに任せようと思うんだ」

 

「モンスターにかぁ?」

 

「ああ。みんな頭がいいだろ? だったら、侵入者の力量に合わせて、どのモンスターをどれだけ出撃させるか、自分たちで判断できると思うんだ」

 

「う~ん、たしかになぁ。あいつら頭いいし」

 

「だろ? だから、あらかじめ大量にモンスターは用意するけれど、実際の戦闘では侵入者がギリギリ倒せる程度にバランスが調整されるはずだ」

 

「こいつ、ついに俺たちだけでなく、モンスター任せになりやがった……」

 

「でも、俺に任せるよりはマシだろ」

 

「……」

 

 そこで黙るなよ。納得した顔するなよ。

 いや、俺の采配が正しいってことだし、むしろ誇らしげにしておこう。

 

「お前、開き直ってるよなぁ」

 

「俺は大したことないからな。みんなの力を借りて頑張っていくつもりだ」

 

「まぁいいか。まったく、世話の焼ける……」

 

 ぶつぶつと文句を言いながらも、アナンタはモンスターたちのリストを確認している。

 彼もまた、俺に力を貸してくれるうちの一人だからな。

 これからも頼りにさせてもらうつもりだ。

 

    ◇

 

「モンスターダンジョンですね。もしかして、私たちも配置してもらえるのでしょうか?」

 

「いや、さすがにお前ら超位モンスターは無理だと思うぞ」

 

「私、犬なので大丈夫じゃないですか?」

 

「いやあ、お前でかいし顔三つあるし……」

 

 そもそも、ご主人様たちが相手ならともかく、侵入者相手には犬じゃなくてケルベロスだし。

 さすがに、お前の出番が必要になるってことはないだろう。

 

「待機だけならさせられるけど、結局出番がないってことになるから、がっかりすることになるぞ?」

 

「待ては得意です!」

 

「ずっと待ち続けることになるじゃないか……」

 

「得意です!」

 

 仕方ない。念のために待機させておこう。

 ご主人様が、配置させるモンスターと出撃させるモンスターの選定は、全て俺たちに任せてくれたからな。

 見学だけになるけれど、ケルベロスも連れて行ってやるとするか。

 

「ゴブリンの旦那。俺たちどうします?」

 

「グレムリンは……死ねないからなあ」

 

「死が前提の作戦だけは、いまだに慣れないっす!」

 

 じゃあ、こいつらは下手に出撃させないほうがいいな。

 いつもどおり、テクニティス様のもとで働いてもらうか。

 それで、たまにいたずら欲を満たしたくなったら、もっと安全なダンジョンに出撃してもらおう。

 

「それじゃあ、新ダンジョンの担当になったやつらはついてこい。ご主人様に報告しにいくぞ」

 

「は~い」

 

 とりあえず、多めに引き連れていくとしよう。

 それで、侵入者にあわせて数を調整するのが俺たちの仕事だ。

 ……まさかここまで任せてもらえるなんて嬉しいな。よし、失敗しないように頑張ろう!

 

    ◇

 

“へえ、なんか楽そうなダンジョンでいいな”

 

“そうね。悪辣な罠がないところが何よりもいいわ”

 

 来た来た。

 ええと……。人間の男が二人と女が二人。このくらいの強さなら、バジリスクとグリフィンたちもいけるな。

 

「よし、バジリスクとグリフィン。行ってこい」

 

「僕は~?」

 

「さすがにバジリスクとコカトリスになると、毒で倒しちゃうから駄目」

 

「は~い」

 

 だから、シャドウスネークやナイトメアシープも駄目だ。

 食人花たちもそうだが、状態異常をかけすぎると難易度が急上昇するからな。

 適度な数を送り込んで、侵入者たちにぶつける。

 そうしてギリギリ倒されるか、ギリギリのところで撤退させるのがいいダンジョンだ。

 

“お、モンスター。みんな行くぞ”

 

“バジリスクにグリフィン……。先にバジリスクを処理しちゃうわね”

 

「毒あげる」

 

「げ、この人間たち強いな」

 

 空に退避したグリフィンすら、冷静に遠距離攻撃で牽制している。

 そうしている間にバジリスクが各個撃破されているな。

 だが、さすがに相手も無傷とはいかない。

 

“くそっ! 毒が回ってきている!”

 

“すぐ回復を!”

 

「今だ!」

 

 そのタイミングで、しっかりとグリフィンたちが攻撃を仕掛け、バジリスクたちはさらに安全な場所へ逃げてから毒をばらまく。

 よしよし、うまく妨害できているな。

 

“うっとうしい!”

 

“回復よりあいつらを倒すほうが先ね!”

 

 ああ、やられてしまったか。惜しかった。

 敵はやはりなかなかの強さで、攻撃のみに開き直られたらどうしようもなかった。

 まあ、そこそこのダメージは与えられたし、このくらいで丁度良かっただろ。

 こうして少しずつ削っていき、最後は物資をなくして撤退させよう。

 そうすれば、トキトウちゃんの商店の客になってくれるかもしれない。

 ……いや、さすがに離れすぎているし、それは無理か。

 

    ◇

 

「へえ、すごいな。本当にちょうどいいバランスで、モンスターたちをけしかけている」

 

「見習えよ? あれが、正しいダンジョンの運営だぞぉ」

 

「つまり、今後もモンスターたちに任せておけば、ちょうどいいバランスに……」

 

「放棄してる……」

 

 だって、俺の役割は全力を出すことだけだから。

 そこからの調整役はアナンタであり、プリミラやダスカロスであり、モンスターたちなのだ。

 俺まで縮こまってしまって、いざというときに視野の狭い発想しかできなくなるのは問題だ。

 ならば、ここは適材適所として、今後も上手くやっていこうじゃないか。

 

「あれ?」

 

「ん? ……なんだぁ? なんか、モンスターどもが侵入してるな」

 

「まあ、今までも野生のモンスターが入ってくることはあったし、こういうこともあるか」

 

「だいたい、お前の罠にかかって死んでたからなぁ」

 

 だけど、今回のモンスターダンジョンに罠はない。

 少し心配したが、そのモンスターたちはうちの子たちにあっさりと倒されていた。

 ……そりゃあそうだよなあ。まさか、ケルベロスをけしかけるとは。

 ゴブリンたちの采配。人類の侵入者以外には容赦なくて、実に俺好みだ。

 

「どうやら、特殊個体ですね」

 

 俺の隣で眺めていたフィオナ様が、そんなことを呟いた。

 

「特殊個体って、前の頭がいいモンスターたちですよね?」

 

「ええ。どうにも普通のモンスターじゃありません。強く変異したモンスターだったようです」

 

 そうだったのか。

 とはいえ、さすがにケルベロスには敵わないし、今後うちに迷い込んだとしても、特に影響はなさそうかな。

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