人の生き様大好き系上位存在が蔓延る世界に生まれ落ちた生存本能極振り転生者 作:せぞんのう
「もう、もうもう! ルセラったら大胆すぎるわっ! でもでも、そういうところが……素敵っ♡」
「いや、あの」
「いいのよ、私を道具のように使い捨てて生き延びるんでしょ? うふふ、私って折角外の世界に出られたのに、道具のように使い捨てられちゃうのね……うふふふふふ……うふ、えへっ、んふっ、ふほっ」
「アミィが死んだら俺も死ぬだろ!? アミィを捨て駒にはしないぞ!?」
いや、思わず思いついちゃったけれども。
思わず口をついて出ちゃったけれども!
でも本当にアミィをそういうことに使ったりするつもりはないんだ、本当なんだって!
「はっ……よくよく考えれば、あのようなド外道な考えが不意に湧いてくるのだし、それはすでに過去に何度も行ったことがあるのでは……私以外の女を……粗末に道具として使い捨てた……?」
「ド外道は本当にそのとおりだけど、それ以外は全部違うからな! そもそも人間相手にこんなこと考えないよ! それだと
「私が……特別ということかしら……うふ、えへっ、んふふ、ふほほ、おほっ」
「アミィ、顔がヤバいことになってるから抑えて、抑えて」
それからしばらく、暴走するアミィをなだめながらなんとか諸々の処理を終え、俺達は村へと足を運ぶ。
そこは俺が先ほど語った、オーク避けの香草が周囲に植えられた、寂れた雰囲気の村だった。
千年前には存在しなかったという集落も、別にそこまで規模が大きいというわけではない。
この辺りでは高級ワインの材料になるブドウを栽培するのに最適な気候をしており、その栽培のためにできた村だ。
栽培が難しいので、規模はそこまで大きくない。
「あんまり人気がないわね」
「妙だな……いくら寂れた村とは言え、そこまで人がいないわけじゃないんだが」
「うふふ……おかげでルセラと二人きりだわ」
「さっきまでずっと二人きりだっただろ……いや、オークがいたか」
なんて話をしつつ、村の中心部へと進む。
人はいないが、活気は感じられる。
多分だけど――行商人が来ているんだ。
村で採取したものを買い取るためにも、村に物資を届けるためにも、行商人は必須だろう。
そういうことなら俺としても、色々と欲しいものがある。
アミィの服とか、アミィの服とか、アミィの服とか。
「村人に挨拶するついでに、行商の商品を見ていこう」
「私がいきなりルセラの隣りにいて……びっくりされないかしら。ルセラがお嫁さんを見つけてきたって……」
「どこかから子供を攫ってきたって思われる可能性のほうが高そうだけどな。一応言っておくけど、アミィが悪魔だってことは秘密だぞ」
「わ、解ってるわよ」
なんて話をしつつ、人だかりの元まで到着する。
村の広場となっている場所に、おそらく村人が全員集合していた。
軽く挨拶をしたり、アミィのことを驚かれたりする。
ここの人たちは、俺のことをダークエルフの血を引いているからといって差別しない。
ありがたいことだ。
そんな時だった――不意に、行商人が俺に声をかけてきたのは。
「おや、おやおやおや、こんなところで会えるなんて奇遇だねぇ! ルセラくん!」
――それは、一人の少女だった。
ダボダボの白いコートを白衣のように着こなし、ボサボサの黒髪は腰のあたりまで伸びている。
目の隈はかなり濃く、浮かべる笑顔はどこか正気とは思えない。
背丈はそこまで大きくない、平均少し下くらいか。
まさに、マッドサイエンティストという言葉がよく似合う少女だった。
年の頃は俺と同じくらい。
名を――
「ラスス、どうしたんだこんなところに」
「知り合い!?」
「いやぁ、ちょっとまぁ色々とねぇ。君に会えるなんて嬉しいよ! それにしても、
「……流石にわかるか」
「
ラススの言葉に、まあバレるだろうな……と頷く。
普通の人間ならともかく、契約者なら悪魔の魔力をよく知っているから、判別ができてしまうだろう。
「それで、この彼女はどういう方法でここに顕現しているんだい? 結構長い時間、姿を保っているけれど」
「あー、ええと……」
悪魔は、人類の輝きを近くで見るのが大好きだ。
だからこそ、様々な方法で自身が根城とする拠点の外に出ようとする。
これを顕現といい、基本的に悪魔が実体を保とうとしたら、そう長くは現実にはいられない。
実体を持たずに契約者の体を乗っ取ることで、長時間我が物顔で現実を闊歩することもできるが……まぁ今そこに触れる必要はないか。
「……本体だ」
「へぇ本体。…………………………………………えっ、本体!?」
少し考えて、ラススには話しても問題ないと判断して話す。
ラススが一瞬聞き流して、それから本気で驚いた様子を見せた。
「――――――――――――――――――――――――――――本体?」
なんかこう、完全に停止してしまった。
そこでさっきまで静かだったアミィが急に騒ぎ出す。
「ル、ルルル、ルセラ? こ、こここ、この人は……一体……?」
「ああえっとこいつは――」
「こ、こいつ!? 気のおけない関係!? ななななな、ななななななぁ!?」
「お、落ち着けアミィ!」
「だ、ダメよ! ダメよダメよダメよ! いくらルセラにすり寄る女狐だからって、人を
殺める!?
