【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第78話 101回目のカルチャーギャップ

「あ、あの……あの……ピルカヤさん。レイさん」

 

「とりあえず、怪しいやつは焼いといたから~。しばらく在庫の数はチェックしておいてね~」

 

「は、はい!!」

 

 時任(ときとう)がかなり混乱している。無理もない。

 普段自分たちを監視しているピルカヤが、本気で罰を与えたらどうなるか目の当たりにしたんだ。

 裏切る気があるにせよ。ないにせよ。震えあがってしまうのは、仕方がないことだろう。

 むしろ、奥居(おくい)が冷静なのが驚きだ。

 

「あ~……ギミック解除しないで挑んだときのトラウマが……」

 

 いや、奥居は奥居でショックを受けているが、なんか時任のそれとは方向性が違う。

 そうか。ピルカヤってゲームでもあんなふうに操作キャラを焼いてきたのか。

 ……もしもさっきので一撃死とかだとしたら、俺はゲームを続けられる自信がないな。

 

「魔王様は寛大なお方だ。だから、敵意があっても敵対しないのなら、ボクたちが君たちになにかすることもない。女神と大違いだね」

 

「は、はい! 裏切らないので平気です!」

 

「ならいいんだ。レイ。かえろ~」

 

「おう」

 

 まだくすぶっていた怒りは、不運なことに時任への忠告として完全に燃え尽きたらしい。

 いつものピルカヤに戻り、用件もすんだので俺たちはフィオナ様の元へと戻ることとした。

 

    ◇

 

「といったところです」

 

「そうですか。なるほど……暗影の指輪をそのように使うとは、さすがは私のレイです。ほめてあげましょう」

 

「どうも……」

 

 狙って使ったのではなく、常時起動していたからたまたま気づいただけだけどな。

 しかし、敵発見器代わりにもなるとは、ずいぶんと便利だな。

 これ、フィオナ様がつけても、役に立つんじゃないか? 自分の敵が誰かすぐわかるし。

 

「そしてピルカヤ。あなたもよくやってくれました。今後も私のために働いてください」

 

「は、はい。あの~……失態の責任とかは」

 

「あなたには功績しかありません。失態など私は覚えがありませんね」

 

「えっと……へへへ」

 

 だから心配することなんてなかったのに。

 フィオナ様が俺たちに甘すぎるのは知っているだろう。

 

「はっ!」

 

「なんだ。どうしたリピアネム」

 

 黙って様子を見ていたリピアネムが、突然なにかに気づいたように声をあげた。

 

「私だけなにもしていない。せっかく久方ぶりの仕事だったというのに……」

 

「いや、俺の護衛として」

 

「誰か斬ってくるか!? ピルカヤ。怪しい従業員は他にいないのか!?」

 

「いないねえ」

 

「いや、俺の護衛として十分働いただろ」

 

 というか、怪しいというだけで問答無用で斬ろうとするな。

 せめて敵対行動をとっているかだけでも確認してくれ。

 

「私は役立っていたか?」

 

「ああ、だから辻斬りはやめような」

 

「うむ、ならばいいだろう!」

 

 よくなかった場合に、適当な従業員を斬りにいったりしないだろうな……。

 そのときは、プリミラに叱ってもらうか。

 

「それにしても、暗影の指輪すごいですね。目の前にいるのに、まったく気づかれませんでしたよ」

 

「おそらく、隠蔽の力頼りでそれ以外の力は弱かったのでしょうね。前にも言いましたが、私にはその指輪の力は効きません」

 

 フィオナ様が得意げに胸を張る。

 魔王クラスには効かない。だけど通用するならば、今回のように非常に有用なことには違いない。

 

「相手が強ければ強いほど、効果を発揮しなくなります」

 

「半端に姿が見えるようになるとかですか?」

 

「というよりは距離ですね。強さが一定以上の者が近づいたら、ばれてしまいます。強ければ強いほどに、遠くから看破できるのです」

 

「それは、俺が弱いからであって、例えばピルカヤだったら勇者クラス以外から隠れられるとか……」

 

「ということでもありませんね。あくまでも姿を見破るものの力量依存なんですよ」

 

 なるほど、過信は禁物というわけだ。

 イドとか、こちらを認識した瞬間には射程距離にいるだろうから、そのまま殺されそうだしな。

 

「この指輪さえあれば、侵入者たちがいても遠隔でなくて直接罠やモンスターを設置できると思ったんですけどね」

 

「だめですよ」

 

「え」

 

「だめですよ」

 

 有無を言わさずって感じだ。

 笑顔なのに圧力がすごい……。

 

「はい」

 

「わかってくれましたか。いい子ですね」

 

 そうして頭をなでられるが、もはや完全に犬かなにかと思っているな。

 そもそも、この指輪の効果が絶対のものではないとわかった以上、そんな無茶するつもりはなかったんだけど……。

 便利なのは違いないし、いずれはフィオナ様や四天王や、モンスターとかにも装備できれば面白いだろう。

 

    ◇

 

「さあ、お仕事の話も終わったところで、今日も蘇生薬を作りましょう」

 

「さも毎日作ってるかのように言ってますねえ」

 

「敗北をいつまでも引きずるのは愚かなことですよ。リグマ」

 

「その考えって、反省してからにすべきだと思うんですよね~」

 

