人の生き様大好き系上位存在が蔓延る世界に生まれ落ちた生存本能極振り転生者 作:せぞんのう
「――そうだ、ボクがここに来たのは君に会いに来たというのもあるけれど、ここにアンドラスのヤツが契約者を送り込んできたからさ」
「あいつが? また面倒な……」
自己紹介を終えると、ラススは早速本題に入ってきた。
まぁ、その間にちょっと長時間ラススがフリーズしてしまっていたけれど、まぁ誤差だ。
「アンドラス? アンドラスってあのいじわるなアンドラス? 序列六十三位の!」
「そう、そのアンドラス。大悪魔アンドラスだ」
アミィが、不思議そうにこちらへ問いかけてくる。
アンドラス。
この世界を玩具にする大悪魔の一柱で、序列こそアミィより低いものの、間違いなく”知名度”という点においては悪魔の中でも有数だ。
「またの名を、”千枚舌”のアンドラス。現在この大陸に存在する悪魔の中で、もっとも契約者数が多いのではないかと言われる悪魔の一角」
「あのアンドラスが!? 確かにあいつは狡猾で厄介な悪魔だけれど、契約者をいっぱい持つことはほぼ不可能よ。だって私より魔力が少ないのよ?」
悪魔は力を貸し与えるにしろ、道具を生み出すにしろ、魔力を消費する必要がある。
力を貸し与えた相手が死んだり道具が破損すればその分の魔力は返還されるものの、悪魔の魔力量そのものに限りがある以上、契約できる人数は有限だ。
しかしアンドラスはある方法を使ってそれを掻い潜った。
「アンドラスは契約の際に、契約者に代償を強いる。そしてその代償が大きければ多いほど、得られる魔力を増幅させられるんだ。もととなった魔力の総量は変わらないし、回収する時も元の魔力量しか回収できないけどな」
「それは考えたわね……でもアンドラスって強者には絶対に近寄らないし、弱者は徹底的に甚振ってその場でぽいするのが普通よ。生き残ったうえで狙われるなんて、ルセラは何をしたの?」
「アンドラスのお気に入りのガルグイユって契約者を、俺とラススが二人がかりで倒してな。以来粘着されてる」
「むぅ……ずるいわずるいわ! その女と二人で共同作業だなんて!」
アミィは地団駄を踏んだ。
きぃいい! という声が聞こえてきそうなくらいきれいな地団駄だ。
それからアミィは、俺にどうやって倒したのかを聞いてきた。
それもまた羨ましそうに聞いていたが、最後まで聞いた後――
「でもそういうところがしゅきぃ……」
溶けた。
しばらくそうやってくねくねしてから、アミィは俺に問いかける。
「それで……その契約者相手にルセラはどうするの?」
「迎撃する」
「ん……どうして?」
「どうしてって……言われてもな。アンドラスの目的は俺だろうが、その契約者の目的は多分村の方だ。ここには特産のワインがあるから、それを奪いに来たんだろう」
アンドラスの契約者は、アンドラスに騙されている。
中には唆されて悪の道に落ち、君の味方は自分だけとアンドラスに誘導されているやつまでいる始末。
そういう手足を上手く使って、アンドラスはいろんなやつにちょっかいをかけたり、悪事を働いたりするんだ。
今回も、その類だろう。
「だから、俺がここから逃げたらその契約者は村を狙う。俺とは何の関係もない、罪のない人々を、だ」
「……迎撃する理由はそれだけ? ええ、ええ、それは確かに立派な理由よね。人として正しく、そして輝いている。素晴らしいと思うわ」
ふと、アミィの声音が最初に出会った頃に近しくなっていることに気がつく。
遺跡を出てからここまで、ずっとワントーン声が高かったのに。
というとアミィが折角気合を入れて語っているのに水を指すから、口には出さないが。
「――でも、ルセラらしくない」
「そうだな」
「私の前で、オークを肉の盾にした時のことや、そこの女と竜退治をした話を聞いて思ったわ。貴方は、生き残るためなら本当になんだってしてみせるのよね」
