【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第96話 飲食業界への殴り込み

「ジェルミが死んだか……」

 

「ええ……残念ながら目撃証言からは確実なようです。ダンジョンに挑み、ダンジョンが崩落したことで行方不明になったと……」

 

「転生者を使っても生命力と魔力が感知できなくなった。おそらくは、崩落に巻き込まれたようだな」

 

 王は淡々と我が子の死を処理する。

 転生者を有効活用する。こちらに投降した魔族さえも有効活用する。

 それらは王にとって好印象ではあったものの、ジェルミ自身にはさほどの興味もなかった。

 

「……恐らく、ダンジョンの崩壊もジェルミの仕業だろう」

 

「ダンジョンを、ですか? さすがに、それは人知を超えた力なのでは……」

 

「あいつは他のすべてと引き換えに、それほどまでに転生者の力を引き出せる実験をしていたからな。その実験体を連れ出したのだろう」

 

「あ、あの、そうなると、ドワーフの国との戦争になるのでは……」

 

「先ほどのお前の態度と同じだ。どの種族でも、転生者であろうとも、ダンジョンを崩壊できる力など持つはずがない。その考えが根底にあるため、老朽化したダンジョンが崩落したと噂されているのだろう?」

 

「た、たしかに……生存者や目撃者たちは、みなそのように話しているようです」

 

 余計な厄介ごとを持ち込まなかっただけでもよしとするか。王はそう考えていた。

 しかし、ジェルミは勇者ほどではないが、それなりの強さをもっていた。

 そのジェルミが、近衛と改造した転生者を引き連れたというのに、誰一人戻ることはなかった。

 そんな不確定要素が残っているのでは、他所のダンジョンに軽々に挑むのも問題だろう。

 

「ジェルミ様を……蘇生させるというのは?」

 

「それも選択肢の一つではある。だが、他の有用な転生者。優秀な人材。それらを差し置いて、たった一つしかない蘇生薬を今使うべきではない」

 

 もちろん、蘇生の候補には自身も含まれている。

 であれば、なおさらここでジェルミを生き返らせるうま味は感じられなかった。

 蘇生薬を消費するほどではない。

 

「死因は自滅とわかりきっている。むしろ生き返らせることで、ドワーフたちに余計な情報を与えるほうが問題だ」

 

 魔王軍が作ったダンジョンのせいで王子が死んだ。

 そう叫んだところで、他種族同士がまとまるとは思えない。

 むしろこちらの弱みを晒すに等しい。

 

「念のため、ゴブリンダンジョンの挑戦者にも注意喚起はしておくように。魔王が力を取り戻し、モンスターたちが活性化しているとでも言えば納得するだろう」

 

「はっ!」

 

「はあ……先走りおって、馬鹿な息子だ」

 

    ◇

 

「あれ、ロペスさん。どうしたんですか? こっちのお店までくるなんて」

 

「よう、トキトウ。職場が潰れてな。暇だしなにかやることがあるなら手伝うぜ」

 

「潰れたって……じゃあ、本当だったんですね。ドワーフの国に作ったダンジョンが崩落したって」

 

 ちょっと耳に挟んだ程度だけど、それ以上はよくわかっていない。

 いつもならピルカヤさんに聞けば教えてくれるけど、珍しく彼は教えてくれなかった。

 

「幸い全員無事だったけどな。店はもう全滅さ」

 

「……ロペス。あんた、たしか女神からもらった力で、似たような崩落事故が起こせるって言ってなかったっけ?」

 

「おいおいおい! 勘弁してくれよ! できねえし、やらねえから!」

 

 江梨子(えりこ)ちゃんの言葉に、ロペスさんが全力で否定する。

 悪いけど、たしかにロペスさんの力ならできそうだなあと思った。

 

「旦那方も姐御方も、ビッグボスもすげえ怖かったんだぜ……あれ見て裏切れるやつがいたら、それこそ勇者なんだろうさ」

 

「濡れ衣はやめてくれないか!?」

 

 あ、風間(かざま)くんだ。

 そっか、向こうのお店が潰れたってことは、風間くんも(はら)ちゃんも世良(せら)ちゃんも暇なんだね。

 

「あ~、すまねえ。そういう意味じゃねえよ。タケミは勇者って感じじゃねえからな」

 

「勘弁してくれよ。ほんと……あんな怖い四天王や魔王様、見るのも恐ろしいのに、その怒りの矛先が向かうと思うと、震えそうだ」

 

「でも、武巳(たけみ)は私たちのことを守ろうとしてくれたね」

 

「それはまあ……当然だろ」

 

 いちゃつきはじめた。

 暇なのかなあ。暇なんだろうなあ。

 別にいいけどね。手伝ってもらうほど忙しくもないし、人手だって十分足りているし。

 

「でも、それじゃあ、あんたたちしばらく暇ってこと?」

 

「ボス次第だな。でも、新しいダンジョンやら店舗の計画立ててたし、せいぜいちょっとした休暇程度になるんじゃねえの」

 

