【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第593話 水と油というよりは氷と炎

「ヒーロー発進! 行くぞアルメナ!」

 

「はい! お供します。ナルカミ様!」

 

「待った待った! そっちじゃないから!」

 

 走ろうとする二人を慌てて静止する。

 ほんと、どこ行こうとしたの? 鳴神くん。

 アルメナさんはアルメナさんで、鳴神くんとすっかり仲が良くなっているのか、彼に付きっきりだし……。

 

「そうか! すまなかったな、風間よ。逸る正義の心が、俺を駆り立てた」

 

「すみません、カザマさん。ナルカミ様についていくことが、今の私の使命でしたので」

 

 タイラーさん、よくこの二人を制御して買い出しできたなあ……。

 僕には、ちょっと無理かもしれない。

 

「ええと。人助けをするなとは言わないけど、今日は買い出しだから。せめてお店の方に進もうか」

 

「承知した。では行くぞアルメナ!」

 

「承知しました!」

 

 僕の話聞いてた? いや、今度はちゃんと目的の店のほうに進んでいる。

 一応聞いてくれてはいるんだろうなあ……。ただ、何にでも一直線というだけなんだろうね。

 

「やる気満々ね。さすがは鳴神くんだわ」

 

「それについていけているアルメナさんもすごいねえ。相性ピッタリかも」

 

「それ、鳴神くんだけでも大変なのに、さらに暴走する人が増えたってことじゃないかな……」

 

 二人に苦笑いされた。

 否定してくれないってことは、僕の意見に同意しているってことかあ。

 頑張ろう。なんだか、元気な犬を散歩させているような気分になってきた。

 

    ◇

 

 そんな心配も杞憂だったのか、案外買い出しは上手くいっている。

 鳴神くんは率先して荷物を運んでくれるし、アルメナさんは現地の者としての土地勘なのか、目的の物資を簡単に発見してくれた。

 おかげで順調に任務は遂行できたし、なんならいつもよりも時間が余っているくらいだ。

 

「ではな、少年! ヒーロー目指して頑張るといい!」

 

「ありがとう、お兄さん!」

 

「もう大丈夫ですよ。傷は消えましたから」

 

「ありがとう、おねえちゃん……」

 

 その余った時間で、鳴神くんは迷子の男の子を助け、アルメナさんは怪我した女の子を治療していた。

 二人とも、暴走しがちではあるものの、ちゃんと仕事もこなしつつ人助けしているんだよねえ。

 

 人通りの多いアルマセグシアだけど、あの二人の周りにはいっそう人だかりができている。

 どこにいっても、誰かのために行動するから自然と人が集まるのかもしれない。

 そんな中、一人の男性が二人に近づいた。

 

「お前、まだそんなことやっているんだな。鳴神」

 

「む? お前は……嘉神(かがみ)か」

 

「なんだ。俺のことわかるのかよ、お前」

 

「無論だ! 髪の色が変わった程度では、俺の目はごまかせん」

 

 知り合い?

 名前からして、僕たちと同じ転生者みたいだね。

 鳴神くんの友人ということであれば、彼も日本人なのかな。

 

「まあ、そんなことはどうでも良いか。それより、要領よくやってるじゃねえか。お前も」

 

「ヒーローとしての活動のことか? ならば、俺はいつだって全力」

 

「そんなくだらないことはどうでも良いんだよ。そっちじゃなくて、それだよ。それ」

 

 嘉神と呼ばれる男は、アルメナさんを指さした。

 ……なんか、ちょっと嫌な感じだな。アルメナさんをそれ呼ばわりしているところも、物扱いしているような目も。

 

「アルメナか? 彼女は、俺の同志だからな」

 

「はあ。相変わらず、すっとぼけたやつだな。手際よくNPCを自分の近くに侍らせておいて、よく言うぜ。なあ、俺にもわけてくれよ? そいつ、教会の女だろ? なら、そいつの仲間の女が余っているはずだ」

 

「……はあ。相変わらずだな、嘉神。お前の悪い癖だぞ」

 

「ちっ、くだらねえ。NPC侍らせているから、少しはまともになったかと思ったら、まだそんな正義馬鹿かよ」

 

 もしかして、あまり仲が良くないのかな?

