人の生き様大好き系上位存在が蔓延る世界に生まれ落ちた生存本能極振り転生者   作:せぞんのう

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5 生き延びるならどんなことでも

 それから俺は、アミィを連れて森を出る。

 アミィの体はすっぽんぽんで、炎がそれを隠している状態。

 これで人前に出るわけにはいかないので、途中で余っていた服を着せた。

 炎は自由に引っ込められるらしい。

 まだ幼い少女がシャツ一枚という危ない光景は続くものの、アミィはその雰囲気からして明らか悪魔なので、そういうものだと受け入れてもらえるだろう。

 いや、なんで悪魔がいるんだよって思われそうだが。

 

「これから、私たちどこへ行くの?」

「まずは、この森の外にある村へ向かう。ここに来る前に、色々と情報を教えてもらったんだ」

「そう……こんな辺鄙なところに集落ができたのね。人類って本当に力強いわね」

 

 俺は木々の陰から周囲を窺いつつ答える。

 アミィからすれば、ほとんど初めて自分の目で見る世界だろうに、あまり興味がないようで俺の方ばかり気にしていた。

 まぁ、好奇心のままに行動して“あいつら”に見つかっても困るんだが。

 

「とはいえその前に……まずはこの森を抜けないと行けない。オークが闊歩するこの森を」

「それくらいなら、正面から倒してしまえばいいのではなくて? 私の力は頼りにならないかもしれないけど、あの程度の魔物には遅れを取らないわ」

「ありがとな。でも悪い、俺は避けられる戦いなら避けるべきだと思ってる」

 

 生き残る上で、もっとも有効な方法は関わりを作らないことだ。

 人も魔物もいない山奥の奥の奥にひっそりと暮らせば、きっと人々が俺を見つけることはないだろう。

 しかしその場合でも危険はある。

 食料は常に自分で手に入れないと行けないし、病気や怪我で動けなくなったら一発アウトだ。

 それに、そんな怯えて隅で縮こまるような生き方を本当に生きていると言えるのか。

 だから俺は、こうして悪魔と契約して前に進むことを選んだのだ。

 しかし、わざわざ常に敵と正面からやり合う必要はない。

 戦闘こそがもっとも人を命の危機に晒す行為だからな。

 故に俺は、行動を起こすことにした。

 

「だから、強引に戦闘を起こさなくてもいいようにする」

「ごういんに」

 

 まず最初に、オークを一匹発見します。

 これは先ほどの戦闘音やオークの咆哮が周囲に聞こえてるから、向こうから勝手にやってきてくれるでしょう。

 必要なオークは一体だけなので、複数いる場合は隠れてやり過ごし、一体になったところを狙います。

 そして機を見て、後ろからオークに奇襲を仕掛けます。

 方法はなんでも構いませんが、今回は相手の動きを止めたいので足を炎の剣で溶断し切り飛ばしました。

 次に、吠えられると面倒なので喉を潰します。

 炎の剣を突き刺して声が出なくなるまで焼いてから、残りの手足も焼いて潰します。

 これを適当に倒木から引っ剥がした木を加工して作った板に貼り付けて……

 

「できたぞ、肉の盾だ」

「強引すぎるし、やり方がいくらなんでもあんまりだわ!?」

「怯えさせちまったか?」

「ううん、そこが素敵!!」

「……そ、そっか」

 

 まぁ……アミィがそう言うならいいんだろう、きっと。

 何にしても、その行動自体にためらいはない。

 相手はオーク、弱者をいたぶり嘲笑する悪辣な存在だ。

 そんなヤツにかける慈悲は、残念ながら前世に置いてきてしまっていた。

 とはいえ今回は、アミィの力があるからこそ、こういうことができるわけだが。

 

「行きは、オークが嫌う匂いを放つ香草を使ってオークを避けてきたんだけどな」

「帰りはさっきのオークとのことがあって、すでに存在がバレてるから使えなかったのね」

「とにかく、まずはこれを使って森を突破しよう」

「そういえば、あまりに残虐すぎて今まで疑問に思っていなかったけれど、本当にこれでオークをどうにかできるのかしら。あの悪辣な性格を考えると――」

「ああ、問題ないよ。あいつらは――」

 