なんかいきなり物騒な単語が出てきたが、アミィはそれを抑えようとしてくれているみたいだ。
とりあえずラススが再起動しないので、先に説明だけしておこう。
「えーとこいつはラスス。――錬金術師で薬師だ。こういう山奥の村を回って、薬や錬金で作った道具、他にも食料なんかを売り歩いてる」
「へぇ……」
露骨に興味がなさそうだった。
とか言っていると、ラススが復帰してくる。
「はっ……なんかルセラくんがいきなり悪魔の本体を、祭壇から引きずり出したとか言い出したかと思ったよ」
「言ったが」
「私こそが大悪魔アウナス、序列五十八位の偉大なる悪魔よ!」
「――――」
「おいまた停止するな、話が進まないだろ!」
またもやラススが停止しそうになったので、慌てて揺さぶって意識を戻す。
するとラススが目をぐるぐるさせながら、すごい勢いで語り始めた。
「いや、いやいやいや! 悪魔が祭壇の外に本体ごと出てこれたらまずいだろう!? この世界は悪魔が直接干渉できないからこそ、なんとか均衡を保ってる世界なんだよ!? それそ、それをそれをそれを君は――!」
「……生き残るためだ、仕方がないだろ」
「――――まぁ、ルセラくんならそういうこともあるかぁ」
そして、何やら滅茶苦茶諦観に満ちた声音で結論付けられてしまった。
いいのか……?
「こほん。そういうことならよろしくねアウナスくん! いやぁ、君がルセラくんの契約した悪魔かぁ……」
「……アミィで結構よ。貴方に名前は呼ばれたくないけれど、悪魔とバレる方がルセラに迷惑をかけてしまいそうだもの」
「ふふふ、解ったよ」
何にしても、ようやくラススが真面目に話をするつもりになったようだ。
アミィもいやいやながら、ふん、と鼻を鳴らしつつラススに応対してくれている。
「ところで貴方、錬金術って一体何をするの? 魔術とはまた違うものなのかしら」
「錬金術は、主に人類が自分たちの知恵で技術を発展させるために築き上げた学問さぁ! 魔術との違いは、呪文ではなく錬成によって、これまでにない新しい道具を生み出すことだねぇ!」
「ふぅん……人類も面白いことを考えるのね」
「ところでアミィくん、ちょっとこの飲み物を飲んでみないかい? この土地で取れるぶどうを使って作ったものなんだけど……」
そして二人が話を始めたと思ったら、ラススがいきなり怪しい勧誘をしてきた。
慌てて俺は二人の間に割って入り、ラススを止める。
「いきなり何してるんだ。その飲み物を飲んでどうなるんだよ、おい」
「体がちょっと緑色になって、ジャンプ力が上がって、語尾にゲロってつくようになる」
「蛙になってるじゃないか!」
「あっはははは! これが蛙化現象ってヤツだねぇ!」
いや蛙化現象はそういう言葉じゃないだろ! というかなんで知ってるんだよ!
……俺が口を滑らせた可能性があるな、ここはあまり深く触れないでおこう。
「とにかく、こういう厄介なヤツなんだ、ラススは」
「わ、わかったわ……それにそうやって言うってことは、ルセラとそいつは親しくないのね! よかったわ……」
「ふむ、親しいか親しくないかはさておくとして、そうだね」
ラススは手にしていた飲み物をしまって、そして笑う。
「まぁ強いて関係に名前をつけるならそうだな……
そして――怪しく笑みを浮かべて、そう言い切るのだった。
「……
「そっち!?」
……言い切らなかった。