 そうなんだ。

 レイさんがんばるなあ。私もこの世界で生き延びるためにがんばらなきゃ。

 

    ◇

 

「店を開こう」

 

「商店? それとも宿?」

 

「いや、マギレマさんの食堂を一般に開放する」

 

「やった~」

 

 マギレマさんが大げさに喜びを表現する。

 別に彼女の負担を増やすとか、無茶ぶりとかではない。前々からまだ働けるよと打診されていたのだ。

 ピルカヤといい、魔王軍ってわりと社畜根性あるよなあ……。フィオナ様の方針はホワイトな職場なのに。

 

「料理好きだからね! ここのみんなの分とお弁当作りだけじゃ物足りなかったんだよ」

 

「というわけで、マギレマさんもやる気なので、いっそのことそれ目当ての侵入者たちを呼び込もうかなと」

 

「ダンジョンの中に食堂だけを作るということでしょうか?」

 

 うん。怪しいよな。

 プリミラがなにか言いたそうなのはわかる。

 

「プリミラの畑みたいに、ダンジョンの中だけどなるべく開けた場所に作れば、ちょっと変な場所にできた食堂くらいに思ってくれないかな」

 

 辺鄙な場所にある穴場な食堂って扱いになってくれるなら、ダンジョンへ挑むのではなく本当にマギレマさんの料理だけを目当てとした侵入者がくるはずだ。

 そして、その食堂に熱量変換室を設置しておけば、客がくるほどに魔力を稼げる。

 もはやダンジョンではなく、食堂を経営して客を呼び込もうってわけだ。

 ダンジョンだと壊すやつがいるからな! いや、あんなやつらそう何人もいないかもしれないが、ちょっと慎重に魔力の収入源を増やしたいのだ。

 

「開けた場所でダンジョンの閉塞感をなくしつつ、マギレマの食堂だけを配置するってわけか……あれ、それじゃあマギレマの飯はもう食えなくなるのか?」

 

「いや、仕切りを作って外からは入れないスペースも作るつもりだよ」

 

「なるほど……従業員たちはそっちを利用するわけだな」

 

 やっぱり熱量変換室の効率は段違いだったと改めて実感する。

 壊されなければ、今ごろフィオナ様と一緒に蘇生薬ガシャを回していたかもしれないからな……。

 

「ドワーフダンジョンは完全に放棄して、従業員たちはマギレマさんの店で作業させる?」

 

「そうだな。カーマルをリーダーに、風間たちやロペスもいれば安心できる」

 

 こうなったら、マギレマさんの店をかなり大きめに作ってやる。

 宿に商店、採掘をしていた連中も全員そこの従業員として詰め込もう。

 

「というわけで、大きな食堂ができるまで適当にリセマラするから、ピルカヤたちは食堂を作る場所を調べておいてくれ」

 

「りょうか~い……リセマラ?」

 

「なんかよくわかんねえけど、気にしないほうがいい言葉なんだろうなあ」

 

    ◇

 

「お昼だ~。早く行こう!」

 

「そんなに急がなくても、あのお店ならそんなに待たないわよ」

 

 わかる。わかるけど、それとこれとは話が別。

 入り江の洞窟。あのお店を発見してからというもの、私は食の素晴らしさに目覚めた。

 毎日三回食べるのだから、やっぱり美味しいにこしたことはないよ。

 それがとんでもなく美味しくて安いのだから、もうあのお店がないと生きていけない。

 

「いらっしゃいませ」

 

「いらっしゃました! 今日のおすすめでお願いします!」

 

 このお店は全部美味しい。

 だったら、おすすめを頼むのが一番だと思う。

 毎日どころか毎食違うメニューだし、いずれは全メニューを制覇するんだから、こうしてお店に任せるのが賢い注文のしかただ。

 

「相変わらずしっかりした店員さんたちね」

 

「ねえ。人間にハーフリングにドワーフって、どういう集まりなんだろうね」

 

 私たちは人魚なだけあって、国のすべてが海に面している。

 水産業やら貿易やら、それに観光で、他の種族たちがこの国にくることは珍しくもない。

 だけど、わざわざこんな大きなレストランを、他種族だけで開くことはけっこう珍しいと思う。

 地元の人魚たちを雇わずに、こんな大所帯でお店を開くなんてなにか理由でもあるのかな?

 

「お待たせしました」

 

「待ってました!」

 

 まあいいや。美味しいからね。

 理由なんて私たちには関係ない。こうして安く速く美味しく、素晴らしい料理を提供してもらえるんだから、そんなことは気にする必要はないんだ。

 私たちだけでなく、この国にきた他種族の人たちも利用しているし、きっとそれだけ繁盛する自信があったんだろうなあ。

 だから、あらかじめなれている従業員たちを大勢連れて、ここにレストランを作ったってことだね。

 

 目まぐるしく出入りする様々な種族のお客さんを眺めながら、私はオムライスに舌鼓を打った。

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