 その時だ。

 遠くからいくつかの足音が迫ってくる。

 方向は複数で、そのすべてが似たような足音をしているから、すべてオークだろう。

 少しだけ警戒した様子で、アミィが身構える。

 俺も盾を手にしながら、注意深く周囲を観察した。

 すると、オークは一斉に俺達の前に躍り出る。

 数で一気に制圧するつもりなのだろう。

 しかし、俺が手にしているものを見た途端――その動きが()()()止まった。

 

『グォォォ!?』

「止まった!?」

 

 それから、互いに顔を見合わせている。

 何度もチラチラと盾に貼り付けられたオークに視線を向けて、明らかに怯えた様子で一歩引くオークすら見られた。

 

「こいつらは、本質的に臆病なんだよ。自分より弱い相手しか嬲ろうとしないんだ。だからこうして、同族が一方的にやられた状態を見せれば……怯えるんだ」

「まぁ……」

「普段なら、他の魔物と争ったオークの死体や、契約者が無造作に殺した死体を利用して盾を作るんだが、ここにはそんな魔物も契約者もいないからな」

「手慣れてる!?」

 

 俺達悪魔と契約していない人間は弱者だ。

 少しでも知恵を回して、強大な魔物を退ける必要がある。

 とはいえ流石にこの方法は他の人間に見せたらどうなるか解っているので、俺も話したりはしないが。

 

「俺は、本当に生きるためならなんでもするよ。それを恐ろしいと思ったか?」

「そ、そんなことないわ。むしろ、ふふふ……うん、この方が私の半身としてふさわしいと思うの。ええ、ええ、素敵よ。とっても素敵」

 

 アミィは悪魔だ、これくらいは気にしないだろうと思っていた。

 しかし外に出て人と関わったことがないからか、反応はどことなく新鮮だ。

 それでも、アミィの言葉にも嘘はないだろう。

 なんか、ちょっとこっちを見る目が怪しいし。

 とにかく、俺達はオーク達の包囲網を突破する。

 あの場にいるオークが、ここにいる群れの大半だったのだろう。

 それから、オークが群れをなして襲ってくることはなかった。

 時折、物陰からこちらを覗いてくるオークはいたものの、襲ってくることはない。

 盾に貼り付けられたオークを見て、慄いて去っていったのだろう。

 群れで一斉に襲いかかることができるなら積極的に攻勢を仕掛けてくるが、本来のオークはどちらかといえば慎重な魔物だ。

 

「それにしても……オークを肉の盾にするなんて……なんだか矛盾してるわね」

「ああ……地域によっては、捕まえた女をオークが肉の盾にする……なんて事案もあるからな。よく知ってるな」

「オークは昔からいるもの、あの祭壇に私が配置されるよりずっと前から、ね」

 

 森の出口近くまでたどり着いて、盾に貼り付けたオークを処理しながら話す。

 話す内容は物騒極まりない上に、状況もかなりショッキングなのだが、どこかアミィの様子は楽しげだ。

 ピクニックをしている最中の子供みたい……とか、言ってもアミィには伝わるまい。

 何にしても、場違いなその様子を横目に、話を続ける。

 

「オーク相手にこれだけ効果てきめんなんだもの、他にもルセラは肉の盾を使うこともあるの?」

「いや……なかなか無いな。普通の人類にとっては脅威だけど、他の存在にとってはそこまで脅威じゃないって魔物じゃないと、死体が転がってることってなかなか無いし」

「そうなのね……あ、オークみたいな臆病な生態をしていないとダメってのもあるわね!」

「ああ、そうだ。アミィは賢いな」

「えへへ……」

 

 ――と、そこでふと手を止めて、俺はぽつりと思いついたことを零してしまった。

 普段は一人で行動している事が多いから、口に出して考えをまとめるのが習慣づいてしまっていたのだ。

 それは――

 

 

「そういえば、アミィを盾に貼り付けてアミィが人のふりをすれば、人類相手には結構有効かもしれないな」

 

 

 めちゃくちゃろくでもないことだった。

 やっべ。

 そう思って、思わずアミィの方に視線を向けた時にはもう手遅れだった。

 

「…………きゅん」

 

 アミィが。

 今のできゅんとするのか……

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