「ああやっぱり、悪魔と契約しても肉の盾はやるんだ……」
さっきから話を聞いているだけだったラススが、ぽつりと零した。
ちょっと引かれてる気がする。
「そんなルセラが、他人のために命をかけるなんておかしい。筋がブレているわ。――でも、貴方はこうも言った。人間を使い捨てることを――あいつらと同じになるからしないって」
「……ああ」
「それもきっと、本当のルセラの言葉なのよね」
あの時の言葉。
肉の盾で
正直、そこまで気に留められるとは思わなかったが、たしかにそうだ。
俺は、そうやって他人を犠牲にするやり方は好まない。
「私ね……ルセラのことを全部知りたいの。ルセラの生きる目的って、生き残ることよね? でも、それだとやっぱりおかしいわ。――どうして私なの?」
「君の力は、多くの人に知られていない。それが大きなアドバンテージになるからだ」
「ええ、ええ、そう言ってくれたわね。嬉しいと思ったわ。でも、本当にただ生き残るためなら、こうやって大人になるまで各地を放浪する必要はなかったと思うの」
俺が故郷を追われてから、すでに十年近くが経過している。
その間、俺は確かにアミィの言う通り、アミィという悪魔を探すために誰とも契約せず各地を放浪してきた。
ガルグイユの件にしてもそうだが、それは危険と隣り合わせの旅だったのだ。
それをせず、誰でもいいから悪魔と契約して力を得たほうが、生き残るうえでは安全だった。
矛盾している、アミィはそう言いたいのだろう。
だから――
「――貴方は、私となんで契約したの? いいえ、こう言いましょう。
その言葉に、俺は――
◯
いくつかの話を終えた後、俺達はアンドラスの契約者を迎撃するべく村を出る。
ラススの案内で、森の中を隠れながら進むと、すぐにそいつらを見つけることが出来た。
見つけたのは行商人に擬態した山賊だ。
果たして、元々この村を訪れる行商人を殺害して成り代わったのか、いつもこうしているのかは解らない。
ラススが行商人としてあの村を訪れたのは、こいつらを先んじて見つけていたからだろう。
そうなれば行商人がかち合うことになるから、村人は山賊たちを警戒する。
ただ襲われるよりは、生存確率が上がるはずだ。
案外ラススは、お人好しである。
「じゃあ、作戦通りに」
「一番の問題は、向こうの契約者の力がどれほどか解らないことだけどねぇ」
「そこはしょうがない、場当たり的にいくしかないだろう」
「いつも通りってことだね!」
「むうううう、むううううう!」
俺とラススのやり取りにむくれているアミィを他所に、俺は木の陰から飛び出して――
全力でやつらが乗っている馬車に炎を叩きつけた。
結果、炎上、そして爆発。
中には奴らの武器である鉄砲も含まれていたからだろう。
この世界は結構科学が進んでいるから、古めかしい鉄砲が存在する。
そこに火薬が使われているから、こういう盗賊の物資はとりあえず燃やせば吹き飛ばせるのだ。
「ぐああああ!」
「クソ、何なんだよてめぇ!」
当然、乗っていた盗賊は吹き飛ばされて意識を失う。
死んでいるかどうかは解らないが、とにかくこれで雑魚はほとんど始末できた。
馬車に乗らず歩いている奴らは、アミィとラススが物陰から遠距離攻撃で始末する。
残ったのは、馬車から吹き飛ばされつつも、悪態をつきながら生存した男だけ。
――こいつが契約者だ。
「悪いが、お前にはここで消えてもらうぞ」
「あぁ!? ざけたこと言ってんじゃねえぞ! 俺を誰だと思ってやがる! テメェみてぇな混じりモンのグズが俺に楯突くんじゃねえ!」
男はいいながら、ばちばちと両手から稲妻を迸らせる。
なるほど、それがこいつの能力か。
なら
「だいたいテメェが俺に指図する理由なんざねえだろうがよ! 突然出てきてヨォ!」
「あるさ、そんなもの……」
俺は構える。
話はそれからだ。
「俺の生存を邪魔する奴は、ここで死ね!!」
さぁ、始めるぞクソッタレ!