【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第95話 犬と触れ合えるレストラン(ただし足である)

「うわあ!! 嘘だろ! 嘘だろ!?」

 

 宿が、商店が、熱量変換室までもが、崩壊していく……。

 

「いや、まずは従業員全員逃げろ!」

 

 ショックは大きいが、そんなもの後回しだ。

 それぞれ宿と商店で働いている者たち、リグマの分体のカーマル。

 転生者である風間(かざま)たち。そして、捕獲したドワーフやハーフリング。

 とにかく、全員が崩落に巻き込まれないように、急いでピルカヤを通じて指示を出す。

 

「レイ、全員無事だよ。怪我人もなし」

 

「そうか……それはよかった」

 

 最悪の事態はまぬがれた。

 しかし、そうなると次は失ったものが惜しくなるのが人間……魔族である。

 被害状況は、悲しいことにマップで確認できる。

 そう、マップからいくつかの施設が減っただけだ。

 それだけのちっぽけな被害にすぎない。

 

「あ~あ……やり直しか」

 

 宿。商店。熱量変換室。大量の罠。採掘場。

 ああ、なんだ。道や部屋もほとんどだな。

 ドワーフたちのダンジョンに残ったのは、入口のちょっとした空間のみ。

 俺が作っていない店も壊れているので、俺のスキルで作ったものだけを壊したわけでもないようだ。

 

「熱量変換室が壊されたのは痛いな……」

 

 というか、ドワーフダンジョンのほぼすべてが埋まったのが痛すぎる。

 熱量変換室は、最悪また作ればいい。

 だけど、そこに今までどおりの侵入者がくるかと言われると、難しいだろうな……。

 

 古いダンジョンのふりをしたのは失敗だったか?

 そこが崩落したとなれば、ドワーフたちも危険と判断してダンジョンそのものを閉鎖するかもしれない。

 今までみたいに酒や石で釣って、そこに人が集まって、魔力も集まるなんてことは期待できないだろうなあ……。

 

「あ~あ……もうここでダンジョンを運営するのは無理かもな」

 

「レイ……」

 

 仕方ない。次の場所を探そう。

 ちょっと疲れた。肉体的には全然問題ないのだけど、精神的な疲労がすごい。

 

「ドワーフダンジョンの従業員たちは、一旦休暇としておきます」

 

「ええ、レイも今は休んでください」

 

 そうだな。休んで魔力を回復させないと。

 その間にピルカヤに次のダンジョンの候補を見つけてもらって……。

 だめだ。寝よう。

 

    ◇

 

「ピルカヤ」

 

「はい」

 

「私のレイのダンジョンを壊した者たち、まだダンジョンにいますね?」

 

「ええ、自分たちも崩落に巻き込まれて脱出できなくなっていますね」

 

「ちょっと用事ができました。あとのことは」

 

「魔王様」

 

「なんですか? プリミラ。止めても無駄ですよ」

 

「私もご一緒します」

 

「おじさんもちょっと舐められっぱなしはよくねえなあ」

 

「ボクが案内するから、当然ボクも行くよ」

 

「しかし、それではレイの護衛が……」

 

「むぅ……では、私が」

 

「レイくんなら、あたしが守っておくからさあ。ネムちゃんも行っておいでよ」

 

「そうか、すまないな。マギレマ」

 

    ◇

 

 予想外だ……。

 イヌイの能力は、あくまでも人工物を崩壊させるだけのはず。

 だからこそ、このダンジョンに後から作られた店や罠だけが壊れるはずだった。

 

 ならば、なぜこうしてダンジョン全体が崩壊することになった?

 ダンジョンとは、自然にできた地下世界に道を作り、大きな空間を作り、自然物を加工しているもののはずだろう。

 そういった自然物を加工した空間は、イヌイの力が及ばず人工物扱いではないことは確認済みだ。

 

「イヌイの力が土壇場で成長した……?」

 

 いや、その兆候さえなかった。

 そんな状況ならば、なんらかの予兆があるはず。

 であれば、崩壊した場所全てが人工物だったとでもいうのか?

 

「まさか……道や部屋さえも、すべて魔王が作ったとでもいうのか?」

 

 魔王の力を侮っていた?

 まさか、ダンジョンだけでなく地底魔界そのものも魔王の力によるものなのでは……。

 

「っ!」

 

 突如周囲の温度が上昇した。

 というよりも、炎に囲まれている。

 これは……罠を起動させた? いや、罠はすべてイヌイが崩壊させたはずだ。

 

「どうも~、わざわざ王子様がくるなんて暇なのかなあ」

 

「精霊!?」

 

 炎の塊が人の形へと変化する。

 間違いない。こいつは火の精霊だ。

 それも、この魔力からしてかなり高位の精霊。

 

「なんだ、貴様は」

 

「魔王軍の四天王だよ」

 

 四天王? 魔王軍?