「反省は十分にしました。ピルカヤ」

 

 最近はまた蘇生薬引けていないからな。

 リピアネム以来まったく音沙汰なしだ。

 

「それに、今日は私だけではありません! なんと、レイも一緒に引きます!」

 

 そうなのだ。

 死んだ目でふてくされていたフィオナ様が不憫だったので、次は俺も付き合いますなんて言ってしまったのだ。

 

「引くガシャは違いましたが、前回はレイは見事に物欲を騙し通せましたからね! 私がだめでも、レイが控えているのなら気が楽です!」

 

「期待しすぎないでくださいよ……。今回は俺も同じガシャ引くんで、はずれる確率は前回よりずっと高いんですから」

 

「戦う前に負けることを考えてはいけませんよ。レイ」

 

「最悪の事態を考えて行動するのも、時には必要だと思います」

 

「むう……その時は傷を舐め合いましょう」

 

 どうやって……?

 さて、フィオナ様も大変期待されていることだし、今回くらいは付き合ってあげよう。

 

 ダンジョン魔力:10509

 

 熱量変換室を作ってから、ダンジョンの入場料のような魔力がどんどん増えているからな。

 一度くらいはガシャに使っても問題あるまい。

 

「それじゃあ、ダンジョン魔力を……フィオナ様って、いつもどれくらい注いでます?」

 

「9割くらいです!」

 

「9000消費と……」

 

 スキル使用にしか使えない可能性もあったが、宝箱自体もスキルで作ったものだったためか、案外すんなり魔力を注入できた。

 

 ダンジョン魔力:1509

 

 減ったなあ。

 それでもピルカヤの10倍以上と考えると、かなりのものだけど、毎回こんな贅沢をする気はない。

 魔力が溜まるたびにガシャを回すなんてことは、さすがにやめておこう。

 

「私も終わりました! さあ、開けてください!」

 

「はいはい」

 

 フィオナ様の宝箱と俺の宝箱。どちらも同じ見た目になっているので、注いだ魔力量は問題ない。

 期待に満ちた目でこちらを見つめるフィオナ様(残念美人)のために、俺は宝箱を開ける。

 そこには、どこにこれだけの量が入っていたんだと思わせるほどの回復薬や毒消しが……。

 

「うわ、どんどん出てくる」

 

「箱からこぼれてるねえ」

 

「整理しますのでお待ちを」

 

 プリミラは即座に動いていた。

 どう見ても容量がおかしな大量の回復薬が、ぽろぽろと宝箱から転げ落ちているので、てきぱきとそれらを整頓させていく。

 当然だけど、虹色の薬はない。蘇生薬を大量に引き当てたなんて夢のような話もないということだ。

 

「う~~~!!」

 

「残念でしたね。でも、よかったじゃないですか。今回モリーが着服していたアイテムが補填できそうですし」

 

「そうですけど。そうですけど~!」

 

 そうだけど、フィオナ様にとっては元々ハズレ扱いのアイテムだしな。

 納得いかないけれど、ある意味ではタイムリーなので微妙な表情を浮かべている。

 

「私はもうだめです。レイ、あとは頼みましたよ!」

 

「期待しないでくださいね……」

 

 期待しない。俺自身もこれが蘇生薬だなんて思っていない。

 なので、宝箱を雑に開けると、そこには小さいな……指輪。

 

「……暗影の指輪」

 

「むう……レイでさえも、蘇生薬は無理でしたか」

 

「俺でさえってなんですか。俺の期待値高すぎますよ」

 

 俺が今身につけている暗影の指輪と同じだな。

 効果は重複するんだろうか。二つつけることで、強化されるとかなら意味はあるが……。

 それよりは、さっき考えていたように俺以外も装備すべきだろう。

 

「ということで、フィオナ様どうぞ」

 

「うええええっ!! ほ、本気ですか!!?」

 

「え……ああ、たしかにフィオナ様には必要ないですよね」

 

「あります! さあ、つけなさい!」

 

 ガシャの爆死の後遺症か、フィオナ様の情緒がだいぶ不安定であらせられる。

 下手に逆らうと面倒なことになりかねないので、俺はフィオナ様の差し出した指に指輪をはめた。

 ……う~ん、左手で薬指だな。やっぱりこっちの世界では、その場所に指輪をはめることに意味はなさそうだ。

 

「レイ様」

 

 ふいに、プリミラに呼びかけられた。

 そちらを見ると、フィオナ様のハズレ結果は綺麗に整理されていた。

 さすがプリミラ。仕事が速い。

 

「どうした?」

 

「おめでとうございます」

 

「……え、どういうこと?」

 

 俺とフィオナ様はガシャでハズレを引いた。

 それに対しておめでとうございますって……まさか、プリミラのやつ俺たちがガシャで遊んでいるから皮肉を!

 やっぱりガシャなんて引くもんじゃないな。今回限りにしておこう……。

 

    ◇

 

「レイって、あの意味理解してるの?」

 

「転生者だからな~……。たぶん、深い意味なくやってるぞ」

 

「そもそも、古い魔族のしきたりだしねえ……。現にリピアネムさんも、よくわかってないみたいだし」

 

「プリミラは純粋な魔族だから当然知っているし、外様であるとはいえ長年生きてるピルカヤも知っている。おじさんもまあ知っているけど、レイくんに期待してもな~」

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