 というか、正直なところかなり嫌な感じの男だなと思ってしまった。

 

「嘉神。お前、この世界でも問題を起こす気か?」

 

「どうでも良いだろ。女神のやつに便利な力までもらえたんだ。俺は好きに生きさせてもらう」

 

 そう言って、嘉神という男は鳴神くんから興味を無くしたかのように、その場から立ち去ってしまった。

 

「鳴神くん。彼は?」

 

「あいつは、嘉神晃(あきら)。俺と同じ町に住んでいた男でな。女性関係や喧嘩やら、問題ばかりを起こしていたやつだ」

 

「意外だね。それだけ聞くと、鳴神くんとは縁のない人に思えるけど」

 

「俺の正義の鉄槌がやつを黙らせたことがあるからな!」

 

 鳴神くん、前世でもヒーロー活動で暴れてたみたいだね……。

 もしかして、わりと喧嘩とかもしていたのかな?

 もっとも、本人にとっては、喧嘩ではなく正義としての活動と思っているかもしれないけれど。

 

「じゃあ、あいつは鳴神くんを恨んでいるってこと?」

 

「可能性はあるが、あの様子では俺なんかに興味はなく、女神から得た力で好きにしているように見える」

 

「たしかに、たまにいる嫌な感じの転生者っぽかったわね」

 

「困ったものだ。あいつの素行は大いに問題だが、その力は本物だった。俺も何度も負けているからな」

 

「え、鳴神くんまで!?」

 

 友香が驚いているが、僕や新も同じ気持ちだ。

 鳴神くんって、僕たち転生者の中では一番強かったと思う。

 敵であったルイスさんやヨハンさんを除けば、ダントツの実力者だ。

 そんな鳴神くんと互角以上の力を持つのが、あの嘉神という男だというのなら、なんだか関わりたくないなあ……。

 念のため、レイさんに報告しておこう。

 

    ◇

 

「そういう転生者多いな」

 

「いえ、本当に……なんかすみません」

 

「すまんな、宰相様! 俺の町の者が不快で!」

 

「いや、謝る必要は無い」

 

 別にそいつのことは鳴神のせいではないだろう。

 そして、転生者の責任を風間に押し付けるつもりもない。

 なんなら、俺も転生者だし。

 

「そいつ、鳴神と互角ってことでいいのか?」

 

「ふむ……。以前の俺は、あいつに勝つことも負けることもあった。だが、女神の加護を得た今となっては、以前の実力差は当てにしないほうが良いだろうな」

 

「転生者の力って、厄介だからなあ」

 

 ヨハンやルイスみたいに、四天王にさえ届く力もあった。

 堀井みたいに、本人の戦闘能力など関係なく危険な力もあった。

 ならば、前世での力など指標にはならないか。

 

 だが、そいつ自身の性格や行動指針は前世からそうは変わらない。

 俺みたいに、吹っ切れてしまったやつは例外として、ほとんどが前世と同じような生き方をしているはずだ。

 つまるところ、前世で素行が悪かった者たちは、女神の加護という強力な力を得たことで、この世界で好き放題暴れる可能性が高い。

 

「うちに迷惑をかけるようなら、始末する。鳴神、それでもかまわないな?」

 

「仕方あるまい。何度も更生を促したが、俺にあいつは止められなかった。無辜の民に被害が及ぶくらいであれば、引導を渡してやることに異論はない」

 

 相変わらず、そのあたりは割り切ってくれているようで助かる。

 鳴神の知人というよりは、ちょっとした因縁がある相手ということみたいだが、彼自身はさして興味がないのかもしれない。

 どう考えてもたちの悪い転生者のようだし、できればうちにちょっかいを出さずに自滅とかしてほしいもんだよなあ。

 

「ま~た、転生者ですか」

 

「ですねえ。なんかすみません。俺の世界の人間が」

 

 鳴神たちも退室し、二人きりになったところで、フィオナ様がぐてーっと興味なさそうにぼやいた。

 俺が謝罪をすると手招きされたので、彼女に近づくとそのまま抱きしめられる。

 

「あなたの責任ではありません。余計なものを背負うくらいなら、私の全てを背負うように」

 

「それなら、もうすでに背負う覚悟ですけど」

 

「なら問題ありません。このまま二人で、ぐてーっとのんびり過ごしましょう」

 

「あなたの仕事も背負っているので、魔王軍の仕事があります」

 

「もうちょっとだけ! あと五分だけ、甘やかしてください!」

 

「仕方ないですねえ」

 

 五分で終わるはずもなく、結局俺が職務に戻ったのは午後になってからだった。

 プリミラやダスカロスがいて本当に良かった……。

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