【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第581話 産声はあげない胎内回帰

「カ、カジノ……?」

 

「おう、従業員とはいえ金はとるが、自由に楽しんで良いぞ」

 

「植物園……」

 

「定期的に作物の収穫体験も開催しております。従業員は無料です」

 

「水族館ですか」

 

「新しい従業員の方……? なら、無料で利用できます」

 

「魔王軍、すごい……」

 

 鳴神が連れてきた村人たちも、うちの福利厚生には満足してくれている様子だ。

 やはり、まともな労働環境こそが大切だということがよくわかる。

 ホワイトな勤務体系で働かせ、社員が喜ぶための設備を整える。

 それこそが宰相の仕事の一つなのだ。

 

「俺の喫茶店も好評だ!」

 

「なんか、気付いたらテンユウが通ってるよな。あそこ」

 

「うむ。勇者すら魅了するコーヒーとして売り出すか!」

 

「他の勇者まで来たら嫌だから、やめて」

 

 テンユウだからまだ良いが、イドが入り浸ったら最悪だぞ。

 というか勇者のパーティメンバーとも、できることなら関わりたくないし。

 

「いっそのこと、新しい設備を考えますか?」

 

「おや、植物園と水族館を作ったばかりですけど、さらなる施設ですか。レイもなかなか強欲になってきましたねえ」

 

 まあ、それらが順調に経営できていますからね。

 俺自身の手は、わりと空いてきたというのもある。

 それに、直近の目標だった十魔将の部下の蘇生も完了したので、次の目標を何か設定しておきたいのだ。

 あとは……。

 

「色んな施設があったほうが、フィオナ様も喜びますよね?」

 

「……ちょっとレイちゃんになりません?」

 

「なんですか急に」

 

「過剰にスキンシップをしたくなりました」

 

 それを聞かされて性別を反転させると思っているのか、この魔王は。

 

    ◇

 

「あ、今日はレイちゃんさんの日なんですね」

 

「邪魔しちゃだめよ。なんかもう、すごいことになってるじゃない」

 

 まあ、なるんだけどさ。

 そうしたら、めっちゃ触ってくるじゃん。この魔王様。

 女性の場合、同性同士だとこんな過剰に触られるんだなあ。

 

「時任と奥居も普段こんな感じなのか?」

 

「ええっ!? 私、江梨子ちゃんのことは好きですけど、さすがにそういう好きではないので!」

 

 時任にものすごい剣幕で否定され、奥居は嫌そうな顔をして時任から距離を取っていた。

 うん、なんかごめんね。同居人同士なので、こんなものなのかなと思ったけど、やはりこの魔王様がおかしいだけだ。

 

「なんですか? 私に触られることが嫌なんですか?」

 

「いえ、別に私は気にしていませんけど」

 

「では、膝枕してください」

 

「はいはい……」

 

 まあ、普段は私が膝枕をしてもらってばかりだもんな。

 日頃のお返しというか、こういうときくらいは私がする側に回っても良いだろう。

 ……なんだこの魔族。顔を私のお腹にくっつけてくるんだけど。

 

「あ~……落ち着きます~……」

 

 もう好きにしてください。

 とりあえず、頭でも撫でておこう。

 

「ま、魔王様が赤ちゃんに! レイちゃんさんがママに!」

 

「なんてこというんだ。お前は」

 

 どんな発想をしたら、そんな言葉が出てくるんだよ。

 まあいいや。それよりも、せっかくだから従業員の意見を聞いておこう。

 

「最近手が空いてきたから、新しい集客か福利厚生施設を考えているんだけど、なにかないか?」

 

「え~……。その状態でお仕事の話しちゃうんですかあ……」

 

「そうですね……。人工海なら、やはりテクニティスさんやカールさんに協力してもらって、マリンスポーツができるようにしたいです」

 

「江梨子ちゃんもけっこうマイペースだよね!」

 

 なるほど、となるとシュノーケリングやサーフィンはすでにあるから、パラセーリングとかジェットスキーだな。

 あとあれだ。なんか水を放出して飛ぶやつ。フライボードとかいったっけ?