 馬鹿な……。ここは放棄したダンジョンだったのでは……。

 なぜ、よりにもよって四天王なんかと遭遇する。

 

「ジェ、ジェルミ様! 逃げましょう!」

 

 馬鹿め、どこに逃げると言うのだ。

 周囲は崩落した岩で埋まっているのだぞ。

 それでも、四天王に恐れをなした近衛の一人が逃げようとすると、そいつはそこで二度と声を発することはなくなった。

 

「ひぃっ!」

 

「幼女……いや、貴様魔族か!」

 

「悪魔です」

 

 悪魔を名乗る幼女は、次々と身の丈以上の大鎚で近衛を潰していく。

 こいつの強さも異常だ……。まさか、この悪魔も四天王……?

 

「戦おうとするな! 逃げるぞ!」

 

 四天王が二人。そんな状況あの勇者どもでもなければ太刀打ちできない。

 せめて被害を減らそうと悪魔と精霊から逃げようとすると、足元から銀色の液体が盛り上がってきた。

 

「そりゃあねえんじゃねえの? 散々壊しておいて逃げようなんて、許すわけねえだろ」

 

「うぎゃっ!」

 

 スライムか……?

 体の一部がまるで金属のように固く鋭利な形状へと変化すると、そいつは容赦なく近衛たちを貫いた。

 壊した……? まさか、ここは魔王軍が放棄したダンジョンなどではなく、魔王軍の本拠地だったとでもいうのか。

 

「舐めるなよ……魔族ども……」

 

 逃げられない。

 ならば戦って勝利するしかない。

 逃げられもしない相手に勝つ……。悪い冗談だ。

 だが、それしかない。

 大丈夫だ。今まで散々魔族どもをいたぶり強くなったはずだろう。

 近衛どもと協力すれば、人数はこちらが有利……。

 

「つまらん。久しぶりに力を振るう相手が、このようなやつらだとはな。早々に終わらせてダンジョンを復興したほうがまだましだ」

 

「いや、リピアネム……お前さんが手伝うとレイくん立ち直れないから」

 

 竜人……?

 なんだあいつは。勝ち目がない。

 どうあがいても勝てる気がしない。

 半端な力を持っているからか、目の前の相手がいかに恐ろしいかだけは理解できてしまった。

 

「……」

 

 その奥からそいつは現れた。

 魔族の女。見た目だけならば魔族といえど美しいと言えるだろう。

 だが、そいつこそが本物の化け物だ。

 あの竜人ですら、そいつの前では強さが霞む。

 絶対的な強者。こちらを虫けらか何かと思っているような目。

 こいつが……こいつが魔王か!?

 

「……」

 

「かはっ……」

 

 一瞬だった。

 魔族の女はこちらを一瞥することもなく、言葉を発することもなく、軽く指を動かしただけ。

 ただそれだけで、近衛も俺も体が動かせなくなった。

 

 意識が消えていく……。

 俺は……死んだのか? このまま死ぬのか?

 魔王……。話が違うぞ。

 勇者が追い詰めたはずじゃなかったのか。

 こんなやつ……勇者であっても勝てるものか……。

 

    ◇

 

「帰りますよ」

 

「死体はどうします~?」

 

「放っておきなさい。そうすれば、ダンジョンの糧にでもなるでしょう」

 

「人間たちの王子という話でした。このまま戻らなければ、この場所を調査することでしょう」

 

「ええ、なのでレイにはかわいそうですが……ほんっとうにかわいそうですが、ここは放棄しましょう」

 

「まあ、それが妥当ですねぇ。ピルカヤ、良さそうな場所見繕ってやれよ」

 

「もちろん。人間たちは関わりたくないし、もっと良い種族を狙って探しておくよ」

 

「ふむ……私も手伝うか?」

 

「無理でしょ……リピアネムさん、そういうの向いてないし」

 

「さあ、戻りますよ。かわいそうなレイ。きっと今ごろ落ち込んでいることでしょう。しばらく慰めてあげましょう。ということで、プリミラ。私とレイは千年ほど二人で引きこもりますので」

 

「だめです」

 

「ですよねえ……」

 

    ◇

 

「マギレマさん。どうしたんです?」

 

「いやあ、落ち込んでいるレイくんを慰めに? ほら、アニマルセラピー的な」

 

 犬たちがすごいじゃれついてきた。

 なるほど、今はすべて忘れて犬と戯れるのも悪くないかもしれない。

 

「まあ、全部あたしの足なんだけどね~」

 

 ……美女の足と戯れているのか。なんか、それだけ聞くとだいぶやばい絵面に見えてきた。

 

「わ~、冗談冗談! ほ~ら、犬だから平気だよ~。安心してね~」

 

 それはそれでどうなんだ。

 しかし、犬たちとマギレマさんのおかげでわりと元気が出たのは事実だ。

 深いことは考えないでおこう。

 

 この後、フィオナ様がやはり足ですか? と詰め寄ってきた。

 なんか怖かったので、ひたすらフィオナ様の足を褒めることになったが、俺が足好きみたいな噂が流れないといいな……。

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