 水上バイクと連動していた気がするけど、この世界なら水魔法を利用すれば単品で飛べる気がしてきた。

 

「水族館は? モンスター増やすか?」

 

「い、いえ……モンスターよりは、海洋生物の種類を増やしたほうが良いかと思います」

 

 そうなると、私の力ではどうしようもないな。

 タイラーか風間あたりに、アルマセグシアで仕入れてもらうしかなくなる。

 

「時任のほうは? 商店で何か売りたいものとかあるか?」

 

「う~ん……。私の場合は、周りの施設に関するお土産系を増やすべきですかねえ?」

 

 なるほど。

 たしかに、モンスター園関連の土産としてぬいぐるみを、植物園では植物の鉢を売るようにしたら、売り上げが伸びたからな。

 

「温泉饅頭とかどうですか? 私たちの職場の強みって、いろんな場所で遊んだ後に、温泉旅館でゆっくり休めることじゃないですか」

 

 そういえば、そんな定番のお土産も作っていなかったな。

 そもそも、この世界では温泉饅頭って定番なんだろうか?

 

「だけど、一考の余地はありそうか……。温泉って種類は増やしても、その周りには力を入れていなかったからなあ」

 

「サウナとコーヒー牛乳とマッサージチェアを作りましょう!」

 

「疲れてるの?」

 

「いえ! でも、休むときも全力で休むのが時任流です!」

 

 わりと的を射ている気がする。

 新しい施設を作るのではなく、既存の施設のサービスを充実させるか……。

 品質を上げて、常連客を逃さないようにして、新規の顧客も獲得する。

 結局、それが一番良いのかもしれない。

 

「あ、あと、温泉旅館といえば、ゲームコーナーですね!」

 

「カジノじゃ駄目か?」

 

「カジノも良いんですけど、もう少しこじんまりしたのも好きです!」

 

「なるほど……」

 

 たしかに、カジノよりも落ち着いてリラックスできそうだもんな。

 スロットはそのまま流用できるとして、メダルゲームみたいなのか?

 それとアーケードのゲーム……。できるのか?

 ここがゲームの世界であり、ゲームの中にミニゲームみたいなのがあるとすれば、可能性もあるが……。

 

 ダンジョンマスターさん。無理ですか?

 ……なんだろう。なんかいよいよ、無理ですみたいな思念みたいなのを感じた気がする。

 

「時任、アーケードゲームは無理っぽい」

 

「そこまで望んではいなかったのですが!?」

 

 なんだ。私の勇み足だったか。

 ごめんダンジョンマスターさん。勘違いだった。

 ……心なしかほっとした感情が返ってきた気がするが、気のせいかな?

 

「よし、まずはロペスに意見を聞こう。温泉の設備を整えて、それが片付いたら時任や奥居の案も随時対応していく」

 

「は~い」

 

「私たちはいつでも良いので、そちらを優先してください」

 

    ◇

 

「で、俺が呼ばれたと」

 

「ああ、なんか良い案あるか?」

 

「その前に、ビッグボスが動かないのが、すごい気になるんだが……」

 

「寝た」

 

「まじかよ……」

 

 フィオナ様は、私の腹部に顔を押し当てたまま眠ってしまった。

 よく眠る方だとは思っていたが、まさかこの状況で眠るとは……。

 息苦しくないんだろうか?

 

「それで、温泉旅館らしさについてなんだが」

 

「あ~……。悪いんだけど、そっち方面の知識で俺は当てにならないと思うぜ?」

 

「そうか?」

 

「そもそも、俺は温泉の文化に触れていない。日本人であるタケミやトキトウのほうが、よほど生産的な意見を出してくれるはずだ」

 

 そういえばそうだったな。

 この世界にいるとどうも忘れそうになるが、ロペスは風間たちとは別の国の者だった。

 

「だが、それで終わりじゃ芸がないし、ついでにカジノについて話をさせてもらおうか」

 

「ああ、何か意見があるなら大歓迎だ」

 

「ボスは最近モンスター業に力を入れているだろ?」

 

「まあ、そうだな」

 

 ブラックゴブリンの件もあって、モンスター生成をしすぎた。

 そうして作りすぎたモンスターたちを、なんとか働かせようと四苦八苦しているところだ。

 

「なら、カジノにも採用できると思うぜ」

 

「カジノで?」

 

 さすがに無茶じゃないか?

 たしかに、あの子たちは頭が良くて器用だ。

 店員としても働けるだろうけど、果たして客がどう思うか……。

 

「モンスター同士のコロシアムやレースなんてどうだい?」

 

「ほう……」

 

 面白そうな話だ。そう思ってつい前のめりになって話を聞こうとすると、膝に抱えていたフィオナ様がむぎゅっと声を上げた。

 

「あ、すみません。起こしました」

 

「いえ、心地よくて眠っていましたか……」

 

 私のお腹にそんな力が……。

 いや、私もフィオナ様に膝枕してもらっているときは、そのまま眠りそうになるな……。

 今度、顔をお腹に押しつけてみるか?

 そんな考えを見透かされたのか、ロペスは私たちのことを呆れた表情で見ていた。

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